2024年の自動車新規登録台数は前年比21.4%減(ケニア)

2025年6月9日

ケニア国家統計局(KNBS)によると、2024年の自動車新規登録台数(四輪、中古車を含む)は前年比21.4%減の9万3,646台だった。同年2月には政策金利が過去最高の13%にまで引き上げられたことや(2024年2月16日付ビジネス短信参照)、政府の増税案を発端とする抗議デモの頻発(2024年6月28日付ビジネス短信参照)、同年初めの通貨ケニア・シリングの大幅な変動など、厳しい経済状況が影響した。

ステーションワゴン以外は軒並み大幅減

2024年を通年でみると、自動車(四輪)の新規登録台数(中古車を含む)は前年比21.4%減の9万3,646台だった(表1参照)。車種別にみると、ステーションワゴンのみが増加し、前年比4%増の6万4,204台で、その他はすべての車種で大幅減となった。二輪・三輪車の登録台数は前年比4.7%減の7万2,868台、二輪車は前年比2.7%減と小幅の減少にとどまったものの、ピーク時の2021年と比べると、登録台数は4分の1以下に減少している(表2参照)。

表1:車種別の自動車新規登録台数(二輪車・三輪車を除く)(△はマイナス値)
車種 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 前年比(%)
セダン 7,754 8,170 6,350 6,378 5,367 △ 15.9
ステーション・ワゴン 57,962 64,350 55,004 61,711 64,204 4.0
小型バン、ピックアップ等 6,065 5,986 10,901 12,957 5,879 △ 54.6
ローリー、トラック 6,476 7,071 10,075 13,635 5,456 △ 60.0
バス、コーチ 900 893 2,173 3,122 1,452 △ 53.5
ミニバス 1,084 822 907 1,579 1,441 △ 8.7
トレーラー 2,382 3,187 3,457 6,368 2,123 △ 66.7
トラクター 2,545 2,818 2,553 2,054 667 △ 67.5
その他 8,960 14,202 7,945 11,401 7,057 △ 38.1
合計 94,128 107,499 99,365 119,205 93,646 △ 21.4

出所:ケニア国家統計局「Leading Economic Indicator」からジェトロ作成

表2:二輪・三輪車の新規登録台数(△はマイナス値)
車種 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 前年比(%)
バイク・二輪車 246,705 285,203 131,513 70,691 68,804 △ 2.7
三輪車 5,896 6,350 4,001 5,760 4,064 △ 29.4
合計 252,601 291,553 135,514 76,451 72,868 △ 4.7

出所:ケニア国家統計局「Leading Economic Indicator」からジェトロ作成

ケニアでの自動車組み立て生産台数も、前年比14.6%減の1万1,555台だった。新型コロナウイルス感染拡大による低迷期を越えて、2022年、2023年は年間1万3,000台以上の組み立て生産が行われていたものの、2024年は市場の低迷の影響も受けて大きく落ち込んだ。ケニア自動車工業会(KMI)のデータを報じた現地メディアによると、同年の新車販売台数も、前年比2.7%減の1万1,059台だった。

2024年は、6月末の増税を巡る抗議デモや、重債務による政府調達の減少など、政治的にも経済的にも安定せず、景況感は改善していない。特に為替レートは対ドルで第2四半期(4~6月)以降、1ドル=130シリング程度に落ち着いたものの、年初は160シリングの水準でスタートしたこともあり、輸入価格が高騰していた。また、政策金利が過去最高の13%まで引き上げられたことにより、自動車購入のための資金調達も難しかった。同年6月に発表した政府の増税案では、自動車に関連する税金の引き上げが盛り込まれ、最終的には棄却されたものの、抗議デモの深刻化が経済にも大きな混乱を招いた。

しかし、年後半から政策金利が大幅に引き下げられ、為替も安定基調にあることから、景況感も少しながら改善傾向にある。現地紙は、2025年は徐々に回復しつつあると報じている。

主要メーカーが相次ぎ投資計画、EVバス・バイクは拡大継続

2024年の経済は上述のとおり、厳しい状況が続いたものの、主要な自動車メーカーによる投資計画が複数発表された。7月には豊田通商傘下のCFAOモーター・ケニアがケニアの車体組み立てメーカー、KVM(Kenya Vehicle Manufacturers)の株式を98%取得することが発表され、ケニア競争監督庁は買収を承認した。また、いすゞ・イーストアフリカは、12月にグループ会社のUDトラックスのケニアでの販売権を取得したことを発表した。フォルクスワーゲンも、12月にケニアでの組み立て事業再開検討を発表している。ケニア初の自動車メーカーとして2011年から組み立て生産を行ってきたモビウス・モーターは8月に一時廃業を発表したが、その後、中東の投資会社シルバー・フォックスによる買収が発表され、翌2025年7月に生産再開を計画していると現地紙が報じている。二輪車では、ケニアで組み立て生産を行っているホンダが現地化をさらに進め、現在、現地調達している部品14品目を2025年中に35品目に引き上げる計画を発表している。

電気自動車(EV)では、EVバスを組み立て生産・販売するバシゴー(BasiGo)が2024年3月に豊田通商傘下のCFAOグループから300万ドルの資金を調達したことを発表した。同社はさらに10月にはシリーズAの株式による2,400万ドルの資金調達と、1,750万ドルの融資枠を確保した。ルワンダでも、2025年5月に同国最初の都市間バスサービスを開始したことを発表している。また、EVバスと、バイクの組み立て生産・販売を行うローム(ROAM)も、2024年2月にシリーズAラウンドで、総額2,400万ドルを調達したことを発表している。

EV普及の波はバス、バイクにとどまる

EV各社が積極拡大する一方で、その波はバスやバイクにとどまり、一般消費者がEVを自家用車で購入するケースはまだ少ない。ジェトロは2025年4月にナイロビ市内にある複数の販売ディーラーを訪問し、市場調査を行った。

中国のBYDは2024年9月にケニア市場に新規参入し、現在、CFAOグループ傘下のロキシアがBYDブランドを販売している。同社のEV新車販売価格は、安いもので658万シリング(約730万円、1ケニア・シリング=約1.11円)、高いものは1,500万シリング程度で販売している。韓国の現代自動車と起亜ブランドを販売しているCAETANOでは、現代自動車のEVが1,100万シリング、起亜が1,300万シリングだ。購入者は大企業や一部の高所得者層に限られ、販売台数はあまり伸びていないという。

中国上汽通用五菱汽車(SGMW)製のEVをケニアで組み立て、自社ブランド「Yetu」として販売している自動車販売会社オートパックス(Autopax)に聞いたところ、EVの販売は、高価格や、充電設備の不足、スペアパーツや技術者の不足などが要因で、なかなか普及が進んでいないという。しかし、中古のハイブリッド車などは燃費の良さから人気が増してきており、今後は予想以上のペースでハイブリッド車やEVへのシフトが進んでいくかもしれないと述べた。

一方、着実に販売を伸ばしているのは、中国の新興メーカーの小型EV「BOMA」と「NETA」だ。新車の販売価格で「BOMA」が250万シリング、「NETA V」が450万シリング程度で販売されている。これらのEVは価格が手頃でもあり、ウーバーやボルトなどのタクシードライバーや個人、法人の顧客に対しても、売り上げを少しずつ伸ばしているという。代理店によると、保証期間をボディーで5年、ソフトウエアで8年、バッテリーで8年に設定するなど、サービスを強化しており、ケニアでの評判も特に悪くはないという。徐々にウーバーやボルトといったタクシードライバーの支持を集め、ステーションワゴン需要は中古のエンジン車からEVに少しずつシフトしつつあるようだ。

執筆者紹介
ジェトロ・ナイロビ事務所長
佐藤 丈治(さとう じょうじ)
2001年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ・ヨハネスブルク事務所、企画部企画課、ジェトロ・ラゴス事務所、ジェトロ・ロンドン事務所、展示事業部、調査部中東アフリカ課を経て、2023年5月から現職。