ジェトロ対日投資報告2023
第1章 世界の対内直接投資動向
第4節 地政学リスクを受けた世界の投資先の変化

IMFの調査によると、戦略的分野における投資先の件数(発表ベース)の推移は2019年以降、減少傾向が見られ、特にアジアでこの傾向が著しい。一方、中国を除くアジアでやや回復傾向が見られている(図表1-5)。

地域別での投資元・投資先を件数ベースで分析すると、中国は投資元としても投資先としても大きく下落しているとしている。中東欧を除き、すべての地域からの投資先としての重要性が減少している(図表1-6) 。

こうした状況は企業の日本への投資戦略に大きな影響を与えている可能性がある。

図表1-5 戦略的分野 〔注1〕 における各国への投資 〔注2〕
IMF、国際通貨基金は、2015年から2022年までの、米国、欧州、中国、中国以外のアジア、における戦略的分野への投資先件数を、発表ベースで調査した。戦略的分野とは、化学、医薬品、バッテリー、電子機器/部品、計測機器、自動車、資源等の分野を指す。2018年の米中貿易摩擦、2019年からの新型コロナ、2022年からの、ロシアの、対―ウクライナ軍事行動が、地政学リスクとして、各国の投資に大きく影響していることがうかがえる。グラフは、各国それぞれの、2015年の第1四半期を、100、として、投資件数を表したものである。米国では、若干の上下がありつつも、2019年第3四半期には152まで増加したが、2020年以降減少し、2021年第1四半期に105まで落ち込んだ。その後増加し始め、2022年第4四半期には143となった。欧州では、2019年第1四半期にピークの162となり、2020年以降減少し、2021年第1四半期に114まで落ち込んだ。その後増加し始め、同2021年第4四半期に133となったが、2022年から再び減少して、同年第4四半期には107となった。中国では、2017年第3四半期まで減少し続け、68、となったが、そこから急激に増加して、2018年第4四半期にピークの117となった。2019年以降再び減少し、2020年第4四半期には47まで落ち込むと、2021年第4四半期に57まで戻したが、2022年の第4四半期には、最低の、40、となった。中国を除いたアジアでも、2017年第2四半期まで減少し続け、80、となると、そこから増加して、2018年第2四半期にピークの112となったが、再び減少に転じ、2021年第1四半期に50で底を打った。中国と似た曲線を描いたが、徐々に回復し、2022年には72となった。

〔注1〕 化学、医薬品、バッテリー、電子機器・部品、計測機器、自動車、資源等。
〔注2〕 投資件数ベース。2015年Q1を100とした4期の移動平均。
〔出所〕 IMF World Economic Outlook 2023年春季、「fDi Markets」(Financial Times)

図表1-6 地域別投資先の変化
(2020年第2四半期~2022年第4四半期と2015年第1四半期から2020年第1四半期との比較)
IMF、国際通貨基金は、地域別の投資元・投資先の件数ベースの変化を、2つの期間で比較分析した。 比較する期間は、新型コロナ後の、2020年第2四半期から、2022年第4四半期までの期間と、新型コロナ前の、2015年第1四半期から、2020年第1四半期までである。比較する地域は、米国、米国を除く米州(以下米州とする)、先進欧州、新興欧州、中国、中国および日本以外のアジア(以下アジアとする)、その他の世界の7地域である。次に紹介するのは、投資全体の、グリーンフィールド投資件数の変化に対する偏差である。単位は%ポイント。米国からの投資では、米国へは、数値なし、米州へは、9.2ポイント、先進欧州へは、0.6ポイント、新興欧州へは、19.4ポイント、アジアへは、2.3ポイント、中国へは、-40.6ポイント、その他世界へは21.6ポイントである。米州からの投資では、米国へは18.6ポイント、米州へは27.3ポイント、先進欧州へは、14.9ポイント、新興欧州へは、全体の最高で、34ポイント、アジアへは、5.9ポイント、中国へは、-13.3ポイント、その他世界へは、27.6ポイントである。先進欧州からの投資では、米国へは、7.5ポイント、米州へは、-11.7ポイント、先進欧州へは、9.3ポイント、新興欧州へは、-0.9ポイント、アジアへは、-9.8ポイント、中国へは、-19.7ポイント、その他世界へは、8.6ポイントである。新興欧州からの投資では、米国へは、27.6ポイント、米州へは、2.9ポイント、先進欧州へは、9.9ポイント、新興欧州へは、18.1ポイント、アジアへは、-22.3 ポイント、中国へは、13.9ポイント、その他世界へは、-11.5 ポイントである。アジアからの投資では、米国へは、-3.2ポイント、米州は、-8.7ポイント、先進欧州は、-11.7ポイント、新興欧州は、-2.4ポイント、アジアへは、-23.7ポイント、中国へは、全体の最低で、-49.2ポイント、その他世界へは、-4.4ポイントである。中国からの投資では、米国へは、-22.1ポイント、米州へは、-6.9ポイント、先進欧州へは、-17.8ポイント、新興欧州へは、-31.3ポイント、アジアへは、-44.3ポイント、中国へは、数値なし、その他世界へは、-31.9ポイントである。その他世界からの投資では、米国へは、26.4ポイント、米州へは、7.1ポイント、先進欧州へは、5.3ポイント、新興欧州へは、11.4ポイント、アジアへは、-3.7ポイント、中国へは、-24.7ポイント、その他世界へは、18.6ポイントである。全体的に見ると、米州からの投資ポイントが高く、特に米州から新興欧州への投資は、34ポイントと最も高いプラスの伸びとなっている。一方、アジアおよび中国から、各国への投資は、全てがマイナスポイントであり、逆に中国への投資も、全ての国・地域からマイナスポイントとなっている。
  1. 〔注〕

    2つの比較時期における全体のグリーンフィールド投資件数の変化 (aggregate change、△19.5%)に対する各地域の偏差。なお日本はここに含まれていない。

  2. 〔出所〕

    IMF World Economic Outlook 2023年春季、「fDi Markets」(Financial Times)

2023年版目次

  1. 第1章
  2. 第2章
  3. 第3章

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