トランプ米大統領、フェンタニル流入阻止を目的とした対カナダIEEPA関税を35%に引き上げ

(米国、カナダ、メキシコ)

ニューヨーク発

2025年08月04日

米国のドナルド・トランプ大統領は7月31日、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、カナダに対して課していた25%の追加関税率を8月1日から35%に引き上げる大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同日、ファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも発表した。トランプ氏は7月10日に、カナダに対する追加関税率を35%へ引き上げる意向を記した書簡を公開していた(2025年7月11日記事参照)。

トランプ氏は3月から、不法移民と合成麻薬フェンタニルの流入阻止を目的に、カナダ産のエネルギー製品やカリウムに10%、それ以外の品目に25%の追加関税を課していた(2025年3月7日記事参照)。だが、今回の大統領令では、カナダがフェンタニルなどの流入阻止に十分に協力していない、米国に報復措置を講じている、などと批判した。またファクトシートでは、メキシコのカルテルはカナダでフェンタニル生産施設を拡大しているほか、カナダを拠点とする麻薬密売組織が同国西部の人口密集地域や農村部に「巨大施設」を保持しているなどと指摘した。

大統領令ではこれらを踏まえ、IEEPA関税率を35%に引き上げた。米国東部時間2025年8月1日午前0時1分以降に通関した品目から適用する。追加関税率が10%のエネルギー製品やカリウムについては、税率の変更はない。また、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則を満たした品目は、引き続き追加関税の対象外となるほか、自動車・同部品と鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税との累積も停止されたままとなる(2025年6月4日記事参照)。

USMCAの原産地規則を満たしていない品目で、米国税関・国境警備局(CBP)が迂回輸出と判断した品目に対しては、追加関税率が40%になるほか罰金なども科される。また、商務長官、国土安全保障長官は、CBP局長、米国通商代表部(USTR)代表と協力しながら、迂回スキームに利用された国・地域や施設の一覧を6カ月ごとに公表する。7月31日に発表された新しい相互関税率を定めた大統領令でも、同様の規定が定められている(2025年8月1日記事参照)。

なおトランプ氏は、カナダと同様にフェンタニルなどの流入阻止を目的に追加関税を課しているメキシコに対して、8月1日から追加関税率を30%に引き上げるとの書簡を公開していた(2025年7月14日記事参照)。しかし7月31日に、追加関税率引き上げの90日間延期で合意したと、トランプ氏はSNSで、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は記者会見でそれぞれ発表した(2025年8月1日記事参照)。相互関税率を定めた4月の大統領令でメキシコとカナダは、その他の国・地域と扱いが異なり、フェンタニルIEEPA追加関税が課されている間は相互関税が課されないと記され、相互関税の適用停止期限が定められていなかった。トランプ氏がメキシコに送った書簡に法的拘束力はないため、同国に対する追加関税率引き上げ延期に関する公式文書は、今後も発表されない可能性がある。

(赤平大寿)

(米国、カナダ、メキシコ)

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