知財判例データベース 地理的表示団体標章において、当該標章は商品の産地として名声を有しており、地理的表示の定義に合致すると判示した事例

基本情報

区分
商標
判断主体
大法院
当事者
A (被請求人、被告、被上告人) vs B (請求人、原告、上告人)
事件番号
2023フ10736判決
言い渡し日
2026年08月12日
事件の経過
上告棄却

概要

 被告が地理的表示団体標章として指定商品を「調味焼き海苔」とする標章「광천김」(廣川海苔のハングル)の登録を受けたことに対し原告が登録無効を主張したが、大法院は、当該標章が「商品の特定品質・名声又はその他の特性が本質的に特定地域から始まった場合」に該当するものと認め、原審を首肯して上告を棄却した。

事実関係

 「廣川(クァンチョン)」は、行政区域上、韓国の忠清南道 洪城郡 廣川邑に属する地域名称であり、昔から廣川邑は西海へとつながる河川を介して近くの海で生産された海苔(味付けされていない海苔)が集荷され販売される流通市場が大きく発達し、一般需要者は廣川邑が海苔の産地であると誤認するほど名声を得てきた。1990年代になると西海に防潮堤が建設され廣川邑の航路が閉ざされた事情等から、「海苔」の流通ではなく「調味(味付け)海苔」を生産販売する企業が付近一帯に集まり、2012年頃には30社余りの企業が調味海苔を生産して本件標章である「광천김」を付して流通を行っていた。

この図は、韓国の地図において、ホンソン郡クァンチョンの場所を示しています。
[出所:洪城郡庁ホームページ、廣川邑(Gwangcheon-eup)]

 被告は2001年に関連法律に基づいて設立された営漁組合法人であり、2012年にその名称を「廣川海苔営漁組合法人」、その事業目的を「廣川海苔の優秀性を広く知らしめ連携的経営により廣川邑地域で生産される廣川海苔の自律的生産、品質向上」等に変更し、指定商品を「調味焼き海苔」とする本件地理的表示団体標章「광천김」を出願して2014年に登録を受けた(以下、「本件標章」という)。
 一方、原告は「調味海苔」を指定商品とする商標「この図は、廣川シゴルのロゴを示しています。」(左側に「SIGOLシゴル」(韓国語で田舎の意味)が含まれた図形+右側に「廣川シゴル」のハングル)を2011年に出願して2013年に登録を受けた共同商標権者のうちの1人である。原告は、自身が代表を務める企業に通常使用権を許与し、パッケージを「この図は、ブランド「廣川シゴル」の調味海苔パッケージを示しています。」(上記登録商標中の左側の図形を実製品である調味海苔パッケージの左上に配置し、パッケージ正面の上段中央に赤色で大きく強調した「광천」(廣川のハングル)と、下段に「시골김」(シゴル海苔のハングル)を表示)とした調味海苔を生産販売したが、原告は廣川邑に所在しておらず、被告の組合員でもなかったため、被告の組合員から2020年頃に商標権侵害及び差止めを求める警告状が送付され、被告の上記登録商標に対する不正使用を理由とした登録取消審判を請求された。こうした経緯により、本件標章に対する登録無効審判等に至った。

判決内容

 大法院は、商標法が規定する地理的表示に関連する諸般の規定について、次のように法理及び判断基準を説明した。
 『商標法は「“地理的表示”とは商品の特定品質・名声又はその他の特性が本質的に特定地域から始まった場合において、その地域で生産・製造又は加工された商品であることを示す表示をいう」と規定し、また、商標法は“商標登録を受けることができない商標”として「その商品の産地・品質・原材料・効能・用途・数量・形状(包装の形状を含む)・価格・生産方法・加工方法・使用方法又は時期を普通に用いられる方法により表示する標章のみからなる商標」と「顕著な地理的名称若しくはその略語又は地図のみからなる商標」等を規定しながらも、「上記規定に該当する標章であっても、その標章が特定商品に関する地理的表示である場合には、その地理的表示を使用した商品を指定商品として地理的表示団体標章登録を受けることができる」と規定している。このような“地理的表示”及び“地理的表示団体標章”規定の立法の趣旨は、従前に商標としての識別力を備えておらず登録を受けることができなかった産地又は顕著な地理的名称等に該当する商標であっても、地理的表示団体標章として出願された場合には商標登録を受けられるようにすることにより、地理的表示団体標章権者及びその所属団体員の営業上の信用維持を図り、地理的表示を使用する商品の取引者及び需要者を保護するところにある。』
 『ここでいう“商品の特定品質・名声又はその他の特性が本質的に特定地域から始まった場合”とは、商品の特定品質や名声又はその他の特性のうち少なくともいずれか一つが特定地域の気候、土壌、地形等自然環境的要因や伝統的な生産方法等人的要因を含む地理的環境と実質的関連性を有する場合を意味し、特定地域から始まった商品の“名声”が認められるかを判断するにおいては、その地域内の商品の歴史と伝統、生産方法の伝統的継承、他の地域の同種商品と区別される固有の特性、消費者の認識及び認知度、類似商品との価格差、公信力のある第三者の評価等を総合的に考慮しなければならない。』

 続いて大法院は、上記の基準に従って、『原審が、本件標章「광천김」が地理的団体標章として登録当時に調味焼き海苔の産地として名声を有しており、これは従来の在来海苔(味付けされていない海苔)の流通販売地としての名声に基づいた当該地域の販売者らの広報活動、当該地域の行政機関の産業育成活動等のような廣川邑の地理的環境、そのうちの人的要因から本質的に始まったものとして、商標法上の“地理的表示”の定義に合致すると認めたことは妥当である。』と判示した。

専門家からのアドバイス

 韓国における近年の地理的表示団体標章出願は、2020年7件、2021年9件、2022年7件、2023年6件、2024年4件、2025年6件と多いとはいえないものの、当該地域の広報に使用できることに加え、関連商品の生産販売者が営業・マーケティング・広報活動を行う場合の寄与度は低くないであろう。本件判決は、かかる地理的表示に関連する商標法の諸般の規定及び地理的表示団体標章の法理を詳細に判示した点でその意味が大きいと評価できる。
 ただし、本件の場合は皮肉にも、本大法院判決が下される前の2024年5月18日付で本件標章は登録取消により消滅している。その取消理由は、一部の組合員が登録された指定商品「調味焼き海苔」ではない類似商品の「ふりかけ海苔、海苔粉等」に本件標章を使用したことや、一部の組合員の商品が定款で定めた調味焼き海苔の材料と製造方式を遵守せずに品質が保たれなかった等であった(特許法院2023年11月8日言渡2022ホ5690判決)。
 地理的表示団体標章は、マーケティング的メリットが大きい点からその団体員は初期の出願段階では多くの関心を寄せて商標権の確保に努めると思われる。しかし、無事に登録された後は、実際に使用するのが知財権に関する専門知識が十分でない多数の団体員であるという状況において、上述したように、定款を遵守できず品質低下等による登録取消の危機を招く可能性も十分あり得る。団体員の管理監督に相当の注意が求められるという点に留意する必要がある。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:横山、徐(ソ)、權(クォン)(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195