アーメダバード近郊の内陸コンテナデポ最新事情(インド)
2026年1月28日
グジャラート(GJ)州は、デリーを中心とするインド北部エリアの海の玄関口にあたり、中東やアフリカ、欧州、さらには中南米に向けて開かれている。このような地理的優位性のもと、港湾、鉄道、工業団地といった産業発展に不可欠なインフラの充実が工業州としての競争力の源泉になっている。ムンドラ港、ディーンダヤル(カンドラ)港、ピパバブ港といった主要港湾は、GJ州を南北に貫く貨物専用回廊(DFC)と鉄道で接続され、内陸部の工業団地近郊を中心に多数の内陸コンテナデポ(ICD)が稼働している。本稿では、GJ州の中心都市アーメダバード近郊の2つのICDを視察・調査した結果を報告する(視察日:2025年12月18日)。
| 名称 | 運営機関 | 喫水 | コンテナ取り扱い能力 | 拡張計画 |
|---|---|---|---|---|
| ムンドラ港 |
アダニ・ポーツ・アンド・SEZ ※アダニ・グループ |
17.5メートル | 750万TEU(コンテナターミナル1~4合計) | コンテナターミナルの新設計画あり |
|
カンドラ港 ※バルク貨物の取り扱いが中心 |
ディーンダヤル港湾局 ※インド港湾・船舶省が管轄 |
13メートル | 75万TEU〔カンドラ・インターナショナル・コンテナターミナル(KICT)〕 | DPワールドがトゥナ・テクラ地区に219万TEUの新コンテナターミナルを開発 |
| ピパバブ港 |
グジャラート・ピパバブ・ポート(GPPL) ※APモラー・マースク傘下のAPMターミナルズのインド法人 |
14.5メートル | 135万TEU | コンテナ取り扱い能力の向上を含む1,700億ルピーの投資計画についてGJ州海事局と合意(2025年11月5日付ビジネス短信参照) |
出所:各社ウェブサイトの掲載情報やインド政府発表資料を基にジェトロ作成
ICDの役割と鉄道輸送のメリット
ICDはドライポートとも呼ばれ、輸出入を行う国際港湾の機能を内陸部に拡張する役割を担う。荷主企業が立地する工業団地に対するインターフェースとして重要だ。例えば輸入の場合、港湾で荷揚げされた貨物は保税状態のまま輸送され、仕向け地近くのICDで通関するとともに、倉庫での保管やトラックへの積み替え、仕向け地への輸送が行われる。ここで、大半のICDが鉄道と接続されていることがポイントだ。GJ州は比較的道路整備が進んでいるとはいえ、場所によっては路面に損傷や狭あい区間があり、渋滞や交通事故の発生リスクが高い。不安定な道路輸送を最小限に抑え、高効率で安定性の高い鉄道輸送を最大限活用することで、輸送コスト・時間の削減、定時性・安全性の確保に加え、環境負荷の低減も実現できる。
| 名称 | 所在地 | 運営機関 | 主要設備 | 年間取り扱い量(TEU) |
|---|---|---|---|---|
| ICDコディヤル | アーメダバード | CONCOR(国営企業) | 引き込み線5本、敷地面積79エーカー、保税倉庫 | 約20万4,000TEU(約1万7,000TEU/月) |
| アーメダバード・インランド・ターミナル(ICDサチャナ) | アーメダバード | DPワールド | 引き込み線3本、保税倉庫、鋼材倉庫 | 約9万9,000TEU |
| タール・ドライポート・サナンド(ICDサナンド) | アーメダバード | HPCSL | 引き込み線3本、保税倉庫、リーファー取り扱い可 | 約14万4,000TEU |
| ビロチャンナガル・アダニICD | アーメダバード | アダニ・ポート&SEZ | 引き込み線2本、保税倉庫 | 25万TEU(取り扱い能力であり、取り扱い量ではない) |
| ICDビランガム | アーメダバード | ゲートウェー・ディストリパークス | 鉄道接続 | 不明 |
| ICDバルバダ | ヴァピ | セントラル・ウェアハウジング・コーポレーション(国営企業) | 鉄道接続 | 不明 |
| ICDバルナマ | バドーダラ | CONCOR | 鉄道接続 | 不明 |
| ICDスーラト(サチン) | スーラト | ダイヤモンド・アンド・ジェム・ディベロップメント・コーポレーション | 道路型(直接の鉄道接続なし) | 不明 |
出所:各社ウェブサイトの掲載情報を基にジェトロ作成。タール・ドライポート・サナンドの取り扱い量およびビロチャンナガル・アダニICDの取り扱い能力はヒアリングによる
インドの物流インフラ整備計画
広大な国土を有するインドにとって、物流の効率化は長年の課題だ。モディ政権は2021年に物流インフラ開発の国家マスタープランである「PMガティ・シャクティ(注1)」を発表した。これは各省庁が持つデータを1つのデジタルプラットフォームに統合することによって縦割りの弊害を排しつつ、鉄道、道路、港湾、水路、空港、大量輸送システム、物流インフラを中心に、中央政府、州政府、民間企業が協力し、一体的かつ迅速にインフラを整備することを目指すものだ。さらに2022年には国家物流政策(National Logistics Policy)が発表され、2030年までに物流コストを先進国並みに引き下げ、インドの物流パフォーマンス指数(LPI)(注2)順位のトップ25への引き上げが目標として掲げられた。これらの政策の中で、ICDやマルチ・モーダル物流パーク(MMLP)は、物流ネットワークにおけるファーストマイルやラストマイルを接続する重要な要素として位置付けられている。貨物輸送専用に建設された鉄道であるDFCは、東部回廊(EDFC)が完成しており、デリー(ダドリ)〜ムンバイ(JNPT港)間1,506キロを接続する西部回廊(WDFC)もマハーラーシュトラ州内の102キロ区間を除き完成、順次供用されている。全線電化・立体交差で最高時速100キロ、ダブルスタック(2段積み)という極めて高効率なコンテナ輸送が可能だ。

アーメダバード近郊のICD(1) タール・ドライポート・サナンド
タール・ドライポート・サナンドは、GJ州アーメダバードと、同州を代表する工業団地の1つであるサナンドII工業団地のほぼ中間地点に位置し、DFCと在来線の分岐点に隣接している。ハスティ・ペトロケミカル&シッピング・リミテッド(HPCSL)が運営しており、2009年にGJ州初の民間ICDとして操業を開始した。同社はGJ州とデリーの間に位置するラジャスタン州ジョドプールにもICDを保有している。さらに、GJ州バドーダラおよびラジャスタン州ジャイプールにおいて、新たなICDを建設中だ。
タール・ドライポート・サナンドは、45万平方ヤードの敷地に3本の専用引き込み線を有し、年間のコンテナ取り扱い量は14万4,000TEU(空コンテナは含まない)に達する。ダブルスタックコンテナの取り扱いも可能だ。主な設備として、保税倉庫、国内倉庫、コンテナヤード、税関オフィスを持つほか、300台のトレーラーを自社保有している。冷蔵倉庫の設置も検討中だ。貨物鉄道の運行頻度は、ムンドラ行きが1日2〜3本、ピパバブ行きが週2本となっている。
アーメダバード近郊には、スズキ(四輪)やホンダ(二輪)の大規模生産拠点が立地しており、サナンド工業団地やマンダル工業団地を中心に日系サプライヤーが集積している。このため、自動車分野を中心に多数の日本企業がタール・ドライポート・サナンドを利用している。LCL貨物の取り扱いも可能だ。
さらに、タール・ドライポート・サナンドは新たな取り組みとしてリーファーコンテナの取り扱いを始めている。リーファーコンテナ用の電源が128カ所あるため、同時に128本のリーファーコンテナを扱うことが可能で、2025年11月には海運大手マースクと連携し、ピパバブ港との間でリーファーサービスを開始した。GJ州で生産された冷凍食品の輸出に活用されているといい、鉄道輸送によるコールドチェーンが本格稼働したといえる。また、2024年よりエアカーゴの取り扱いも行っており、ICDで出荷された貨物はデリーやムンバイの空港まで鉄道で輸送され、輸出される。加えてデジタル化にも注力しており、オンラインでの貨物輸送予約に加え、貨物のステータス(通関未完了、通関完了、輸送中)やICD内でのコンテナ位置のリアルタイム確認、インボイス発行などが可能だ。荷主にとっては、遠隔で貨物をトラッキングできる点が大きな安心材料となっている。

アーメダバード近郊のICD(2)ビロチャンナガル・アダニICD
今後の需要増を見据えて開発が進められているのが、ビロチャンナガル・アダニICDだ。インド全土で港湾や物流パークなどの物流インフラ開発・運営を手掛けるアダニ・ポート&SEZがマルチ・モーダル物流パーク(MMLP)として開発している。2025年8月に稼働したばかりだが、マルチ・スズキが新工場の設立を発表したコーラジ工業団地から約5キロ(2026年1月14日付ビジネス短信参照)、サナンドII工業団地から約10キロという好立地に工業用地を含め約1,000エーカーの土地を有し、需要増に応じた倉庫や引き込み線の拡張も容易だ。貨物増加に伴う道路混雑が懸念されるものの、ICDに隣接する幹線道路である州道17号線(SH17)の6車線化工事が進められているほか、アーメダバード第3環状道路の開発計画もあり、大きな支障はないとの見方が示されている。
アダニ・ポート&SEZはコンテナ取り扱い量でインド最大の港湾であるムンドラ港のオペレーションを担っており、港湾から顧客への輸送は同社100%子会社のアダニ・ロジスティクスが担当する。港湾と顧客間の輸送を、鉄道輸送、保管、道路輸送まで含めて一気通貫で完結できる点が大きな強みだ。

アーメダバード近郊では、既存の自動車、製薬産業の集積に加え、マルチ・スズキの新工場建設計画やサナンドおよびドレラにおける4件の半導体製造プロジェクトが進展しており、今後も継続的な貨物の増加が見込まれる。DFCを含む鉄道ネットワークが充実する中、各港湾やICDが先手を打って取り扱い能力の増強に取り組んでいることは、GJ州のさらなる産業発展を支える存在として心強く、投資先としての大きな魅力となるだろう。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・アーメダバード事務所長
吉田 雄(よしだ ゆう) - 2005年、ジェトロ入構。本部、ジェトロ徳島、ジャカルタ事務所、ジェトロ茨城などを経て、2024年5月から現職。




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