世界銀行、中国を除く東アジア・大洋州の新興国の成長見通しを引き下げ

(ASEAN、中国、ベトナム、インドネシア)

アジア大洋州課

2021年10月07日

世界銀行は9月28日、「東アジア・大洋州地域 半期経済報告書2021年10月版外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、東アジア・大洋州の新興国(注)の2021年の経済成長率について、新型コロナウイルスのデルタ型変異株の感染拡大の影響で、域内の大半の国・地域で下方修正され、景気回復に停滞感がみられると指摘した。

同地域全体の成長率は、経済規模の大きい中国の高成長(8.5%、前回4月発表から0.4ポイント増)を反映し、前回発表から0.1ポイント引き上げた7.5%と予測した(添付資料表1参照)。一方、中国を除く同地域の成長率については、前回発表から1.9ポイント引き下げた2.5%と予測し、中国とそれ以外の地域の「新型コロナ禍」からの回復の差が鮮明となった。

中国、ベトナム、インドネシアはパンデミック(感染爆発)前の水準に回復

世界銀行は、過去の報告で同地域の回復のスピードは国・地域によって異なり、不均等だと指摘(2021年6月15日記事参照)したが、デルタ株による感染再拡大により、回復の差が明確になっていると指摘。中国、ベトナム、ラオスが2020年時点で、インドネシアが2021年時点で、既にパンデミック前の経済水準(2019年)に回復しているとした。一方、マレーシアやカンボジアなどは回復が2022年となる予測し、タイやフィリピン、大洋州諸国の多くは2023年になってもパンデミック前の水準を下回ると予測した(添付資料表2参照)。

ワクチンの接種の進捗と成長率の関連性を指摘

世界銀行は、東アジア・大洋州の新興国の多くでとられている新型コロナウイルスの感染対策のための各種規制が、経済活動の制約になっていると指摘。2020年に同地域で成功した「検査を行い、感染者を追跡し、隔離する」という戦略は、より感染力の強いデルタ型に対しては効果的ではなかったと指摘した。また、死亡率や感染率を下げるためのワクチン接種も遅れているとした。世界銀行は、ワクチン接種の進捗度合いが同地域の経済成長に与える影響について、ワクチン接種率が10%高いと、四半期のGDP成長率が0.5ポイント高くなったと相関性を指摘した。なお、同地域のワクチン接種率については、域内の大半の国・地域において、2022年前半までに人口の60%以上がワクチン接種を完了できると予測した。

(注)中国、モンゴル、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、パプアニューギニア、フィリピン、タイ、東ティモール、ベトナム、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、ナウル、パラオ、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツで構成。

(三木貴博)

(ASEAN、中国、ベトナム、インドネシア)

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