2024年の生産は7%減ながら販売は6%増、輸出は微増(トルコ)
国内販売はEVとHEVが大幅増

2025年7月10日

トルコの2024年の自動車生産台数は前年比7.0%減。輸出額は6.3%増で、国内販売台数0.5%の微増だった。

国内販売では、引き続きスポーツ用多目的車(SUV)の人気が高い。燃料タイプ別に見た場合、電気自動車(EV)、特にハイブリッド車(HEV)の伸びが大きく、その他のタイプは前年比減だった。今後、国内でのEV、HEV生産・販売が活発化していくことが予想できる。

自動車の生産台数が減少

トルコ自動車工業協会(OSD)によると、2024年の自動車生産台数は136万5,296台と前年比7.0%減になった。そのうち66.3%を占める乗用車の生産は5.1%減、残りの33.7%を占める商用車の生産は10.7%減だった(表1参照)。

表1:車種別生産台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
項目 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 構成比 前年比
乗用車 982,642 855,043 782,835 810,889 952,667 904,513 66.3 △5.1
商用車 478,602 442,811 493,305 541,759 515,726 460,783 33.7 △10.7
階層レベル2の項目大型トラック 17,604 21,169 34,652 41,544 46,812 30,793 2.3 △34.2
階層レベル2の項目小型トラック 1,399 2,081 3,922 5,026 5,432 5,077 0.4 △6.5
階層レベル2の項目ピックアップトラック 386,245 358,182 400,078 436,611 397,015 346,863 25.4 △12.6
階層レベル2の項目大型バス 9,199 7,896 5,567 8,346 10,862 9,908 0.7 △8.8
階層レベル2の項目小型バス 61,629 51,464 46,870 46,897 50,941 63,194 4.6 24.1
階層レベル2の項目中型バス 2,526 2,043 2,216 3,335 4,664 4,948 0.4 6.1
自動車計 1,461,244 1,297,854 1,276,140 1,352,648 1,468,393 1,365,296 100.0 △7.0

注:記事執筆時の統計データに基づく。ただし、このデータは過去にさかのぼって修正が入ることがある。正確な数値を確認する場合は、OSDで最新データを参照。
出所:自動車工業協会(OSD)

完成車の生産台数をメーカー別にみると、国内生産台数の27.1%を占めるフォード・オトサンが、前年に続いて首位。ただし、前年比4.3%減だった。2位のオヤク・ルノーは2.2%増、3位の現代・アッサンは1.2%増。首位から3位までの順位は、前年から変わらなかった。

そのほか、4位のトヨタが5.9%増、5位のトファシュ・フィアットが41.3%減。前年と順位が入れ替わった(表2参照)。

表2:完成車メーカー別生産台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー 2021年 2022年 2023年 2024年 前年比 構成比
フォード・オトサン 348,028 374,027 398,794 381,786 △4.3 27.1
オヤク・ルノー 248,000 247,100 325,366 332,503 2.2 23.6
現代・アッサン 162,095 208,100 242,016 244,976 1.2 17.4
トヨタ 230,421 216,735 212,843 225,337 5.9 16.0
トファシュ・フィアット 228,544 263,747 239,428 140,484 △41.3 10.0
テュルク・トラクター 48,560 44,619 51,423 43,611 △15.2 3.1
メルセデスベンツ 24,092 28,914 31,988 22,451 △29.8 1.6
アナドル・いすゞオート 4,066 5,161 5,976 5,778 △3.3 0.4
オトカル 2,237 3,677 5,018 5,375 7.1 0.4
テムサ 1,862 2,457 3,232 3,303 2.2 0.2
マン 1,624 2,044 3,222 2,511 △22.1 0.2
ハッタト・トラクター 6,943 4,922 6,147 2,027 △67.0 0.1
カルサン 3,437 686 510 792 55.3 0.1
合計 1,309,909 1,402,189 1,525,963 1,410,934 △7.5 100.0

注1:表1の合計台数には、テュルク・トラクターとハッタト・トラクターの生産台数を含まない。そのため、表1とは数値が異なる。

注2:記事執筆時の統計データに基づく。ただし、このデータは過去にさかのぼって修正が入ることがある。正確な数値を確認する場合は、OSDで最新データを参照。
出所:自動車工業協会(OSD)

完成車・部品を合わせた自動車関連輸出総額は過去最大

OSDの統計によると、2024年の自動車関連の輸出総額(完成車と部品の合計)の伸び率は鈍化した。それでも、前年比3.0%増の368億ドルと過去最高を更新した。

エンジンやバッテリーの輸出数量は依然少ないものの、エンジンが前年比51.0%増、バッテリー19.1%増と伸びている。自動車部品合計の輸出総額は148億ドル。前年比5.4%増だった(表3参照)。

表3:自動車関連(部品を含む)の輸出額(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
項目 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 前年比 構成比
自動車合計 20,613.8 16,491.1 18,050.0 18,672.5 21,608.3 21,911.6 1.4 59.6
階層レベル2の項目乗用車 11,864.8 9,312.1 9,272.1 9,069.5 10,934.3 11,284.7 3.2 30.7
階層レベル2の項目大型・軽商用車 4,945.4 4,254.5 5,420.3 5,633.4 5,646.6 6,388.0 13.1 17.4
階層レベル2の項目大型バス 1,759.4 1,300.7 1,015.4 1,199.8 1,786.4 1,928.3 7.9 5.2
階層レベル2の項目中・小型バス 222.9 188.4 193.9 163.0 342.6 458.8 33.9 1.2
階層レベル2の項目その他の自動車 1,821.2 1,435.0 2,148.3 2,606.8 2,898.5 1,851.9 △36.1 5.0
自動車部品合計 10,616.4 9,451.3 11,828.5 12,826.7 14,078.3 14,839.2 5.4 40.4
階層レベル2の項目スペアパーツ 8,071.3 7,251.5 9,188.8 10,044.8 11,354.6 11,905.9 4.9 32.4
階層レベル2の項目タイヤなどゴム製品 1,479.1 1,248.0 1,630.3 1,766.7 1,724.8 1,695.7 △1.7 4.6
階層レベル2の項目エンジン 518.1 461.4 296.6 233.0 253.6 382.9 51.0 1.0
階層レベル2の項目バッテリー 397.3 353.0 509.4 547.7 482.2 574.4 19.1 1.6
階層レベル2の項目セーフティーガラス 150.6 140.3 203.1 234.4 263.1 280.2 6.5 0.8
合計 31,230.1 25,941.9 29,878.5 31,499.2 35,686.6 36,750.8 3.0 100.0

注:記事執筆時の統計データに基づく。ただし、このデータは過去にさかのぼって修正が入ることがある。正確な数値を確認する場合は、OSDで最新データを参照。
出所:自動車工業協会(OSD)

一方、トルコ輸出業者会議(TIM)によると、自動車セクターの輸出は約372億ドル。輸出全体の16.5%を占め、前年比6.3%増だった。

輸出額上位15カ国中9位までの順位は、前年から変わらなかった。一方、禁輸措置をとっているイスラエルが圏外。またロシアは16.4%減と15カ国中、唯一前年比減となり、順位を下げた。

輸出総額の68.2%を占めるEU向けは、前年比6.1%増となった。最大の輸出先のドイツと、続くフランス、英国は輸出額がいずれも40億ドル超。特に英国は、約8億8,000万ドルと大きく増加(26.6%増)した。ほかに、伸び率が2桁増の国は、スロベニア(33.7%増、7位)、米国(18.9%増、9位)、ルーマニア(33.7%増、10位)、オランダ(11.0%増、12位)、モロッコ(28.2%増、13位)、チェコ(14.2%増、14位)だった(表4参照)。

表4:自動車・同部品の国別輸出額 (単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 国・地域 2022年 2023年 2024年 構成比 前年比 寄与度
1 ドイツ 4,390,621.78 4,853,208.87 4,860,219.62 13.1 0.1 0.0
2 フランス 3,250,300.83 4,307,446.65 4,347,508.76 11.7 0.9 0.1
3 英国 3,270,917.00 3,291,889.70 4,167,997.62 11.2 26.6 2.5
4 イタリア 2,585,400.95 3,138,049.93 3,441,376.30 9.2 9.7 0.9
5 スペイン 1,816,397.57 2,441,266.87 2,510,542.16 6.7 2.8 0.2
6 ポーランド 1,453,490.31 1,763,122.89 1,832,269.46 4.9 3.9 0.2
7 スロベニア 1,118,595.97 1,354,799.22 1,811,692.81 4.9 33,7 1.3
8 ベルギー 1,168,041.03 1,324,322.79 1,408,009.31 3.8 6.3 0.2
9 米国 1,435,676.62 1,017,155.29 1,209,430.70 3.3 18.9 0.5
10 ルーマニア 680,396.30 868,680.28 1,161,045.11 3.1 33.7 0.8
11 ロシア 701,519.31 992,219.44 829,331.86 2.2 △16.4 △0.5
12 オランダ 489,356.77 635,212.57 704,800.90 1.9 11.0 0.2
13 モロッコ 455,331.55 459,934.05 589,524.52 1,6 28.2 0.4
14 チェコ 350,572.73 403,844.58 461,367.15 1.2 14.2 0.2
15 ポルトガル 404,968.71 366,181.05 366,241.71 1.0 0.0 0.0
61 日本 52,850.92 47,581.23 31,272.95 0.1 △34.2 △0.0
EU 20,065,603.20 23,916,588.66 25,367,496.51 68.2 6.1 4.1
自動車・同部品輸出計 30,995,808.34 34,990,071.35 37,211,661.21 100.0 6.3 6.3
輸出総額 226,596,265.73 221,461,627.28 226,066,206.97 16.5 2.1 1.0

注:「輸出総額」欄の構成比は、輸出額全体に占める自動車・同部品の割合。それ以外の構成比は、自動車・同部品の輸出額に占める国別割合。
出所:トルコ輸出業者会議(TIM)

SUV人気は今年も健在、EVおよびHEVのシェア拡大

トルコ自動車販売代理店・モビリティー協会(ODMD外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、2024年の国内自動車販売台数(小売り)は全体で前年比0.5%増の123万8,509台。そのうち乗用車が98万341台(1.3%増)、軽商用車が25万8,168台(2.7%減)だった。

2024年の乗用車販売台数をセグメント別にみると、自動車に課される税率が低い(注)、A(軽自動車などのミニクラス)、B(スーパーミニなどのエントリークラス)、C(小型ファミリーカーなどのコンパクトクラス)セグメントが85.7%を占める。

車種別では、SUVが56.8%(55万6,548台)。2022年に初めて最大の販売シェアを獲得して以降毎年、順調にシェアを伸ばしてきた。続いて、セダンタイプが25.4%(24万8,902台)、ハッチバックが16.8%(24万8,902台)だった。

オートマ車のシェアも年々増加している。前年の83.1%から2024 年は91.5%にまで拡大した。軽商用車の販売シェアでは、バンが74.3%(19万1,880台)で、例年どおり大半のシェアを占めた。軽トラックは12.4%(3万2,111台)、ミニバスは6.7%(1万7,286台)、ピックアップは6.5%(1万6,805台)だった。

動力タイプ別にみると、(1)ガソリン車が60.1%、(2)ディーゼル車が9.8%、(3)HEVが18.8%、(4)EVが10.7%、(5)液化石油ガス(LPG)車が0.6%を占めた。販売台数は、(1)が前年比8.9%減、(2)が28.0%減、(5)が43.9%減と減少した。逆に著しく販売台数を増やしたのが(3)の75.7%増(18万4,177台)と(4)の45.9%増(10万5,315台)で急伸した(図1、2参照)。

表5:動力タイプ別販売台数(△はマイナス値)
動力 2023年 2024年 前年比
ガソリン車 646,385 588,914 △8.9
ディーゼル車 133,374 95,985 △28.0
ハイブリッド車(HEV) 104,804 184,177 75.7
電気自動車(EV) 72,179 105,315 45.9
液化石油ガス(LPG)車 10,599 5,950 △43.9

出所:トルコ自動車販売・モビリティー協会(ODMD)

図1:動力タイプ別販売台数割合(2023年)
ガソリン車が66.8%、ディーゼル車が13.8%、ハイブリッド車が10.8%、電気自動車が7.5%、液化石油ガス(LPG)車が1.1%を占めた

出所:トルコ自動車販売代理店・モビリティー協会(ODMD)

図2:動力タイプ別販売台数割合(2024年)
ガソリン車が60.1%、ディーゼル車が9.8%、ハイブリット車が18.8%、EVが10.7%、液化石油ガス(LPG)車が0.6%を占めた。

出所:トルコ自動車販売代理店・モビリティー協会(ODMD)

EVの国内販売台数をメーカー別に見ると、1位がTOGGで3万93台、2位がテスラで1万1,534台、次いでBMW、メルセデスベンツ、KGモビリティーだった。トルコ初の国産EVメーカーであるTOGGは、順調に売り上げを伸ばしている。販売台数(乗用車と軽商用車の合計)は前年比53.7%増、EVに限らず全体でも14位だった。

報道によると、中古車販売市場でも、EVの取引台数は2024年、2万台近くに上る。前年比120%増と著しく増えた。トルコでは、不安定な通貨や高インフレなどを背景に、資産防衛のため、固定資産を保有・運用する傾向にある。10年以上の型落ち中古車も資産として取り引きされるなど、中古車売買が盛んになっており、2024年はEVの販売が大幅に延びた。同時に、ディーゼル車は前年比5%増の約120万台、ガソリン車は22%増の80万台に達した。従来の燃料タイプに対する需要も引き続き大きいようだ。

メーカー別の販売台数(乗用車と軽商用車の合計)をみると、首位のトファシュ・フィアットが28.3%減(13万8,749台)、2位ルノーが1.5%減(13万3,596台)、3位フォードが2.5%増(10万4,907台)だった(表6参照)。

表6:販売台数上位15社(2024年) (単位:台数、%)(△はマイナス値)

乗用車
順位 メーカー 国産 輸入 合計 構成比 前年比
1 ルノー 91,482 26,437 117,919 12.03 0.4
2 フィアット 86,053 1,073 87,126 8.89 △30.5
3 フォルクスワーゲン 0.0 74,533 74,533 7.60 4.8
4 現代 41,070 17,429 58,499 5.97 10.7
5 チェリー(Chery) 0.0 57,047 57,047 5.82 40.5
6 プジョー 0.0 53,886 53,886 5.50 △8.0
7 トヨタ 41,932 10,004 51,936 5.30 14.2
8 オペル 0.0 45,212 45,212 4.61 △26,0
9 シュコダ 0.0 43,972 43,972 4.49 25.5
10 シトロエン 0.0 43,219 43,219 4.41 △4.8
11 ダチア 0.0 33,658 33,658 3.43 △18.6
12 TOGG 30,093 0.0 30,093 3.07 53.7
13 メルセデスベンツ 0.0 29,967 29,967 3.06 21,6
14 フォード 45 29,617 29,662 3.03 △4.1
15 日産 0.0 27,088 27,088 2.76 27.3
合計(その他を含む) 290,675 689,666 980,341 100.00 1.3
軽商用車
順位 メーカー 国産 輸入 合計 構成比 前年比
1 フォード 41,401.0 33,844.0 75,245.0 29.1 5.3
2 フィアット 27,107.0 24,516.0 51,623.0 20.0 △24.4
3 フォルクスワーゲン 169.0 22,266.0 22,435.0 8.7 26.9
4 プジョー 0.0 19,656.0 19,656.0 7.6 △2.1
5 シトロエン 0.0 18,009.0 18,009.0 7.0 1.4
6 オペル 0.0 17,244.0 17,244.0 6.7 34.6
7 ルノー 0.0 15,677.0 15,677.0 6.1 △13.6
8 メルセデスベンツ 0.0 10,260.0 10,260.0 4.0 10.4
9 トヨタ 0.0 9,086.0 9,086.0 3.5 △33.5
10 現代 0.0 4,414.0 4,414.0 1.7 △25.0
11 起亜 0.0 3,924.0 3,924.0 1.5 44.8
12 イヴェコ 0.0 3,850.0 3,850.0 1.5 31.5
13 いすゞ 1,277.0 1,584.0 2,861.0 1.1 21.7
14 双竜自動車 0.0 2,444.0 2,444.0 0.9 128.8
15 東風小康汽車 0.0 675.0 675.0 0.3 0.0
合計(その他を含む) 70,120.0 188,048.0 258,168.0 100.0 △2.7
総合
順位 メーカー 国産 輸入 合計 構成比 前年比
1 フィアット 113,160 25,589 138,749 11.2 △28.3
2 ルノー 91,482 42,114 133,596 10.3 △1.5
3 フォード 41,446 63,461 104,907 8.5 2.5
4 フォルクスワーゲン 169 96,799 96,968 7.8 9.2
5 プジョー 0.0 73,542 73,542 5.9 △6.5
6 現代 41,070 21,843 62,913 5.1 7.1
7 オペル 0.0 62,456 62,456 5.0 △15.4
8 シトロエン 0.0 61,228 61,228 4.9 △3.0
9 トヨタ 41,932 19,090 61,022 4.9 3.2
10 チェリー(Chery) 0.0 57,047 57,047 4.6 40.5
11 シュコダ 0.0 43,972 43,972 3.6 25.5
12 メルセデスベンツ 0.0 40,227 40,227 3.2 18.5
13 ダチア 0.0 33,658 33,658 2.7 △18.6
14 TOGG 30,093 0.0 30,093 2.4 53.7
15 日産 0.0 27,088 27,088 2.2 27.3
合計(その他を含む) 360,795 877,714 1,238,509 100.0 0.5

出所:トルコ自動車販売モビリティー協会(ODMD)

日系メーカーでは、トヨタ3.2%増(6万1,022台、9位)、日産27.3%増(2万7,088台、15位)、ホンダ10.8%増(2万3,632台、17位)、スズキ9.6%増(5,894台、27位)、いすゞ21.7%増(2,861台、33位)、レクサス60.9%増(816台、38位)、スバル65.3%減(335台、40位)、三菱自動車84.9%減(56台、47位)だった。なお、マツダ(2023年販売台数203台、44位)は、2024年以降トルコでの完成車販売を停止している。

中国および韓国系メーカーでは、現代自動車7.1%増(6万2,913台、6位)。そのほか、奇瑞汽車(チェリー)が、40.5%増(5万7,047台、10位)と販売台数を伸ばした。また、比亜迪(BYD)は2024年、約8,300台販売。2025年は5万台を目標にしているとの報道もある(2024年7月9日付国営アナドル通信)。

中国からの輸入増を受け、トルコ政府は2025年1月1日付で、中国からの輸入自動車に対する追加関税を50%に引き上げた(2025年1月14日付ビジネス短信参照)。投資誘致を進めると同時に、中国からの輸入車に高い関税をかけ国内産業保護に乗り出したかたちだ。

また、トルコのコチ・ホールディング(コチ財閥)とステランティスの合弁会社(2023年3月9日付ビジネス短信参照)でフィアットを生産するトルコの最大手自動車メーカーのトファシュでは、2024年第4四半期に1億2,100万リラの純損失が発生した。その結果、2024年の純利益は前年比76%減の522万リラだったと発表した。純利益の減少原因として、(1)国内市場における競争激化、稼働率低下、(2)インフレ会計の影響、(3)主要車種だったフィオリーノの生産終了に伴う新モデルへの移行、(4)輸出先の一つである北アフリカ市場での輸入規制を挙げた。同社の2025年の見通しでは、国内市場は縮小する一方、輸出は力強い回復が見込まれると予想している。

トルコの自動車販売台数を欧州各国と比較すると、昨年と変わらなかった。首位はドイツ、次いで英国、フランス、イタリアと続く。トルコは5位になっている(表7参照)。

表7:欧州・トルコ市場の自動車販売台数(2024年)(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 2024年 2023年 前年比
乗用車
販売台数
商用車
販売台数
合計 合計
EU + EFTA + 英国 12,963,614 2,002,023 14,965,637 14,720,448 1.7
ドイツ 2,817,331 281,078 3,098,409 3,103,985 △0.2
英国 1,952,778 354,265 2,307,043 2,247,899 2.6
フランス 1,718,412 379,747 2,098,159 2,150,282 △2.4
イタリア 1,559,229 198,517 1,757,746 1,763,883 △0.3
トルコ 980,341 258,168 1,238,509 1,232,635 0.5
スペイン 1,016,885 166,157 1,183,042 1,095,506 8.0
ポーランド 551,568 66,858 618,426 539,554 14.6
ベルギー 448,277 65,780 514,057 544,224 △5.5
オランダ 381,227 129,878 511,105 438,925 16.4
スウェーデン 269,582 38,328 307,910 333,533 △7.7
オーストリア 253,789 33,075 286,864 269,851 6.3
スイス 239,535 30,741 270,276 282,784 △4.4

出所:欧州自動車工業会(ACEA)、トルコ自動車販売モビリティー協会(ODMD)

トルコEVセクターの現状、今後と課題

トルコ政府は、2030年までにトルコをハイテク分野のセンター拠点化させることを目指している。そのため、優先度の高い技術分野に300億ドル相当の包括的支援とインセンティブを割り当て、支援するHIT-30プログラムを発表している。この一環で、EV分野に、開発、生産、販売に50億ドルのインセンティブを設けた。投資支援、税制優遇、バッテリー開発、充電ステーション、開発センター設置に関する助成金支援などから構成されている。

充電ステーションのライセンスを付与するトルコのエネルギー市場規制庁(EPDK)によると、国内の電気自動車用充電器は全国で2023年12月の1万1,812カ所から2024年12月時点で2万6,046カ所へ急速に増加した。現時点で、150社以上に事業ライセンスを付与。充電器のほぼ半数を、最大手ZES社含めた上位10事業社が占めている。トルコの家電大手ベステル(Vestel)の事業には、充電ステーションの提供を含む。同社は当該事業を欧州各国でも展開している。

こうした中、EV購入者向けの支援もある。例えばTOGGは、車両購入時などに、優遇措置を講じている(特別消費税や購入ローン)。これが、同社の販売台数増加にもつながっているとみられる。

また、企業が提供する消費者向け支援もある。例えばTOGGは、車両購入時などに、優遇措置を講じている(特別消費税や購入ローン)。これが、同社の販売台数増加にもつながっているとみられる。

また、TOGGは、2025年以降、ドイツをはじめ欧州向け輸出の開始を目標にしている。レジェップ・タイップ・エルドアン大統領をはじめ各政府高官は、各国訪問時などにTOGGの周知に向け活動している。同社はバッテリーなどの技術開発にも注力。外国企業との協業にも意欲的だ。

同時に、トルコは国内生産保護の取り組みを打ち出している。例えば、2023年に導入した(翌年改訂)輸入規制に基づき、EU関税同盟と自由貿易協定(FTA)締結国以外からEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)、HEVを輸入する場合、正規サービスステーションやコールセンターの設置や、それら基準を満たした上で、当局から輸入許可証を取得しなければならない(2024年9月24日付ビジネス短信参照)

最後に、EV関連各社の動きを押さえておく。フォード・オトサンは昨今、EVの生産・販売・輸出に力を入れており、トルコで開発・生産した同社の大型商用EVを、地方自治体のごみ収集車として稼働させている。同社にインタビューした際(インタビュー日:2024年12月5日)、「EV化に関して充電ステーションやバッテリーの問題がある中、PHEV、HEVが更に大きなシェアを獲得していく」との発言もあった(2025年1月17日付地域・分析レポート参照)。また海外メーカーでは、中国のBYDが10億ドルを投資し、トルコでEVとHEVを主軸とした生産工場、モビリティー技術開発センターの設立を決定した(2024年10月8日付2025年3月4日付ビジネス短信参照)。同じく中国のチェリーが、トルコ黒海地方へ進出するとの報道や、韓国の現代が、既存のトルコ工場でEVとHEVの生産を2026年後半に開始するという報道もある。


注:
トルコでの自動車購入に際しては、特別消費税、付加価値税、自動車税などがかかる。特別消費税は排気量(EVの場合電力量)と自動車価格によって税率が決まり、自動車価格と特別消費税の合計金額に対して付加価値税が課せられる。自動車税は車種や排気量、登録日などを基に計算される。そのため、自動車価格が低く、排気量が少ないA、B、Cセグメントの自動車にかかる税率は、他のセグメントのものと比較して低いと言える。トルコでの自動車購入における課税の詳細については、ジェトロ「ビジネスの制度・手続き:税制」を参照。
執筆者紹介
ジェトロ・イスタンブール事務所
井口 南(いぐち みなみ)
日系銀行などを経て、2018年からジェトロ・イスタンブール事務所勤務。