輸出多角化に向けたバングラデシュ保税制度改革

2026年8月20日

バングラデシュの輸出は、既製服(RMG)産業への依存度が高い。輸出振興庁(EPB)によると、2024/2025年度(2024年7月~2025年6月)の輸出額は約483億ドルであり、このうちRMGに該当するHSコード61類・62類の輸出額は約393億ドルと、全体の81.4%を占める。これまで同国の輸出競争力は、豊富な労働力を背景としたRMG産業を中心に形成されてきた。

一方、後発開発途上国(LDC)卒業後は、国際市場における競争条件の変化が見込まれており、輸出品目や輸出産業の多様化が政策課題となっている(2026年6月3日付ビジネス短信参照)。こうした背景の下、バングラデシュ政府は輸出関連制度の見直しを進めている。2026/2027年度予算では輸出促進・輸出多角化に向けた政策方針が示され、国家歳入庁(NBR)は保税制度関連の政府通達(Statutory Regulatory Order:SRO)を公表した。今回の制度改正は、従来RMG産業を中心に利用されてきた保税制度について、対象分野および利用企業の範囲を広げる方向性を示したものといえる。

2026/2027年度予算で保税制度利用拡大の方向性を提示

保税制度とは、輸出製品の製造に使用する輸入原材料について一定条件の下で関税などを免除する制度で、輸出企業のコスト競争力を支える仕組みとなっている。バングラデシュでは、これまで輸出規模が大きく、輸出加工体制が確立していたRMG産業を中心に保税制度が活用されてきた。一方、非RMG分野では制度利用が限定的であり、輸出多角化を進める上では、幅広い製造業が活用できる制度環境の整備が課題となっていた。

アミール・コスル・マフムド・チョードリー財務・計画相による2026/2027年度予算演説では、輸出促進および輸出品目の多様化に向けた政策方針が示され、革製品、履物、ホームテキスタイルなど非RMG分野の輸出振興に取り組む方向性が示された。また、その関連施策として、保税制度を含む輸出支援制度の利用拡大が掲げられた。なお、予算演説では一般保税(General Bond)の有効期間について、従来の1年間から3年間へ延長する方針も示されたが、その後NBRが公表した関連通達では具体的な期間延長措置は確認されておらず、本稿執筆時点では方針が示された段階にとどまっている。

NBR、保税制度関連の通達を改正し対象範囲を拡大

NBRは2026年6月11日、保税制度に関する複数のSROを公表した。今回の改正では、保税制度について(1)利用対象企業の拡大、(2)対象分野の拡大、(3)制度利用手続きの整備が進められた。

Direct and Indirect Export Oriented Industries Rulesに関するSROでは、直接輸出企業に加え、輸出企業へ原材料や部品を供給する間接輸出関連企業も制度対象とする枠組みが導入された。従来の保税制度は、最終製品を輸出する企業を中心に利用されてきたが、今回の見直しにより、輸出企業を支える国内サプライヤーも制度利用の対象となる方向性が示された。これにより、輸出競争力を個別企業単位ではなく、原材料供給から最終輸出までのサプライチェーン全体で高める制度設計への転換が進む。

Bonded Warehouse Licensing Rules 2024改正に関するSROでは、保税倉庫ライセンス制度に関する規定が整備された。同規則では、保税倉庫の設置・利用に必要となる申請手続き、ライセンス取得要件、管理上の条件などを規定し、制度利用時に必要となる行政手続きを明確化した。保税制度を利用する企業にとって、必要な許認可や管理条件を事前に把握しやすくなり、制度利用に伴う手続き面の予見可能性向上につながると考えられる。

General Bond Rules 2024改正に関するSROでは、General Bondに関する規定が改正された。改正後は、保税制度を利用できる輸出分野として、革製品、履物、ホームテキスタイル、タオル、リネンなど非RMG分野が明示された。従来、保税制度の利用はRMG産業が中心であったが、今回の改正により、非RMG輸出企業についても輸出向け原材料輸入時の関税負担軽減制度を活用できる範囲が広がった。原材料調達コストは輸出競争力を左右する重要な要素であり、今回の改正は非RMG分野の輸出競争力向上を支える制度面の取り組みといえる。

保税制度改革の政策的意味

バングラデシュでは、RMG産業が長年にわたり輸出成長を牽引してきた。一方で、輸出が特定品目に集中することは、国際市場環境の変化に対するリスク要因となっている。輸出品目の多角化を進めるためには、新たな輸出分野の発展だけでなく、既存の製造企業や関連企業が国際市場で競争できる制度環境を整備することが重要だ。

今回の保税制度改革は、輸出産業の裾野拡大を支える制度基盤の整備と位置付けられる。日本企業がバングラデシュを輸出製造拠点やサプライチェーン拠点として検討する際も、活用可能な制度の選択肢が広がる点は注目される。今後、制度の具体的な運用や申請実務が明確化されれば、RMG以外の分野を含めた投資機会を検討する上での参考となるだろう。

執筆者紹介
ジェトロ・ダッカ事務所 所長
片岡 一生(かたおか かずいき)
経営コンサルティング会社、監査法人、在外公館に勤務後、2022年1月にジェトロ入構。調査部米州課、九州・沖縄地域本部を経て、2025年6月から現職。