備考

最終更新日:2023年11月01日

備考

その他の留意事項としては、鉱業への外資参入は合憲、2004年通関業者法の施行延期、遠隔地・未発展地域における電力供給事業への参画に関するガイドライン、2009年不動産投資信託(REIT)法施行細則、写真健康被害警告法、中小零細企業の発展を通じた雇用創出と包括的な成長を促進する法律、自動車購入における消費者保護の強化法(「フィリピン・レモン法」)、フィリピン競争法、労働安全衛生基準遵守強化及びその違反につき罰則を定める法律の施行細則の成立などがある。

鉱業への外資参入は合憲

最高裁判所は2004年12月1日、政府が外資系企業と、鉱物、石油、石油以外の鉱物油に関する探査、開発、利用を目的とした請負契約を結ぶことを合憲とする判決を下した。
その根拠として、最高裁は1987年憲法の第12条第2項を挙げ(注)、「技術支援または財政支援に伴う契約」という表記は、外資系企業による投資や管理運営も包含する、との見解を示した。
なお、最高裁判所は、2014年4月21日付判決(Narra Nickel et al, v. Redmont、G.R. No.195580)にて、鉱業への外資参入は合憲であるが、フィリピン資本60%/外国資本40%という外国資本の上限規制は適用されると判示した。

(注)「大統領は、国家の経済成長と国民の福祉に実質的に貢献する、鉱物、石油、石油以外の鉱物油を対象とした大規模の探査、開発、利用に関する技術援助もしくは財政援助を含む契約を、法律が規定する一般取引条件に基づいて、外国資本企業と締結することができる。かかる契約締結の際には、国は国内の科学技術資源の開発利用を推進するものとする」(1987年憲法第12条第2項より抜粋)

2004年通関業者法の施行延期

共和国法第9280号(2004年通関業者法)の施行延期を受け、関税局は覚書第41号(2004年12月28日付)を発令し、新法施行までは、認可を受けた税関貨物取扱者が業務を継続できることとなった。
新法の施行が遅れたのは、税関貨物取扱業務をライセンス保有業者に制限することに対する反対が相次いだためで、新法が施行された場合には大量失業、会社倒産、通関手続きの遅滞などが生じることが懸念された。
その後、2009年12月15日に共和国法第9280号(2004年通関業者法)の一部を修正する共和国法第9853号が成立し、100万ペソ以上の払込済資本金を保有する会社も、少なくとも1人の通関業者を雇用していれば、税関貨物取扱業務に従事することが認められるようになった。現在は、共和国法第9280号(2004年通関業者法)およびその一部を修正する共和国法第9853号ともに施行されている。

遠隔地・未発展地域における電力供給事業への参画に関するガイドライン

エネルギー省は2005年12月12日付で、遠隔地や未発展地域(unviable area)での電力供給事業に参画する際のガイドラインを定め(同省回覧第2005-12-11号)、参画企業の選定方法や、参画企業が同事業に対して負う責任等を規定した。詳細は同回覧を参照。

詳細:エネルギー省回覧第2005-12-11号 "DEPARTMENT CIRCULAR NO.2005-12-011PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(975KB)"

2009年不動産投資信託(REIT)法施行細則

(共和国法第9856号施行細則、2010年5月13日公布、2010年6月10日施行)
REITの発行を促進するために作られたREIT法の施行細則。

  1. REITは通常の株式とは異なる種類の証券として会社定款に表示される。
  2. REITは、ファンドマネジャー規定およびプロパティマネジャー規定に委ねられている事項を除き、会社法のもとで会社に認められるすべての権限およびすべての機能を有する。

写真健康被害警告法

2014年7月15日、国民の健康権を保護し促進するという国の政策に則り、写真健康被害警告法(共和国法第10643号)が公布された。同法は、たばこ製品に、写真を用いた健康被害警告を表示することで国民の健康への意識を高揚し、不正な取引や基準を満たさないたばこ製品から消費者を守ることを目的として定められた。
これにより、フィリピンにおいて製造されるか、外国から輸入されるすべてのたばこ製品の添付文書を含むパッケージやラベルには、はっきりと目立つフルカラーで、定められた写真を使用した健康被害警告を行わなければならなくなった。同警告は、写真健康被害警告法の規定により、警告写真と当該写真に関連する警告文の二つによって構成される。

また、輸出されるたばこ製品には、カートンおよび小売用包装の1面に、次の表示および情報を掲載しなければならない。

  • For sale only in~”(~に対してのみ販売)
  • Made under authority of~”(~の認可に基づき製造)
  • たばこ製品を輸出する国内製造者に内国歳入庁(Bureau of Internal Revenue:BIR)から与えられた税番号
  • たばこ製品が最終的に販売される国において定められた表示

さらに、工場から出荷され、またはフィリピン税関管轄域内に輸入されるいかなるたばこのパッケージにも、“low tar”(低タール)、“light”(軽)、“ultra-light”(超軽)、“mild”(マイルド)、 “extra”(超)、 “ultra”(極)またはこれらに類似する用語によって、あたかもより健康的かつ安全である、または害が少ないと主張すること、もしくは消費者に誤認を与えるような表示をしてはならない。

なお、写真健康被害警告法(共和国法第10643号)の施行規則が、2016年2月9日付で制定され、同施行規則において、たばこ製品への表示が義務付けられる写真および情報の詳細、罰金などが規定されている。

中小零細企業の発展を通じた雇用創出と包括的な成長を促進する法律

2014年7月15日、中小零細企業(Micro, Small and Medium Enterprise:MSMEs)の発展を通じた雇用創出と包括的な成長を促進する法律(共和国法第10644号)が公布された。
Go Negosyo”法と名付けられた(”Negosyo”という用語は「値交渉」という日本語からもたらされたとされる)この法律は、雇用創出、生産、貿易を促進する中小零細企業の設立を奨励することにより、国家の発展、包括的な成長、貧困の削減という政策を推し進めることを目的として制定された。同法に基づき、各州、市、町村に設立された“Negosyo”センターが、その権限の範囲内で中小零細企業のビジネスを促進し、それらのサービスに中小零細企業が容易にアクセスできるようにする責務を担う。

また同法では、MSMEsの設立を容易にするため、MSMEsの営業登録に関する次のガイドラインを提示している。

  1. すべての“Negosyo”センターにおいて、貿易産業省(Department of Trade and Industry:DTI)によって開発された統一の簡易な営業登録フォームが利用可能となる。この登録フォームは、MSMEsが営業登録をするにあたって必要な項目がすべて網羅されている。DTIは同登録フォームの定期的な更新やメンテナンスを担う。
  2. 各市町村の“Negosyo”センターは、地方自治体その他関連する団体と協力して、MSMEsの営業登録申請のプロセスを容易にすべくサポートする。
  3. 申請に関して許認可を出す事務所が、15日以内に当該許認可を出すことができなかった場合、当該申請は1年間分の許認可を受けたものとみなす。ただし、当該事務所は、MSMEsの申請後30日以内に当該申請が必要とされた資格要件を満たさないと判断した場合には、当該許認可を無効とすることができる。

自動車購入における消費者保護の強化法(「フィリピン・レモン法」)

共和国法No.10642(通称「フィリピン・レモン法」)は、自動車購入における消費者保護の促進を目的に制定された。この法律は、フィリピン国内で購入された新車で、消費者の手に渡ってから12カ月以内もしくは2万キロメートル走行するまでのいずれか早い時期までに、消費者から自動車製造業者もしくは販売店に対して基準やスペックに適合していない旨の報告がなされた場合に適用される。

フィリピン競争法

2015年7月21日、共和国法第10667号(フィリピン競争法)が成立した。自由かつ公正な競争により経済を発展させることを目的とする同法は、第6条で公正取引委員会に相当するフィリピン競争委員会の設立、第14条で不公正な協定の禁止、第15条では支配的な地位の乱用の禁止について規定している。また、第17条および第20条においては、合併および買収に際して通知義務と禁止される合併および買収について規定している。フィリピン競争委員会は2015年1月27日付で5人の委員が選任されることで設立され、施行規則は2016年5月31日付で制定された。またフィリピン競争委員会は、2017年9月11日付でフィリピン競争委員会の捜査等について規定した手続規則を、2017年11月9日付で合併および買収の通知手続等について規定した規則を制定した。

労働安全衛生基準遵守強化及びその違反につき罰則を定める法律の施行細則

2018年8月17日、共和国法第11058号(労働安全衛生基準遵守強化及びその違反につき罰則を定める法律)が成立した。外資企業含む国内全企業を対象に、職場の安全に係るトレーニング、安全対策設備・標識の導入等について規定。違反者には1日当たり10万ペソ以下の罰則が科せられる。詳細を定めた施行細則(IRR)は以下を参照。

詳細:共和国法第11058号施行細則(労働安全衛生基準遵守強化及びその違反につき罰則を定める法律の施行細則)(ジェトロ仮訳)PDFファイル(526KB)

PCABによる建設業規制を無効と判断した最高裁判決について

最高裁判所は、2020年3月10日付判決(PCAB v. Manila Water Company, Inc.、G.R. No.217590)にて、マニラ・ウォーターがPCAB(フィリピン建設業許可委員会)に対し、選定した外資系企業に一般ライセンスの発行を申請したところ、建築業法の施行規則が定めた国籍要件(フィリピン資本が60%以上であること)に違反する等として拒絶されたためこれを争った訴訟において、当該施行規則の規定が法律上の根拠を欠くとして、マニラ・ウォーターの主張を認める判決を下した。
現在本判決についてはPCABから再考を求める申し立てが行われているため確定していないが、確定した場合は当該国籍要件が撤廃される可能性がある。

マイニラッド・ウォーターサービス社についての最高裁判決について

最高裁判所は、2021年12月7日付判決(Maynilad Water Services Inc.v. NWRB et. al, G.R. No. 181764)にて、水道コンセッション事業者であるマニラウォーター社とマイニラッド社を公共事業者と宣言した。水道コンセッション事業者は、コンセッション契約の期間中、法人所得税を営業費用として回収することはできないとされた。また、公共事業に使用される施設・設備の「所有」は100%外資であることも可能であるのに対して、「運営」については外資規制の対象となることが改めて示された。
なお、公共サービス法の改正により、一定の公共事業(空港、鉄道、高速道路、電気通信等)を外国資本が100%保有することが認められているが、他方で水道事業等、外国資本の参加が40%に制限されている公共事業もある。