知財判例データベース デザイン保護法上の共同創作に該当するにもかかわらず、創作に関わった協力企業が単独で出願し、登録無効と判断された事例
基本情報
- 区分
- 意匠
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- A, B (被請求人、被告、上告人) vs C, D (請求人、原告、被上告人),E (原告補助参加人)
- 事件番号
- 2024フ11606判決
- 言い渡し日
- 2026年09月10日
- 事件の経過
- 上告棄却
概要
スマートフォン用の保護フィルムを貼り付ける装置を構成する加圧ローラの登録デザイン(以下、「本件登録デザイン」という)において、その創作経緯に基づいて創作行為への実質的寄与の有無を確認し、その結果、共同で創作されたデザインに対して「デザイン登録を受ける権利の共有者全員ではなく単独で出願して登録された場合」に該当するとして登録無効と判断した原審を支持し、上告を棄却した。
事実関係
本件登録デザインは、携帯電話の画面に保護フィルムを容易に貼り付けることができる保護フィルム貼付装置に使われる加圧ローラに関するデザインであり、出願人をFとし、創作者をG, Hとしてデザイン登録された後、名義移転されて、AとBを権利者としている。

[本件登録デザインの図面:3D図面のうち一方向をキャプチャしたもの]
Eは携帯電話の製造販売及びアフターサービスを提供する企業である。従来は、Eが製造販売する携帯電話にはディスプレイ保護フィルムが未貼付の状態で出荷されていたため、事後的にサービスセンターで保護フィルム貼付装置を使用して保護フィルム貼付サービスを提供していたが、これを製造過程で保護フィルムを貼り付けることとし、サービスセンターで使用していた保護フィルム貼付装置を携帯電話量産用の保護フィルム貼付装置にするために、様々な協力企業と協力して改善作業を行った。Cは本件登録デザインを実施した加圧ローラを製造する企業であり、Dはその購入代行をしてEに納品するMRO企業である。一方、本件登録デザインの出願人Fは、Eの保護フィルム貼付装置の改善作業に参加した企業である。
判決内容
(1) まず大法院は、デザイン保護法が規定している共同創作者に関する法理を、次のように説明した。
デザイン保護法上、「2人以上が共同でデザインを創作した場合」に該当するためには、2人以上が、視覚を通じて美感を起こさせるデザインの創作のために実質的に相互協力した関係になければならない。単にデザイン創作に関する基本的課題とアイデアのみを提供するとか、デザイナーを一般的に管理し、デザイナーの指示に従ってデザイン創作の補助のみをし、又はデザイン創作を後援・委託するといった程度を超えて、視覚を通じて美感を起こさせるための具体的な着想を新たに提示・付加・補完したり、スケッチ、模型製作、試案検討等を通してその新たな着想をデザインに具体化したり、美感に影響を与える具体的形態の提供又は具体的な助言・指導を通じてデザインの創作を可能にしたりすることにより創作行為に実質的に寄与した場合に、そのデザインの「共同創作者」と認められる。
(2) 大法院は、原審の事実認定を次のように認容した。
保護フィルム貼付装置用の加圧ローラに関する本件登録デザインのうち、①「
」のような2種類のローラ形態(一方は円柱状、他方は両端が太いダンベルのような形状)、②ダンベル形状のローラが「
」のように太さが2段階で異なっている形態、③(ローラが装着された胴体部において)「
」のように側面の一部が取り除かれ内部に陥没した形態について、これらすべての形態が本件登録デザインの全体的な美感に相当な影響を及ぼす。
Eの所属社員は、保護フィルム貼付装置の改善作業を担当して複数の協力企業と協力する過程において、本件出願人であるFに対して、従前の保護フィルム貼付装置の安着ジグ及びローラの図面を提供して改善作業に参加し、上記のような形態を具体的に着想しこれを図面等によりデザインを具体化して試作品を検証し、Fの所属社員に数回にわたりデザインの修正・補完を要請する等、具体的に助言・指導を行った。
(3) 以上に基づき大法院は、「このような事実関係を先述した関連規定及び法理に照らして詳察すれば、Eが本件登録デザインの創作行為に実質的に寄与したと認めるのが妥当である。従って、本件登録デザインはFの所属社員とEとが共同で創作したデザインに該当し、デザイン保護法に基づき、デザイン登録を受ける権利に係る共有者全員が共同でデザイン登録出願をしなければならない。それにもかかわらず、Fは本件登録デザインについてデザイン登録を受ける権利の共有者からその持分を承継し又は同意を得ることもせず単独で出願して登録を受けたことから、本件登録デザインはデザイン保護法によりその登録が無効とされるべきである。」と判示した。
専門家からのアドバイス
韓国におけるデザイン保護法上の共同創作者に関する法理は、特許法上の共同発明者に関する法理と同じであるところ(大法院2011年7月28日言渡2009ダ75178判決等)、共同創作者(共同発明者)に該当するか否かの区別は単純に判断できず、紛争時の対応も容易ではない。
デザイン創作の実情においては、発明の場合と同様に、その商品の製造過程でプランナー、デザイナー、エンジニア、及び多数の協力企業等が関与して協業するケースが珍しくないため、互いの友好的な取引関係が絶たれた場合等には、本件のようなデザイン権の帰属を巡る紛争に発展することもありえる。
こうした権利帰属を巡る紛争においては、法院はデザインの創作的行為に各人が直接関与したか否かを厳格に評価する傾向がある。このため、デザインの創作過程では、各協業段階における各自の役割と寄与度を明確に記録しておくことや、契約書により権利帰属関係を事前に定めておくことが望ましいといえる。加えて、デザイン権は出願後1年以内の短期間で登録されて公開されたり、出願事実の確認が可能であったりする点に鑑み、協力関係者等によるデザイン出願については、そうした出願がなされていないか定期的に調査する予防的活動も視野に入れておきたい。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
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