PHEVが市場拡大を牽引(オーストラリア)

2026年10月1日

オーストラリアの2025年の新車販売台数は約120万9,808台となり、2024年の過去最高記録(122万607台)を下回ったものの、高水準を維持した。消費者の関心は引き続き低排出車へ向かい、特にプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売が前年比で2倍以上に拡大した。また、2026年に入ると、電気自動車(BEV)の販売が急速に伸び、8月には月間販売で初めてBEVがガソリン車やディーゼル車を上回った。中国メーカーの躍進も続いており、オーストラリアの自動車市場で電動化と中国メーカーの存在感拡大が同時に進み、市場構造の変化が鮮明となっている。

なお、本稿では、自動車販売台数について、オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)が公表するVFACTSのデータや、オーストラリア自動車ディーラー協会(AADA)が公表するデータなどを用いている。両者の公表値には一部差異がみられる。FCAIは、メーカー・ブランド別、モデル別などの販売動向を公表している。一方、AADAはVFACTSに加え、Electric Vehicle Council(EVC)のデータも参照して、市場全体の販売動向を分析している。このため、本稿では、各項目について原典の公表値を用いる。

2025年の新車販売台数は121万台に迫る

オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)によると、2025年の新車販売台数は120万9,808台となった(表1参照)。2024年の122万607台からは0.9%減少したものの、高い販売水準を維持した。インフレや高金利環境が続いたものの、SUVやピックアップトラックを中心に堅調な需要が市場を支えた。

タイプ別に見ると、SUVが73万3,831台と全体の60.7%を占め、過去2年と比較しても人気が一段と高まった。一方、乗用車は15万7,484台と前年比22.6%減少し、市場シェアは13.0%まで低下した。

表1:オーストラリアにおける新車販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
タイプ 2023年 2024年 2025年 前年比
台数 (うち、全体に占める割合) 台数 (うち、全体に占める割合) 台数 (うち、全体に占める割合) 台数 増減率
乗用車 211,361 (17.4) 203,384 (16.7) 157,484 (13.0) △ 45,900 △ 22.6
SUV 679,462 (55.8) 695,566 (57.0) 733,831 (60.7) 38,265 5.5
その他自動車 325,957 (26.8) 321,657 (26.3) 318,493 (26.3) △ 3,164 △ 1.0
合計 1,216,780 (100.0) 1,220,607 (100.0) 1,209,808 (100.0) △ 10,799 △ 0.9

出所:オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)発表資料からジェトロ作成

メーカー別では、日本メーカーが上位10社のうち4社を占めた(表2参照)。2024年は5社がランクインしていたが、2025年は日産が上位10社圏外となった。

トヨタは前年比0.6%減の23万9,863台を販売し、前年に続いて首位だった。続いてフォード、マツダ、起亜、現代自動車、三菱自動車が上位に並んだ。一方、中国メーカーの存在感も高まっている。長城汽車が2024年の10位から2025年には7位へ順位を上げ、BYDは年間販売台数5万2,415台を記録し、初めてトップ10入りした。

また、トヨタオーストラリアのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2025年の年間販売台数のうち、ハイブリッド車(HEV)が48.6%と半数近くを占めており、電動化車種の販売拡大が進んでいる。

表2:メーカー別新車販売台数(上位10社)(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 企業名 2023年
台数
2024年
台数
2025年
台数
前年比
台数 増減率
1 トヨタ自動車 215,240 241,296 239,863 △ 1,433 △ 0.6
2 フォード 87,800 100,170 94,399 △ 5,771 △ 5.8
3 マツダ 100,008 95,987 91,923 △ 4,064 △ 4.2
4 起亜 76,120 81,787 82,105 318 0.4
5 現代自動車 75,183 71,664 77,208 5,544 7.7
6 三菱自動車 63,511 74,547 61,198 △ 13,349 △ 17.9
7 長城汽車(GWM) 36,397 42,782 52,809 10,027 23.4
8 BYD 12,438 20,458 52,415 31,957 156.2
9 いすゞUTE 45,341 48,172 42,297 △ 5,875 △ 12.2
10 MGモーター 58,346 50,592 41,298 △ 9,294 △ 18.4

出所:オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)発表資料および現地報道からジェトロ作成

モデル別では、上位10モデルはピックアップトラックとSUVで占められた。また、全10モデルのうち6モデルが日本メーカーの車種だった(表3参照)。

前年に引き続き、フォードの「レンジャー」が前年比9.6%減(6,038台減)の5万6,555台となったものの、2025年に最も売れたモデルとなった。トヨタの「RAV4」は前年比11.5%減の5万1,947台を販売し、前年同様2位となった。

前年にトップ10圏外だったテスラの「モデルY」は、トップ10に返り咲いた。

表3:モデル別新車販売台数(上位10モデル)(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 モデル名 車種 2023年
台数
2024年
台数
2025年
台数
前年比
台数 増減率
1 レンジャー(フォード) ピックアップトラック 63,356 62,593 56,555 △ 6,038 △ 9.6
2 RAV4(トヨタ) SUV 29,627 58,718 51,947 △ 6,771 △ 11.5
3 ハイラックス(トヨタ) ピックアップトラック 61,111 53,499 51,297 △ 2,202 △ 4.1
4 ディーマックス(いすゞ) ピックアップドラック 31,202 30,194 26,839 △ 3,355 △ 11.1
5 エベレスト(フォード) SUV 15,071 26,494 26,161 △ 333 △ 1.3
6 Prado(トヨタ) SUV 20,710 9,802 26,106 16,304 166.3
7 Kona(現代自動車) SUV 11,183 17,374 22,769 5,395 31.1
8 CX-5(マツダ) SUV 23,083 22,835 22,742 △ 93 △ 0.4
9 アウトランダー(三菱) SUV 24,263 27,613 22,459 △ 5,154 △ 18.7
10 Model Y(テスラ) SUV 28,769 21,253 22,239 986 4.6

出所:オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)発表資料及び現地報道からジェトロ作成

PHEV需要が急増、BEV、HEVも引き続き好調

オーストラリア自動車協会(AAA)のEVインデックス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2025年のBEVの新車販売台数は前年比13.1%増の10万3,270台となった。2024年の前年比伸び率(4.7%)を大きく上回った。PHEVは前年比132.7%増の5万3,484台と、全パワートレインの中で最も高い新車販売台数の伸び率を記録した。一方、ハイブリッド車(HEV)は前年比15.2%増の19万9,133台となり、前年の75.6%増から伸び率は鈍化したものの、引き続き拡大基調を示した(表4参照)。

BEVの市場シェアが緩やかに拡大する一方、2025年にはPHEVの販売が大幅に増加した。

FCAIは、NVES(新車効率性基準)(注1)の導入によってEVの供給は増加しているものの、需要の伸びは政策立案時の想定を下回っていると指摘している。

表4:オーストラリアにおけるEVなど販売台数(新車・普通乗用車)(単位:台、%)(△はマイナス値)注:この表にいう「EVなど」は、ライトビークル(light vehicle)に限る。 なお、ライトビークル(light vehicle)とは、連邦政府が規定するオーストラリア・デザイン・ルール(Australian Design Rules:ADR)でいう(1) Mカテゴリー(乗用車)、またはNカテゴリー(貨物車)の一部に該当すること、(2)重量3.5トン以下、の両方を満たす車両。
項目 2023年
台数
2024年
台数
2025年
台数
前年比
台数 増減率
BEV 87,217 91,293 103,270 11,977 13.1
PHEV 11,219 22,980 53,484 30,504 132.7
HEV 98,439 172,813 199,133 26,320 15.2
FCEV 6 10 2 △ 8 △ 80.0
合計 196,881 287,096 355,889 68,793 24.0

注:この表にいう「EVなど」は、ライトビークル(light vehicle)に限る。
なお、ライトビークル(light vehicle)とは、連邦政府が規定するオーストラリア・デザイン・ルール(Australian Design Rules:ADR)でいう(1) Mカテゴリー(乗用車)、またはNカテゴリー(貨物車)の一部に該当すること、(2)重量3.5トン以下、の両方を満たす車両。

出所:オーストラリア自動車協会 (AAA)「EVインデックス」からジェトロ作成

2026年1~8月、新車販売は前年同期比2%増

オーストラリア自動車ディーラー協会(AADA)によると、2026年1~8月の累計新車販売台数は84万8,920台となり、前年同期比2.0%増加した。8月単月では10万8,760台と、前年同月比4.9%増だった。

メーカー別ではトヨタが引き続き首位を維持した。一方、中国メーカーのBYDが販売を大きく伸ばし、1~8月累計で2位となった(表5参照)。また、2026年8月期のメーカー別新車販売台数(上位10社)や同月期のモデル別新車販売台数(上位10モデル)を見ると、長城汽車(GWM)、Geely(吉利汽車)、奇瑞汽車(Chery)など中国系・EV系メーカーのシェア拡大が目立つ(表6、7参照)。

2026年8月の新車販売でBEVが首位

2026年の最大の変化はBEV販売の急拡大だ。前述のオーストラリアFCAI発表資料によると、8月期のBEV販売台数は2万7,089台となり、市場全体の24.9%を占めた。前年同月比では171%増加し、豪州で1カ月間に販売されたBEVとして過去最多となった。また、従来型ハイブリッド車(HEV)のシェアは18.5%、プラグインハイブリッド車(PHEV)は10.5%で、同年8月のBEV、HEV、PHEVを合わせた電動車の販売比率は過半数を占めるなど、オーストラリア市場の電動化は新たな段階に入りつつある。

表5:2026年1月~8月メーカー別新車販売台数(上位10社)(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 企業名 2026年(1~8月) 2025年(1~8月) 前年比
台数 シェア 台数 シェア 台数 増減率
1 トヨタ自動車 135,262 16.7 163,491 20.1 △ 28,229 △ 17.3
2 BYD 68,423 8.4 32,839 4.0 35,584 108.4
3 起亜 54,899 6.8 55,554 6.8 △ 655 △ 1.2
4 フォード 53,512 6.6 62,581 7.7 △ 9,069 △ 14.5
5 マツダ 53,163 6.6 63,208 7.8 △ 10,045 △ 15.9
6 現代自動車 50,936 6.3 51,957 6.4 △ 1,021 △ 2.0
7 GWM(長城汽車) 39,747 4.9 34,398 4.2 5,349 15.6
8 奇瑞汽車(Chery) 33,817 4.2 20,577 2.5 13,240 64.3
9 MGモーター 32,197 3.9 28,609 3.5 3,588 12.5
10 三菱自動車 30,476 3.8 42,913 5.3 △ 12,437 △ 29.0

出所:オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)発表資料からジェトロ作成

表6:2026年8月期メーカー別新車販売台数(上位10社)(単位:台、%)
順位 メーカー名 台数 シェア
1 トヨタ 19,712 19.5
2 BYD 8,231 8.2
3 起亜 6,500 6.4
4 マツダ 6,203 6.1
5 現代自動車 5,355 5.3
6 GWM (長城汽車) 4,870 4.8
7 フォード 4,816 4.8
8 MGモーター 4,767 4.7
9 Geely(吉利汽車) 4,504 4.5
10 Chery(奇瑞汽車) 4,238 4.2

出所:オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)発表資料からジェトロ作成

表7:2026年8月期モデル別新車販売台数(上位10モデル)(単位:台)
順位 モデル名 車種 台数
1 RAV4(トヨタ) SUV 5,470
2 ハイラックス(トヨタ) ピックアップトラック 4,833
3 LandCruiser Prado(トヨタ) SUV 2,475
4 レンジャー(フォード) ピックアップトラック 2,440
5 Sealion 7(BYD) SUV 2,213
6 Tiggo 4 Pro(Chery:奇瑞汽車) SUV 2,012
7 EX5(Geely:吉利汽車) SUV 1,947
8 Haval Jolion(GWM:長城汽車) SUV 1,891
9 7X(Zeekr(吉利控股集団)) SUV 1,748
10 ディーマックス(いすゞ) ピックアップトラック 1,708

出所:オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)発表資料からジェトロ作成

今後の見通し

2024年から2025年にかけてはHEVやPHEVが電動化を牽引したが、2026年にはBEVが急速に存在感を高めている。FCAIは「中東での紛争やガソリン価格の乱高下といった世界情勢の不確実性が、燃料価格の影響を受けにくい自動車(EVなど)に対する消費者の関心を一層高めた」としつつ、「EVの成長の一部は、一過性のブームではなく恒久的な構造変化であるとみられる」と分析している(7月3日付FCAIニュース参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。また、シドニーに拠点を持つ電気自動車評議会〔Electric Vehicle Council(EVC)〕(注2)は、9月3日付電気自動車評議会ブログ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、本年8月期にプラグイン車種(BEV+PHEV)が市場の36%を占めたことを報告するとともに、この需要増は「一過性のブームではなく、経済的・環境的メリットによる構造的な変化」と言及している。また、自動車産業メディアの「WHICH CAR?」は特集記事で、地政学的要因や燃料価格の上昇に加え、中国製EVの「大船団」の到来が、BEVの販売台数がガソリン車やディーゼル車を上回った背景だと解説している(9月4日付「WHICH CAR?」特集記事参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。中国製EVについては、価格競争力のある魅力的なEVの投入が相次ぎ、かつてニッチだったEVが完全にメインストリーム化したと分析している。オーストラリア有力自動車専門メディアである「Carsales」は、EV販売の増加を評価する一方、FCAIの見解として「EV普及の継続には充電インフラ整備の加速が必要」と報じており、慎重な見方も示している。また、EV需要が一時的に前倒しされた可能性を指摘する業界関係者の声もあり、本格的な市場構造の変化が起きているか、年後半の販売動向に注目が集まっている。


注1:
自動車メーカーに対し、新車として販売する車両の平均二酸化炭素(CO2)排出量の削減を求めるオーストラリアの制度。基準を超過した場合は負担金が発生し、低排出ガス車や電動車の導入促進を目的としている。 本文に戻る
注2:
EVCは、電気自動車(EV)セクターのバリューチェーン(価値連鎖)全体にわたる会員を代表し、投資の促進と認知度の向上を通じて輸送の電化を加速させ、より持続可能で繁栄したオーストラリアの実現を目的とする団体。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・シドニー事務所
渡邉 尚之(わたなべ たかゆき)
1996年、ジェトロ入構。 ニューヨーク事務所、対日投資部対日投資課、サンフランシスコ事務所、人事課課長代理、農林水産・食品部総括課長代理、シカゴ事務所次長、ニューヨーク事務所次長、企画部海外地域戦略主幹(北米・オセアニア)などを経て2023年7月から現職。