建設ラッシュと中国独走
急成長を遂げる南米の新興国ガイアナ(4)

2026年1月15日

本連載前稿までは、南米で驚異的な急成長を遂げるガイアナの現状と課題を伝えた(連載1本目「石油発見で潤う国内経済」参照)。本稿では、同国で物流事業を展開するリサークレッジの代表取締役・新川裕也氏および土亀エディ氏への取材を通じ、建設ラッシュに沸く現地のビジネス環境を報告する。さらに、外国直接投資(FDI)や国民総所得(GNI)の最新データを用い、インタビューで語られた「凄まじい変化」の背景にあるマクロ経済の特異な構造と、インフラ開発で圧倒的存在感を示す中国の影響力について掘り下げて検討する(取材日:2025年12月10日)。


新川氏(左)、土亀氏(右)(ジェトロ撮影)

カリブの小国への第1歩、中古車販売から始まった挑戦

事業内容とビジョン

新川氏によると、同社は2023年に、現地パートナーであるウィールズ(Wheelz)とジョイントベンチャーである「ウィールズ・インターナショナル(Wheelz International)」を設立。中国からダンプトラックを仕入れ、建設資材(砂、石、セメントなど)の運搬をしている。

ガイアナは海洋油田開発を背景に急成長しており、エネルギー、交通、都市インフラ分野で投資ニーズが急速に拡大している。しかし既存インフラは脆弱(ぜいじゃく)で、供給能力・耐久性ともに経済規模の拡大に追い付いていない。同社は「数字だけでなく実態を伴った成長を支える」ことを目指している。

なぜガイアナを選んだのか

新川氏は、中古車ビジネスに着目し、2023年にリサークレッジを設立した。事業拡大を図る中で、約20年にわたり中古車輸出を手掛けてきた土亀氏と出会い、同氏からガイアナの急速な経済成長や将来的なビジネスチャンスについて話を聞いたことが、同国への関心を深めるきっかけとなった。2023年6月、新川氏は自らガイアナを訪問し、現地の経済状況や市場環境を視察。石油開発の兆しを受け、同年10月に土亀氏を事業責任者として迎え、ガイアナにおける物流プロジェクトを本格的に始動した。現地パートナーについては、土亀氏が10年以上の取引実績を有する企業を選定し、信頼関係を基盤とした事業体制を構築している。

現在のビジネスモデル

新川氏は、中国の大手商用車メーカー「陝西汽車控股集団(SHACMAN、注1)」製ダンプトラックを仕入れ、建設資材輸送をしている。車両選定については、「日本製は品質面で優れている一方、ガイアナで求められる積載量や仕様を満たすモデルでは購入価格が高くなる上、船積みスペースの確保や輸送コスト、さらに現地でのメンテナンスサポート体制まで考慮すると、事業運営上の負担が大きい」と説明する。「中国製は現地ニーズに適合する」と語る同氏の言葉は、ガイアナ市場における中国製品・企業の浸透度を象徴している。

次節以降では、彼らが肌で感じている「建設ラッシュ」と「中国の存在感」を、マクロデータから紐解いていく。

データで見る「建設ラッシュ」の正体:FDIの爆発的拡大

首都ジョージタウンでは建設ラッシュが続いている。その多くは中国企業によるプロジェクトだ。新川氏は「毎年訪問するたびに、道路や橋、ショッピングモールが完成しており、変化のスピードは他国に類を見ない」と語る。この現象の裏側には、世界でも稀(まれ)といえる大規模な資本流入がある。

ガイアナに集中する直接投資

ガイアナへのFDI流入額は、2020年から2024年の間に約4.1倍に拡大している。その増加は直線的ではなく、加速度的成長を遂げている(表1参照)。この異常な規模の投資増加は、主に沖合での大規模な石油開発に起因する。特に、エクソンモービル主導のStabroek鉱区の開発や、複数の浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)への巨額な初期投資が、この数値の背景にある。

表1:ガイアナへの外国直接投資(FDI)流入額の推移(△はマイナス値)
FDI流入額
(100万ドル)
前年比増減
2020 2,074 22%
2021 4,468 115%
2022 4,393 △1.7%
2023 7,246 65%
2024 8,630 19%

出所:国連貿易開発会議(UNCTAD)「World Investment Report 2025」 からジェトロ作成

ガイアナのFDI流入の特異性は、他の資源国との比較でも際立っている(図1参照)。比較対象として、ガイアナと同様に近年大型資源が発見され、開発・輸出が本格化した「新興資源国」であるアフリカのモザンビークとセネガルを取り上げる。巨大なLNGプロジェクトを抱えるアフリカ南部のモザンビークでは、2021年のピーク以降、FDIが半減するなど、投資額がプロジェクト単位の波によって変動している。西アフリカのセネガルも2023年に急増した後、2024年に大きく減少している。一方、ガイアナでは、同時期に複数の超大型プロジェクトが連続して進行しているため、大規模かつ安定的なフローが一貫して維持されている。

続いて隣国であるベネズエラとスリナムとの比較だ。ベネズエラは、深刻な経済危機と国際的な経済制裁により、石油資源を持ちながら外資を誘致しにくい状況にある。スリナムは、ガイアナと同じ堆積(たいせき)盆地で石油探査を行っているが、現時点ではマイナスフローが続いており(注2)、ガイアナとは対照的だ。

これらの比較により、ガイアナが他の資源国でみられるような投資の波や急落に影響されず、資本を世界から集中させている極めて特異な存在であることが浮き彫りになる。

図1:外国直接投資(FDI)流入額の推移と比較
(ガイアナ、モザンビーク、セネガル、ベネズエラ、スリナム)
2020年から2024年までのガイアナ、モザンビーク、セネガル、ベネズエラ、スリナムにおける外国直接投資(FDI)流入額の推移を示した図。2020年はガイアナ20億7,400万ドル、モザンビーク30億3,500万ドル、セネガル18億4,600万ドル、ベネズエラ15億400万ドル、スリナム30万ドル。2021年はガイアナ44億6,800万ドル、モザンビーク51億200万ドル、セネガル25億8,800万ドル、ベネズエラ12億1,300万ドル、スリナムはマイナス1億2,400万ドル。2022年はガイアナ43億9,300万ドル、モザンビーク24億5,800万ドル、セネガル29億2,900万ドル、ベネズエラ23億4,900万ドル、スリナム300万ドル。2023年はガイアナ72億4,600万ドル、モザンビーク25億900万ドル、セネガル47億900万ドル、ベネズエラ1,300万ドル、スリナムはマイナス6,300万ドル。2024年はガイアナ86億3,000万ドル、モザンビーク35億5,300万ドル、セネガル20億1,600万ドル、ベネズエラ16億3,300万ドル、スリナムはマイナス2,700万ドル。

出所:国連貿易開発会議(UNCTAD)「World Investment Report 2025」からジェトロ作成

巨額ストックで生産設備を強化

ガイアナの対内直接投資残高(FDI残高)の推移は、経済構造が石油開発により完全に変貌(へんぼう)したことを示している(表2参照)。2000~2010年の10年間で約10億ドル程度の増加だったFDI残高が、2023年から2024年のたった1年で、約104億ドルも増加した。これは過去10年間の増加分の約10倍が、わずか1年で積みあがったことを意味する。この桁違いの成長は、石油発見・開発開始という経済の転換点を明確に示すものである。2024年の約348億ドルという巨額ストックは、Liza油田などに投入される数十億ドル規模のFPSOや海底インフラ設備といった「物理的な資産」として、ガイアナ沖合に存在している。FDI残高の急増は、これらの生産設備が次々と完成し、外資企業の資産として計上されていることを証明している。

表2:ガイアナの対内直接投資残高(FDI残高)推移
FDIストック
(100万ドル)
備考
2000 756 開発初期
2010 1,784 10年間で約2.4倍
2023 24,328 急増期
(2010年比 約13.6倍)
2024 34,729 爆発的拡大
(前年比 約1.4倍)

出所:国連貿易開発会議(UNCTAD)「World Investment Report 2025」 からジェトロ作成

成長のひずみ:GDPとGNIの乖離(かいり)が招く「インフラ整備の焦り」

しかし、この急成長は手放しで喜べるものではない。巨額の投資がもたらす「成長のひずみ」が、政府をインフラ整備へと駆り立てている側面がある。

富の国外流出と国内のひずみ

巨額のFDI残高が巨大な生産能力を生み出す一方で、その利益の多くは配当として国外へ送金されている。その結果、GDP(国内で生み出された富)は急増しても、国民のGNI(実際に受け取る所得)の伸びが伴わないという構造的な問題が生じている。 この乖離は、一人当たりの指標で最も顕著に表れている。世界銀行によると、2024年の1人当たりGDPは2万9,883ドルと統計上は高所得国並みだが、同年の1人当たりGNI(アトラス方式)は2万220ドルにとどまる。この差額は、国内で生み出された富のうち、約3分の1が国民の所得としてではなく、国外に流出していることを意味する。 さらに、先のFDI流入額の国際比較とGNI比較を組み合わせると、ガイアナの構造的な課題が浮き彫りになる。FDI流入額では、ガイアナがセネガルやモザンビークを大きく上回るにもかかわらず、GNI絶対額では、両国を下回る反転現象が起きている(図1と図2参照)。これは、ガイアナの経済成長が外国資本による生産活動(高GDP)に極度に依存している一方、その富の大部分がGNIとしてではなく、国外に流出していることを、国際比較によって裏付けるものである。

図2:国民総所得(GNI)の推移と比較(ガイアナ、モザンビーク、セネガル)
2010年から2024年までのガイアナ、モザンビーク、セネガルの国民総所得(GNI)の推移を示した図。2010年はガイアナ34億4,600万ドル、モザンビーク110億5,200万ドル、セネガル159億7,100万ドル。2011年はガイアナ36億8,200万ドル、モザンビーク143億6,400万ドル、セネガル175億3,200万ドル。2012年はガイアナ40億8,700万ドル、モザンビーク166億1,300万ドル、セネガル173億6,000万ドル。2013年はガイアナ41億9,600万ドル、モザンビーク171億3,900万ドル、セネガル185億9,600万ドル。2014年はガイアナ41億5,400万ドル、モザンビーク177億7,600万ドル、セネガル194億900万ドル。2015年はガイアナ43億500万ドル、モザンビーク159億900万ドル、セネガル173億1,200万ドル。2016年はガイアナ44億3,700万ドル、モザンビーク118億3,400万ドル、セネガル185億4,200万ドル。2017年はガイアナ46億6,500万ドル、モザンビーク128億8,500万ドル、セネガル204億1,000万ドル。2018年はガイアナ46億8,900万ドル、モザンビーク147億3,100万ドル、セネガル225億1,500万ドル。2019年はガイアナ50億9,100万ドル、モザンビーク152億3,600万ドル、セネガル227億9.400万ドル。2020年はガイアナ53億6,500万ドル、モザンビーク139億4,900万ドル、セネガル241億2,200万ドル。2021年はガイアナ64億4,000万ドル、モザンビーク158億2,800万ドル、セネガル268億1,900万ドル。2022年はガイアナ89億1,400万ドル、モザンビーク174億6,200万ドル、セネガル268億9,500万ドル。2023年はガイアナ134億9,200万ドル、モザンビーク191億1,700万ドル、セネガル296億6,300万ドル。2024年はガイアナ162億6,100万ドル、モザンビーク199億ドル、セネガル312億8,700万ドル。

出所:世界銀行データバンクからジェトロ作成

GDPとGNIの大きな乖離は、過去の石油ブームの歴史で観察された「オランダ病(注3)」リスクの1つを示している。GDPが急成長していても、GNIの成長はGDPの成長率ほど劇的ではない。FDIによる巨額の投資は、雇用創出やインフラ整備には貢献するが、富の大部分は石油部門に集中し、国内の他の非石油産業(農業、製造業など)への恩恵は限定的だ。

インフラ投資で存在感を示す中国

ボトルネックの解消役

前節までの分析で、ガイアナ経済が直面するマクロ経済の急成長と国民所得の乖離という構造的なひずみが明らかになった。これらの副作用を緩和し、石油ブームの恩恵を持続可能な国家発展へとつなげるためのカギとなるのが、ボトルネックとなっている道路、橋、電力網といった基礎インフラの緊急整備である。巨額のオイルマネーと将来の成長期待を背景に、ガイアナのインフラ市場は今、世界的な注目を集めている。その中で、圧倒的な資金力と施工スピードを武器に、急速にその存在感を高めているのが中国だ。

貿易データから見る中国の影響

新川氏が「空港も道路も中国企業による施工だ」と語るとおり、市井における中国の存在感は際立っている。ガイアナは、英語圏カリブ諸国で最も早く中国と国交を樹立し、半世紀にわたる協力関係を背景に、最大の貿易パートナーとなった。2018年には「一帯一路(BRI)」協力覚書を締結し、建設・資源・通信分野で中国の投資が拡大している。中国の建設大手「中国港湾工程公司(CHEC)」などが橋、道路、ホテル、空港などの重要インフラを手掛けている。


中国系ホテルの外観(ジェトロ撮影)

また、新川氏が「ガイアナと中国は交易が盛んで、資材調達が容易な点も強み。車両含め、あらゆる物資が中国から輸入される」と語っているとおり、統計上も中国からの輸入超過の動きが顕著だ。

2024年のガイアナの主要貿易相手国は、米国(59.4億ドル)、オランダ(36億ドル)、英国(34.3億ドル)などだ(貿易総額)。ガイアナの輸出は原油や鉱物資源に強く依存しており、米国やオランダ、英国との取引では輸出超過により黒字を計上している。一方、中国との貿易では大幅な赤字を抱えている点が特徴的だ(図3参照)。2024年の対中国輸入額は9.3億ドル(前年比44.1%増)、輸出額は1.4億ドル(同3.6倍)となった。輸入品の中心は機械や鉄鋼製品などの資本財や建設資材であり、これは中国企業によるガイアナ国内でのインフラ投資や資源開発、建設プロジェクトの活発化を裏付けるものだ。こうした状況から、中国との貿易は単なる資源取引というよりも、インフラ開発への投資色が濃いことが明らかである。

図3:ガイアナの主要貿易相手国との輸出入比率および輸出入額
2024年のガイアナにおける主要貿易相手国である米国、オランダ、英国、中国の輸出入の比率と輸出入額を示した図。米国は輸出33.7億ドルで57%、輸入25.7億ドルで43%。オランダは輸出34.8億ドルで97%、輸入1.2億ドルで3%。英国は輸出31.5億ドルで92%、輸入2.8億ドルで8%。中国は輸出1.4億ドルで13%、輸入9.3億ドルで87%。

出所:Global Trade Atlasからジェトロ作成


ウィールズ・インターナショナルが中国から仕入れているSHACMANのダンプトラック(同社提供)

ガイアナ進出における戦略と実務のポイント

ジョイントベンチャーという形態をとった理由

新川氏は「パートナーありきのビジネスを想定していた」と語る。日本から遠隔で事業運営するということは現実的でなく、現地の商習慣や法規制を熟知するパートナーの存在が不可欠だった。出資比率は当社49%、パートナー51%。ガイアナは外資100%でも会社設立は可能だが、石油関連など一部の入札案件ではマイノリティーでないと参加できないため、この比率を選択した。なお、当初の設備投資は同社が多く負担しており、経営面での最終決定権も同社が保持。一方、現地オペレーションはパートナーが担うことで、機動性を確保している。

現地ビジネスで重要なこと

「何よりもパートナーが重要」と新川氏は強調する。日本企業が単独で進出すると、詐欺や商習慣の違いによるトラブルに直面する可能性が高い。ネットワークがものをいう世界であり、信頼できるパートナー探しが成功のカギだ。


新川氏と現地パートナーであるウィールズ(Wheelz)社員(同社提供)

ビジネス上の課題

新川氏は次の3つを挙げる:(1)手続きの遅さ:体感で日本の約3倍の時間がかかる。(2)税法の頻繁な改定:毎年のように変わるため、監査法人の助言を得ながら柔軟なスキーム構築が必要。(3)書類不備:物品購入時に領収書が発行されないなど、書類の不備も多い。現地パートナーがカバーしているが、日本側で定期確認は不可欠。

日本企業へのアドバイスとマインドセット

日本企業へのアドバイスとして新川氏は、「長期ビジョンを持ち、短期的な利益を追わないこと。腰を据え、長期的な視野で信頼関係を構築するのが一番の近道。当社は〈大切な人の「トナリ」にいられる時間を増やす〉を掲げ、道路整備などを通じて国民の生活向上に寄与する姿勢で現地ビジネスに向き合っている。次に、実際に現地へ足を運び、ニーズを確かめ、協業可能なパートナーを見つけることが重要」と語る。

ガイアナ市場は、急速な経済成長とインフラ需要の高まりを背景に、ビジネスチャンスが広がっている。リサークレッジがいち早く建設ラッシュに着目し、中古車販売から物流業へとかじを切ったように、刻々と変化する現地ニーズを捉える機動力こそが不可欠だ。商習慣・制度面のハードルや中国企業の存在感という壁はあるものの、信頼できるパートナーの獲得と長期的な視野を持てば、日本企業にとっても参入余地は十分にある。同社の事例は、その1つの勝ち筋を示していると言えるだろう。


注1:
陝西汽車はグループとして世界100カ国以上に販売ネットワークを展開しており、中南米においては、ペルー、チリなど鉱山や建設需要が大きい国を中心に販売拠点・代理店を構築している。
注2:
FDIのマイナス値は、外資企業が国内の資産を売却・清算したり、あるいは過去の利益を本国へ送金したりする額が新規の投資額を上回っていることを意味する。
注3:
天然資源の新たな発見や輸出急増により、その国の通貨価値が急上昇し、結果として製造業や農業など他産業の輸出競争力が低下、衰退してしまう経済現象。1960年代にオランダで天然ガス田の発見後に製造業が不振に陥ったことから名付けられた。
執筆者紹介
ジェトロ海外ビジネスサポートセンター ビジネス展開課
藤本 海香子(ふじもと みかこ)
2021年、ジェトロ入構。イノベーション・知的財産部知的財産課、ジェトロ・アビジャン事務所を経て2024年7月から現職。