技術・工業および知的財産権供与に関わる制度
最終更新日:2022年11月18日
- 最近の制度変更
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2023年3月14日
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2019年12月26日
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2019年6月21日
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技術・工業および知的財産権供与に関わる制度
知的財産権保護関連の法律の整備は進みつつある。ミャンマーでは長らく知的所有権保護に関する法制度の整備は十分といえず、知的財産権に関する法律は著作権法(1914年)を除いて存在しなかった。しかし、2019年1月30日に商標法と意匠法、同年3月11日に特許法が成立し、同年5月24日に著作権法についても約100年ぶりに改正され、新著作権法が成立した。
しかし、各法の施行時期は未だ定められていない。同法の施行までは、原則として、商標、特許、意匠の登録に関して従前通り証書登記法に従うこととなる。ただし、商標法についてはソフトオープニング期間が2020年10月1日より始まっており、既存商標については商標法に基づく申請が可能である。2022年7月1日、商業省は、2019年商標法に基づく出願のための様式を規定した通達第44/2022号を公布した。
管轄官庁は商業省。
2020年10月に教育省から商業省へ移管された。消費者局の下部組織としての位置付けであるが、商標法施行日までには知財局となる予定である。
主な知的財産権保護関連の法律は次のとおり。
- 商標法(Trademark Law)
- 特許法(Patent Law)
- 意匠法(Industrial Design Law)
- 著作権法(Copyright Law)
- 憲法(Constitution of the Republic of the Union of Myanmar (2008))
- 刑法(Penal Code)
- 証書登記法(Registration of Deeds Law)
- 商品標章法(Merchandise Marks Act)
- 海上関税法(Sea Customs Act)
- 特別救済法(Specific Relief Act)
- 映画法(The Motion Picture Law)
- テレビ・ビデオ法(Television and Video Law)
- コンピュータ科学技術法(Computer Science Development Law)
- 科学技術開発法(Science and Technology Development Law)
- 科学技術振興法(Science, Technology and Innovation Law)
- 資金洗浄禁止法(Anti- Money Laundering Law)
ミャンマーを含む後発開発途上国は、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)により、2006年12月1日までに各種知財関連法を整備することが求められていたが、2013年7月1日まで猶予期間が認められていた。その後、2013年6月11日にWTOは猶予期間を2021年7月1日まで延期することを決定した。
ミャンマー政府も知的財産権に関する法整備の必要性は認識していたため積極的に取り組んだ結果、2018年2月に商標法、特許法、意匠法、著作権法の法案が上院を通過し、2019年上半期に相次いで成立した。これらの法律の施行時期は未定である、かつ、知的財産庁設立の目途もまだ立っていない。
知的財産権保護に関する法律の整備状況は前記のとおりだが、保護したい標章、発明、意匠などについて、一連の法の施行までは従前通り、証書登記法に基づき登記することとなる。商標、特許、意匠の証書登記法に基づく登記とは、登記室(Registration office)において登記し、新聞等で公告することにより、権利侵害があった場合に一定の保護が与えられるというものである。また、商標については、刑法上、商標を侵害した者に対する刑罰も規定されている。
商標法
2019年1月30日成立。2020年10月1日に、ソフトオープニング期間と呼ばれる優先措置期間が開始され、登記法(2018年3月20日に証書登記法が成立し、以後は証書登記法)に基づき登記された商標の所有者またはミャンマー連邦内の市場において実際に使用されている未登記の商標の所有者のみ出願が可能である。
商業省より2020年8月28日付けで商標法に基づく登録申請に関する命令が発布され、当該命令によれば、過去に契約書等登記所で登記済みであること、または登記していないが、当該商標を連邦内市場で使用していたこともしくは現在に至るまで当該商標を自分1人だけが使用していることの事実として、以下のいずれかの資料などを立証書類として提出することができる。
- 過去に契約書等登記所で登記された標章
- 契約書等登記所で登記された登記証書(正式複写)
- 新聞広告または一般に告示したことの証明
- 連邦内の市場において実際に使用したことの証明
- 自分の商標を広告したことの証明
- 納税の領収書または経費に関する領収書
- 申請人が、過去に契約書等登記所で登記した商標所有者でない場合は、商標所有者から譲渡したまたは所有者名義を変更したことの証明
- その他の証明
なお、ソフトオープニング期間がいつまでかは公式には発表されておらず、2022年11月現在はまだソフトオープニング期間が継続している。その後は正式に商標法が施行され、すべての商標について出願が可能となる予定である。出願料について、2022年11月18日時点では公表されていない。また、原則としてオンラインでの出願となり、オンライン出願のためのIDおよびパスワードは日系を含む現地に所在する法律事務所のみに付与されている。
2022年7月1日、商業省は、2019年商標法に基づく出願のための様式を規定した通達第44/2022号を公布した。
個人名、文字、数字、図形要素、色の組み合わせまたはそれらを組み合わせた商標、サービスマーク、団体標章および証明商標を保護する。地理的表示も保護される。なお、登記法で登記済みの商標についても商標法に基づく保護を受けるためには、商標法に基づき登録申請を行う必要がある。
商標登録出願について所定の要件は次のとおり。
- 提出書類
- 登録出願申請書(英語またはミャンマー語)
- 出願人による署名の付された翻訳文(登録官から要求された場合)
- 法人の登記番号、種類および設立国(法人が出願する場合)
- 優先権証明書および優先権の存在を示す確たる証拠(優先権を主張する場合)
- 博覧会出品を示す確たる証拠(博覧会出品の仮保護を主張する場合)
- 登記証(ミャンマーの登記室で既に登記済みの場合)
※その他機関および本局により随時前記a.~f.以外の書類も要求される場合がある。
- 必要情報
- 申請をする個人または法人の氏名または名称および住所
- 登記番号、企業種別、国名(申請者が企業の場合)
- 代理人の氏名または名称および住所(出願人が代理人を任命した場合)
- 商標登録を受けようとする商標の明確かつ詳細な説明
- 国際分類に基づいた、指定商品または指定役務並びに商品および役務の区分
以上の提出をもって申請し、本登録出願申請を本局が受領した日が登録出願申請日とみなされる。
- 存続期間
商標登録の存続期間は、出願申請日から10年間であり、期間満了後はその都度10年間更新することができる。
登録期間を延長するには、商標権所有者による次の手続きが必要とされている。- 登録期間満了前日までの6カ月以内に所定の料金を支払った上で、登録期間の更新申請をする。
- 登録期間満了後も、期間満了日経過後6カ月の猶予期間内であれば所定の登録料と延滞料を支払うことで登録期間の更新申請をすることができる。
特許法
2019年3月11日成立。発明を保護するための知的財産権。発明の登録出願には「新規性」「進歩性」「産業上利用可能であること」が求められる。特許権者・発明者の権利と利益の保護や、技術革新の促進、特許権者または権利所有者による特許の誤用や不適切な取引操作の防止を目的としている。
特許権の設定登録出願について所定の要件は次のとおり。
- 提出書類
- 登録出願申請書(英語またはミャンマー語)
- 出願人による署名の付された翻訳文(登録官から要求された場合)
- 法人の登記番号、種類、設立国(法人が出願する場合)
- 優先権証明書、優先権の存在を示す確たる証拠(優先権を主張する場合)
- 博覧会出品を示す確たる証拠(博覧会出品の仮保護を主張する場合)
- 共同出願人の同意書(共同出願人の1人が他の共同出願人を代表して願書に署名した場合)
- 宣言書(伝統的知識の合法的使用、または当該資産の直接的/間接的な使用である場合)
- 公開請求(早期公開を求める場合)
- 明細書
- 発明の図面(任意)
※その他機関および本局により随時前記a.~j.以外の書類も要求される場合がある。
- 必要情報
- 申請をする個人/法人、発明者の氏名/名称、国籍、住所
- 登記番号、企業種別、国名(申請者が企業の場合)
- 代理人の氏名/名称、住所(出願人が代理人を任命した場合)
- 発明の明確かつ詳細な説明
- 発明の名称、要約
以上の提出をもって申請し、特許出願申請を本局が受領した日が登録出願申請日とみなされる。
- 存続期間
特許権の存続期間は出願申請日から20年間。特許権/特許出願を維持するためには、所定の年次手数料を以下の手順に従い納付する必要がある。- 次の年の登録出願申請日までの6カ月以内に所定の年次手数料を支払う。
- 次の年の登録出願申請日以降でも6カ月の猶予期間内であれば所定の年次手数料と延滞料を支払うことで権利が維持できる。
意匠法
2019年1月30日成立。工業製品/手工芸品の外観や特徴を保護するための知的財産権。意匠権利者と創作者の権利・利益の保護、産業の発展・技術開発、技術の普及促進などを目的とする。
意匠登録について所定の要件は次のとおり。
- 提出書類
- 登録出願申請書(英語またはミャンマー語)
- 出願人による署名の付された翻訳文(登録官から要求された場合)
- 法人の登記番号、種類、設立国(法人が出願する場合)
- 優先権証明書、優先権の存在を示す確たる証拠(優先権を主張する場合)
- 博覧会出品を示す確たる証拠(博覧会出品の仮保護を主張する場合)
- 登記証(ミャンマーの登記室で既に登記済みの場合)
※その他機関や本局により、前記a.~f.以外の書類を随時要求される場合がある。
- 必要情報
- 申請をする個人/法人の氏名/名称、住所
- 登記番号、企業種別、国名(申請者が企業の場合)
- 代理人の氏名/名称、住所(出願人が代理人を任命した場合)
- 意匠の明確かつ詳細な説明
- 意匠が施されている、または表現されている製品の説明
以上の提出をもって申請し、本登録出願申請を本局が受領した日が登録出願申請日とみなされる。
※ロカルノ協定に定める意匠の国際分類において同一分類に該当する複数の意匠権を申請しようとする場合、単一の申請書を提出することができる。 - 存続期間
意匠の登録期間は出願申請日から5年間。最大2期まで更新が可能であり、期間はそれぞれ5年間と定められている。登録期間の延長を望む場合、意匠権所有者による次の手続きが必要とされている。
- 登録期間満了前日までの6カ月以内に所定の料金を支払った上で、登録期間の更新申請をする。
- 登録期間満了後も、期間満了日経過後6カ月の猶予期間内であれば所定の登録料と延滞料を支払うことで登録期間の更新申請をすることができる。
著作権法
2019年3月11日成立。著作者などの権利と隣接する権利を定め、あらゆる創作物について著作者等の権利の保護を図ることが明記されている。保護期間は著作者などの死後50年間と定められており、その間に保護される著作者などの経済的権利や著作者人格権などについても規定されている。
著作権は、文学・芸術作品の生産基準の進展・促進、原作者・著作権所有者の著作権の保護、実演家・蓄音機製作者・放送事業者の権利の保護、文化遺産の表現の保護と、これらの支援を目的としている。通常、同権利は創作と同時に生まれるが、保護をより確かにするために申請登録することも可能である。ただし、申請時の提出書類などの詳細については、まだ定められていない。
本著作権法で保護が認められる主なものは次のとおり。
書籍、パンフレット、詩、小説、記事、コンピュータ・プログラム、スピーチ、講演、演説、説法、演劇、歌劇、パントマイム、振付、楽曲、視聴覚作品、建築作品、描画、絵画、彫刻、装飾品、木工、陶芸、陶器、宝石、彫金、手芸、古代衣装、民族衣装、リトグラフ、製織作品、刺繍、写真、地理・地形・建築・科学に関連するイラスト、地図など。
また、二次的著作物についても一定の要件を満たすことで保護される。