特集:駐在員が見るアジアの投資環境北東アジア1
2018年4月2日
中国・北京
規制緩和でコンビニ増加へ
北京市政府は2017年12月に「コンビニチェーンの発展環境のさらなる改善への活動方案に関する通知」を発表した。それによると同市政府は、2020 年に市全体のコンビニ店舗数を現在の2倍の約3,000 店に拡大することを目指し、営業許可取得手続きの簡素化などを進めるとしている。背景には、「プチぜいたく」や「より高品質な製品」などを求める市民からの需要がある。また、この通知は中央政府が進める規制緩和策である「放管服(行政簡素化と権限委譲、緩和と管理の結合、サービスの最適化の略称)」の一環として位置づけられる。
一方でコンビニのサービスレベルの向上、物流の効率化などが課題とされており、日系コンビニ各社のノウハウがこれらの課題解決の参考になるとみられる。日系企業にとって、さまざまな分野で取り組みが進む「放管服」政策は、手続きコストの低減だけでなく、ビジネスチャンスにもつながる可能性があるため、今後が注目される。
- 執筆者紹介
- ジェトロ・北京事務所 経済信息部 主管 趙 薇(ジャオ ウェイ)
- 2003年、ジェトロ入構。北京事務所建設産業部、進出企業支援センターを経て、2014年4月より現職。
中国・香港
新たな決済システムの導入に期待
香港では、中国本土とは異なりいまだに現金が広く使用され、モバイル決済の普及率は低い。だが香港人は不便さを感じてはいない。現金に加え、クレジットカードおよびオクトパスカード(プリペイドカード)を組み合わせた支払い手法が既に定着しているためだ。
しかし、香港でもモバイル決済普及に向けた取り組みが進められている。香港特別行政区政府は2018年9月に、24時間365日利用可能な即時決済・送金サービス「快速支払システム(FPS)」の導入を予定している。FPSは、さまざまなデジタル決済アプリで利用可能。加えて、FPS の各小売店での導入を促進するべく、モバイル決済システムに対応する統一QRコードも開発・導入されることとなっている。
コストの高さは香港でのビジネス展開上引き続き大きな課題ではあるが、香港が有する「レバレッジ」機能を活用し、香港を通じて広域でのビジネス開拓を図る企業は少なくない。今回のシステムの導入が、香港でのビジネス展開の利便性向上に資する重要な「ツール」として活用が進むことを期待したい。
- 執筆者紹介
- ジェトロ・香港事務所 カン カレン
- 2016年香港大学文学部日本研究学科卒業。2016年9月より現職。
中国・上海
「インターネット+」により急成長、オンライン教育が大ブーム
2015年に「インターネット+行動計画」が策定されてから、インターネットを活用した個人向けサービスの急成長が続いている。その中でも、PC、PAD、スマートフォンを使い、リアルタイムで授業や質疑応答を受けられるオンライン教育が人気だ。iResearchの調査によると、2016年の中国のオンライン教育の市場規模は前年比27.3%増の1,560億元に上る。同社は、2017年の市場規模が2,000億元に拡大すると予測している。
特にK12(幼稚園から始まり高等学校を卒業するまでの12年間の教育期間を指す)向けのオンライン教育への投資が盛んだ。ネーティブ講師による子供向けオンライン英語学習に特化しているVIPKIDは、有料会員数20万人を獲得しており、2017年の売上高は50億元(約850億円)と好調である。また、ニューヨーク市場に上場している中国唯一のオンライン教育TAL Educationは、400万人のユーザーが利用している。
教育分野への投資が盛んな背景には、中国の保護者が持つ教育への価値観がある。トムソン・ロイターの調査では、「子供への教育投資」が最も重要な投資と回答した中国の保護者は59%と、世界平均(32%)を大きく上回っている。
また、上海市では年々事務所賃料が上昇する傾向にある。オンライン教育であれば、実店舗を構える必要がなく、こうしたコストを節約することが可能だ。
これからも「インターネット+教育」によるオンライン教育サービスの可能性はさらに広がりそうだ。
- 執筆者紹介
- ジェトロ・上海事務所 呉 秀媛(ゴ シュウエン)
- 2010年11月にジェトロ・上海事務所に入構し、同所の知的財産部、農林・水産食品部を経て、現在経済信息・機械環境産業部に所属している。