英政府、産業戦略公表、産業向けにエネルギーコスト削減策など発表

(英国)

ロンドン発

2025年06月25日

英国政府は6月23日、産業戦略を公表した(英国政府ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同戦略の導入は、労働党が2024年7月の総選挙の公約として掲げていたもので、同党が政権獲得後の10月に2035年までの長期的な計画を示すものとして、策定に向けた政策文書を公表していた(2024年10月16日記事参照)。政策文書では8つの成長産業(注1、添付資料表1参照)を特定し、支援策を策定するとしていた。今回公表したのは、全体戦略と、防衛、金融サービス、ライフサイエンスを除く5産業のセクター別の戦略(注2)。

全体戦略(概要は添付資料表2参照)では、簡素化などを通じ、長期的な投資に資する安定性を企業に提供するとしている。具体的には、産業向けのエネルギーコストの削減や、自由かつ公正な貿易の促進、経済安全保障の強化、スキルの強化および人材へのアクセス拡大、規制負担の削減とイノベーションの加速などを挙げている。特にエネルギーコストの削減に関しては、2027年以降、産業競争力強化スキームを導入し、電力消費量の多い製造業に対して、再生可能エネルギー購入義務(Renewables Obligation:RO)や固定価格買取制度(Feed-in Tariffs:FIT)などの賦課金を免除する。また、特にエネルギー消費量の多い産業に対する支援制度「産業スーパーチャージャー」を拡大する。現行制度下では、対象企業について電力網使用料の6割を割り引いているが、これを2026年以降9割に拡大する。日本との関係では、2025年3月に合意した産業戦略パートナーシップに基づき連携を深化するとした。

人材に関しては、成長分野のハイクラス人材の英国への移住を支援するグローバル・タレント・タスクフォースを新設するとともに、特定産業を対象にビザ・移民制度を改革し、外国人材の誘致を図るとしている。

また、地方部や産業集積地域の投資誘致支援として、6億ポンド(約1,182億円、1ポンド=約197円)を投じ、国内で6カ所を選定して支援する。

さらに、鉄鋼や化学といった成長産業向けに重要な原材料や部品を供給する産業や、港湾や電力網など不可欠なインフラを管理する産業を基礎産業(Foundational Industries)と位置づけて支援を行うことで、8つの成長産業の強靭性を高めるとしている。

(注1)先端製造、クリーンエネルギー産業、クリエーティブ産業、防衛、デジタル・テクノロジー、金融サービス、ライフサイエンス、専門・ビジネスサービスの8産業。各産業に含まれる産業分野(フロンティア産業)は添付資料表1参照。

(注2)今回公表されなかった3産業のセクター別の戦略については、今後公表する予定。

(山田恭之)

(英国)

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