トランプ米大統領、IEEPA関税の停止と122条に基づく10%の課徴金賦課を発表
(米国、世界)
ニューヨーク発
2026年02月24日
米国のドナルド・トランプ大統領は2月20日、(1)国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置を停止する大統領令
、(2)1974年通商法122条に基づいて全ての輸入に10%の課徴金を課す大統領布告、
(3)非課税基準額(デミニミス)ルールの適用停止を継続する大統領令
を発表した。その後、米国税関・国境警備局(CBP)は2月22、23日に、通関業者向けのガイダンスをそれぞれ発表した〔(1)IEEPA関税停止
、(2)122条課徴金賦課
、(3)デミニミス停止継続
〕。IEEPA関税の徴収は米国東部時間2月24日午前0時以降の通関から停止する。122条に基づく課徴金の徴収も米国東部時間2月24日午前0時以降の通関から開始する。
停止されるIEEPA関税は次のとおり(注1)。
- カナダおよびメキシコに対する合成麻薬フェンタニルなどの流入阻止を目的とした10~35%の関税(2025年2月1日付大統領令第14193号、14194号、2025年8月4日記事参照)
- 中国に対するフェンタニルなどの流入阻止を目的とした10%の関税(2025年2月1日付大統領令第14195号、2025年11月6日記事参照)
- ベネズエラ産の原油などを輸入する国に対する25%の関税(2025年3月24日付大統領令第14245号、2025年3月25日記事参照、注2)
- 原則、全ての国・地域からの輸入に、ベースライン関税10%と貿易赤字額の大きい相手国にさらに高い関税を課す相互関税(2025年4月2日付大統領令第14257号、2025年8月1日記事参照)
- ブラジルに対する40%の関税(2025年7月30日付大統領令第14323号、2025年11月25日記事参照)
- ロシア産石油などを輸入している国に対する25%の関税(2025年8月6日付大統領令第14329号、2025年8月7日記事参照、注3)
- キューバに石油を販売する国に対する関税(2026年1月29日付大統領令第14380号、2026年2月2日記事参照、注2)
- イランから物品などを輸入する国に対する関税(2026年2月6日付大統領令14382、2026年2月10日記事参照、注2)
一方でトランプ氏は、122条に基づき、全ての輸入に原則10%の課徴金を課すと発表した。122条は大統領に対し、「大規模かつ深刻な米国の国際収支赤字」といった特定の状況に対処するため、150日を超えない期間、15%以下の関税賦課を認めている(注4)。課徴金は米国東部時間2月24日午前0時1分~7月24日午前0時1分までに通関される貨物に対して課す(注5)。課徴金は一般関税率(MFN税率)などに上乗せされる(注6)。
ただし、大統領布告では課徴金の適用対象外も定めた。対象外となる品目や条件は次のとおり。
-
付属書I
および付属書II
に記載されている重要鉱物、通貨・地金に使用される金属、エネルギー・同製品、米国で生産などができない資源、牛肉・トマト・オレンジなどの農産物、医薬品・医薬品原料、特定の電子機器、乗用車・特定の小・中・大型トラック・バス・同部品、航空宇宙製品、手荷物など(注7)。 - 1962年通商拡大法232条に基づく追加関税の対象品目。
- 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たす製品、およびドミニカ共和国・中米・米国自由貿易協定(DR-CAFTA)の原産地規則を満たし無税で輸入される繊維製品・衣類。
- 米国東部時間2月24日午前0時1分より前に船積みされて輸送中であり、2月28日午前0時1分より前に通関される貨物。
トランプ氏はまた、輸入申告額が800ドル以下の少額貨物の輸入に対して、関税支払いなどを免除し、簡易的な方法で輸入通関ができるデミニミスルールの適用停止(2025年8月1日記事参照)は継続すると発表した。なお、国際郵便ネットワークを通じて輸入される場合は引き続きデミニミスが適用されていたが、今回の大統領令では、国際郵便ネットワークを通じた輸入に対しても、122条に基づく課徴金を課すと定めた。
(注1)それぞれの大統領令で示されたIEEPAに基づく緊急事態宣言は継続し、停止されるのは関税措置のみで、それ以外の措置は引き続き有効となっている。
(注2)ただし、関税の対象となる国・地域は指定されなかった。
(注3)当該大統領令を基にインドに対してのみ追加関税が課されていたが、インドと2国間暫定協定の枠組みに合意したことを理由に、2026年2月6日に撤廃した(2026年2月10日記事参照)。
(注4)これまで122条は利用されたことはなく、今回が初めて。1974年通商法301条や1962年通商拡大法232条のように、発動に当たっては関係省庁の調査期間を必要としない。
(注5)ただし、議会が延長を認めた場合は異なる。
(注6)日本と米国が合意した、一般関税、相互関税、232条関税(自動車・部品のみ)を合計して原則15%となる関税率も、今後どのような計算になるかは現時点では不透明。またトランプ氏は大統領布告が発表された翌日の2月21日に、自身のSNSで課徴金を15%に引き上げると記載したが、実施時期など詳細については不明。
(注7)具体的な米国関税分類番号(HTSUS)は付属書に記載されている。相互関税においても、スマートフォン、半導体、重要鉱物、医薬品、農産物などを対象外としていた(2025年11月17日記事参照)。例えば、スマートフォン(HTSUS8517.13.00)は引き続き対象外となっている。
(赤平大寿)
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