自動化需要と産業用AIの広がり
IMTSにみる米製造業の潮流(1)
2026年10月26日
米国の製造業では、自動化の対象が個々の設備から複数の生産工程、さらには工場全体へと広がりつつある。米国では2024年9月以降、コロナ禍で低迷していた製造技術への需要が回復し始めた。足元では受注額の伸びが受注台数の伸びを上回っており、米国製造技術協会(AMT)は、その背景の1つに工作機械とともに導入される自動化設備への需要を挙げている。
こうした自動化への需要が広がる中、AMTが2026年9月に主催した世界4大工作機械展示会の1つ「IMTS(International Manufacturing Technology Show)2026」(2026年10月6日付ビジネス短信参照)では、自動化の高度化に向けた新たなテーマとして、産業用(インダストリアル)人工知能(AI)(注1) を扱う専用展示エリアとカンファレンスが初めて設けられた。一方、製造現場でのAI活用は個別工程が中心で、複数の設備や工程にまたがる大規模展開は限られており、AIの活用に向けたデータ整備も課題となっている。
本稿では、AMTの受注統計と「オートメーション・レポート2026」(注2)、およびIMTS 2026の展示・カンファレンス報告を基に、自動化需要の広がりと高度化を踏まえ、産業用AIの活用がどこまで進み、実装にはどのような条件が求められるのかを考察する。
受注額の伸び、受注台数の伸びを上回る
AMTは2026年9月13日、工作機械などの製造設備の受注動向を示す「米国製造技術受注(USMTO)」の7月実績を発表した。同発表によると、製造設備の受注は2024年9月から回復局面に入り、2024年8月から2026年7月までに、月ごとの変動をならした受注額の12カ月移動平均は50.2%増加し、受注台数も同17.1%増えた。
2026年1~7月の受注額は、前年同期比37.1%増の40億3,000万ドルとなった。一方、受注台数の伸びは13.0%にとどまり、受注額の伸びが受注台数の伸びを大きく上回った(図参照)。この差の主な背景として、AMTは、金属切削機械市場では比較的緩やかなインフレ圧力が生じたものの、工作機械の自動化に対する需要が継続したことを挙げている。
出所:AMT「AMT NOW: IMTS 2026 Recap」およびUSMTO月次資料を基にジェトロ作成
自動化の対象、設備単体から工場全体へ
AMTは「オートメーション・レポート2026」で、自動化の範囲が、個々の設備から複数の設備を連携させた生産工程、さらに工場全体へ広がりつつあると指摘した。工場全体の自動化では、生産管理システムや基幹システム、工作機械から得られるデータ、デジタルツイン、AIを活用した生産計画などを通じて、製造設備やシステムを一体的に運用することが重視される。また、AIも生産計画の策定、画像を用いた品質検査、ロボットのプログラミング、部品搬送など、個別の工程において取り入れられている。一方、複数の設備や工程にまたがる大規模展開は、いまだに限られている。
自動化の高度化、産業用AIも新たなテーマに
展示内容からも、自動化を巡るテーマがこの2年間で変化したことがうかがえる。前回のIMTS(2024年)では、新設された自動化の専用展示「オートメーション・セクター」で、ロボットや搬送装置を工作機械と組み合わせた自動化システムが数多く紹介された。今回は、産業用AIに焦点を当てた展示が加わった。専用展示エリア「インダストリアルAIアリーナ」とカンファレンスが初めて設けられ、同エリアには40社以上が出展した。品質検査、設備停止時間の削減、生産工程の改善、需要予測などへのAI活用が紹介され、会場全体でも、既存の工作機械やソフトウエアにAI機能を加えた製品などがみられた。


AIを導入した製品・サービスの展示エリアが広がる中、実際の製造現場への導入には事前にクリアすべき課題があるとの指摘もあり、カンファレンスでは、AIを製造現場で活用するための条件が議論された。カンファレンスで繰り返し取り上げられたのが、AIによる分析や機械学習に利用できるデータを整える「データレディネス」(注3)だ。
米国メリーランド大学産業AIセンターのディレクター、ジェイ・リー博士は、製造データを巡る課題を「3B」と整理し、「不完全なデータ(broken data)」「背景情報の不足(missing background information)」「比較基準の不足(missing baselines)」を挙げた。つまり、製造現場でAIを活用するには、どの設備から、どのような条件で取得されたデータなのかを十分に把握し、製造設備へのAI導入前後を比較できるデータを整えておく必要があると指摘した。
後編では、IMTS 2026に出展した米西海岸サンフランシスコ・ベイエリアのコズモン(Cosmon)、ラムダ・ファンクション(Lambda Function)、イントリンシック(Intrinsic)の3社を取り上げる。設計、加工、ロボティクス自動化という異なる工程で、AIをソフトウエアや設備、各社が蓄積してきた製造ノウハウとどのように組み合わせているかを検証する。
- 注1:
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製造業などの産業活動や製造システム、物理インフラにAI技術を適用する考え方。設備やセンサーなどから得られるデータを活用し、生産工程の自動化、予知保全、品質管理などに用いられる。
- 注2:
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「Automation Report 2026
」。 - 注3:
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AIや機械学習で利用できるよう、必要なデータが収集され、その品質、完全性、アクセス性などが確保された状態を指す。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・サンフランシスコ事務所
武田 史織(たけだ しおり) - 2021年、ジェトロ入構。スタートアップ課(2022~2024年)で日系スタートアップ400社以上の北米進出支援、国内スタートアップ・エコシステムの形成や外国高度人材の活用促進に従事。日本国際博覧会協会への出向を経て、2025年11月から現職。





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