米USTR、301条対中追加関税の適用除外を約1年間延長、米中合意の履行を完了

(米国、中国)

ニューヨーク発

2025年11月27日

米国通商代表部(USTR)は11月26日、1974年通商法301条に基づく対中追加関税(301条関税)の適用除外措置の期限を2025年11月29日から2026年11月10日に延長すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回の適用除外措置の期限の延長で、2025年10月30日に韓国で実施された米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談での合意(2025年10月31日記事11月4日記事参照)のうち、米国が約束した措置は全て履行されたことになる。

301条関税は、米国が中国原産品の輸入に対して2018年以降に賦課を開始した追加関税措置だ。米国関税分類番号(HTSコード)8桁ベースで、全品目の9割以上が適用対象となっており、7.5~100%の追加関税率が設定されている。一方で、電子機器や医療機器、太陽電池製造装置など178品目に対しては適用除外措置が設けられていた。

トランプ政権2期目に入って以降、USTRはこれまで2度にわたり期限の延期を繰り返しており、最新の期限が11月29日に迫っていた(2025年6月3日記事8月29日記事参照)。延長されなければ、2024年の米国の対中輸入額ベースで約400億ドル相当に7.5~25%の301条関税が適用される可能性があったが(2025年5月26日記事参照)、今回の延長で回避された。

301条関税の適用除外措置について、2026年11月10日まで期限を延長することは2025年10月の米中首脳会談で合意していた(2025年11月4日記事参照)。また、USTRは301条関税の適用除外措置の期限の延長の是非に関して、米中首脳会談以前にパブリックコメントを募集していた(2025年9月18日記事参照)。USTRは官報案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の中で、今回の延長はトランプ氏のUSTRに対する指示に加えて、このパブリックコメントも踏まえた決定だと説明している。

なお、10月の米中合意では、米国の対応として、301条関税の適用除外措置の期限の延長のほかにも、(1)米国の輸出管理措置における「関連事業体ルール」の適用停止、(2)301条に基づく中国建造船などの米国港湾に対する入港料金の適用停止、(3)国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく追加関税(フェンタニル関税)の20%から10%への引き下げが含まれていた。既に、(1)~(3)の措置は実行済みであることから(2025年11月6日記事11月11日記事参照)、今回の301条関税の適用除外措置の期限延長で、米国側の合意内容の履行は完了したことになる。

米国が合意内容を着実に履行した中、米中経済関係の行方を占う今後の焦点は、中国が約束した重要鉱物・レアアースの輸出管理の緩和となる。ただし、首都ワシントンの複数の米中関係有識者は、中国が今後も重要鉱物・レアアースの輸出を規制する可能性を指摘しており(2025年11月17日記事参照)、米国が中国の対応を否定的に評価する場合には、両国経済関係が不安定な状況に戻ることも想定される。

(葛西泰介)

(米国、中国)

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