ASEAN主要6カ国の第3四半期GDP、半数がマイナス減速基調

(ASEAN、ベトナム、タイ、フィリピン、シンガポール、マレーシア、インドネシア)

アジア大洋州課

2021年11月25日

ASEAN主要6カ国(シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナム、インドネシア)の2021年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率の統計が出そろった(注)。2019年第4四半期(10~12月)以来、6四半期ぶりに主要6カ国全てでプラス成長となった第2四半期(4~6月)から一転、ベトナム、マレーシア、タイがマイナス成長になった。また、残り3カ国もプラス成長は維持したものの、第2四半期に比べて減速した(添付資料表参照)。

厳しいロックダウン敷いたベトナムが観測史上最大の減少率

各国の第3四半期成長率を高い順にみると、第2四半期に、2019年第4四半期以来のプラスに転じたフィリピンが、前年同期比7.1%(第2四半期は同12.0%)と最も高かった。続いて、第1四半期(1~3月)から継続してプラス成長を記録するシンガポールが6.5%(同15.2%、2021年10月14日記事参照)、第2四半期にプラスに転じたインドネシアが3.5%(同7.1%)とプラス成長を記録した(2021年11月12日記事参照)。

マイナス成長の国をみると、タイがマイナス0.3%(同7.6%)と、フィリピンと同様に2019年第4四半期以来のプラスに転じた第2四半期から一転、再びマイナスとなった。マレーシアは第2四半期に16.1%と2桁台を記録したが、新型コロナウイルスの感染再拡大による長期の経済活動制限が響き、第3四半期はマイナス4.5%を記録(2021年11月19日記事参照)。同じく新型コロナウイルス感染拡大を受けて多くの主要都市で活動制限を実施し、サプライチェーンにも影響が出たベトナムは、マイナス6.2%と、2000年に統計総局が四半期ごとのGDP公表を始めて以来、最大の減少率となった(2021年10月5日記事参照)。

2021年通年の見通しは各国際機関が引き下げ予測

好調だった第2四半期から一転、新型コロナのデルタ型変異株の影響により減速基調となったASEAN主要国だが、2021年通年の予測について、各国際機関も予測を引き下げている。アジア開発銀行(ADB)は9月22日、東南アジア全体の2021年の成長率を3.1%と予測し、前回発表(7月)から0.9ポイント引き下げた(2021年9月29日記事参照)。

また、世界銀行も9月28日、ASEAN5カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)について、2021年の成長率予測を4月発表の4.8%から3.4%に引き下げた(2021年10月7日記事参照)。さらに、直近ではIMFが10月12日、同ASEAN5カ国の成長率について、前回予想から1.4ポイント引き下げた2.9%との予測を発表している(2021年10月18日記事参照)。

ADBや世界銀行は同地域の経済の引き下げの要因について、デルタ株の感染拡大に加え、ワクチン接種の遅れを指摘している。この点、世界銀行は同発表で、ワクチン接種率が10%高いと、四半期のGDP成長率が0.5ポイント高くなったと相関性を指摘している(2021年10月7日記事参照)。ASEAN主要国のワクチン調達状況や接種状況については2021年11月10日記事にまとめている。

(注)各出所は以下のとおり。マレーシア:マレーシア中央銀行/統計局、フィリピン:フィリピン統計庁(PSA)、シンガポール:貿易産業省(MTI)、タイ:タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)、インドネシア:インドネシア中央統計庁(BPS)、ベトナム:ベトナム統計総局。

(三木貴博)

(ASEAN、ベトナム、タイ、フィリピン、シンガポール、マレーシア、インドネシア)

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