有望産業と優遇措置は
急成長を遂げる南米の新興国ガイアナ(2)
2026年1月15日
2025年1月、日本の外務省による招聘(しょうへい)により、ガイアナ大統領府直轄・投資庁(以下、ガイアナ投資庁)ピーター・ラムサループ長官(注1)が訪日した。日本政府関係者や日本企業、経済団体など、多くの関係者と面談が行われ、幅広い分野において両国の関係強化が確認された。また4月には、大阪・関西万博のガイアナのナショナル・デーを契機に、オニージ・ウォルロンド観光・産業・商業相(当時)が来日。竹内真二経済産業大臣政務官(当時)との会談が行われ、ガイアナに対する日本企業の投資への期待を含む、さらなる両国関係の強化に向けて議論がなされた。ガイアナから両名の訪日を契機として両国の関係構築が進んだこと、日本企業からも同国への関心が得られたこと、また連載1本目の「石油発見で潤う国内経済」で触れた石油収入による急速な経済発展などに鑑みて、ジェトロは2025年10月22~23日にガイアナにおけるビジネス創出を目指し、「ガイアナビジネスミッション2025」を実施した。
本稿では、ビジネスミッションの1日目に実施した、ガイアナ政府関係者による同国のビジネス環境に関する説明会と、石油・ガス産業をサポートする陸上基地への訪問の様子について紹介する。
ガイアナ政府優先分野には各種投資インセンティブあり
本ミッションには日本の商社、物流、インフラ、農業、食品、通信、テクノロジー、コンサルティングなど、多様な分野から合計13社15人が参加した。日本企業の参加目的として、市場や投資環境の調査、ガイアナ関係者とのネットワーク構築、自社製品の販売可能性の模索、パートナー企業の選定などが挙がっていた。
ミッション1日目は、ガイアナ観光・産業・商業省、ガイアナ投資庁による現地のビジネス環境や税制優遇、政府が重要視するセクターの投資状況や政策について説明を受けた。説明会冒頭、観光・産業・商業省のロジャー・ロジャーズ次官があいさつした。ロジャーズ次官は、「ガイアナ政府は今後10年間に注力すべき重要セクターを選定し、最優先で推進していく方針。国際基準を満たし、ガイアナ国民に高品質な製品やサービスを提供できる企業と協力したい」と発言し、重点分野において海外からの投資を積極的に奨励していく意向を示した。
続いて、ガイアナ投資庁のジョン・エッジヒル投資担当シニアディレクターが、ガイアナの投資環境について説明した。エッジヒル氏によれば、ガイアナ政府は、石油生産による収入をテコに、注力分野を中心に経済の多角化を推進しており、各種優遇措置や税制インセンティブ、その他の支援を提供している。注力分野やインセンティブについては、連載1本目の「石油発見で潤う国内経済」を参照。エッジヒルズ氏の説明の中で言及があった、Region 6とRegion 9(注2)の開発状況について紹介する。ガイアナ東部に位置し、スリナムやブラジルと接しているRegion 6については、石油・ガス関連の研修施設も建設済みで、住宅地を整備し、ホテルや商業モール、物流拠点を備えた商業地区を建設する予定とのこと。またガイアナの課題とされている十分な水深(喫水)がある港湾施設についても、同州において建設予定だ。南部に位置し、ブラジルと接するRegion 9については、既に工業用地がいくつかあるが、新たな工業用地を設ける予定だ。同地域では製造業に加え、鉱業にも注力する予定で、ガイアナ全土で1年以内にリチウムやホウ素、その他の希少鉱物の埋蔵量を調査し、マッピングする計画がある。
Q&Aセッションでは、まず日系企業から優遇セクターへのインセンティブの詳細について質問が挙がった。同質問に対してロジャーズ次官は、「所得税(産業支援)法〔INCOME TAX (IN AID OF INDUSTRY) ACT〕と2004年投資法(2004 INVESTMENT ACT)に規定されている」と回答した。所得税法を見ると、以下の経済活動において法人税の免除が認められる場合もあると記載がある。免税期間は最大10年まで付与されるが、(10)の経済活動は10年を超えて法人税の免税を受けられる可能性がある。
- (1)
- 農業開発および農業加工(水産養殖およびバイオ燃料生産を含む)
- (2)
- 情報通信技術
- (3)
- 石油探査、採掘および精製
- (4)
- 鉱物探査、採掘および精製
- (5)
- 観光施設
- (6)
- 付加価値のある木材加工
- (7)
- 繊維生産
- (8)
- バイオテクノロジー
- (9)
- 新規医薬品・化学化合物の開発・製造、ならびに注射剤製造用原料の加 工
- (10)
- インフラ整備、再生可能エネルギー源を用いた電力生産を含む
- (11)
- 冷蔵貯蔵およびパッケージング
- (12)
- そのほか、財務相が政令で定める経済活動
その他の日系企業からは、観光業に関して外国人観光客の誘致目標(人数)や、建設業に関して現在の建設ブームに対する今後の見通しについて質問が挙がった。ロジャーズ次官は「外国人観光客を呼び込む目標に関して、2030年までに100万人を目指す。ガイアナを経由地として利用する訪問者の目標は2030年までに300万人を目指す。建設ブームに関しての予測は難しいが、今後は内陸部のインフラ開発も進むので、少なくとも40~50年はこの建設ブームが続くだろう」と回答した。


(ジェトロ撮影)
また1日目の午後は、米国系石油メジャー、エクソンモービルの油田プロジェクトで使用される資材保管、配管製造などを行うデメララ川河口付近の沿岸に作られた陸上基地(ショアベース)Vreed en Hoop Shore Baseを視察した。Vreed en Hoop Shore Baseの担当者によれば、同陸上基地は、ガイアナのコングロマリットとベルギーの海洋インフラ建設企業のヤン・ドゥ・ヌル(Jan De Nul)の合弁企業が運営しており、現在エクソンモービルがガイアナで進めている3つの沖合油田開発プロジェクト「ユアル(Uaru)」「ウィップテイル(Whiptail)」「イエローテイル(Yellowtail)」のサポートをしている。エクソンモービルは当初、パイプライン・エンド・ターミネーション(PLET、注3)をイタリアで製造してガイアナに輸入していたが、現在は同陸上基地で製造している。陸上基地の敷地面積は44エーカー(約17万8,000平方メートル)を誇り、敷地内は数カ所の製作所を設置している。向こう10年で大西洋側に1,500エーカーまで拡張予定で、燃料を保管するタンクファームになる予定だ。
進出日系企業から「ショアベースは油田開発やFPSOのためだけに利用されているのか」という質問が挙がった。担当者によれば、現在フェンス内で行われている開発は、全てエクソンモービルのプロジェクト用に利用されているが、今後また敷地が拡大すれば、エクソンモービルのプロジェクト以外にも、他のプロジェクトや、他の船舶、他の作業用に開放される予定ということだ。

(ジェトロ撮影)

油田プロジェクト用の資材保管、配管製造に使用
されている(ジェトロ撮影)
- 注1:
- ガイアナ投資庁は、大統領府が直轄する投資促進機関。国内外の投資家に情報提供や支援をしており、外国企業にとってのガイアナビジネス窓口として機能している。ラムサループ長官は現職のイルファーン・アリ大統領に近い存在といわれており、ビジネスを進める上でキーパーソンとなる人物の1人。
- 注2:
- ガイアナは合計10州。行政区画が分けられており、固有の名称もあるが、単に数字で呼ばれることもある。「Region 6」は東ベルビセ=コレンティネ州、「Region 9」はアッパー・タクトゥ=アッパー・エセキボ州を指す。
- 注3:
- 海底パイプラインの終端部分に設置される構造物。
急成長を遂げる南米の新興国ガイアナ
- 執筆者紹介
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ジェトロ企画部企画課海外地域戦略班(中南米担当)
小西 健友(こにし けんゆう) - 2022年、ジェトロ入構。調査部米州課中南米班でメキシコや、ブラジルを中心とするメルコスールの政治・経済の調査を担当。2024年9月から現職。




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