トランプ米大統領、全世界に非課税基準額(デミニミス)ルール適用を停止する大統領令発表

(米国、世界)

ニューヨーク発

2025年08月01日

米国のドナルド・トランプ大統領は7月30日、少額貨物の輸入で非課税基準額(デミニミス)ルールを廃止する大統領令を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ファクトシートも同日発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国では1930年関税法321条に基づき、輸入申告額が800ドル以下の少額貨物の輸入に対して、関税支払いなどを免除し、簡易的な方法で輸入通関ができるデミニミスルールを設けていた。

トランプ氏は2月に発表した大統領令で、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、合成麻薬フェンタニルや不法移民の流入阻止に向け、メキシコ、カナダ、中国に対して追加関税を課すとともに、これらの国に対してデミ二ミスの適用停止も定めていた。メキシコとカナダに対してはその後、適用停止を留保したが(2025年3月4日記事参照)、中国には5月2日から適用を停止した(2025年4月4日記事参照)。また、4月に発表した、IEEPAに基づいて相互関税を課す大統領令では、関税徴収に関する適切なシステムが整い次第、全世界向けにデミ二ミスの適用を停止することを定めていた(2025年4月3日記事参照)。

今回の大統領令では、中国に対するデミ二ミスの適用停止を継続するとともに、これまで留保されていたその他の国・地域に対しても、デミ二ミスの適用停止を決めた。これにより、米国東部時間8月29日午前0時1分以降に通関する貨物は、国際郵便ネットワークを通じて送付されるものを除き、電子申請システム(ACE)を利用した輸入申告書類の提出が必要で、適切な関税なども支払わなければならない。

国際郵便ネットワークを通じた輸入に対する関税率は、この大統領令の適用日から6カ月間、次の2とおりを選択できる。それ以後は1.の従価税を適用する。

  1. 従価税:IEEPAに基づく関税率を郵便物の原産国・価値に対して適用。
  2. 従量税:郵便物の原産国に応じたIEEPA関税率が16%未満の場合、1点当たり80ドル、IEEPA関税率16~25%の場合、同160ドル、IEEPA関税率が25%を超える場合、同200ドル(注)。

国際郵便ネットワークを利用する場合、税関・国境警備局(CBP)が新たな輸入申告手続きを確立して連邦官報に公示するまでは、関税以外の手数料などは引き続きかからず、輸入申告書の作成も不要となる。ただし、郵便物の原産国はCBPに申告しなければならない。

米国への旅行者が個人用物品として200ドルまで免税で持ち込むことができる措置などは、今後も継続する。

なお、7月4日に成立した「大きく美しい1つの法案法(OBBBA)」で、デミニミスは2027年7月1日での廃止が決まっていた(2025年7月8日記事参照)。今回の大統領令でデミニミスの利用期限は約1年半前倒しされたかっこうだ。デミニミスの停止が物価上昇のゲームチェンジャーになるとの指摘もあり、今後の物価への影響も懸念される。

(注)現在、IEEPAに基づいて課している追加関税率は、フェンタニルなどの流入阻止を目的としたメキシコとカナダに対する原則25%、中国に対する20%、それ以外の国・地域に対するベースライン関税10%となっている。8月1日以降に課する相互関税もIEEPAに基づく。

(赤平大寿)

(米国、世界)

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