英政府、産業戦略で2,500億ポンド超の投資確保
(英国、米国、日本)
ロンドン発
2025年10月20日
英国政府は10月7日、2025年7~9月(第3四半期)の産業戦略関連の進捗と成果を発表した。同戦略は6月に開始された(2025年6月25日記事参照)。8つの成長産業(IS-8、添付資料表参照)に対し、総額2,500億ポンド(約50兆7,500億円、1ポンド=約203円)超の投資をこれまでに確保し、約4万5,000人の質の高い雇用を創出すると公表した。
第3四半期の主な成果として、次の4点を挙げている。
- 産業戦略の公表時点で未公表だった3分野(注1)の戦略を公表し、IS-8全ての分野で10カ年計画を定めた。
- 「米英技術繁栄協定に関する覚書」の締結を通じ(2025年9月22日記事参照)、米国企業による1,500億ポンド規模の投資を誘致し、約7,600人の雇用を創出。
- 「一時的不足職種リスト」を作成し(2025年7月4日記事参照)、データアナリストや自動車整備士など、IS-8に関連する主要職種を技能労働者ビザの新要件の対象外とした。
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エネルギー多消費産業向け電力コスト削減に関する意見公募
を完了。対象事業者が負担するネットワーク料金の補償率を2026年4月から60%から90%へ引き上げる方針を示した。
クリーンエネルギー産業分野では、差額決済契約(Contracts for Difference:CfD)制度(注2)の第7ラウンドで、サプライチェーンへの投資を行う企業に追加支援を行うクリーン産業ボーナス(CIB)が総額5億4,400万ポンドの予算で開始された(2025年5月19日記事参照)。また、第1回「水素アロケーションラウンド」(HAR1)の水素プロジェクト(2023年12月18日記事参照)が進行中で、700人超の雇用を創出している。さらに、新たに2件の二酸化炭素(CO2)回収・有効利用・貯留(CCUS)プロジェクトがハイネット・クラスターに追加され、ウェールズ北部とイングランド北西部で約3,000人の雇用を支える見込みだ(2025年10月1日記事参照)。
デジタル・テクノロジー分野では、イングランド北東部に新設されるAI(人工知能)グロースゾーンにより、5,000人超の雇用創出と300億ポンドを超える民間投資が見込まれている(2025年10月9日記事参照)。
日英関係では、日英産業戦略パートナーシップが正式に発足した(2025年10月2日記事参照)。両政府は先端製造やクリーンエネルギー、ライフサイエンス、量子・サイバー、宇宙・防衛などの分野で、さらなる協力を推進する意向を表明した。併せて、住友商事による英国主要インフラやクリーンエネルギー事業への75億ポンド規模の投資にも言及があった。
(注1)防衛、金融サービス、ライフサイエンスの3分野
(注2)発電事業者の再エネへの投資リスクを減らすため、対象となる電源の固定価格(ストライクプライス)と市場価格の間の変動する差額を政府が補填(ほてん)する制度。
(バリオ純枝)
(英国、米国、日本)
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