サウジアラビアで存在感を高める中国企業の動向
サプライチェーン形成と現地化の進展

2026年8月28日

サウジアラビアと中国の経済関係は近年、急速に深化している。従来は原油輸出と消費財輸入を中心とする補完的な関係性にあったが、足元では新エネルギー車(NEV:New Energy Vehicle)(注1)、電池、再生可能エネルギー、デジタル関連分野へと協力領域が拡大してきている。中国では国内市場での競争激化を背景に、多くの企業が海外市場開拓を進めている。一方、サウジアラビアは国家改革戦略「サウジ・ビジョン2030」の下で産業多角化や製造業育成を推進している。こうした両国の政策的方向性の一致が、中国企業の進出を後押ししているともいえる。近年は輸出中心だった事業展開が投資や現地生産を伴うかたちへと発展しており、サウジアラビア国内のサプライチェーン形成につながりつつある。本稿では、中国企業の進出がサウジアラビアの産業構造やサプライチェーンに与える影響について考察する。

中国企業の存在感の高まりと貿易構造の変化

サウジアラビアにおける中国の存在感の高まりは、輸入シェアの拡大など、貿易構造の変化に表れている。サウジアラビア総合統計庁(GASTAT)によると、中国からの輸入額は2023年の1,625億リヤル(約6兆7,275億円、1リヤル=約41.4円)から2025年には2,612億リヤルへと増加し、2年間で61%増加した(表1参照)。2025年の輸入シェア(構成比)は27.5%に達した。第2位の米国の3倍を超える規模となるなど、中国はサウジアラビアにとって最大の輸入相手国としての地位を強固なものとしている。

表1:サウジアラビアの主要国別輸入額推移(2023~2025年、上位10カ国)(100万リヤル 、%)(△はマイナス値)注:構成比は2025年の輸入総額に占める割合。四捨五入のため、構成比および増減率は必ずしも一致しない。
順位 国・地域名 2023年 2024年 2025年 2025年
構成比
2024/2025年
増減率(%)
1 中国 162,550 208,746 261,226 27.5% 25.1%
2 米国 70,584 73,748 77,983 8.2% 5.7%
3 アラブ首長国連邦 50,053 48,125 53,930 5.7% 12.1%
4 インド 43,570 47,463 45,577 4.8% △4.0%
5 ドイツ 34,219 37,598 42,016 4.4% 11.8%
6 日本 30,693 31,835 38,197 4.0% 20.0%
7 イタリア 22,030 30,230 30,838 3.2% 2.0%
8 フランス 16,611 18,447 25,920 2.7% 40.5%
9 スイス 24,776 26,604 25,169 2.6% △5.4%
10 エジプト 19,755 29,020 24,789 2.6% △14.6%

注:構成比は2025年の輸入総額に占める割合。四捨五入のため、構成比および増減率は必ずしも一致しない。

出所:サウジアラビア総合統計庁(GASTAT)「International Trade Statistics 2025」を基にジェトロ作成

また、中国企業の進出が注目される背景には、サウジアラビアの需要構造の変化もある。BEC分類(注2)によると、2025年の輸入総額は前年比8.8%増の9,498億リヤル(39兆3,217億円)となった。そのうち、「資本財および部品」は前年比19.7%増の2,508億リヤル、「産業用資材・中間財」は同8.5%増の2,507億リヤルへ拡大した。一方、「消費財」は前年比4.8%減となった(表2参照)。「資本財および部品」と「産業用資材・中間財」の合計で輸入全体の52.8%を占めており、サウジアラビアでは製造業育成やインフラ整備に関連する需要が大きいことがうかがえる。

表2:サウジアラビアの経済用途別(BEC分類)輸入額推移(2023~2025年)(100万リヤル、%)(△はマイナス値)注1:GASTATのBEC分類(Rev.4)に基づく。 注2:構成比は2025年の輸入総額に占める割合。四捨五入のため、構成比および増減率は必ずしも一致しない。
No. 品目分類(経済用途) 2023年 2024年 2025年 2025年
構成比
2024/2025年
増減率(%)
1 飲食料品 91,763 98,989 101,832 10.7% 2.9%
2 産業用資材・中間財 200,458 231,013 250,707 26.4% 8.5%
3 燃料・潤滑油 56,777 48,897 42,587 4.5% △12.9%
4 資本財および部品 164,588 209,562 250,827 26.4% 19.7%
5 輸送機器および部品 128,540 133,162 161,938 17.0% 21.6%
6 消費財 101,546 109,909 104,660 11.0% △4.8%
7 その他 32,353 41,490 37,275 3.9% △10.2%
合計 776,024 873,024 949,825 100.0% 8.8%

注1:GASTATのBEC分類(Rev.4)に基づく。
注2:構成比は2025年の輸入総額に占める割合。四捨五入のため、構成比および増減率は必ずしも一致しない。

出所:GASTAT「International Trade Statistics 2025」を基にジェトロ作成

また、中国側の輸出構造を見ると、サウジアラビア向け輸出品目の高度化が進んでいる。2025年にはリチウムイオン電池が前年比106.2%増、大型液体変圧器が同162.2%増、高圧配電盤・制御パネルが同112.3%増、電源装置・インバーターが同80.8%増となった(表3参照)。これらはいずれもEV、再生可能エネルギー、送配電網整備を支える基幹設備だ。一方で、太陽光パネルの輸出は減少している。貿易統計からは、中国の対サウジアラビア輸出が消費財中心から、EV、再生可能エネルギー、電力インフラ関連機器など、産業高度化を支える資本財・中間財へとシフトしつつあることがうかがえる。

表3:中国の対サウジアラビア主要品別輸出額(2021-2025年)(100万USD、%)(△はマイナス値)注:2026年は1~6月の累計額。
HS
コード
品目 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年
(1~6月)
2024/2025年
増減率(%)
851713 スマートフォン 0 1,342 2,591 2,177 2,109 790 △3.1%
980400 特殊・保税等品目 1,051 1,657 1,880 2,085 1,989 961 △4.6%
870323 乗用車(1500cc超~3000cc) 788 1,166 1,040 1,286 1,656 555 28.8%
850760 リチウムイオン電池 44 211 260 688 1,419 318 106.2%
870322 乗用車(1000cc超~1500cc) 800 1,506 1,238 1,480 1,394 459 △5.9%
841510 家庭用・オフィス用エアコン 660 852 940 1,138 1,143 463 0.5%
850440 電源装置・インバータ 98 133 221 487 880 583 80.8%
850423 大型液体変圧器(1万kVA超) 1 22 48 332 871 351 162.2%
854143 太陽光パネル(モジュール) 0 315 1,335 1,893 840 206 △55.6%
870121 大型トレーラー頭部(ディーゼル) 0 67 275 514 785 339 52.8%
730890 鉄鋼製 建築構造物・部材 146 185 172 538 618 359 14.8%
950300 玩具・乗用トイ・人形類 693 994 932 788 607 24 △23.0%
853720 高圧配電盤・制御パネル 34 95 163 252 535 271 112.3%
720851 厚鋼板(幅600mm以上) 27 228 544 460 522 164 13.5%
848180 配管用バルブ・コック類 183 220 230 338 433 209 27.9%

注:2026年は1~6月の累計額。

出所:グローバル・トレード・アトラス(GTA)からジェトロ作成

こうした中国の対サウジアラビア向け輸出品目の高度化は、サウジアラビアが進める産業多角化や製造業育成に伴う需要拡大を反映したものといえる。

サウジアラビアはEV産業育成を国家戦略の一つとして掲げており(2026年7月1日付地域・分析レポート参照)、完成車製造のみならず電池、充電設備、関連部材などを含むサプライチェーン構築を目指している。こうした中、中国企業は車両、電池、充電設備、電力インフラなど幅広い分野で存在感を高めている。リチウムイオン電池や変圧器類の輸出拡大は、サウジアラビア国内で進むEV関連産業および再生可能エネルギー関連インフラ整備の進展と整合的だ。近年では、中国系EVメーカーの比亜迪(BYD)がサウジ市場へ本格参入(2024年10月8日付地域・分析レポート参照)したほか、BYDはサウジアラムコと新エネルギー車関連技術分野に向けた共同開発契約を締結した。

デジタル分野における中国企業の役割拡大

通信インフラ、クラウドサービス、スマートシティ関連技術などの分野では、中国企業がサウジアラビアの大規模プロジェクトへの参画を拡大している。サウジアラビアでは行政サービスや都市運営のデジタル化が国家戦略として推進されており、中国企業は技術提供に加え、人材育成や現地パートナーとの協業にも積極的に取り組んでいる。こうした取り組みは、サウジアラビア側が重視する技術移転やローカライゼーション(現地化)政策とも親和性が高いとみられる。また、中国企業の現地化の動きは、人工知能(AI)、クラウド、データセンター、通信、EV、情報通信技術(ICT)製造など幅広い分野に広がっている。

表4:サウジアラビアにおける中国デジタル関連企業の主な事業展開
企業名 分野 主な取り組み
華為技術(ファーウェイ) 通信・クラウド・AI 首都リヤドでクラウドリージョンを運営。AIインフラ整備やデータセンター事業を展開。2030年までに2万5,000人のデジタル人材育成を目指す「Huawei Skills Development Center」を設立。
阿里雲(アリババクラウド) クラウドサービス 中東市場向けにクラウドサービスを展開し、企業のデジタル化を支援。
中興通訊(ZTE) 通信インフラ 通信事業者向け5G・ICTソリューションを提供。2025年にはGO Telecomと共同でサウジ初の長距離5G-A実証実験を実施。
商湯科技(センスタイム) AI PIF傘下のSCAIとの合弁会社「SenseTime MEA」を設立。AIラボ整備や人材育成を推進。2025年にはキングサウード大学との共同AIイノベーションセンター(AI Innovation Center)の設立を発表。
聯想集団(レノボグループ) ICT製造 PIF傘下のAlatと提携し、首都リヤドでPC・サーバー製造工場を建設。2026年の操業開始を予定。

出所:各種情報媒体を基にジェトロ作成

デジタル分野では、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が代表例として挙げられる(表4参照)。同社はリヤドでクラウドやAI、データセンター関連事業を展開するとともに、人材育成にも取り組んでいる。こうした活動は、製品販売にとどまらず、デジタル基盤整備や人材育成を通じた現地エコシステムの構築を志向するものといえる。

展示会・人的交流を通じた市場浸透

中国企業はサウジアラビア国内で開催されるテクノロジー、建設、製造業関連の大型展示会への参加を積極的に拡大しており、大規模なパビリオンを設置する事例が増加している。テクノロジーイベント「LEAP」(2025年2月21日付ビジネス短信参照)をはじめとする大規模テクノロジーイベントへの参加に加え、中国企業や中国の地方政府、業界団体が主催する展示会や商談会も活発に開催されている。例えば、2025年12月にはリヤドで中国企業展示会「チャイナ・ホームライフ・サウジアラビア・エキスポ」が開催され、約1,000社の中国企業が出展した。建材、機械、ICT、新エネルギーなど幅広い分野の企業が参加し、中国企業によるサウジアラビア市場の開拓やビジネスマッチングの場として活用された。こうした積極的な海外市場展開の背景には、中国の地方政府を中心とする輸出振興策がある。中国各地では企業の海外展示会への参加を支援する制度が整備されており、海外市場開拓を後押ししている。その結果、中国企業は単独で進出するだけでなく、完成品メーカー、部品メーカー、物流事業者などが一体となって海外市場を開拓する「抱団出海(バオトゥアン・チューハイ)」(注3)を展開している。


「チャイナ・ホームライフ・サウジアラビア・エキスポ2025」の様子(ジェトロ撮影)

中国企業はサウジアラビア市場においても、個別製品ではなくサプライチェーン全体をパッケージとして提案する動きがみられる。また、サウジアラビアの大型プロジェクトは政府主導で進められており、展示会やビジネスサミットは政府高官や政府系企業との関係構築の場としても機能している。実際、2023年12月にリヤドで開催された中国・アラブ諸国ビジネス起業家サミットでは、サウジアラビアと中国の間で60件以上の覚書(MOU)や契約が締結された(2023年12月14日付ビジネス短信参照)。こうしたイベントは、中国企業にとって政府機関やB2G(企業・政府間取引)を推進する重要なプラットフォームとなっている。

また、経済関係の深化を支えているのは企業活動だけではない。近年は中国主要都市とサウジアラビアを結ぶ直行便(注4)の新設が相次ぎ(2024年5月10日付ビジネス短信参照)、人的往来やビジネス交流の拡大が進んでいる。また、人的交流の拡大を象徴する動きとして、中国語教育の推進も挙げられる(2022年12月12日付ビジネス短信参照)。サウジアラビア政府は近年、公立学校や大学での中国語教育を積極的に導入している。こうした取り組みは、中国との経済・人的交流の拡大を背景としたものであり、中国語を活用できる人材の育成を通じて、両国間の交流基盤の強化が期待される。

中国企業の投資拡大と現地サプライチェーン形成

中国企業のサウジアラビア進出は、輸出拡大のみならず、現地投資や生産拠点の設立を伴うかたちへと発展している。こうした動きは、サウジアラビア国内における製造・物流・サービス機能の集積を促し、新たなサプライチェーンの形成にもつながりつつある。

サウジアラビア政府は「サウジ・ビジョン2030」および国家投資戦略(NIS)の下で外資誘致を重点政策として推進している。2025年の海外直接投資(FDI)流入額は1,330億リヤルとなり、前年比12%増加した。また、FDI残高は1兆1,000億リヤルと2017年比で2倍超となった。NISの下で投資環境整備も進められており、累積投資額は計画を上回るペースで推移している。

また、2026年第1四半期の投資ライセンス発給件数は7,742件となり、前年同期比68%増加した。建設は2,506件、卸売り・小売りは1,592件、製造業は969件、情報通信分野は650件などを中心に投資活動が活発化している。こうした投資環境の改善を背景に、サウジアラビアは外国企業にとって有力な投資先となっている。中国企業も製造業、物流、再生可能エネルギー、情報通信分野への進出を進めており、近年は単独進出にとどまらず、サウジアラビア政府系ファンドの公共投資基金(PIF)や国営企業、民間企業との連携を通じた事業展開がみられる。また、サウジアラビアは中東・アフリカ市場へのゲートウェイとして物流ハブ機能の強化を進めている。港湾、航空、物流インフラの整備に加え、近年は中国との航空貨物ネットワークや物流協力の拡大もみられる。こうした物流基盤の強化は、中国企業にとってサウジアラビア国内市場だけでなく、周辺地域への事業展開や現地サプライチェーンの構築を後押しする要因の一つとなっている。

現地企業へのヒアリングでは、中国企業は資金調達に加え、EPC(設計・調達・建設)を一体的に提供できるケースが多く、サウジアラビアで進む大型開発案件との親和性が高いとの見方がある。また、現地企業へのヒアリングでは、多国籍企業と比較して技術移転や合弁事業の設立に柔軟であるとの評価が聞かれた。一方、現地の日系企業からは、中国企業による積極的な投資や現地化戦略を背景に競争圧力が高まっているとの指摘もあった。さらに、サウジアラビア企業からは「必要なのは完成品の輸入ではなく、技術移転である」との指摘もあり、中国企業の現地化戦略を評価する見方もみられた。

こうした現地化が進むことで、部材調達や生産、物流、人材供給などの機能がサウジアラビア国内に蓄積され、関連産業との連携強化が期待されている。その結果、サウジアラビア国内における産業サプライチェーンの形成・高度化につながる可能性がある。こうした動きからは、中国企業が完成品輸出にとどまらず、現地生産や技術移転、人材育成などを通じて事業展開の現地化を進めていることがうかがえる。

他方、安全保障やデータ管理、特定国への過度な依存リスクを懸念する意見も聞かれた。サウジアラビアは中国との経済協力を拡大する一方で、米国や欧州諸国との関係も維持しており、多方面との連携を重視する外交戦略の下、経済多角化と産業発展を進めている。

サプライチェーンへの影響と今後の課題

中国企業の進出拡大により、サウジアラビア市場の競争環境は変化しつつある。特にEV、再生可能エネルギー、ICT分野では、輸出中心だった中国企業の展開が投資・現地生産・技術移転を伴うかたちへと発展している。こうした動きは、サウジアラビアにおける産業基盤の強化やサプライチェーンの現地化・高度化を促す可能性がある。今後、中国企業の動向はサウジアラビアの産業政策のみならず、中東地域における産業・サプライチェーンの再編にも影響を与える可能性があり、その動向が注目される。


注1:
NEVはBEV(バッテリー式電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)を含む中国の政策上の分類。 本文に戻る
注2:
BEC(Broad Economic Categories)は、国連が定めた国際商品分類で、貿易品目を消費財、中間財、資本財などの用途別に分類したもの。 本文に戻る
注3:
複数の中国企業が産業チェーンやサービスネットワークを通じて協調しながら海外市場を開拓する取り組みを指す。 本文に戻る
注4:
本稿執筆時点では、一部の中国・サウジアラビア間直行便について運休または運航調整が行われている。本文は直行便開設の動向について記述したものであり、最新の運航状況については各航空会社の発表を参照されたい。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・リヤド事務所
林 憲忠(はやし のりただ)
2005年、ジェトロ入構。市場開拓部、ジェトロ大阪、ジェトロ・プノンペン事務所、ジェトロ・チェンナイ事務所、農林水産部、国税庁、海外調査部中東アフリカ課を経て、2022年8月から現職。