知的財産調停の費用補助に新プログラム

(ASEAN、シンガポール、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム)

シンガポール発

2023年07月11日

世界知的所有権機関(WIPO)とシンガポール知的財産庁(IPOS)は7月3日、ASEAN加盟国の国民、またはエンティティ(法人など)が、シンガポールのWIPO仲裁調停センター(WIPO-AMC、注1)が管理する調停に係る費用について資金を受けることができるWIPO-シンガポールASEAN調停プログラム(AMP)を発表した(WIPO発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますIPOS発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

AMPの下、知的財産や技術に関する紛争の当事者の個人や法人、知的財産または技術契約の締結で調停を必要とする個人や団体が、調停案件ごとに最大8,000シンガポール・ドル(7月3日時点、約85万6,000円、Sドル、1Sドル=約107円)の資金援助を得ることができる。提供される資金は、調停に関する全ての費用を含み、別段の合意がない限り、当事者間で平等に分配される。

資金申請は、WIPO調停への申請時もしくは後に、WIPO仲裁調停センターに通知する。資金援助の供与が適用されるには、(1)申請期間は7月3日から12月31日、または予算尽きる時点まで、(2)少なくとも一方の当事者は、ASEAN加盟国の国民または法人でなければならない、(3)調停人はシンガポールに拠点を置く必要がある、(4)当事者は調停についてフィードバックを提供する、(5)両当事者は指名公表に同意する(和解条件の詳細を除く)、(6)「ヤングIP調停イニシアチブ」(注2)からIPOSが任命した「シャドーメディエーター」が調停を傍聴する、(7)AMPと調停促進スキーム(REMPS、注3)の両方に基づいて、同じまたは実質的に同じ紛争に関連する費用を請求することができないといった条件がある。詳細はIPOSウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

WIPOシンガポールオフィス(WSO)ディレクターのティタファ・ワッタナプルッティパイサン氏は、世界的に知的財産や技術に関する紛争が高まっていることや、裁判外紛争手続き(ADR)への関心がASEAN地域で高まっていることに言及した上で、「ASEANのより多くの企業が知的財産や技術に関連する紛争について、実行可能で費用効果の高い解決策として、調停の恩恵を受けることを期待している」とした。

(注1)知的財産や技術に関する紛争解決の調停や仲裁などの手続きを提供。ASEANの(知財)民事訴訟は費用や時間もかかるため、WIPO-AMCなどの裁判外紛争手続き(ADR)が有効な解決手続きとして活用されている。

(注2)シンガポールの法学部卒業生に知的財産調停の経験を構築することを目的に立ち上げられた。

(注3)審理の代替として調停を選択することを奨励するもので、調停費用の払い戻しを受けることができる。

(朝倉啓介)

(ASEAN、シンガポール、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム)

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