税関価格申告書の電子申請(MVE)に関する基礎情報(メキシコ)

2026年3月12日

2025年12月15日、2025年の貿易に関する一般細則(SAT貿易細則)の第1.5.1則(注1)が改正され、税関価格申告書(Manifestación de Valor, MV)を電子申請することが義務化された(Manifestación de Valor Electrónica, MVE)。これは単なる電子申請ではなく、輸入通関に多大な影響を与える可能性があるため、2026年3月31日まで施行が延期となった。そこで、本稿では、MVEに関する基本情報と現時点での論点を解説する。なお、本稿は2月末時点での情報を基にしており、その後も変更が生じる可能性があるため、税関法、SAT貿易細則、税関法細則などの最新情報を随時収集することを推奨する。

MVEとは

MVEは、輸入者が税関価格申告書を、メキシコ貿易手続き単一窓口(VUCEM)を通じて電子申請することであり、申告自体の責任を申請者(輸入者)が負うことになる。MVEは10年ほど前から議論の対象となっており、何度も規則の公布が先送りされてきた経緯がある。MVEを導入することにより、税関申告書に記載される申告額に関して、関連する書類を提出することになり、書類の煩雑さや書類と申告額の整合性を証明することの困難さが危惧され、企業や業界団体からの反発があり、見送りとなっていた。

しかし、2025年12月8日の国税庁(SAT)のプレスリリースにおいて、MVEの導入を2026年4月1日から開始することを公表した。SAT貿易監査総局(AGACE)のエリック・ヒメネス・レイエス局長は、MVEの目的として、「コンプライアンスの順守を容易にし、紙媒体からデジタルへ移行することを目指している。この延期(猶予期間)により、手続きの改善、透明性の向上、不必要な監査の回避が可能になる」と発言しMVEの導入を決めた。

MVEに関する根拠法は、主に税関法59条、SAT貿易細則第1.5.1則、税関法施行規則第81条が該当する。その中でも、改正されたSAT貿易細則第1.5.1則を見ていく。同細則1.5.1則I項では、同細則別添Iに記載のE2フォーマット(税関価格申告書、図1参照)(注2)を提出することを義務づけており、同III項で、申告書を電子申請することを定めた。これにより、輸入者はE2フォーマットに記載する税関価格とその関連書類を電子送信することとなる。そして、輸入者は、輸出入申告書(ペディメント)ごとにMVEを送信する必要がある。

また、同IV項では、E2フォーマットおよび電子申請時の添付資料について、輸入者は5年間の保管義務を負う(CFF30条)とした。さらに、同V項では、申告情報またはE2フォーマット・添付書類に不備または不正確な情報があった場合はVUCEM上で新たに申請しなければならないとしており、税関申告価格に変更がある場合は、SAT貿易細則第6.1.1則に基づいて修正する必要があるとした。つまり、一度MVEを申告した後に、申告価格の修正が必要な場合は、前のMVEを修正するのではなく、新しくMVEをVUCEMで送信する必要があることとなった。

MVEの例外規定

MVEにおいても例外規定は存在するが、適用できる企業は少ない。同細則1.5.1則VII項において、例外規定が4つ存在するものの、製品がメキシコから他国に送られ、またメキシコに輸出されるケースや一時輸入のケースの中でも外交特権や見本品、国際会議での利用など非常に限られている。

SAT貿易細則第7.3.3則24項では、認定経済事業者(AEO)の恩典の1つとして、同1.5.1則に基づくE2フォーマットの電子申請は義務ではないとしている。また、同4.5.31条18項において、自動車完成車メーカー(OEM)の保税倉庫(Deposito Fiscal)の恩典として、E2フォーマットの電信申請の義務を免除する規定がある。しかし、両方とも「税関法59条3項における税関当局の要求がない限り」としており、E2フォーマット自体の提出は免除されるが、税関当局の要求に備え、税関申告に関する書類整備は必要となることに注意したい。

E2フォーマットの添付書類

次に、MVEにおける添付書類を見ていく。添付書類については税関法施行規則第81条に記載されており、2026年2月23日にも変更されたばかりだ。税関法施行規則第81条の内容は次のとおり。

  1. 電子インボイス(CFDI)、または規則で定められた要件を満たす同等の書類
  2. 船荷証券(B/L)、パッキングリスト、航空貨物運送状(AWB)、その他運送書類
  3. 原産地証明書(該当する場合)
  4. 税関法第36-A条1項e号に定める保証金の書類
  5. 商品の支払いを証明する書類(電子送金や信用状など)
  6. 当該取引に関する輸送費、保険料、その他関連費用に関する書類
  7. 当該取引の対象となる商品取引に関連する契約書または発注書(パーチェスオーダー)
  8. 税関法第65条に規定される加算費用を裏付ける書類
  9. 関税評価額の決定に必要なその他の情報、書類
  10. 分割払いか一括払いを問わず、各売買の取引の支払い時に適用した現金または現物による特別割引を記載した電子インボイス(CFDI de tipo Egreso: nota de credito)または関連する書類

この添付資料の中でも特に議論を呼んでいるのが、VII項であった。2月の改正前までは、「契約書」のみが記載されており、発注書での対応は記載がなかった。輸入において全ての企業が契約書を締結しているわけではないため、企業や業界団体が交渉し、発注書でも対応可能にする文言が新たに加えられた。しかし、輸入が慣習的に行われているケースや発注書で賄っているものの、関税価格を決定するほどの情報が記載されていないケースもある。そのため、他の関連書類で情報を補完していく必要が指摘されている。

課税価格の決定について

MVEおよびE2フォーマットにおける重要なポイントは、輸入者が課税価格を示す必要があることだ。課税価格は通常、図2のような式で表される。課税価格には、現実支払価格〔既に支払った価格(precio pagado)、支払予定価格(precio por pagar)〕の合計値に対して、加算費用や控除費用を加減する。加算費用や控除費用については、基本的にインコタームズにより決定されるため、E2フォーマットの添付資料でもあるとおり、インコタームズに関連する書類の提出が求められる。

しかし、本来、課税価格の計算については、通関士・通関代理店が担当するものであり、輸入者が直接計算しているケースはほとんどない。MVEおよびE2フォーマットを電子申請するには、輸入者が課税価格とその価格に関する関連書類を理解する必要がある。そのため、MVEは輸入者にとって負担の大きい制度となっている。

図2:課税価格の決定
課税価格は、実際の取引価格(現実支払価格)に対して、加算費用や控除費用を加減し、それにその他の費用を足した値となる。現実支払価格とは、実際に支払われた価格(インボイス価格)または支払われるべき価格(間接費用など)を指す。加算費用とは、輸送運賃、保険料、輸送時の諸費用、手数料、梱包費、ロイヤリティ、サービス料などを指す。控除費用とは、輸入申告後の輸入貨物にかかる組み立て、据え付けなどの費用、輸入貨物到着後の国内輸送運賃、保険料、諸費用など、国内で適用される税および保証金などを指す。加算費用や控除費用については、基本的にインコタームズにより決定される。

出所:大手通関コンサルティング企業の情報を基にジェトロ作成

課税価格が決定できない場合

さらに、課税価格を決定することが難しいケースも多数存在する。例えば、契約上輸入品の正式な価格が輸入後に決定するケースやIMMEX(注3)やマキラドーラ・オペレーションにおける委託加工(注4)において、正確な輸入品の価格が決定しておらず、価格を決定する契約書や発注書がないケースなどが挙げられる。

前述のように課税価格を決定できない場合、「課税価格の決定方法の例外(注5)」として、図3のうち(2)~(6)の方法を選択可能とすることが税関法71条から78条にかけて記載されている。それぞれの輸入のケースにおいて、課税価格が決定できない場合は、(2)~(6)の決定方法を選択することで、課税価格を決定できる。しかし、課税価格の決定に当たっては、(1)の課税価格から始め、各決定方法で決定できない場合は、その理由を述べなければ次の課税価格決定方法を選べないことに注意が必要だ。

課税価格の決定においても、輸入者だけで対応するのは非常に困難だ。特に、課税価格が輸入時に定まっていないケースは、(1)~(5)までを選択することが難しく、結果として(6)の最終手段を選択することが想定される。その場合は、合理的に課税価格を説明する必要があるため、輸入者にとっては困難を極める。ただし、今まで輸入を行っていた場合、通関士・通関代理店が税関価格申告書を作成していて、その中で課税価格の決定方法を選択しているはずだ。そのため、今までと同じ製品を輸入する場合は、通関士・通関代理店がどのように申告していたかを確認し、協力しながらMVEに対処することを推奨する。

図3:課税価格方法の決定
以下6個の方法がある。一つ目は課税価格(取引価格)。2つ目は同種の貨物にかかる取引価格による方法。3つ目は類似の貨物にかかる取引価格による方法。4つ目は国内販売価格に基づく方法。5つ目は製造原価に基づく方法。6つ目はその他の方法だが、これは最終手段である。

出所:大手通関コンサルティング企業の情報を基にジェトロ作成

MVEで想定される誤り

MVEに関して、当局から指摘を受けるケースについて、通関コンサルタントに確認したところ、次のケースが想定されうるとした。

  • 誤った評価方法を選択する
  • 加算費用の省略または不適切な処理
  • 控除費用の記載漏れ、または不適切な文書化
  • 取引内容と整合しないインコタームズの申告
  • 課税価額算出時に正当な理由なく基準値を使用する
  • 関連する裏付け書類を添付しない
  • 当事者間の関係性を適切に証明しない
  • 請求書、COVE(電子インボイス)(注6)、MVE 、輸出入申告書(ペディメント)の不一致
  • 輸出入申告書を修正した場合にMVEを再申請しない

特に、請求書、COVE、MVEおよび輸入申告書の不一致については、当局の指摘事項としても想定され、罰金の対象となるため注意が必要だ。また、輸入申告書を修正したにもかかわらず、MVEを新規で申請しなかった場合も指摘を受ける可能性が高く、こちらも罰金を受ける可能性がある。

MVEの一般規則をみてきたが、実際に実務にあたると不明点が多い。2026年2月時点でも正式かつ具体的な対応方法は当局から発表がなく、通関士、通関代理店および通関コンサルタントの間でも議論されているところだ。3月中のMVEに関する法令や細則の変更も考えられるものの、2026年4月1日から開始するとされているため、輸入者となる企業はMVEの準備が必要だ。MVEにおいては、輸入者だけで行わず、輸入通関を担当する通関士・通関代理店および通関コンサルタントと密に連携し、記載ミスや不備がないよう書類をそろえていくことを推奨する。


注1:
2026年度の貿易に関する一般規則(SAT貿易細則、RGCE2026)第1.5.1条におけるManifestación de Valorに関する記述は以下のとおり。
税関法第59条3項、第162条7項第3段落、税関法細則68条、IV項81条、220条に基づき貨物を輸入する者は、以下のとおり、税関価格申告書(MV)を税関当局に提出しなければならない。
  1. SAT貿易細則別添Iに記載のE2フォーマット(税関価格申告書)を貿易取引に関する情報および書類とともに提出すること
  2. 輸入者は、個人、通関業者、通関代理店のRFC(納税者番号)を指定でき、指定された者はE2フォーマットおよび書類を必要に応じてダウンロードできる
  3. 申告書を電子申請すること
  4. E2フォーマットおよび添付書類は、輸入者がデジタル文書として、5年間(CFF第30条)保存しなければならない。通関士・通関代理人を指定しない場合、その書類と修正は通関手続きを行った通関士・通関代理店にデジタル文書を提出しなければならない。
  5. 申告情報またはE2フォーマット・添付書類に不備または不正確な情報があった場合はVUCEM上で新たに申請しなければならない。記載された価格に影響がある場合、SAT貿易細則第6.1.1条に基づいて修正しなければならない。
  6. 以下の場合、本規則Vは適用されない(つまりMVEを修正できない)。
    1. 税関信号(Mecanismo de Selección Automatizado:MSA)により税関検査が決定された場合〔信号が赤の場合(Reconocimiento Aduanero)〕、検査が終了するまで。
    2. 監査中、納税者が税務上または関税上の状況を修正申告する場合
  7. 以下の場合、E2フォーマットおよび添付書類を、VUCEMを通じて作成・提出する必要はない。
    1. 最終的に輸出された製品が、税関法103条で規定される期間内(輸出から1年)に国内に返還されなかった場合、輸出申告書に記載された価格を関税価格として申告できる。
    2. 国外で改造されておらず、かつ、国内からの出国から1年が経過していない、国内生産された製品または国内から輸出された貨物が、同法第103条に基づき、一般関税(IGI)を支払うことなく国内に返還される場合。
    3. 税関法第116条第I項、第II項および第III項に基づき一時輸出された貨物が国内に返還される場合。
    4. 税関法第106条第II項a)、c)およびd)、第III項a)およびe)、または第IV項b)に規定される一時輸入の場合。本文に戻る
注2:
E2フォーマットでは、次の内容を記載する必要がある。
  • 輸入者のRFCや会社名などの企業情報
  • 関税評価方法(関税評価方法の1~6のうち、ひとつを記載)
  • インコタームズ
  • 輸入者と販売・生産者との関係性
  • 輸出入申告書
  • 加算費用、控除費用(支払日、金額、通貨、為替レートなど)
  • 支払った価格、支払われるべき価格、相殺された価格(支払日、金額、支払方法、内容、通貨、為替レート、諸条件など)
  • 関税評価額(支払った価格、支払われるべき価格、加算費用、控除費用の総額、関税評価額の総額)を全てメキシコペソで記載
  • 電子書類(添付資料)本文に戻る
注3:
輸出向け製造・マキラドーラ・サービス業振興プログラム。製品やサービスの輸出を条件に、当該オペレーションに必要な部品・原材料、機械設備の一時輸入(保税輸入)を認めるプログラム。詳しくは、外資に関する奨励(メキシコ)を参照。 本文に戻る
注4:
「マキラドーラ・オペレーション(保税受託加工)」とは、外国企業が所有する部品・原材料を保税状態でメキシコに一時輸入し、外国企業が貸与した機械などで加工した後に再輸出する保税加工オペレーションのこと。 本文に戻る
注5:
「課税価格の決定方法の例外」に関する条文の図3のうち(2)~(6)に関する記述は以下のとおり。
(2)同種の貨物にかかる取引価格による方法:ほぼ同時期(輸入前または輸入後90日以内)に輸入品と同一の製品が輸入された場合にその取引課税価格を採用する方法。
(3)類似の貨物にかかる取引価格による方法:ほぼ同時期(輸入前または輸入後90日以内)に輸入品と類似の製品が輸入された場合にその取引課税価格を採用する方法。
(4)国内販売価格に基づく方法:輸入貨物と同種もしくは類似の貨物にかかる国内販売価格(輸入された状態のまま販売された製品)を採用する方法
(5)製造原価に基づく方法:輸入品の製造原価に加算費用を加えた価格(通常CIF価格)を課税価格として算出する方法。
(6)その他の方法(最終手段):(2)~(5)の方法で課税価格が決定できない場合に限り、より柔軟に、あるいは合理的かつ法的原則および規定に適合する基準に従い、国内で入手可能なデータまたは国外で行われた取引を証明する書類に基づいて決定する方法。 本文に戻る
注6:
COVE(Comprobante de Valor Económico)とは、コマーシャルインボイスの内容を事前送信する電子文書を指す。輸入者(もしくは権限を委譲された輸出入者の代理人)は、通関士による輸入申告データ入力に先立ち、VUCEMを通じてコマーシャルインボイスに記載されている内容をCOVEとしてデータ入力するか、もしくは税関のシステムとリンクしている民間ウェブサービス(ソフトウエア)経由でXML形式の電子データを送信しなければならない。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・メキシコ事務所
阿部 眞弘(あべ ただひろ)
2017年、ジェトロ入構。サービス産業課、商務・情報産業課、イノベーション促進課、ジェトロ山口を経て、2022年9月から現職。