トランプ米政権、英国との先端技術の協力強化覚書を発表、AI・量子などで

(米国、英国)

ニューヨーク発

2025年09月22日

米国のトランプ政権は9月18日、英国との人工知能(AI)や量子技術など先端技術分野の協力強化に関する覚書を発表した。

今回発表した「米英技術繁栄協定(Technology Prosperity Deal)に関する覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、米英両国が5月に合意を発表した「米英経済繁栄協定(Economic Prosperity Deal)」と類似の名称を持つが、内容は異なる。5月の米英合意の内容は、米国による英国製自動車に対する関税割当(TRQ)導入や、英国による米国産農産品に対する市場アクセス拡大を含む、主に関税など通商措置に関するものだったのに対し(2025年5月9日記事5月20日記事6月18日記事参照)、今回の覚書には通商措置は含まれない。代わりに、AI、民生用原子力、核融合、量子、第6世代移動通信システム(6G)、測位・航法・計時(PNT)などの戦略的科学技術分野での協力強化を確認するとともに、研究セキュリティーの確保や、先端技術普及に向けた民間投資の重要性を明記した。

ドナルド・トランプ大統領は覚書に関して、「米国と同盟国の英国がAIの将来の覇権を握る助けとなる」と意義を強調した(政治専門紙「ポリティコ」9月18日)。ホワイトハウスのマイケル・クラチオス大統領補佐官兼科学技術政策局(OSTP)局長は米国政府の発表資料外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で「米国が世界水準の技術を輸出し、科学的発見を加速し、イノベーション推進政策を世界に広げることになる」と述べた。

今回の覚書は、トランプ政権が7月に発表した「AI行動計画」の方針と整合する。同計画は、AI分野での米国の世界的な優位性を強化し、同盟国が戦略的競争相手の技術に依存することを防ぐため、同盟国・パートナー国に向けた米国製AIシステムの輸出促進の方針を掲げている(2025年7月25日記事参照、注)。英国とのAIなど技術分野での協力強化は、同方針を具体化するトランプ政権の取り組みと位置付けられる。

トランプ氏の訪英に合わせて、米国のマイクロソフト、グーグル、エヌビディアなどは英国でのデータセンター開設や投資計画を発表した(2025年9月19日記事参照)。米国製AI半導体の需要を創出するもので、米国のビッグテックや半導体大手の投資拡大がトランプ政権の政策と連動したかたちだ。

(注)同時に、イノベーション推進のための規制緩和や、懸念国に対する技術流出防止に向けた半導体製造サブシステムなどへの輸出管理の厳格化の方針なども示している。

(葛西泰介)

(米国、英国)

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