米商務省、輸出管理強化の「関連事業体ルール」のFAQ公表、輸出者に積極確認義務
(米国)
ニューヨーク発
2025年10月03日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は9月29日、輸出規制の適用範囲を拡大する「関連事業体ルール」を導入した。これにより、従来のエンティティー・リスト(EL)や軍事エンドユーザーリスト(MEUリスト)に掲載されている事業体だけでなく、これらリスト掲載事業体が50%以上所有する事業体も規制対象となった(2025年9月30日記事参照)。これら対象事業体に輸出管理規則(EAR)対象品目を輸出・再輸出・みなし輸出などする場合、原則としてBISの輸出許可(ライセンス)が必要になる。BISは同日、ELに関する「よくある質問(FAQ)」を更新し、関連事業体ルールに関する13項目(Q41~53)を追加した。主な内容は次のとおり。
- 輸出者の確認義務:輸出者は、取引相手がリスト掲載事業体に一部でも所有されていると認識している場合、その所有割合を確認する「積極的義務」を負う。割合を特定できない場合は、ライセンス申請が必要となる(Q41)。
- 外国支店・営業拠点も対象:従来はリスト掲載事業体の外国支店や営業拠点が取引相手であっても、取引相手がリスト掲載されていなければ、または対象品目の最終使用者(エンドユーザー)がリスト掲載事業体であることを輸出者が認識していなければ、ライセンス申請要件は適用されなかったが、今後は申請が必要となる(Q45)。
- 公的リストの限界:商務省国際貿易局(ITA)の「統合スクリーニングリスト(CSL、2022年12月23日記事参照)」には、EL掲載事業体が50%以上所有する事業体は含まれておらず、今後は網羅的リストとして利用できない(Q46)。一方、民間ベンダーが提供するスクリーニングリソースはコンプライアンスに有用と考えられる(Q47)。
- 間接所有も対象:例えば、EL掲載事業体Aが非掲載事業体Bを50%所有し、さらにBが非掲載事業体Cを50%所有している場合、関連事業体ルールに基づき、Cとの取引もライセンス申請が必要となる(Q52)。
米国法律事務所が企業への影響を解説
米国法律事務所のメイヤー・ブラウンは10月1日に関連事業体ルールの解説記事を公開した。同事務所は、ELやMEUリストなどへの事業体の掲載数は現在3,000以上だが、関連事業体ルールによって輸出規制の対象となる事業体は数万単位に増加する可能性が高いと指摘した。また、リスト掲載事業体の多くは中国やロシアに所在するとしつつも、EU、英国、日本などにも存在するため、「これまでリスクが低いとされてきた地域でも、50%ルールの(コンプライアンス)リスクは排除されない」と解説した。さらに、輸出者のデューディリジェンスおよびライセンス申請の範囲が大幅に拡大すると警告し、企業に対して(1)リスクベースのプロセスを採用すること、(2)取引相手の資本関係を直接・間接問わず把握・マッピングすること、(3)ライセンス要否の判断根拠を文書として保存することを推奨した。
(葛西泰介)
(米国)
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