税制
最終更新日:2024年07月19日
- 最近の制度変更
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2024年7月16日
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2024年6月18日
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2023年7月4日
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2022年10月21日
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2021年12月9日
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法人税
香港政府は2018年3月、税務条例を改正し、同年4月以降の課税年度において2段階の税率措置を導入すると発表した。法人事業主については、利益のうち200万香港ドルまでは8.25%の税率(従来は16.5%)、200万香港ドルを超える利益については、従来通り16.5%の税率で課税される。非法人事業主(個人事業主、パートナーシップ)については、200万香港ドルまでは7.5%の税率(従来は15%)、200万香港ドルを超える部分は従来どおり15%の税率にて課税される。なお、グループ会社がある場合は、グループ内の会社のうち1社のみが軽減税率を享受できる。
その他、減価償却控除、借入金利控除、貸倒控除などの控除がある。
法人の事業所得税は、経営者の国籍を問わず、香港の中で行われた経済活動および香港での貿易取引の収益が課税の対象である。
株式の配当、キャピタル・ゲイン(投機でないもの)、認可銀行の預金の利子分は課税対象外である。
2023年1月1日に施行された新たなオフショア受動的所得非課税制度により、オフショア受動的所得(利息収入、配当収入、譲渡益および知的財産収入)は所定の要件を満たさない限り法人税が課される。
損失は無期限で控除対象とすることができる。なお、香港には消費税または付加価値税はない。
詳細は、税務局のウェブページ(Inland Revenue Department – Profits Tax)参照。
非課税控除
- 工業用ビルや施設の建設のための資本投下を行った場合、支出年度にはその支出額の20%が最初に控除され、その後は支出の合計額を限度として毎年4%の追加控除あり。
- 商業ビルに対しては、毎年4%の減価償却控除あり。
- 機械や工業用装置の場合、支出年度にはその支出の60%が最初に控除され、その後毎年の追加控除は未償却額の一定割合となる。
- 建物や施設の改装に対する資本支出は、毎年20%の控除が5年間にわたって認められる。
- 製造関連、または、コンピュータのハード・ソフトおよび開発関連の施設および機械に対する支出は、直ちに100%の一括償却が認められる。
その他の控除項目
香港の金融機関からの借入金に対する利息、建物の家賃や土地使用料、貸倒引当金、建物、装置、機械などの修繕費用、器具、用具などの取替費用、商標やデザイン、特許の登録費、科学的な研究開発費用、技能教育のための支払い、従業員の退職金制度のための一定の拠出金、環境保護関連機器・設備にかかる支出、エコカー取得に要した支出、公認の慈善寄付金および特許取得に関する支払いなども控除項目に含まれている。
詳細は、税務局のウェブページ(Inland Revenue Department – Profits Tax)参照。
CTC(Corporate Treasury Centre)制度による税制優遇措置
2016年6月、香港政府は香港に財務統括拠点を設置する多国籍企業の誘致を目的に、CTC制度による税制優遇措置を導入した。
一定の要件を満たす場合、香港外のグループ会社に対する金融財務活動から生じる所得に対して、利得税(法人税)の標準税率16.5%を半減した8.25%の優遇税率が適用される。
また、海外の関連会社の借入金に対する支払利息の損金算入が認められた。
詳細は、税務局(Inland Revenue Department)プレスリリースを参照。
知的財産所得に対する税制優遇措置(パテントボックス税制優遇措置)
研究開発を通じて発生した適格な知的財産から香港域内で発生した利益に対する税制優遇措置を提供するものである。2024年7月5日に施行され、2023/24財政年度から当該優遇措置を申請することができる。
優遇税率は5%であり、現行税率の16.5%より大幅に低い。
詳細は、税務局のウェブページ(Tax Concessions for Intellectual Property Income – Patent Box Regime)を参照。
企業の研究開発(R&D)に対する優遇税制措置
2018年4月、香港政府は研究開発費(Research and Development Expenditure)の優遇税制措置を導入した。
一定の条件を満たす場合、企業が支出する200万香港ドルまでの研究開発費については300%の税額控除、200万香港ドルを超える支出については200%の税額控除が認められた。なお、税額控除の額に上限は設けていない。
詳細は、Inland Revenue (Amendment) (No.7) Ordinance 2018(426KB)および税務局(Inland Revenue Department)プレスリリース参照。
航空機リース事業に対する優遇税制措置
2017年7月、香港政府は航空機リース事業に対する新たな優遇税制措置を導入した。要件を満たす適格航空機リース事業者については、航空機にかかる減価償却費を除く関連経費控除後の課税標準額の20%をみなし課税所得とし、みなし課税所得に対して8.25%の法人税率が適用される。また、要件を満たす適格航空機リース管理事業者については、課税所得に対して8.25%の法人税率が適用される。
船舶リースに関する優遇税制措置
2020年6月、香港政府は船舶リース事業に対する新たな優遇税制措置を導入した。条例上は、遡って2020年4月から導入が有効となっている。要件を満たす適格船舶リース事業者については、オペレーティング・リースおよびファイナンス・リースに関連する船舶リース事業から得られる適格所得に対する税率を0%とした。また、船舶リース管理事業者については、関連会社以外の適格船舶リース事業者のために行う船舶リースの管理事業から得られる適格所得に対する税率を8.25%(標準法人税率である16.5%の半分)とした。
詳細は、Inland Revenue (Amendment) (Ship Leasing Tax Concessions) Ordinance 2020(501KB)および税務局(Inland Revenue Department)プレスリリース 参照。
二国間租税条約
二重課税防止に関する合意は、海運業者・航空会社に関して世界各国・地域との間で取り交わされている(合意国は詳細参照)。また、日本を含め、世界各国・地域との間で租税協定が結ばれている(締結国は後述の締結国一覧を参照)。
- 包括的な二重課税防止協定:次の国・地域との間で締結・発効している。
アイルランド、アラブ首長国連邦、イタリア、インドネシア、英国、エストニア、オーストリア、オランダ、ガーンジー島、カタール、カナダ、韓国、カンボジア、クウェート、ジャージー島、ジョージア、スイス、スペイン、タイ、チェコ、中国、日本、ニュージーランド、セルビア、パキスタン、ハンガリー、フランス、ブルネイ、ベトナム、ベラルーシ、ベルギー、ポルトガル、マカオ、マルタ、マレーシア、南アフリカ共和国、メキシコ、モーリシャス、ラトビア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、ルーマニア、ロシア、インド、サウジアラビア、フィンランド。
アルメニア、クロアチア、バーレーン、バングラデシュとの協定は締結済、未発効。
- 海運業者に対する二重課税防止協定:次の国・地域との間で締結・発効している。
英国、オランダ、シンガポール、スリランカ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、米国。
- 空運取引に関する二重課税防止協定:次の国・地域との間で締結・発効している。
アイスランド、英国、イスラエル、エチオピア、オランダ、カナダ、韓国、クウェート、クロアチア、ケニア、シンガポール、スイス、スウェーデン、スリランカ、中国、デンマーク、ドイツ、ニュージーランド、ノルウェー、バングラデシュ、フィンランド、ベルギー、マカオ、メキシコ、モーリシャス、ヨルダン、ロシア。
エストニア、セーシェル、フィジー、マダガスカル、モルディブ、ラオスとの協定は締結済、未発効。
- 中国との二重課税防止協定:1998年2月、中国との間で事業利益、船舶、航空、陸上交通、および個人サービスに関する二重課税防止協定を締結した。
- 2006年8月には、所得に対する二重課税と脱税を防止する新協定が締結され、不動産、配当、利子、ロイヤルティー、キャピタル・ゲイン、年金および政府サービスなどが新たに対象となった。
- 2008年1月、協定を修正・補充する「第二議定書」が締結され、6カ月と規定されていた恒久的施設(Permanent Establishment)の認定期間が183日に変更された。
- 2010年5月、「第三議定書」が締結され、契約している双方が現地の税務関係の有無にかかわらず、請求されれば情報交換を実施する旨変更された。
- 2015年4月、「第四議定書」が締結され、航空機や船舶のリース業を営む香港企業が支払うロイヤルティーの中国の源泉徴収税が5%に軽減された(従来は7%)。また、香港の投資家は、認可を受けた証券取引所で上場している中国企業の株式の売却に関し、中国のキャピタル・ゲイン税の課税が免除された。
- 2019年7月、「第五議定書」が締結され、香港または中国本土で雇用されており、相手国・地域の教育・研究活動に従事する教員および研究者について、前記活動によって得た所得に対する相手国・地域での課税を3年間免税することになった。
詳細は、税務局のウェブページ(Inland Revenue Department - Double Taxation Relief and Exchange of Information Arrangements)を参照。
- その他租税協定
香港は2009年4月にG20金融サミットで「タックスヘイブン」のブラックリスト入りが議論されたことなどを受け、2010年1月に改正税務条例を発効した。日本、欧州諸国や東南アジア諸国などと、相次いで租税協定を結んでいる。
税務局:
- 日港租税協定(2011年8月14日発効) All Agreement (on country / region basis) - Japan
- 香港の二国間租税協定の締結国一覧 All Agreements (on country / region basis)
その他税制
香港の税率は簡素かつ低税率となっている。課税対象は、香港での利益または収入のみである。法人の事業所得税以外の主な直接税として給与所得税・資産所得税、間接税として印紙税・物品税・自動車初回登録税・ホテル宿泊税などがある。
給与所得税
給与所得税は、香港で勤務または就業したことから発生する収入に対して課税される。最初の500万香港ドルには15%、これを超える部分には16%の2段階標準税率(2024/25財政年度以降)と、段階的な2~17%の累進税率との選択制。コミッション、賞与、チップ、手当、その他臨時収入、香港で提供されたサービスに対する収入および年金も課税対象に含まれる。
香港滞在が、連続する12カ月のうち183日以内の外国籍保持者は、給与所得税の対象外(日港租税協定)。
資産所得税
資産所得税は、家賃収入から固定資産税および賃貸収入その20%を控除した額に一律15%(2008/09財政年度以降)を課税。
ただし、家賃収入が法人税の課税対象となっている場合、不動産所有者が自ら事業を営むため占有している場合は、資産所得税の対象にはならない。
固定資産税
固定資産税(Rates:レーツ)は、香港政府が毎年公表する推定賃貸価格に課税される。2024/25財政年度第4四半期以降、一般住宅のレーツは従来の標準課税率5%から累進課税方式により最大12%となる。詳細は、香港政府のウェブページ(Rating and Valuation Department – Progressive Rating System for Domestic Tenements)を参照。
原則として不動産所有者と借り手が納税するが、双方の協議によって、一方のみが納税することもできる。
印紙税
印紙税は、香港内における不動産売買契約書、株式譲渡契約書等の課税文書の作成者に課せられる税で、例えば不動産売買契約書の場合は、最高で売買価格の8.5%を課税。
※2010年11月から、住宅への投機を抑制するために、住宅が短期売買される場合には特別印紙税が課せられているほか、2012年10月から、香港の永住権保有者以外の者による住宅の売買に対し購入者印紙税を課税。購入者印紙税は2016年11月5日から一律15%に調整された。2017年4月11日から、香港の永住権保有者が1件の売買契約で複数の住宅を購入した場合も15%を課税。
※香港の不動産価格の上昇を抑制するために2013年から導入されていた、非居住用不動産取引に係る印紙税を2倍とするDoubled Ad Valorem Stamp Duty(DSD)が2020年11月26日の取引から撤廃された。
※昨今の住宅市場の低迷を受け、2024年2月28日に行われた2024/25財政年度予算案演説の中で、居住用不動産取引に係る特別印紙税、購入者印紙税および新住宅印紙税の即時取り消しが発表された。
特別印紙税と購入者印紙税および非居住用不動産取引・居住用不動産取引に係る印紙税の詳細は、次の税務局のプレスリリースを参照。
- Special stamp duty to curb speculation in residential properties
- Government's response to press enquiries on Buyer's Stamp Duty
- Tightening up of the exemption arrangement under the New Residential Stamp Duty
- Abolition of Doubled Ad Valorem Stamp Duty on non-residential property transactions
- Tax measures proposed in 2024-25 Budget
ロイヤルティーに対する課税
ロイヤルティーは、その金額の30%がみなし所得として課税対象となる。
賭博税
賭博税は、マークシックス(宝くじ)、競馬、サッカーくじ等の合法的な賭博で得た収益に対して課せられる税で、収入源によって税率が異なる。マークシックスは25%、競馬は72.5~75%、サッカーくじは50%。
物品税
物品税は、アルコール飲料、たばこ、炭化水素油(ガソリンなど)、メチルアルコール(化粧品など混合物含む)の4品目に課せられ、香港税関により徴収される。
- ワイン、アルコール度数30%未満の酒類:0%
- アルコール度数30%以上の酒類:100%
- 紙巻きたばこ:3,306香港ドル/1,000本
- その他のたばこ:811~4,258香港ドル/キログラム(種類による)
- 石油類:0~6.82香港ドル/リットル(種類による)
- メチルアルコール:840香港ドル/100リットル(度数が30%を超えた場合、1%増ごとに28.1香港ドル/100リットルが追加徴収される)
詳細は、次の香港税関(Customs and Excise Department)ウェブサイトの物品税を参照。
Dutiable Commodities
自動車初回登録税
自動車初回登録税は、環境保護署と香港税関の手続きを経て、運輸署で課せられる。自家用車の場合、税率は車両価格の46~132%。
詳細は、次の運輸署(Transport Department)ウェブサイトの初回登録税を参照。
Guidelines for Importation and Registration of Motor Vehicle
環境配慮型車両向けの優遇措置
2018年4月以降、電気自動車の購入促進策として、自家用車の初回登録税は最高9万7,500香港ドルの減免措置が適用される(一定の条件を満たす場合はさらに減免額を上乗せ)。
タクシー、ミニバスなどの商用の電気自動車、電動バイク、電動三輪自転車の場合は、初回登録税が最大100%控除される。また、法人がハイブリッド車、電気自動車など特定の環境配慮型車両を購入した場合、1年目は減価償却費の100%を事業所得税から控除できる。
詳細は、次の運輸省(Transport Department)ウェブサイトの電気自動車の初回登録税減免措置を参照。
First Registration Tax Concessions for Electric Vehicles
なお、政府は2024年2月に、電気自動車に対する初度登録税(FRT)優遇措置を2026年3月31日まで2年間延長すると発表した。
ホテル宿泊税
2024/25財政年度予算案演説の中で、政府は2025年1月1日よりホテル宿泊税の税率を免除以前と同じ3%として再導入することを提案した。
詳細は、税務局のウェブページ(Hotel Accommodation Tax)を参照。
その他税制についての詳細(税務局):Inland Revenue Department - Tax Information
また、会計・税制に関する詳細は、ジェトロ調査レポート「香港進出に関する制度情報(2024年3月改定版)」を参照。