改正社会保険法、7月1日から施行

(ベトナム)

ホーチミン発

2025年06月16日

ベトナム国会で2024年6月に承認された改正社会保険法41/2024/QH15が7月1日から施行される。同法は社会保険法58/2014/QH13を改正したもので、主なポイントは次のとおり。

〇社会保険に加入の義務がある対象者の拡大:改正法では、現行法で対象外だったパートタイム労働者(1カ月以上の労働契約に基づいてパートタイムで勤務し、月給が社会保険加入要件の最低給与額と同等、またはそれ以上の労働者)にも拡大する。また、事業登録を行っている個人事業主、企業の管理者など、給与を受領しない者についても加入を義務化する。ベトナムで働く外国人労働者については、これまでベトナム人配偶者がいる外国人や企業の代表など、労働許可証の取得が免除されていることで、社会保険加入が免除されていた者も、改正法では、雇用主と12カ月以上の労働契約を結ぶ場合、社会保険加入を義務化する。ただし、外国人労働者のうち、社内異動者とベトナムの労働法169条に定める定年退職年齢に達した者は引き続き加入免除となる。

〇社会保険料の最低納付期間の短縮:男女ともに退職年金を受給するための社会保険料の最低納付期間を現行法の20年から15年に短縮する(注)。

〇社会保険料の滞納と未納に対する罰則強化:社会保険料の滞納や支払いを回避する行為が発覚した場合、雇用主に滞納または未納額と加算金を支払うように強制する。加算金は延滞保険料額に対して1日当たり0.03%の相当額と延滞日数から算出した額となる。

ベトナム社会保険庁によると、2024年12月時点の社会保険の未納総額は16兆ドン(約880億円、1ドン=約0.0055円)以上で、深刻な問題とされている。社会保険加入者は2025年5月末時点で、前年同月末比12%増の1,950万人と想定される。改正法の施行により、社会保険料の徴収・納付を管理するための規定が補完されるとともに、社会保険料の滞納や未納に対処する規定が盛り込まれ、労働者の利益保護が見込まれる(「ダンチ」2024年12月19日、「VNエコノミー」6月3日)。

(注)社会保険のうち、退職年金は社会保険料の納付期間が15年以上で、原則として、労働法45/2019/QH14の169条に定める定年退職年齢に達した時点で受給対象となる。現在、定年退職年齢の引き上げが段階的に実施されている(2019年12月24日記事参照)。2025年は通常の労働条件での定年退職年齢は、男性61歳3カ月、女性56歳8カ月。最終的には、男性62歳(2028年)、女性60歳(2035年)まで引き上げられる。

(新田和葉、トゥ・ハー)

(ベトナム)

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