グローバル食材「TOFU」×日本食材「豆腐」の可能性
2026年8月5日
日本の伝統食品である豆腐は、世界的な健康志向の高まりを背景に、海外での需要が拡大している。植物性たんぱく質を豊富に含むことから、ベジタリアンやビーガンをはじめ、幅広い消費者層の関心を集めており、日本からの輸出も増加傾向にある。世界で「TOFU」市場が拡大する中、日本産豆腐は品質や食文化を価値として差別化できる可能性がある。 本稿では、日本産豆腐の今後の輸出の可能性について考察する。長期保存が可能な紙パック豆腐の市場性や、豆腐業界全体の将来展望についても取り上げる。
伝統食品であり、機能性食品
豆腐は、大豆を主原料とし、豆乳を凝固させて作る日本の伝統食品だ。水分量が多く、淡泊な味わいを特徴とし、さまざまな料理に応用できる汎用(はんよう)性の高さを持つ。種類としては、絹ごし豆腐、木綿豆腐、充塡(じゅうてん)豆腐(注1)などがあり、それぞれ食感や用途が異なる(注2)。
豆腐の原料である大豆は、植物性たんぱく質を多く含んでおり、消化吸収率が高いとされる。また、多くの水分を含むため、脱水症状の防止にも効果がある。植物性脂肪が多く含まれ、コレステロールを抑える効果があり、肥満、生活習慣病の改善に役立つとされる。加えて、多くの機能性成分が含まれており、健康を維持増進させる「機能性食品」として注目される。さらに豆腐はカロリーが少なく、水分も多いため満腹感が得られ、栄養価も高いことから、ダイエット用途でも使われる。

豆腐の国内市場は縮小する一方、輸出は拡大傾向
日本の豆腐生産量は、2023年で年間116万2,000トンだ(農林水産省「令和5年度食料需給表」)。統計が確認できる1971年の102万2,000トンから徐々に増加し、2007年の125万2,000トンをピークに、近年は年間110万トンほどの生産量で推移している。日本国内の豆腐市場は、人口減少や食生活の多様化により、長期的には縮小傾向にある。
次に、2017~2025年の豆腐の輸出動向(注3)を年別に見ると、輸出額、輸出量ともに多少の増減はあるものの、増加傾向にある(図参照)。2025年は過去最大の輸出量3,421トン(前年比33.9%増)、輸出額11億7,745万円(同比38.6%増)だった。
2017~2025年にかけて輸出額は約3.7倍に増加した。現時点の規模は10億円超と大きくはないものの、順調に輸出額を伸ばしており、輸出市場は拡大傾向にある。
注:HSコード=2106.90.200。
この分類において「豆腐」とは、大豆を主原料とする液体に凝固剤を添加し、凝固させたもの。
ただし、次のようなものは含まない(国内分類例規)。
- 大豆を主原料としないもの(ごま豆腐、玉子豆腐など)
- 凝固剤を添加しないもの(湯葉など)
- 乾燥させたもの(高野豆腐など)
- 油で揚げたもの(あぶらあげ、がんもどきなど)
- 焼いたもの(焼き豆腐など)
出所:財務省貿易統計からジェトロ作成
次に2025年の豆腐の輸出先別の輸出額を国・地域別に見ると、多い順に香港、英国、オランダ、米国、インドであった(表参照)。東アジアや欧米諸国のみならず、近年ではインドやサウジアラビアなどにも輸出先が広がっており、市場の多角化が進んでいる。
| 国・地域名 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
対前年比 (2022/2023年) |
対前年比 (2023/2024年) |
対前年比 (2024/2025年) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 香港 | 382,313 | 295,436 | 309,959 | 424,532 | △22.7% | 4.9% | 37.0% |
| 英国 | 57,451 | 138,609 | 221,211 | 268,462 | 141.3% | 59.6% | 21.4% |
| オランダ | 135,451 | 86,773 | 103,881 | 134,522 | △35.9% | 19.7% | 29.5% |
| 米国 | 42,531 | 50,412 | 48,886 | 94,353 | 18.5% | △3.0% | 93.0% |
| インド | 1,058 | 600 | 63,715 | 78,350 | △43.3% | 10519.2% | 23.0% |
| 韓国 | 2,721 | 5,644 | 13,762 | 59,082 | 107.4% | 143.8% | 329.3% |
| ロシア | 21,932 | 23,309 | 9,604 | 30,886 | 6.3% | △58.8% | 221.6% |
| タイ | 5,253 | 5,908 | 8,767 | 7,441 | 12.5% | 48.4% | △15.1% |
| サウジアラビア | 365 | 0 | 5,306 | 6,718 | △100.0% | ー | 26.6% |
| オーストラリア | 210 | 1,858 | 2,869 | 6,559 | 784.8% | 54.4% | 128.6% |
| その他 | 55,162 | 61,437 | 61,388 | 66,546 | 11.4% | △0.1% | 8.4% |
| 総計 | 704,447 | 669,986 | 849,348 | 1,177,451 | △4.9% | 26.8% | 38.6% |
注:HSコード=2106.90.200。
出所:財務省貿易統計からジェトロ作成
健康志向、代替たんぱく質食品としての需要拡大
香港などのアジア地域では、豆腐は一般的な食材であり、以前から日本の豆腐に対するニーズも高い。また、近年の日本食ブームやインバウンド観光客の影響もあって、海外で日本食が普及し、現地での豆腐の需要も広がっている。
さらに、米国や英国、EUなどの欧米諸国を中心に、世界的な健康志向を背景として豆腐のニーズが高まっている。低脂肪・高たんぱくでコレステロールを含まない食品として認知され、関心を集めている。同様に、ベジタリアンやビーガンの増加により、肉の代替食品である植物由来食品(プラントベース)の需要が急速に拡大している。また、肉製品と比較して環境負荷が低いとされることから、サステナビリティーの観点でも評価されている。
こうした背景のもと、豆腐は世界市場で「TOFU」として広く認知されている。日本食レストランの増加や家庭料理への浸透も進み、豆腐は単なるアジア料理の食材から、世界で利用される食材へと変わりつつある。
米国では1980年代から大手日系メーカーが米国に進出して現地生産しているほか、多くの現地企業による豆腐の生産も行われている。同様に、欧州でも日系企業や現地企業による豆腐の生産が増えている(注4)。また、韓国や中国など、日本以外のアジア企業が生産する豆腐製品もあるため、日本から豆腐を輸出する場合には、競合品との差別化が必要な状況だ。
現地に適応した「TOFU」と、日本食材「豆腐」
豆腐は日本料理に限らず、各国の料理に取り入れやすい特性を持つ。サラダや炒め物、スープ、デザートなど、幅広い用途で利用される。
例えば、米国では豆腐をそのまま食べるのではなく、揚げたり焼いたりして食べることが多く、形状が崩れにくい商品が好まれる。そのため、日本の一般的な木綿豆腐より硬めの豆腐(Extra Firmなど)が店頭に並ぶ。また、以前は豆腐自体に味がない、あるいは味が薄いと言われていたが、シンプルな素材であるがゆえに、現在では現地料理やオリジナルの味にアレンジして使われるようになった。
豆腐を使った現地向けメニューの開発や、簡便性を重視した商品展開(Ready To Eat、即席食品など)がなされている。実際、豆腐付きの料理セットやスンドゥブなどの豆腐スープキット、豆腐サラダや冷凍食品などの調理済み製品、豆腐プロテインバーといった、現地ニーズに合わせた製品も出てきている。
豆腐のみならずほかの商品も、海外市場では単に商品を輸出するだけでなく、現地の食文化に合わせたレシピ提案や調理方法の提示が重要となる。
他方、日本へのインバウンド観光客の増加に伴い、旅行中に日本らしい豆腐の食べ方に触れることで、日本産豆腐への関心も高まっている。薬味としょうゆやポン酢で食べる冷ややっこや湯豆腐、鍋料理の豆腐などのシンプルな食べ方も、今後受け入れられる可能性がある。高品質でこだわりを持って作られた日本の豆腐は、外国人にとって「TOFU」と異なる日本食材「豆腐」として評価され得る。
ロングライフ豆腐の品質向上による輸出増
豆腐の輸出における課題として、保存期間や輸送が挙げられる。豆腐は水分含有量が多いため、賞味期限や消費期限といった保存期間が短い。常温ではなく、冷蔵での輸送、保管が必要となる。また、冷凍保存すると食感が変わってしまうため、冷凍輸送も現実的ではない。これらの特性から、豆腐は長期輸送を伴う輸出には不向きな商品とされてきた。
これらの課題の解決策の1つとして、ロングライフ豆腐が挙げられる。以前から長期間(数カ月から1年ほど)保存可能なロングライフ豆腐はあったが、近年は豆腐関連メーカーが無菌充塡技術や特殊な多層構造の紙パックなどを取り入れたことで、ロングライフ豆腐の品質が向上した(注5)。また、原料や製法にこだわり、豆腐本来の風味を味わえる高品質なロングライフ豆腐も販売されている。
「日本の食品 輸出EXPO 2026」(東京)の出展企業である、さとの雪食品
(本社:徳島県鳴門市)の東京営業部担当者によれば(注6)、同社のロングライフ豆腐「おいしいTOFU FIRM」は常温保存で賞味期間は365日間であり、食味の良さが評価されて海外からの引き合いも増加しているという。同製品は、日本産大豆を使用しており、かためで崩れにくく、料理に適していることが特徴だ。また、ハラール認証を取得していることから、イスラム市場への展開拡大も目指している。2003年から本格的に海外展開を開始し、徐々に輸出を増やしている。現在、OEM製品も含めて、英国や欧州を中心に、米国、インド、韓国など65カ国以上へ輸出している。
同担当者は「グループ企業である四国化工機の独自技術を取り入れた製造機械によって、常温で長期保存ができる豆腐を作ることができた。日本製のおいしい豆腐を世界へ届けたい」と語る。
また、豆腐のほかにも、ヘルシーな豆腐スイーツ「とうふケーキ」を開発した。常温保存が可能で、ヘルシーでありながら、チョコレートや黒ごま風味で甘くておいしい新感覚のスイーツとして、新たなニーズの掘り起こしを狙っている。



豆腐業界全体で海外市場開拓へ
豆腐業界全体の展望や海外展開の取り組みに関して、日本豆腐協会
(注7)事務局長の土井健太郎氏は、「現在、豆腐関連食品における主な輸出品目は充塡豆腐・豆腐麺・豆腐バー類・冷凍油揚げ・味付油揚げ(いなり)だ。豆腐業界は国内市場が縮小しており、今後、海外市場の拡大を目指していく必要がある。世界的な健康ブームで植物性たんぱく食品が注目される中、大手のみならず業界全体として輸出に取り組んでもらいたい」と語る(取材日:2026年7月14日)。
土井氏は2026年5月、バンコクで開催されたTHAIFEX2026に合わせてタイの市場調査を実施した際、タイを含む東南アジアでの日本産豆腐のポテンシャルは大きいと感じたという。また、「原料の日本産大豆がすべてNon-GMO(非遺伝子組み換え)であることは、海外市場で強みとなるかもしれない。米国などでは規制の関係で、無消泡豆腐(注8)とする必要があるので注意すべきだ」と話す。
豆腐は、健康志向、環境配慮、日本食文化といった複数の価値を併せ持つ食品として、海外市場における可能性を広げている。輸出規模はまだ限定的であるものの、高い成長性を有しており、今後の有望分野の1つといえる。
今後は、グローバル食材「TOFU」として、現地の食文化に適応した商品開発や用途提案を進める一方、日本食材「豆腐」として品質や製法、食文化の価値を訴求する差別化戦略も重要となる。また、ロングライフ豆腐などの技術活用も輸出拡大のカギとなる。品質やおいしさのみならず、日本独自の食文化やストーリーを付加することで、日本食材「豆腐」として国際市場でさらに評価されることが期待される。豆腐は「シンプルでありながら多様な価値を持つ食品」であり、その特性を生かした戦略的な展開が求められる。日本企業にとっては、健康志向やサステナビリティーへの関心を追い風に、「TOFU」というグローバル市場と、日本食材「豆腐」の付加価値の双方を生かした商品・販売戦略が求められる。
- 注1:
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充塡豆腐は、豆乳に凝固剤を添加し、全体を凝固したのち、温かいうちに袋や容器に入れたもの。この製法は、機械化による流れ作業の大量生産に適している。豆乳充塡・容器密閉後に加熱凝固させるため、その間に殺菌が行われ、日持ちが良いのも特徴。
- 注2:
-
豆腐加工品としては、焼き豆腐、生揚げ豆腐、油揚げ、がんもどきなどがある。豆腐の製造過程では、豆乳、湯葉、おからなどができる。
- 注3:
-
2017年に豆腐の輸出統計品目番号(HSコード=2106.90.200)が新設された。この分類において「豆腐」とは、大豆を主原料とする液体に凝固剤を添加し、凝固させたもの。ただし、次のようなものは含まない。 ・大豆を主原料としないもの(ごま豆腐、玉子豆腐など)・凝固剤を添加しないもの(湯葉など)・乾燥させたもの(高野豆腐など)・油で揚げたもの(あぶらあげ、がんもどきなど)・焼いたもの(焼き豆腐など)
- 注4:
-
欧州では、以前から現地向け豆腐の現地生産が行われていた。最近では、日系企業が現地で日本品質の豆腐を製造するケースもある。具体例は、「バルセロナ発、日本の豆腐が欧州へ挑む(茨城県・染野屋)」(2026年6月11日付地域・分析レポート)を参照。
- 注5:
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かつて日本では、豆腐は冷蔵で販売する必要があったが、2018年に豆腐の規格基準が改正されたことにより、日本国内で無菌充塡豆腐の常温販売が解禁された。これにより、ロングライフ豆腐の開発や販売先が進んだといわれている。その結果、常温保存期間の延長や豆腐の風味向上につながった。
- 注6:
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取材日は2026年6月24日。同社は1973年の創業以来、安全でおいしい豆腐づくりに取り組んでおり、豆腐をはじめとする大豆加工商品の製造・販売を行っている。近年では、ロングライフの紙パック豆腐を中心に、積極的に輸出している。
- 注7:
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日本豆腐協会は、豆腐製品の製造、品質、流通に関する研究、開発、教育を促進し、より良質かつ安全な製品を国民に提供するとともに、業界の健全な育成と発展に貢献することを目的として1976年に設立された。最近では輸出部会を設置し、会員企業の海外販路開拓を支援する体制を構築している。
- 注8:
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消泡剤(グリセリン脂肪酸エステル、パーム油由来)を添加することで、豆腐を製造する過程で発生する泡を除去し、煮えムラをなくして生産効率を高めることができる。ただし、添加物として規制対象となる国があるため、注意が必要だ。
- 執筆者紹介
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ジェトロ農林水産食品部 市場開拓課調査チーム 課長代理
古城 達也(ふるじょう たつや) - 2011年、ジェトロ入構。人材開発支援課、ジェトロ横浜、ジェトロ・ニューヨーク事務所、ジェトロ諏訪を経て、2024年11月から現職。現在、農林水産物・食品の輸出に関して、各国の輸入規制、法令や市場情報などの調査や、日本企業からの輸出相談窓口を担当。





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