トランプ米大統領、ロシア産石油購入を理由に、インドに25%の追加関税課す大統領令発表
(米国、インド、ロシア、ウクライナ)
ニューヨーク発
2025年08月07日
米国のドナルド・トランプ大統領は8月6日、ロシアからの石油輸入を理由にインドへの25%の追加関税賦課を定めた大統領令を発表した。ファクトシート
も同日発表した。インドへの追加関税率は相互関税率とあわせて50%になる見込みだ。
米国は2021年4月、ロシアによる米国大統領選挙への介入や米国企業へのサイバー攻撃などを理由に国家緊急事態を宣言し、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいてロシアの企業などに金融制裁を科した(2021年4月16日記事参照)。2022年3月には緊急事態の適用範囲にロシアがウクライナに対して行った措置を含むよう拡大し、石油などロシアからのエネルギー輸入を全面的に禁止した(2022年3月9日記事参照)。
今回の大統領令では、この緊急事態は継続しているとして、インドがロシアから石油を直接的または間接的に輸入していることを理由に、インドから米国に輸入される製品に25%の追加関税を課すと発表した。ファクトシートでは、インドがロシアの石油を再販売して利益を得ていることがロシアによる侵略を助長すると非難した。
新たな追加関税は、今回の大統領令の発効から21日後の米国東部時間8月27日午前0時1分以降に通関した貨物に対して適用する。ただし、同8月27日午前0時1分までに積載港で船舶に積載され、最終輸送手段で輸送中であり、同9月17日午前0時1分より前に通関された製品には適用しない。25%の追加関税は一般関税率(MFN税率)などに追加して課される。また、インドに対する相互関税も追加して賦課される。米国はインドに対する相互関税を25%としているため(2025年8月1日記事参照)、原則としてインド製品の輸入に当たっては、一般関税率に加え、50%の追加関税が課されることになる。ただし、1962年貿易拡大法第232条に基づく既存または将来の措置の対象となる品目(注1)、個人手荷物など合衆国法典第50編第1702条(b)の対象品目、4月に発表した相互関税を課す大統領令の付属書IIの適用対象外品目などには適用しない(注2)。
ロシア産石油の定義は、「生産、販売に関与する事業体の国籍にかかわらず、ロシアで採掘、精製、またはロシアから輸出された原油・石油製品」とした。「間接的な輸入」の定義は、「ロシアの石油を仲介業者または第三国を通じて購入することを含む、当該石油の起源がロシアだと合理的に遡及(そきゅう)できる場合」とした。この判断は、商務長官が国務長官、財務長官と協議の上で行う。
また、インド以外の国に対しては、商務長官が国務長官、財務長官らと協議の上、ロシアの石油を直接的または間接的に輸入しているか否かを判断する。商務長官が輸入していると判断した場合、国務長官が他の閣僚らと協議し、25%の追加関税賦課など当該国に対する措置を大統領に勧告する。
(注1)現在、232条を基に鉄鋼・アルミニウム、自動車・同部品、銅に対して追加関税が課されている。そのほか調査中の案件などは、商務省産業安全保障局(BIS)のウェブサイト参照。
(注2)半導体やスマートフォンなども対象外になるとみられる(2025年4月14日記事参照)。近年、インドから米国へのスマートフォン輸入が拡大している。詳しくは、2025年3月19日付地域・分析レポート参照。
(赤平大寿)
(米国、インド、ロシア、ウクライナ)
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