EUの2021年新車登録台数、HEVがディーゼル車を超える、EVも躍進

(EU)

ブリュッセル発

2022年02月04日

欧州自動車工業会(ACEA)は2月2日、EU26カ国(マルタを除く、注1)の2021年の乗用車の燃料タイプ別の新車登録台数のシェアを発表した(プレスリリース、外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます注2)。ガソリン車(全体の40.0%)とディーゼル車(19.6%)は合わせると全体の約6割を占めたものの、登録台数はそれぞれ前年比17.8%減、31.5%減だった。対照的に、ハイブリッド車と電気自動車(EV)の全体に占める割合は37.6%と、前年から15ポイント以上上昇し、ハイブリッド式EV(HEV)は19.6%、バッテリー式EV(BEV)は9.1%、プラグインハイブリッド車(PHEV)は8.9%だった(添付資料図参照)。

このうち、HEVの登録台数は前年比60.5%増の190万1,239台で、わずかな差ではあるがディーゼル車(190万1,191台)を超えた。EU市場でHEVがディーゼル車を通年で上回るのは初めてのことだ。また、BEVとPHEVも登録台数はそれぞれ前年比63.1%増、70.7%増だった(添付資料表1参照)。これまで西欧諸国(EU14、注3)に比べて普及が遅れているとされていた中・東欧諸国(EU12)でも、BEVの登録台数は前年比約58.3%増、PHEVとHEVはそれぞれ前年比88.4%増、85.1%増となり、市場規模は小さいものの、西欧諸国に匹敵または上回る増加率となった(添付資料表2参照)。EU市場全体でEVが着実にシェアを伸ばしていることがうかがえる。

EVの普及に伴い、課題となっているのが充電ポイントの整備の遅れだ。欧州委員会は2021年7月、代替燃料インフラ規則案を提案し、加盟国に拘束力がある目標を課して、整備を推進する意向だ(2021年7月16日記事参照)。ACEAは1月13日、同規則案に関するファクトシートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表し(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、2030年までにBEVが3,440万台、PEVが1,370万台まで普及した場合、規則案に基づいたACEA独自の計算では、欧州委の同年までの設置目標数は390万基となるが、実際には同年までに700万基が必要だとした。また、公設充電ポイントの出力レベルも欧州委の想定より高いものが必要だと指摘した。

規制強化の傾向にある欧州自動車産業、次期排ガス規制「ユーロ7」も注目

欧州議会とEU理事会(閣僚会議)の代替燃料インフラ規則案と、同時に発表された乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準規則の改正案の審議の行方とともに、欧州自動車業界が注目するのが2025年からの汚染物質の排出基準「ユーロ7」だ。ACEAは2021年6月に発表したユーロ7に関する政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、2025年に照準を合わせて対応するために、現行基準「ユーロ6」の検査方法に大きな変更を加えないことや、法案発表後、2022年内に速やかに欧州機関の間で合意することを求めていた。しかし、欧州委は法案の発表予定を当初の2021年第4四半期(10~12月)中から2022年7月20日に延期。ACEAは1月28日、声明を発表し(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、提言の内容は変えないが、発表の延期で2025年までに十分な対策を取ることは不可能で、欧州委に対して、脱炭素化へ向けて変容を迫られている自動車業界の現況に鑑みて、「ユーロ7」について検討することを求めた。

(注1)ACEAでは、マルタはデータ入手不可能として統計に含めていない。

(注2)EUの2021年の乗用車新車登録台数については2022年1月20日記事参照

(注3)ACEAでは、2004年4月以前のEU加盟国(主に西欧諸国)をEU14(ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、ベルギー、オランダ、ポルトガル、ルクセンブルク、アイルランド、ギリシャ、オーストリア、デンマーク、フィンランド、スウェーデン)、2004年5月以降の加盟国(主に中・東欧諸国)をEU12(キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア)として分類。

(滝澤祥子)

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