外資に関する規制
最終更新日:2024年11月21日
規制業種・禁止業種
2002年から「貿易業(Trading:貿易業を含む卸売業、小売業)」として、外国企業(注1)の企業登記が凍結されていた。
しかし、2018年5月9日、商業省通達により、外資100%の外国企業およびミャンマー企業との外資合弁企業に一定分野において貿易業の参入を認め、外資規制を緩和した。
外国企業の卸売・小売
規制緩和により、外国企業であっても、肥料、種子、殺虫剤、医療機器、建設資材、農業用機材等において貿易業が認められるようになり、2019年5月21日付商業省大臣官房通達第23号により、輸出入業者登録証を取得し本通達の発布日から90日以内に卸売または小売の事業登録を申請しなければならないと規定された。また、ミャンマー企業との外資合弁企業に関して、新車ショールーム事業を行うことを認める通達が2015年から引き続き2021年にも発布された(2021年3月8日付商業省大臣官房通達第24号)。
2017年4月10日に投資法に基づく投資規制業種通達(MIC Notification No.15/2017, List of Restricted Investment Activities)(390KB)が発布され、当該通達にて、商業省の承認が必要な投資事業として小売(Retailing Services)および卸売(Wholesale Services)が明記され、商業省の承認を得れば外国企業であっても小売または卸売事業への参入が認められる。ただし、外国投資家による実施が許されない投資活動として、「店舗面積が1万平方フィートまたは929平方メートル未満のミニマート、コンビニエンスストア」と明記されており、これらの事業は外国企業の参入が認められない。(注2)
なお、CMP企業(注3)および製造業者の場合は、従来から原材料、加工品等の輸出入は可能である。サービス業の場合も、2018年12月21日に、外国企業、外国企業の支店、国際非政府組織が事務用品、関連サービス用具を輸入することができる旨を明示する通知が公布された(2018年12月21日付商業省大臣官房通達第57号)。前述の「貿易業」はいわゆる物品貿易取引を対象としたものである。
しかし、長年、貿易業の全面的な外資への開放は行われていなかった。そのような中、2018年5月9日に商業省は卸売および小売事業を外国企業に開放する内容の通達(商業省2018年第25号通達)を発布した。当該通達は一定の品目に限らず、全面的に卸売および小売事業を外国企業に認めた点、および、どのような基準で許可が認められるかを明確化した点に意義がある。ただし、当該通達においても、制限・禁止品目は除外されており、かつ、外資が含まれている企業は929平方メートル未満の売り場のミニマートおよびコンビニエンスストアを運営することはできない。
また、2018年7月26日に商業省はNewsletter 2018年2号および3号を発布し、初期投資の定義や具体的にどのような手続きで申請を行う必要があるかなどの詳細について規定している。
2021年11月12日に商業省は、卸売および小売業において許可される優先商品分類の追加リストを発行し、以下25品目が許可されている。当該Newsletterにおいて、Newsletter2018年3号が廃止された(2021年11月12日付商業省大臣官房通達第19号)。
- 日用品(衣服、時計、化粧品を含む)
- 食料品には以下が含まれる。
- 農産物(国家の要件に基づき許可されていない製品を除く)
- 水産物
- 動物製品
- 既製食品
- 各種ソフトドリンク
- 国内で製造された飲料
- 食品の原材料
- 家庭製品(磁器、陶器、ガラス、ガラス製品を含む)
- キッチン道具
- 医薬品および関連物質、病院設備
- 動物用食品および医薬品、動物用食品の原材料
- 文具
- 家具
- スポーツ用品
- 通信デバイス(カメラおよび電話を含む)
- 電子装置
- 建設機器および工具
- 電子機器
- 製造業界で使用される化学薬品
- 産業機械および工業原料
- 種子、農業インプットおよび農業機器
- 農機具
- 各種機械および器具
- 各種自転車
- 各種バイクおよび器具
- 自動車および機械のスペアパーツおよび器具
- おもちゃ
- 家庭用装飾品(花および植物を含む)
- 各種お土産および手工芸品
- 美術、楽器および電化製品(骨董品は除く)
なお、2019年5月21日、商業省は、2018年5月9日付商業省大臣官房通達第25号以前の通達に基づき先行して[1]農業用の肥料、[2]種まき用の種子、[3]殺虫剤・駆除剤、[4]医療用機器、[5]建設資材、[6]農業用機械および機器の6分野で輸入または販売業を行っている外国会社に対しても2018年5月9日付商業省大臣官房通達第25号に基づく卸売および/または小売事業の登録が必要である旨の通達を発布した(2019年5月21日付商業省通達第23号)。
国家統治評議会(SAC)による2023年7月4日付通知により、オンライン販売(EC)が必須物資・サービス法に基づく「必須サービス」と宣言され、商業省にオンライン販売事業を禁止、規制、監督、防止、および対処する命令を出す権限が付与された。同月21日、商業省は3つの通知を発布し、オンライン販売業登録証明書の手続きを規定し、登録証明書を持たずにオンライン販売業を営む者は、6カ月後から必須物資サービス法に基づき起訴されると規定された。
これを受け2023年10月2日、EC事業者向けオンライン登録制度の運用が始まった。各EC事業者はオンライン登録システム「eComReg」からの登録が必要となり、登録者は事業名やロゴ、警察署からの推薦状等の提出および登録料4,000チャット(約280円)を支払う。また、12月末までに登録した事業者の登録料は免除される。なお、2024年1月1日以降、未登録のまま事業を行っていることが発覚した場合、処分の対象となる。事業者のウェブサイト等で価格を表示せず利用者に個別に価格を提示することは罰則の対象となる旨商業省が通達を行った。
2024年6月24日、必須物資・サービス法に基づき、ミャンマー・コメ連盟に対してコメの統制価格の通達がなされた。
(注1)新会社法下では、外国資本が35%以下の会社はミャンマー企業として扱われる。しかし、商業省2018年第25号通達においては、外資比率の基準を80%で区分しており、35%は基準とされていない。
(注2)次のジェトロの記事を参照。
「卸・小売りの外資開放に向けた動きが加速」2018年8月6日
「卸・小売りに100%外資での投資を認可」2018年5月22日
(注3)CMP(Cutting, Making and Packingの略)企業とは、委託加工業者。輸入した原材料をすべて加工して輸出したうえ加工賃収入を得る業態で、一般的に縫製業等に多い。原材料は免税で輸入が可能。
国営企業法に基づき民間参入が制限される分野
国営企業法において、ミャンマー政府から認められた場合を除き、原則として、次の12分野への民間企業の参入は認められない。
- チーク材の伐採とその販売・輸出
- 家庭消費用薪材を除くすべての植林および森林管理
- 石油・天然ガスの採掘・販売
- 真珠・ひすい、その他宝石の採掘・輸出
- 魚・エビの養殖
- 郵便・通信事業
- 航空・鉄道事業
- 銀行・保険事業
- ラジオ・テレビ放送事業
- 金属の採掘・精錬と輸出
- 発電事業
- 治安・国防上必要な産品の生産
投資法に基づき制限が課されている分野
2016年10月5日に公布された投資法(Myanmar Investment Law)において、禁止または制限される投資活動が次のとおり規定されている。
- 禁止される投資(投資法41条)
- ミャンマー国に危険なまたは有害な廃棄物を持ち込む、またはもたらす可能性のある投資
- 研究開発の目的を除き、栽培や品種改良のための技術、薬品、植物や動物の種類または物品などで、検査中もしくは未認可のものをミャンマー国に持ち込む可能性のある投資
- ミャンマー国内の各民族の伝統的な文化または慣習に影響を与える可能性のある投資
- 公衆に危害を加える可能性のある投資
- 自然環境または生態系に重大な影響を与える可能性のある投資
- 既存の法律で禁止されている物品の製造またはサービスの提供を伴う投資
- 制限される投資(投資法42条)
- 連邦政府のみが実施する投資
- 外国投資家による実施が許されない投資
- ミャンマー国民またはミャンマー国民が有する組織との間の合弁でのみ外国投資が認められる投資
- 関連省庁からの承認を受けることにより許される投資
ミャンマー投資委員会(MIC)通達
2017年4月10日に投資法に基づく投資規制業種通達(MIC Notification No.15/2017, List of Restricted Investment Activities)は、投資法42条で規定されている制限される投資の詳細を規定している。具体的には、次のように規定され、業種ごとに国際的な分類コード(ISIC、CPC)が付されている。
- 「連邦政府のみが実施するものとされている投資活動」9業種
- 「外国投資家による実施が許されない投資活動」12業種
- 「ミャンマー国民またはミャンマー国民が有する事業体との間の合弁投資の形でのみ外国投資が認められる投資活動」22業種
- 「関連省庁からの承認を受けることにより許される投資活動」126業種の合計169業種
投資規制業種通達の末尾に3つの注記が記載されている。
- 関連省庁が規定する法律による投資規制がある場合にはそれに従う。
- 銀行、保険および金融業については、関連省庁の計画により許可される。
- 輸出入は商業省の方針に従う。
したがって、投資規制業種通達に記載がなくとも、当該3つの場合には規制を受ける可能性があることに留意が必要となる。
また、その後次のような通達が発布されている。
- 2018年2月28日、Notification No. 5/2018 Stipulation of the Definition of the Commercial Livestock Farming
- 2018年3月22日、The Standard Criteria for Investment Activities to obtain the approval of the Ministry of Home Affair under MIC Notification(15/2017) section(d) sub-section(1)
- 2018年3月22日、The Standard Criteria for Investment Activities to obtain the approval of the Ministry of Information under MIC Notification(15/2017) section(d) sub-section(2)
- 2018年3月30日、The Standard Criteria for Investment Activities to obtain the approval of the Ministry of Industry under MIC Notification(15/2017) section(d) sub-section(7)
- 2018年4月9日、The Standard Criteria for Investment Activities to obtain the approval of the Ministry of Electricity and Energy under MIC Notification(15/2017) section(d) sub-section(6)
- 2018年4月20日、The Standard Criteria for Investment Activities to obtain the approval of the Ministry of Agriculture, Livestock and Irrigation under paragraph (d)(3) of the MIC Notification(15/2017)
- 2018年4月20日、Notification No. 7/2018 to carry out investment activities in education services
- 2018年5月3日、The Standard Criteria for Investment Activities to obtain the approval of the Ministry of Health and Sport under paragraph(d) (9) of the MIC Notification(15/2017)
- 2018年5月3日、The Standard Criteria for Investment Activities to obtain the approval of the Ministry of Resources and Natural Environment Conservation under paragraph (d) (5) of the MIC Notification (15/2017)
- 2018年8月13日、The Standard Criteria for Education Services
特別法に基づき所管官庁の許認可を要する分野
- ホテル業
会社または個人が事業を始める前にホテル観光省に事前承認を求め、その承認を得てホテル観光局に事業許可(ライセンス)を申請する。ライセンスはこれまで2年間有効であったが、2018年観光法により3年間有効かつ申請により延長可となった。 - 観光業
旅行企画・運営業、旅行代理店、旅行運送業、ツアーガイドを行おうとする会社または個人は、ホテル観光省からライセンスを取得しなければならない。ライセンスはこれまで2年間有効であったが、2018年観光法により3年間有効かつ申請により延長可となった。 - 金融業
金融業には商業銀行、投資または開発銀行、ファイナンス会社、信用組合等が含まれる。国営、民間共同事業、民間の如何を問わず、金融業を興そうとする者は、ミャンマー中央銀行の事前許可を取得しなければならない。外国の金融業者(銀行を含む)が駐在員事務所を開設する場合も中央銀行の事前承認が必要。証券事業を興そうとする者は、ミャンマー証券取引委員会の事前許可を取得しなければならない。
なお、2015年、ミャンマー政府は日本のメガバンク3行を含む外銀9行に対し銀行ライセンスを発給し、支店としての営業が認められた。また、2016年には4行が許可された。2020年4月には7行が営業を行うための仮認可が出された。
中央銀行は、2022年7月13日付2022年第8号指令において、100%外資のノンバンク金融機関の設立および投資を認めた。
出資比率
「ミャンマー国民にのみ外国投資が認められる投資活動」におけるミャンマー国民投資家の最低直接持株比率は、20%と定められている(改正投資法施行細則22条)。すなわち、この場合の外国投資家の直接持株比率は最大80%である。
外国企業の土地所有の可否
外国人(法人も含む)の土地所有は不可。代わりに、土地使用権の賃借により不動産を確保する。土地はミャンマー政府、または民間から借り受けられる。
外国企業の場合、土地・建物の賃借期間は原則として1年を超えることは認められない。
投資法に基づくMIC許可または是認(Endorsement)および土地権利認可を取得した外国企業の場合は最大70年間、経済特区法に基づく投資許可の取得企業の場合は最大75年間、土地貸借権を得られる。
投資法に基づくMIC許可または是認(Endorsement)および土地権利認可を取得した外国企業は、土地または建物を最大50年間賃借することができ、さらに10年間の延長が2回可能(最大70年間)となっている。
経済特区法の投資許可を取得すると、50年間の土地賃借、さらに25年間の延長(最大75年間)が認められる。
これら以外の外国企業の場合には、原則1年ごとの賃借契約が必要となる。比較的小資本で始められるサービス業、例えば、法務、会計事務所、ITオフショア開発を行う会社などは、この形態で現地法人(子会社)を作る例が多い。
一方、「1年以上の土地・建物の使用が必要」となるような製造業・ホテル業の場合、投資法に基づくMIC許可または是認(Endorsement)および土地権利認可、または、経済特区法に基づく投資許可を取得することが事実上必須となる。
ここで言う外国企業について、新会社法においては、海外法人、外国人またはその両者によって直接的もしくは間接的に所有もしくは支配され、持分比率が35%超のミャンマーに設立された会社と定義されている。
他方、1987年不動産譲渡制限法においては、外国企業はミャンマー国民によって管理もしくは支配されていない会社、もしくはパートナーシップ、または過半数の株式もしくは持分がミャンマー国民に保有されていない会社、もしくはパートナーシップと定義されている。新会社法施行後は、不動産譲渡制限法の文言通りの運用に変更されるかが注目されるが、2021年11月30日に不動産譲渡制限法に基づく登記を行うRegistration of Deed OfficeのOfficerに確認したところ、「外資が含まれている会社法上のミャンマー会社が不動産の長期使用権に関する登記を行った事例はある」との回答を得たが、詳細を知ることはできなかった。
資本金に関する規制
旧会社法下の運用上、外国企業の場合、原則として最低資本金等は製造業15万ドル、サービス業5万ドルとされていた。しかし、新会社法施行後は運用上の最低資本金は撤廃された。
投資法に基づく投資について、一定額以上の場合にMIC許可の取得が必要となる旨の規定はあるが、業種ごとの最低投資額などは規定されていない。ただし、税制優遇措置を得る場合、要件の1つとして、30万ドルを超える額の追加投資が必要となる。
経済特区法に基づく投資許可の取得企業の場合、経済特区法施行細則に業種ごとに最低資本金等が規定されている。
1988年公布の外国投資法で投資認可を得る場合、「製造業は50万ドル、サービス業は30万ドル」以上の最低資本金・投資額(現物出資も可)が求められていた。しかし、2012年公布の外国投資法では、業種ごとの最低資本金・投資額を、MICが投資事業の業態に鑑み、政府の承認を得て決定することとされている。
2016年公布の現在の投資法においても、業種ごとの最低資本金額などは規定されていない。他方、予定投資額が1億ドルを超える投資は「多額の資本集約的な投資」に該当し、必ずMIC許可が必要となる。
経済特区法に基づく投資許可の取得企業の場合、経済特区法施行細則に11の業種について、最低資本金または要件等が規定されている。
その他規制
内務省、アンチマネーロンダリング中央委員会、不動産業者および貴金属販売業者規制当局より 2022年11月9日付で不動産業者の登録を義務付ける指令No.1/2022 が発布された。不動産業者は関連するタウンシップの登記事務所に所定の必要書類を提出して登録が必要となった。