フィリピンの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年のGDP成長率は4.4%、インフラ事業停滞で建設業が不振。
  • 電気機器・同部品の輸出は前年比27.5%増と好調。
  • 対内直接投資は半減、税制優遇制度改正がもたらす成果に期待。
  • 対日貿易は3年連続黒字、日系企業は業種を問わず拡張投資が中心。

公開日:2026年10月8日

マクロ経済

2025年の成長率は4.4%と鈍化、公共事業の遅滞が影響

2025年のフィリピンの実質GDP成長率は4.4%だった。前年の5.7%を大幅に下回り、2020年(マイナス9.5%)以来の低い伸びとなった。また、3年連続で政府目標(2025年は5.5~6.5%)を下回り、ASEAN主要6カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の中では、タイ(2.4%)に次いで2番目に低い成長率となった。度重なる自然災害に加え、洪水対策予算を巡る不正疑惑を受け、政府がインフラ事業を見直したことや予算執行が遅れたことなどが成長率を下押しした。

需要項目別では、実質GDP成長率の約75%を占める民間最終消費支出が、前年の4.9%増から4.5%増に減速した。フィリピンでは例年、クリスマス商戦に向けて9月以降に個人消費が活発化するが、2025年は第3四半期の民間最終消費支出は4.0%増、第4四半期は3.8%増にとどまり、前年と比較し伸び悩んだことが影響した。政府最終消費支出は、5月の中間選挙に向けた支出の影響で、第1四半期は18.7%増を記録した。一方、第4四半期は0.7%減と落ち込んだ。結果として、通年では前年の7.3%増から8.4%増となった。

国内総固定資本形成は、前年の6.3%増から1.7%減と大幅なマイナスとなった。第3四半期の2.8%減、第4四半期の9.4%減が影響した。特に、建設業は第4四半期に9.2%減となり、洪水対策予算問題によるインフラ事業の停滞が影響した。財・サービスの輸出は8.2%増で、前年の3.3%増から加速し、中でも財の輸出が14.9%増と前年の0.6%減から大幅に伸びた。一方、財・サービスの輸入は5.0%増で、前年の4.2%増から微増にとどまった。

産業別では、農林水産業が3.1%増(前年1.5%減)と持ち直したが、鉱工業は1.7%増(5.6%増)と伸び悩んだ。また、電気・ガス・水・廃棄物管理は0.8%増(7.3%増)と大きく減速した。実質GDPの6割強を占めるサービス業は、5.8%増(6.7%増)と堅調な成長がみられた。このほか、運輸・倉庫6.7%増(8.8%増)、政府機関、防衛、保安6.8%増(4.6%増)、医療福祉11.6%増(10.8%増)などが比較的順調な伸びを見せた。

インフラ事業の停滞に伴い雇用環境は悪化した。前述のとおり、洪水対策予算問題を受けてフィリピン政府がインフラ事業を見直した結果、プロジェクトの一時停止や遅延が発生し、建設業を中心に雇用環境が悪化した。2025年の失業率は4.2%と前年の3.8%から上昇し、建設業の就業者数は前年比で55万人減少した。

消費者物価(CPI)上昇率は、年間平均で1.7%と前年の3.2%を下回り、2016年以来の低水準だった。フィリピン中央銀行(BSP)は、2025年3月のCPI上昇率が目標範囲(2.0~4.0%)の下限を下回ったことから、金融緩和に転じた。2025年4月以降、政策金利を25ベーシスポイント(1bp=0.01%)ずつ計5回引き下げ、年末時点の政策金利は4.50%となった。

表1 フィリピンの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 5.5 5.7 4.4 5.4 5.4 4.0 3.0
民間最終消費支出 5.5 4.9 4.5 5.3 5.2 4.0 3.8
政府最終消費支出 0.3 7.3 8.4 18.7 8.7 5.8 0.7
国内総固定資本形成 8.2 6.3 △ 1.7 4.5 0.9 △ 2.8 △ 9.4
財・サービスの輸出 1.3 3.3 8.2 7.1 4.9 7.8 13.3
財・サービスの輸入 1.0 4.2 5.0 10.3 3.6 3.2 3.2

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比

〔出所〕フィリピン統計庁(PSA)

貿易

電気機器・同部品の輸出好調で貿易赤字は縮小

2025年の貿易総額(通関ベース)は2,178億2,500万ドルで、前年の2,003億6,600万ドルから8.7%増加した。輸出額は前年比14.8%増の837億5,600万ドル、輸入額は5.2%増の1,340億6,900万ドルだった。貿易赤字は7.5%減の503億1,200万ドルに縮小した。

輸出を品目別に見ると、全体の44.7%を占める電気機器・同部品は、前年比27.5%増の374億2,800万ドルで前年の減少から回復した。うち、集積回路が40.5%増の225億700万ドルで、全体の26.9%を占めたほか、変圧器が22.1%増の20億8,800万ドル、その他の電気・電子部品が12.6%増の13億2,100万ドル、スマートフォンなど電話機が29.3%増の11億9,800万ドルだった。前年に大きく落ち込んだ半導体デバイスも13.2%増の9億9,900万ドルと回復した。また、輸出額全体の8.3%を占める一般機械は13.5%増の69億2,700万ドルと堅調に推移した。うち、自動データ処理機は9.8%増の20億2,500万ドル、印刷機は4.9%増の19億3,400万ドルだった。また、動物、野菜または微生物の油脂・製品は31.9%増の30億7,300万ドル、果実・ナッツが35.6%増の28億5,300万ドルと食品の輸出が大きく伸びた。背景には、主要輸出品目であるココナッツ油やバナナの国際的な価格高騰がある。世界銀行によれば、2025年のココナッツ油の世界平均価格は前年比63.3%上昇した。また、フィリピン政府の施策により輸出量も拡大しており、国連食糧農業機関(FAO)による2025年の推計では、バナナは前年と比較し25.6%増の292万5,000トン、パイナップルは13.6%増の77万5,028トンとなる見込みである。さらに、真珠・貴金属類は金価格の高騰を背景に前年比70.5%増の27億2,300万ドルとなり、大幅な伸びを示した。

輸入を品目別に見ると、電気機器・同部品が前年比17.4%増の227億5,700万ドルで、全体の17.0%を占めた。うち、集積回路が25.5%増の88億4,300万ドル、スマートフォンなど電話機が18.6%増の26億700万ドル、半導体デバイスが11.0%増の15億6,100万ドル、電気絶縁体・ケーブルが18.7%増の15億2,900万ドルと、前年と比較していずれも2桁台の伸びを見せた。一方、全体の12.5%を占める鉱物性燃料・鉱物油は、12.2%減の167億6,100万ドルだった。うち、石油・歴青油および同製品は12.3%減の125億2,100万ドル、石炭は21.2%減の23億2,300万ドルだった。原油や石炭の国際価格の下落に加え、再生可能エネルギー(再エネ)への代替が進み、石炭火力発電への依存度が低下し、石炭輸入量が減少したことが要因として挙げられる。また、穀物も国際価格下落を受け、18.4%減の38億8,700万ドルとなった。このうち、コメが32.0%減の16億6,200万ドルと大幅に減少した。一方、車両(鉄道以外)・同部品は11.0%増の103億5,200万ドルで、うち乗用車は17.1%増の50億8,600万ドルと大きな伸びを見せた。フィリピン自動車工業会(CAMPI)とトラック製造業者協会(TMA)によれば、2025年の年間新車販売台数は、過去最高の49万1,395台を記録しており、特に電気自動車(xEV)の販売急増が影響したとみられる。また、近年減少傾向にあった二輪車の輸入も13.3%増の16億2,600万ドルに達した。

表2-1 フィリピンの主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機器・同部品 29,348 37,428 44.7 27.5
集積回路 16,023 22,507 26.9 40.5
電気絶縁体・ケーブル 2,932 3,049 3.6 4.0
変圧器 1,710 2,088 2.5 22.1
その他の電気・電子部品 1,173 1,321 1.6 12.6
スマートフォンなど電話機 927 1,198 1.4 29.3
半導体デバイス 883 999 1.2 13.2
一般機械 6,105 6,927 8.3 13.5
自動データ処理機 1,844 2,025 2.4 9.8
印刷機 1,844 1,934 2.3 4.9
タイプライターおよびその他事務機器・同部品、付属品 1,172 1,582 1.9 35.0
光学・精密・医療機器等 3,312 3,398 4.1 2.6
動物、野菜または微生物の油脂・製品 2,330 3,073 3.7 31.9
鉱石、スラグおよび灰 2,722 2,882 3.4 5.9
果実・ナッツ 2,104 2,853 3.4 35.6
真珠、貴金属類 1,597 2,723 3.3 70.5
銅・同製品 1,752 1,727 2.1 △ 1.4
プラスチック・同製品 1,214 1,156 1.4 △ 4.8
航空機、ロケット・同部品 590 841 1.0 42.4
車両(鉄道以外)・同部品 943 837 1.0 △ 11.2
合計(その他含む) 72,984 83,756 100.0 14.8

〔出所〕Global Trade Atlas〔原データはフィリピン統計庁(PSA)〕

表2-2 フィリピンの主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機器・同部品 19,391 22,757 17.0 17.4
集積回路 7,048 8,843 6.6 25.5
スマートフォンなど電話機 2,199 2,607 1.9 18.6
半導体デバイス 1,406 1,561 1.2 11.0
電気絶縁体・ケーブル 1,288 1,529 1.1 18.7
鉱物性燃料・鉱物油 19,096 16,761 12.5 △ 12.2
石油・歴青油および同製品 14,274 12,521 9.3 △ 12.3
石炭 2,947 2,323 1.7 △ 21.2
一般機械 10,181 11,116 8.3 9.2
タイプライターおよびその他事務機器・同部品、付属品 1,289 1,470 1.1 14.0
自動データ処理機 1,132 1,228 0.9 8.5
車両(鉄道以外)・同部品 9,328 10,352 7.7 11.0
乗用車 4,343 5,086 3.8 17.1
貨物自動車 2,208 2,149 1.6 △ 2.7
二輪車 1,434 1,626 1.2 13.3
プラスチック・同製品 4,165 4,673 3.5 12.2
鉄鋼 4,222 4,609 3.4 9.2
穀物 4,764 3,887 2.9 △ 18.4
鉄鋼製品 2,708 3,077 2.3 13.6
光学・精密・医療機器等 2,439 2,836 2.1 16.3
食肉類 1,913 2,361 1.8 23.4
医薬品 2,200 2,231 1.7 1.4
動物、野菜または微生物の油脂・製品 1,389 2,052 1.5 47.7
合計(その他含む) 127,382 134,069 100.0 5.2

〔出所〕Global Trade Atlas〔原データはフィリピン統計庁(PSA)〕

輸出を国・地域別に見ると、最大の輸出先は前年に引き続き米国で、前年比11.4%増の134億4,900万ドルを記録し、全体の16.1%を占めた。次いで、香港が28.4%増の123億2,400万ドル、日本が12.8%増の115億6,900万ドル、中国が1.3%減の93億100万ドルだった。また、オランダ、シンガポール、ドイツ、台湾はいずれも20%以上の伸びを見せ、輸出金額も30億ドル台に達した。一方、韓国(7.6%減)、タイ(1.8%減)、ベトナム(7.7%減)、インドネシア(8.1%減)などは前年を下回った。

米国向けでは、電気機器・同部品が前年比19.0%増の61億8,100万ドルと大きく伸びた。うち、集積回路(20.9%増、18億8,800万ドル)、スマートフォンなど電話機(29.2%増、7億6,000万ドル)、未使用記録用媒体(55.0%増、3億800万ドル)、半導体デバイス(69.4%増、1億3,200万ドル)などが大幅に増加した。このほか、一般機械は20.1%増(17億4,200万ドル)、食用油は26.7%増(7億400万ドル)、光学・精密・医療機器などは31.6%増(4億4,100万ドル)と好調だった。香港向けは、一般機械が46.0%増の81億4,000万ドル、真珠・貴金属類が112.9%増の16億9,700万ドルと大きく増加した。中国向けは、電気機器・同部品が18.7%増(38億6,100万ドル)と伸びたものの、鉱石、スラグおよび灰が17.5%減(15億4,600万ドル)、銅および銅製品が64.7%減(2億100万ドル)と落ち込んだ。ASEAN向けは7.5%増の118億900万ドル、欧州向けは20.9%増の114億100万ドルで、特にシンガポール、マレーシア、オランダ、ドイツ向けを中心に電気機器・同部品の輸出が伸びた。

輸入を国・地域別に見ると、中国が前年比17.1%増の384億2,700万ドルで全体の28.7%を占めた。2位は韓国で9.9%増の105億8,800万ドル、3位は日本で4.8%増の105億5,600万ドルだった。

中国からの輸入では、電気機器・同部品が前年比34.6%増の79億6,000万ドル、一般機械が17.5%増の40億9,500万ドルだった。電気機器・同部品のうち、スマートフォンなど電話機が10.5%増の14億6,500万ドルだったほか、集積回路(99.2%増、13億2,700万ドル)や電気絶縁体・ケーブル(27.7%増、7億5,500万ドル)など、電子機器関連品目の増加が目立った。韓国からの輸入は、鉱物性燃料・鉱物油が5.6%減の34億4,200万ドルだった一方、電気機器・同部品は18.5%増の16億7,600万ドルだった。日本からの輸入は、主要品目の電気機器・同部品が2.4%減の26億100万ドルにとどまったが、一般機械は9.2%増の16億200万ドル、車両・同部品は17.7%増の14億1,200万ドルと伸長した。

表3 フィリピンの主要国・地域別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)〔注〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア大洋州 48,222 54,189 64.7 12.4 99,916 106,529 79.5 6.6
香港 9,600 12,324 14.7 28.4 2,043 1,891 1.4 △ 7.4
日本 10,254 11,569 13.8 12.8 10,069 10,556 7.9 4.8
中国 9,423 9,301 11.1 △ 1.3 32,819 38,427 28.7 17.1
韓国 3,564 3,294 3.9 △ 7.6 9,630 10,588 7.9 9.9
台湾 2,676 3,285 3.9 22.8 3,973 4,740 3.5 19.3
ASEAN 10,988 11,809 14.1 7.5 35,903 35,360 26.4 △ 1.5
シンガポール 2,935 3,528 4.2 20.2 5,756 5,741 4.3 △ 0.3
タイ 2,954 2,902 3.5 △ 1.8 7,521 7,566 5.6 0.6
マレーシア 2,214 2,691 3.2 21.5 5,955 5,630 4.2 △ 5.5
ベトナム 1,655 1,527 1.2 △ 7.7 5,468 5,636 4.2 3.1
インドネシア 1,051 966 1.8 △ 8.1 10,542 10,175 7.6 △ 3.5
インド 1,094 1,468 1.8 34.2 2,232 2,085 1.6 △ 6.6
オーストラリア 542 104 0.1 △ 80.8 2,741 2,356 1.8 △ 14.0
欧州 9,430 11,401 13.6 20.9 8,872 9,753 7.3 9.9
EU27 8,039 9,764 11.7 21.5 7,459 8,326 6.2 11.6
オランダ 2,867 3,596 4.3 25.4 514 496 0.4 △ 3.5
ドイツ 2,456 3,355 4.0 36.6 2,159 2,180 1.6 1.0
イタリア 309 360 0.4 16.5 990 1,070 0.8 8.1
スペイン 310 347 0.4 11.9 683 730 0.5 6.9
フランス 403 323 0.4 △ 19.9 1,137 1,554 1.2 36.7
英国 547 536 0.6 △ 2.0 626 612 0.5 △ 2.3
中東 861 1,097 1.3 27.4 4,735 4,651 3.5 △ 1.8
湾岸協力会議(GCC)諸国 641 791 0.9 23.4 3,998 3,948 2.9 △ 1.2
北米 12,616 14,755 17.6 17.0 9,057 8,989 6.7 △ 0.8
米国 12,068 13,449 16.1 11.4 8,163 8,151 6.1 △ 0.2
アフリカ 177 234 0.3 32.2 505 538 0.4 6.5
中南米 1,411 1,734 2.1 22.9 3,516 2,560 1.9 △ 27.2
メキシコ 875 1,143 1.4 30.6 403 288 0.2 △ 28.5
ブラジル 209 219 0.3 4.8 2,030 1,824 1.4 △ 10.2
合計(その他含む) 72,984 83,756 100.0 14.8 127,382 134,069 100.0 5.2

〔注〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値

〔出所〕Global Trade Atlas〔原データはフィリピン統計庁(PSA)〕

対内直接投資

対内投資(認可ベース)は半減、待たれる投資優遇措置の成果

2025年のフィリピンへの対内直接投資(認可ベース)は、前年比50.1%減の2,723億7,600万ペソと大幅に減少した。過去5年間で最大の落ち込みとなり、2022年の2,418億9,000万ペソ以来の最低水準となった。米国の関税措置を背景とした世界的な貿易の不確実性に加え、自然災害、洪水対策予算を巡る問題を受けたインフラ事業の停滞などが投資家心理に影響したとみられる。

国・地域別では、シンガポールが前年比7.7倍の927億7,600万ペソ(構成比34.1%)で首位となった。2位はオランダで28.4%減の359億7,800万ペソ、3位は日本で18.7%増の340億3,200万ペソと、いずれも全体の1割強を占めた。一方、昨年2位だった韓国は79.0%減の204億300万ペソで4位となった。シンガポール企業のグリン・エナジー(Gurīn Energy)は2025年2月、フィリピン国内で75メガワットの太陽光発電所を完工するとともに、今後2~3年で約3億ドルを投資し、1ギガワットの太陽光・風力発電プロジェクトを開発する計画を進めている。また、6月のシンガポールのローレンス・ウォン首相のフィリピン訪問時には、マルコス大統領がシンガポール企業に対して再エネ分野への投資拡大を呼びかけた。11月には、韓国系のサムスン電機フィリピン(SEMPHIL)が507億ペソの拡張投資を実施した。また、12月には韓国企業5社〔JSCOホールディングス(JSCO Holdings)、リフロマックス(REFLOMAX)、チュンウーE&E(CHUNGWOO E&E)、SSKKソリューション(SSKK Solution)、ハンチャン・エナジー(Hanchang Energy)〕とミンダナオ開発庁(MinDA)が、再生可能エネルギーやインフラ関連事業などの投資計画に関する覚書(MOU)を締結した。

表4 フィリピンの国・地域別対内直接投資〔認可ベース〕(単位:100万ペソ、%)(△はマイナス値)
国・地域 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
シンガポール 12,123 92,776 34.1 665.3
オランダ 50,222 35,978 13.2 △ 28.4
日本 28,665 34,032 12.5 18.7
韓国 97,278 20,403 7.5 △ 79.0
ケイマン諸島 9,301 16,694 6.1 79.5
米国 5,699 13,530 5.0 137.4
中国 2,430 10,251 3.8 321.8
タイ 3,821 8,550 3.1 123.7
ドイツ 353 6,185 2.3 1,653.1
香港 3,072 5,311 2.0 72.9
スイス 289,064 4,367 1.6 △ 98.5
オーストラリア 3,732 4,306 1.6 15.4
英領バージン諸島 2,068 2,378 0.9 14.9
台湾 2,513 2,199 0.8 △ 12.5
マレーシア 9,769 1,369 0.5 △ 86.0
英国 3,012 1,243 0.5 △ 58.7
インド 565 567 0.2 0.2
カナダ 145 264 0.1 82.0
合計(その他含む) 546,190 272,376 100.0 △ 50.1

〔出所〕フィリピン統計庁(PSA)

業種別では、電力、ガス、空調が前年比64.1%減の1,224億8,400万ペソとなったものの、全体の45.0%を占め、3年連続で最大の投資分野となった。再エネ関連案件が引き続き投資を牽引した。次いで、製造業は35.4%減の814億1,400万ペソで、全体の約3割を占めた。3位の不動産は51.8%増の263億600万ペソ、4位の管理、サポートは44.4%増の188億3,100万ペソだった。

表5 フィリピンの業種別対内直接投資〔認可ベース〕(単位:100万ペソ、%)(△はマイナス値)〔出所〕 フィリピン統計庁(PSA)
業種 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
電力、ガス、空調 341,501 122,484 45.0 △ 64.1
製造業 126,108 81,414 29.9 △ 35.4
不動産 17,326 26,306 9.7 51.8
管理、サポート 13,042 18,831 6.9 44.4
輸送・倉庫 14,814 6,847 2.5 △ 53.8
情報・通信 6,209 5,493 2.0 △ 11.5
ホテル、外食 42 2,645 1.0 6,187.3
農林水産 91 2,617 1.0 2,784.7
芸術、芸能、レジャー 20,167 1,709 0.6 △ 91.5
水道 957 937 0.3 △ 2.2
金融・保険 594 891 0.3 50.0
卸・小売り、修理業 517 864 0.3 67.1
専門、科学、技術 57 675 0.2 1,079.9
建設 1,418 623 0.2 △ 56.1
健康・社会福祉、公共サービス 7 39 0.0 439.5
教育 32 0 0.0 0.0
合計(その他含む) 546,190 272,376 100.0 △ 50.1

〔出所〕 フィリピン統計庁(PSA)

2024年11月に成立した「経済再活性化のための機会最大化を目指す企業復興税優遇措置(CREATE MORE法)」は、投資誘致の起爆剤となることが期待されている(2024年11月12日付ビジネス短信参照)。同法に基づく税制優遇措置の具体的な内容を規定した実施細則(IRR)が2025年2月に署名された。さらに、2025年11月、前述のSEMPHILの投資が同法に基づく優遇措置の初適用案件となることが明らかになった。同法による投資誘致効果は2026年以降に本格化すると期待される。

対日関係

対日貿易収支は3年連続黒字

2025年の日本との貿易(通関ベース)は、輸出が前年比12.8%増の115億6,900万ドル、輸入が4.8%増の105億5,600万ドルだった。対日貿易収支は10億1,300万ドルで3年連続の黒字となり、黒字額は前年比5.5倍となった。

輸出を品目別に見ると、全体の36.8%を占める電気機器・同部品は前年比7.8%増の42億5,400万ドルとなり、前年の減少から増加に転じた。うち、電気絶縁体・ケーブルは4.7%増の14億2,300万ドル、集積回路は25.1%増の12億4,900万ドルと前年の減少から回復した。また、変圧器(63.4%増、2億8,700万ドル)、テレビ受信機(4.7倍、2億7,200万ドル)が大きく伸びた。一方、半導体デバイスは24.3%減の1億2,800万ドルだった。また、一般機械は9.4%増の5億6,300万ドルで増加に転じ、うち印刷機は32.2%増の1億8,800万ドルだった。このほか、果実・ナッツが43.0%増の11億3,300万ドル、鉱石、スラグおよび灰が45.8%増の7億100万ドル、光学・精密・医療機器などが21.3%増の4億100万ドルと大きく増加した。また、プラスチック・同製品は4.2%増の6億6,700万ドル、船舶および浮体構造物は2.8%増の5億3,800万ドル、ニッケル・同製品は9.0%増の4億1,300万ドルと堅調に増加した。一方、車両(鉄道以外)・同部品(5.1%減、2億600万ドル)や鉄鋼製品(4.8%減、1億3,900万ドル)は前年を下回った。

輸入では、電気機器・同部品が最も多い24.6%を占めたものの、前年比2.4%減の26億100万ドルだった。うち、集積回路は1.2%増の12億7,800万ドル、電気絶縁体・ケーブルは12.4%増の1億6,100万ドル、半導体デバイスは22.8%増の1億4,800万ドルだった。一方、電気回路の開閉・保護・接続用機器(3.6%減、1億9,200万ドル)や印刷回路(8.4%減、1億8,400万ドル)はいずれも減少した。これに次ぐ一般機械は9.2%増の16億200万ドルで、タイプライターおよびその他事務機器・同部品、付属品が28.6%増の3億9,800万ドルと大きく増加した。一方、機械類(固有の機能を有するものに限る)は11.8%減の1億3,300万ドルと減少した。また、印刷機は1.2%増の1億1,700万ドルと微増した。車両(鉄道以外)・同部品は14億1,200万ドルで17.7%増だった。特に、乗用車(20.1%増、4億6,600万ドル)、バス(16.6%増、3億7,900万ドル)、貨物自動車(21.0%増、3億7,900万ドル)、自動車部品・付属品(10.9%増、1億700万ドル)が好調だった。そのほか、プラスチック・同製品(22.6%増、6億9,400万ドル)や銅・同製品(23.4%増、2億3,300万ドル)、無機化学品(58.1%増、1億6,600万ドル)などが大きく伸びた。一方、鉄鋼(3.5%減、4億9,300万ドル)や、鉄鋼製品(15.5%減、2億4,600万ドル)、有機化学品(14.8%減、1億6,800万ドル)が減少した。

表6-1 フィリピンの対日主要品目別輸出(FOB)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機器・同部品 3,944 4,254 36.8 7.8
電気絶縁体・ケーブル 1,359 1,423 12.3 4.7
集積回路 998 1,249 10.8 25.1
変圧器 176 287 2.5 63.4
テレビ受信機 58 272 2.3 370.7
電気回路の開閉・保護・接続用機器 224 215 1.9 △ 3.7
半導体デバイス 169 128 1.1 △ 24.3
果実・ナッツ 792 1,133 9.8 43.0
鉱石、スラグおよび灰 480 701 6.1 45.8
プラスチック・同製品 640 667 5.8 4.2
一般機械 515 563 4.9 9.4
印刷機 142 188 1.6 32.2
船舶および浮体構造物 524 538 4.7 2.8
ニッケル・同製品 379 413 3.6 9.0
光学・精密・医療機器等 331 401 3.5 21.3
木材および木製品、木炭 210 228 2.0 8.5
車両(鉄道以外)・同部品 217 206 1.8 △ 5.1
アルミニウム・同製品 191 206 1.8 7.5
石、石膏、セメント、アスベスト、雲母等物品 128 161 1.4 25.8
卑金属製品 106 157 1.4 48.2
鉄鋼製品 146 139 1.2 △ 4.8
合計(その他含む) 10,254 11,569 100.0 12.8

〔出所〕Global Trade Atlas〔原データはフィリピン統計庁(PSA)〕

表6-2 フィリピンの対日主要品目別輸入(CIF)〔通関ベース〕(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機器・同部品 2,664 2,601 24.6 △ 2.4
集積回路 1,263 1,278 12.1 1.2
電気回路の開閉・保護・接続用機器 199 192 1.8 △ 3.6
印刷回路 201 184 1.7 △ 8.4
電気絶縁体・ケーブル 143 161 1.5 12.4
半導体デバイス 121 148 1.4 22.8
一般機械 1,467 1,602 15.2 9.2
タイプライターおよびその他事務機器・同部品、付属品 310 398 3.8 28.6
機械類(固有の機能を有するものに限る) 150 133 1.3 △ 11.8
印刷機 115 117 1.1 1.2
車両(鉄道以外)・同部品 1,199 1,412 13.4 17.7
乗用車 388 466 4.4 20.1
バス 325 379 3.6 16.6
貨物自動車 313 379 3.6 21.0
自動車部品・付属品 97 107 1.0 10.9
プラスチック・同製品 566 694 6.6 22.6
鉄鋼 511 493 4.7 △ 3.5
鉱物性燃料・鉱物油 463 490 4.6 5.8
光学・精密・医療機器等 256 274 2.6 7.0
鉄鋼製品 292 246 2.3 △ 15.5
銅・同製品 189 233 2.2 23.4
その他化学製品 117 174 1.7 48.9
有機化学品 197 168 1.6 △ 14.8
無機化学品 105 166 1.6 58.1
合計(その他含む) 10,069 10,556 100.0 4.8

〔出所〕Global Trade Atlas〔原データはフィリピン統計庁(PSA)〕

日本からの直接投資は業種を問わず拡張投資が中心

2025年の日本からフィリピンへの対内直接投資(認可ベース)は前年比18.7%増の340億3,200万ペソで、シンガポール、オランダに次いで3位となった。製造業・非製造業ともに既存拠点の拡張投資が中心となった一方、非製造業ではフィリピンの人口増加や経済成長を見据えた新規投資も相次いだ。

製造業では、東京ガスが2025年2月、ルソン島で液化天然ガス(LNG)基地を所有・運営するエフジェンLNG(FGEN LNG)の株式の20%を取得した。同社はこれまで、地場企業ファーストジェン(First Gen、エフジェンLNGの親会社)と同基地の開発・建設を進めてきた。また、富士フイルムは7月、既存拠点内に複合機の再生機を製造する新拠点「サーキュラーマニュファクチャリングセンター(Circular Manufacturing Center)」を開設した。同拠点は2026年8月に本格稼働を開始し、日本国内で確立した製造プロセスと既存拠点で確立した技術力や人材基盤を活用する。再生機はアジア太平洋地域で回収した使用済み複合機を分解して製造するもので、部品リユース率は重量比84%を実現するという。また、通信事業会社のIPSは2025年7月、1億3,100万ドルを投じ、フィリピン、日本、シンガポールを結ぶ国際海底ケーブルの共同建設に参画すると発表し、2028年3月の商用利用を目指している。

非製造業では、ジンズ・ホールディングスが2025年5月、資本金約2億6,400万ペソでアイウエアとレンズの製造販売を手がける100%子会社ジンズ・フィリピン(JINS PHILIPPINES)を設立した。同社は2018年4月に進出し、地場企業スーエン・コーポレーション(Suyen Corporation)とのフランチャイズ契約で国内に8店舗を構える。新会社設立で経営権や従業員を移転し、関与を深めていく方針だ。また、野村不動産は7月、マニラ首都圏マンダルヨン地区の大型複合開発「ザ・オブザーバトリー(The Observatory)」内で地上36階・地下6階建ての住宅棟を6月に着工したと発表した。さらに、ABCマートは7月、地場企業ソナック(SONAK)と合弁会社を設立し、マニラ首都圏タギッグ市ボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)に1号店と2号店を出店するとした。さらに、ウェザーニューズは2025年11月、フィリピン気象局(PAGASA)と気象分野における相互協力に関する協定を締結した。自然災害による被害が深刻なフィリピンにおいて、台風や豪雨に関する人工知能(AI)予測情報の提供、米国のグーグル(Google)の洪水予測モデルやサイクロン予測モデルの活用などを進めるとしている。

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 5.5 5.7 4.4
1人当たりGDP (米ドル) 3,905 4,089 4,270
消費者物価上昇率 (%) 6.0 3.2 1.7
失業率 (%) 4.4 3.8 4.2
貿易収支 (100万米ドル) △ 52,592 △ 54,328 △ 49,722
経常収支 (100万米ドル) △ 12,387 △ 18,565 △ 16,291
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 93,196 95,251 92,256
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 125,394 137,628 147,651
為替レート (1米ドルにつき、ペソ、期中平均) 55.6 57.3 57.5

〔注〕
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)

〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支:フィリピン統計庁(PSA)
経常収支、対外債務残高(グロス):フィリピン中央銀行(BSP)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF