製造業は慎重化、非製造業は回復(中国)
山東省進出日系企業の実態把握

2026年8月24日

ジェトロ・青島事務所は、山東省の日本人会会員企業408社を対象に「山東省進出日系企業のビジネス環境に関する実態把握」を実施し、79社から有効回答を得た(回答率19.4%)。同調査は2023年11月が初回で、今回が4回目になる。調査時期は2026年5月27日から6月12日。回答企業の内訳は、企業所在地別で青島市57社(72.2%)、煙台市7社(8.9%)、威海市5社(6.3%)など。業種別では製造業57社(72.2%)、非製造業22社(27.8%)だった。

今回の調査では、2026年の事業見通しについて製造業と非製造業で明暗が分かれる一方、2027年以降の中期的事業展望では拡大志向がやや強まるなど、前回調査(2025年度)とは異なる動きが確認された。特に製造業では、足元の事業環境に慎重な見方が広がる一方、中期的な拡大志向は強まっており、短期と中期で対照的な姿勢がみられた。本稿では、調査結果と日系企業が抱える課題について報告する。

2026年の事業見通し:製造業で「縮小」が増加、非製造業は改善

同調査によると、2026年の事業見通しについて、「計画通り」と回答した企業は65.8%で、前年調査(75.8%)から10.0ポイント低下した(図1参照)。「縮小」と回答した企業は19.0%で、前年調査(15.2%)から3.8ポイント増加した。

業種別では、非製造業で「計画通り」と回答した企業は86.4%で、前年調査(75.0%)から11.4ポイント上昇し、「縮小」と回答した企業は9.1%で、前年調査より15.9ポイント改善した。一方、製造業で「計画通り」と回答した企業は57.9%で、前年調査(76.2%)から18.3ポイント低下し、「縮小」と回答した企業は22.8%で、前年調査より13.3ポイント増加した。前年調査で「堅調な回復」とされた製造業の見通しは、今回は一転して悪化している。

この結果、前年調査で確認された「製造業は回復、非製造業は慎重化」という回復格差について、今回は製造業が慎重化し、非製造業が改善するかたちで逆転した。

図1:2025年および2026年の事業見通し

2026年
業種別(非製造業・製造業・全体)の回答比率を示す積み上げ横棒グラフ(2026年事業見通し)。2026年調査(n=79)では、全体が計画通り65.8%・拡大11.4%・縮小19.0%・その他3.8%。製造業(n=57)が計画通り57.9%・拡大14.0%・縮小22.8%・その他5.3%。非製造業(n=22)が計画通り86.4%・拡大4.5%・縮小9.1%・その他0%。
2025年
業種別(非製造業・製造業・全体)の回答比率を示す積み上げ横棒グラフ(2025年の事業見通し)。2025年調査(n=66)では、全体が計画通り75.8%・拡大6.1%・縮小15.2%・その他3.0%。製造業(n=42)が計画通り76.2%・拡大9.5%・縮小9.5%・その他4.8%。非製造業(n=24)が計画通り75.0%・拡大0%・縮小25.0%・その他0%。

出所:ジェトロ・青島事務所「山東省進出日系企業のビジネス環境に関する実態把握」

2027年以降の中期的事業展望:拡大志向がやや復調

2027年以降の中期的事業展望について「拡大」と回答した企業は31.6%で、前年調査(19.7%)から11.9ポイント上昇した(図2参照)。「現状維持」と回答した企業は50.6%で、前年調査(66.7%)から16.1ポイント低下した。「まだ分からない」と回答した企業は10.1%で、前年調査(3.0%)から7.1ポイント上昇した。

業種別では、非製造業で「まだ分からない」と回答した企業が22.7%(前年0.0%)に急増する一方、「拡大」と回答した企業も27.3%(前年16.7%)に上昇した。製造業では「拡大」と回答した企業が33.3%(前年21.4%)に上昇し、「移転・撤退」と回答した企業は1.8%(前年2.4%)とやや低下した。足元の事業環境には慎重な見方が広がるものの、中期的な中国事業の成長余地まで否定しているわけではないことがうかがえる。短期的な慎重姿勢と中期的な拡大意欲が併存している点は、今回調査の特徴の一つといえる。

なお、ジェトロが実施した「2025年度海外進出日系企業実態調査」(中国編、2026年3月発表)では、今後1~2年の事業展開で「拡大」と回答した企業が21.3%と調査開始以降で最低水準だったが、「現状維持」と回答した企業(64.3%)と合わせた合計は85.6%に上る。本調査の「拡大」と「現状維持」の合計(82.2%)はこれとほぼ同水準であり、中国事業を継続する意向が大勢を占めていることがうかがえる。

図2:2027年以降の中期的事業展望(2026年と2025年の調査比較)

2026年
業種別(非製造業・製造業・全体)の回答比率を示す積み上げ横棒グラフ(2026年の中期的事業展望)。2026年調査(n=79)では、全体が現状維持50.6%・拡大31.6%・縮小6.3%・移転撤退1.3%・まだ分からない10.1%。製造業(n=57)が現状維持50.9%・拡大33.3%・縮小8.8%・移転撤退1.8%・まだ分からない5.3%。非製造業(n=22)が現状維持50.0%・拡大27.3%・縮小0%・移転撤退0%・まだ分からない22.7%。
2025年
業種別(非製造業・製造業・全体)の回答比率を示す積み上げ横棒グラフ(2025年の中期的事業展望)。2025年調査(n=66)では、全体が現状維持66.7%・拡大19.7%・縮小9.1%・移転撤退1.5%・まだ分からない3.0%。製造業(n=42)が現状維持61.9%・拡大21.4%・縮小9.5%・移転撤退2.4%・まだ分からない4.8%。非製造業(n=24)が現状維持75.0%・拡大16.7%・縮小8.3%・移転撤退0%・まだ分からない0%。

出所:ジェトロ・青島事務所「山東省進出日系企業のビジネス環境に関する実態把握」

今後の中国事業での改善・見直し:調達先の多様化が最大の伸び

今後の中国事業での改善・見直しについて、複数回答で尋ねたところ、首位の「中国市場/中国企業向け営業の拡大・強化」と回答した企業(55.7%)は前年調査(53.0%)とほぼ横ばいだった(図3参照)。他方、「部品や材料などの調達先のさらなる多様化」と回答した企業(43.0%)は前年調査(27.3%)から15.7ポイント上昇し、全項目の中で最大の伸びとなった。順位も4位から2位に上昇している。

一方、前年調査で34.8%(前々年比15.9ポイント増)と大きく伸びていた「工場や倉庫の自動化」と回答した企業は27.8%となり、前年調査から7.0ポイント低下した。「環境対策強化(工場のグリーン化等)」と回答した企業も8.9%で、前年調査(19.7%)から10.8ポイント低下した。営業強化や調達先の多様化など事業継続を前提とした対応策への関心が高い一方、自動化や環境対策への関心は前年調査から低下した。

図3:今後の中国事業での改善・見直し
12項目について2025年度調査(n=66)と2026年度調査(n=79)の回答率(%)を比較する横棒グラフ(2グループ・降順)。「今後の中国事業での改善・見直し(2026年度・複数回答)。首位は『中国市場/中国企業向け営業の拡大・強化』55.7%。次いで『部品や材料などの調達先の更なる多様化』43.0%(前年比+15.7pt、全項目中最大の伸び)。」 詳細説明案:2026年度調査の回答率が高い順に、1位「中国市場/中国企業向け営業の拡大・強化」55.7%(前年53.0%、+2.7pt)、2位「部品や材料などの調達先の更なる多様化」43.0%(前年27.3%、+15.7pt、全項目中最大の伸び、順位も4位から2位に上昇)、3位「第三国市場/第三国企業向け営業の拡大・強化」31.6%(前年22.7%、+8.9pt)、4位「新規商品の現地での自主開発」29.1%(前年28.8%、+0.3pt)、5位「工場や倉庫の自動化」27.8%(前年34.8%、△7.0pt)、6位「現地調達率の更なる引き上げ」26.6%(前年24.2%、+2.3pt)、7位「事業の更なる多様化」26.6%(前年19.7%、+6.9pt)、8位「日本人駐在員の縮小、現地職員への切替え」19.0%(前年24.2%、△5.3pt)、9位「環境対策強化(工場のグリーン化等)」8.9%(前年19.7%、△10.8pt)、10位「現時点では想定事項は無い」7.6%(前年3.0%、+4.6pt)、11位「在庫水準の引き上げ」2.5%(前年4.5%、△2.0pt)、12位「その他(省内での別法人の立ち上げ)」1.3%(前年1.5%、△0.2pt)。

出所:ジェトロ・青島事務所「山東省進出日系企業のビジネス環境に関する実態把握」

ビジネス環境への総合満足度:3年連続上昇は今回で足踏み

山東省のビジネス環境への総合満足度について、「満足」と回答した企業は75.9%、「非常に満足」と回答した企業は2.5%で、両者を合わせた肯定的な評価は78.4%だった(図4参照)。前年調査(78.8%)とほぼ変わらず、これまで3年連続で上昇してきた肯定評価は今回、足踏みする結果となった。

図4:ビジネス環境への総合満足度

2026年(n=79)
総合満足度の内訳を示す円(ドーナツ)グラフ(2026年n=79)。満足が75.9%、不満足が21.5%、非常に満足が2.5%、非常に不満足が0.0%。
2025年(n=66)
総合満足度の内訳を示す円(ドーナツ)グラフ(2025年n=66)。満足が75.8%、不満足が21.2%、非常に満足3.0%、非常に不満足が0.0%。

出所:ジェトロ・青島事務所「山東省進出日系企業のビジネス環境に関する実態把握」

省政府、地元政府への要望フォローアップ:インフラ関連の要望は緩和

山東省政府や地元政府に対する改善要望について、複数回答で質問したところ、前年調査で最多だった「交通マナーが悪い」と回答した企業は35.4%となり、前年調査(54.5%)から19.1ポイント低下した(図5参照)。「豪雨時の排水能力の強化」と回答した企業も11.4%(前年27.3%、15.9ポイント減)と大きく低下し、生活環境やインフラに関する改善要望は総じて減少した。

今回新たに選択肢に加わった「日本間、旅客便、貨物便の既存定期直行便の便数や路線の維持」と回答した企業は44.3%で最多となった。前年調査の類似項目「日本間定期直行便の新設・増便」(27.3%)とは設問の文言が異なるため、単純な前年比較はできない。なお、回答者から例示された青島-福岡間の直行便について中国東方航空に電話で確認したところ(2026年8月19日時点)、2025年8月から青島-福岡間の直行便は運行停止となっており、全便が上海経由の乗り継ぎ便となっていることが確認された。

「効果的なビジネスチャンス発掘機会の提供」と回答した企業は27.8%で、前年調査(15.2%)から12.6ポイント上昇した。「中国反スパイ法などの法規制などに伴う生活不安」(25.3%)、「人件費上昇に対する支援」(26.6%)は、いずれも前年調査(34.8%、33.3%)から低下した。

図5:当局への改善要望
25項目について2026年度調査(n=79)の回答率(%)を降順に示す横棒グラフ(一部項目は前年度2025年度n=66との比較値も含む)。「当局への改善要望(2026年度・複数回答)。最多は『日本間の既存定期直行便の便数や路線の維持』44.3%(新設項目のため前年比較不可)。次いで『交通マナーが悪い』35.4%(前年54.5%、△19.1pt)。」 詳細説明案(上位・本文言及項目):1位「日本間の既存定期直行便の便数や路線の維持※」44.3%(新設・文言変更のため前年度比較不可)。2位「交通マナーが悪い」35.4%(前年54.5%、△19.1pt)。3位「身分証明証の利便性」30.4%(前年31.8%、△1.4pt)。4位「効果的なビジネスチャンス発掘機会の提供」27.8%(前年15.2%、+12.6pt)。5位「人件費上昇に対する支援」26.6%(前年33.3%、△6.8pt)。6位「中国反スパイ法などの規制に伴う生活不安」25.3%(前年34.8%、△9.5pt)。「豪雨時の排水能力の強化」11.4%(前年27.3%、△15.9pt)。

注:※印の項目は設問の新設・文言変更のため前年度との単純比較はできない。
出所:ジェトロ・青島事務所「山東省進出日系企業のビジネス環境に関する実態把握」

企業運営に関する改善・要望では、都市別で見ると、改善要望は青島市に集中しており、「人件費上昇に対する支援」「工場立入検査・緊急措置の際の合理性」「豪雨時の排水能力の強化」が主な項目となった(表参照)。

表:企業運営に関する改善・要望項目(単位:%)(-は値なし)注:本表はn=77(有効回答79社のうち、済南市・淄博市の計2社は本設問への回答なし)。各項目のそれぞれの回答件数を総計(77)で除した構成比(%)を表に記載している。
都市名 人件費上昇に対する支援(減税、補助金など) 工場立入検査・緊急措置の際の合理性(環境・安全・消防) 豪雨時の排水能力の強化 移転・立ち 退き要請に 際する配慮(猶予、補償金、斡旋等)/再開発計画のゆとりある提示 ワーカー確保に対する支援(人材が確保できない) 工場運営、生活維持のための電力などエネルギーの安定供給 電力使用制限時の前広な通知、柔軟な運用、早期抑制、再発防止
青島市(57) 20.8 10.4 10.4 3.9 5.2 3.9 3.9 58.4
煙台市(7) 2.6 2.6 5.2
威海市(5) 2.6 2.6 5.2
済寧市(2) 1.3 0.0 1.3 2.6
東営市(2) 1.3 1.3
潍坊市(2) 1.3 1.3
日照市(2) 1.3 1.3
総計(77) 27.3 18.2 11.7 5.2 5.2 3.9 3.9

注:本表はn=77(有効回答79社のうち、済南市・淄博市の計2社は本設問への回答なし)。各項目のそれぞれの回答件数を総計(77)で除した構成比(%)を表に記載している。

出所:ジェトロ・青島事務所「山東省進出日系企業のビジネス環境に関する実態把握」

なお、2025年度までは実態把握に加えて、ジェトロ・青島事務所は山東省進出日系企業と共同で、山東省政府や青島市政府に対して具体的な課題と産業協力の提案を提示してきた。

2026年度についても、山東省進出日系企業とジェトロ・青島事務所による提案を実施し、当局からの回答を受け次第、「投資環境の改善に関する意見交換会(官民対話)の概要」に掲載予定だ。

執筆者紹介
ジェトロ・青島事務所長
皆川 幸夫(みながわ ゆきお)
1992年、ジェトロ入構。ジェトロ・北京事務所、海外開発協会(出向)、海外展開支援部主幹、日本台湾交流協会(出向)などを経て、2024年8月から現職。