香港、人民元と香港ドル建て株式取引のマーケットメイカーの印紙税廃止に向けた条例改正へ

(香港)

香港発

2022年10月21日

香港政府の財経事務・庫務局(Financial Services and Treasury BureauFSTB)は、103日に開催された金融分野に関する香港立法会パネルにおいて、人民元建て株式の流動性を増やすため、人民元および香港ドルの両通貨建てで上場する株式の取引にマーケットメイカーによる株式取引(注1)にかかる印紙税の廃止に向けた提案を行った。FSTBは、2022年中に関連する条例の改正案を立法会に提出する予定としている。

本件に関し、2022年上半期に、香港証券先物委員会、香港証券取引所(以下HKEX)と香港金融管理局で構成される作業部会が設置されており、同作業部会はこれまでに、上述のマーケットメイカー制度の導入案を提案していた。また、92日には、中国証券監督管理委員会の方星海副主席が、サウスバウンド取引(以下「港股通」、注2)への人民元建て証券取引の組み入れに向けた研究を支持する旨について言及した(2022年9月8日記事参照)。

FSTBの許正宇(クリストファー・ホイ)局長は「HKEX2010年から上場企業に対して人民元建て株式の発行を認めているものの、売買高(出来高)が振るわず人民元建て株式を発行する上場会社は少数にとどまる」と指摘。そのうえで、「マーケットメイカー制度の導入により流動性が高まることで、(同一銘柄の株式でありながらも通貨建ての違いで生じる)価格差や過度な価格変動などの問題が解決されるだろう」との見方を示した(「サウスチャイナ・モーニングポスト」104日)。

また、許局長は「印紙税は、証券取引コストの90%以上を占めており、マーケットメイカーの取引の負担となっている」と指摘し、港股通における人民元建て株式の取引に向け、2023年上半期にマーケットメイカー制度の立ち上げを目指していると言及した(「サウスチャイナ・モーニングポスト」104日)。

港股通において、人民元建ての香港株式の直接取引が可能となることで、投資家にとっては、オフショア人民元の為替レートの変動による為替リスクの低減にもつながる。

香港政府は、香港における人民元建て株式の発行と取引を促進することで、人民元の国際化を進め、香港のオフショア人民元のハブとしての地位をさらに強化することを目指している。

(注1)香港証券取引所は、資格要件を満たすマーケットメイカーに対して、投資家の注文が約定するよう、定められた価格範囲において人民元建て株式の売り注文と買い注文を常時提示する取引と裁定取引(価格差を利用して売買し利益を確保する取引)を認める。

(注2)中国本土の投資家が、上海証券取引所または深セン証券取引所を介して香港証券取引所に上場する株式を売買できる制度。

(松浦広子)

(香港)

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