2021年の自動車販売台数は大幅に復調、交通渋滞が深刻化(イスラエル)

2022年5月13日

イスラエル国内の2021年の自動車販売台数は28万9,291台で、前年比約35%(約7万5,000台)の増加となった。

2021年の販売台数は29万台に迫る勢いで大幅に回復

2016年の28万6,728台をピークに、2017年以降は緩やかに減少を続けていたが、ここにきて大幅に需要を戻したかたちだ(表1参照)。新型コロナウイルス禍による行動規制が緩和された2021年前半に予想されていた回復基調(2021年6月16日付地域・分析レポート参照)が2021年末まで継続したものと考えられる。

表1:自動車販売台数上位20社(2021年末時点)と日系メーカーの販売台数推移(2015~2021年) (単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 メーカー/
ブランド
2015年
販売台数
2016年
販売台数
2017年
販売台数
2018年
販売台数
2019年
販売台数
2020年
販売台数
2021年
販売台数 シェア 前年比
1 現代 31,250 39,086 36,781 38,423 40,286 33,565 43,152 14.9% 28.6%
2 トヨタ 29,280 30,040 31,103 27,192 35,898 28,756 40,844 14.1% 42.0%
3 起亜 33,703 38,069 35,663 35,524 31,978 25,483 39,737 13.7% 55.9%
4 シュコダ 16,083 19,511 21,742 19,928 17,921 17,908 18,628 6.4% 4.0%
5 マツダ 17,057 14,303 13,033 13,253 10,804 9,499 15,051 5.2% 58.4%
6 三菱自動車 16,121 17,988 10,863 12,952 14,342 12,895 12,828 4.4% △0.5%
7 セアット 7,692 8,362 8,471 9,046 9,128 10,256 11,453 4.0% 11.7%
8 日産 11,960 11,664 14,342 15,626 11,055 7,425 11,315 3.9% 52.4%
9 スズキ 12,277 13,413 16,619 13,304 12,440 9,234 10,563 3.7% 14.4%
10 シボレー・GM 6,969 8,802 7,216 6,976 6,159 6,527 8,416 2.9% 28.9%
11 プジョー 5,867 6,404 6,464 6,581 6,906 5,778 8,033 2.8% 39.0%
12 ルノー 9,337 10,786 13,006 11,397 9,058 7,428 7,584 2.6% 2.1%
13 シトロエン 5,715 7,620 8,020 6,963 6,847 5,901 7,061 2.4% 19.7%
14 テスラ 0 0 0 0 0 0 6,299 2.2%
15 スバル 7,625 7,738 6,647 5,734 4,515 3,763 5,495 1.9% 46.0%
16 フォルクスワーゲン 7,939 9,064 7,043 5,859 4,297 4,464 4,392 1.5% △1.6%
17 アウディ 3,344 4,183 4,598 4,015 3,827 3,180 3,763 1.3% 18.3%
18 メルセデスベンツ 2,569 3,419 3,787 2,599 3,115 2,957 3,609 1.2% 22.0%
19 BMW 2,433 3,021 3,451 3,312 2,958 2,047 3,484 1.2% 70.2%
20 ホンダ 5,403 6,998 7,685 6,216 5,206 2,542 3,066 1.1% 20.6%
26 レクサス 1,449 1,400 1,227 1,515 1,618 1,482 1,854 0.6% 25.1%
28 いすゞ 1,584 1,957 1,597 1,384 1,518 887 1,553 0.5% 75.1%
46 インフィニティ 385 348 414 558 217 182 49 0.0% △73.1%
その他 18,806 22,552 21,791 19,133 13,845 12,385 21,062 7.3% 70.1%
総計 254,848 286,728 281,563 267,490 253,938 214,544 289,291 100.0% 34.8%

注:太字:日系メーカー・ブランド。
出所:イスラエル自動車輸入業者協会

イスラエルは総人口900万人余りと、自動車の国内市場規模は大きくはない。そのため、イスラエルに自国の自動車(完成車)メーカーは存在せず、国内で販売される自動車は全て輸入車だ。

販売台数上位メーカーの顔ぶれに大きな変化はない。第2位のトヨタ自動車、第3位の韓国の起亜がともにシェアを伸ばし、首位の韓国の現代自動車に迫る勢いを見せている。

メーカー・ブランド別の市場シェアでは、韓国勢は現代が14.9%(2020年15.6%)、起亜が13.7%(同11.9%)、日本勢はトヨタが14.1%(同13.4%)、マツダが5.2%(同4.4%)、三菱自動車が4.4%(同6.0%)、日産自動車が3.9%(同3.5%)、スズキが3.7%(同4.3%)となっている(図1参照)。三菱は販売台数、シェアともに減少した。スズキは販売台数で前年比プラスだったものの、全体の販売台数が大幅に増加したこともあり、シェアを落とす結果となった。

図1:販売台数上位10社(2021年末時点)市場シェア推移(2015‐2021年)
2021年の各社販売シェアは1位の現代14.9%、二位のトヨタが14.1%、三位の起亜が13.7%となった。 トップ10に入った日本勢では、トヨタ、マツダ、日産がそれぞれシェアを伸ばした。

出所:イスラエル自動車輸入業者協会

自動車のタイプ別では、2015年に自動車販売台数全体の16%を占めたスポーツ用多目的車(SUV)が2020年に45%、2021年に46%とさらに販売割合を増やし続けている(図2参照)。メーカー・ブランド別でSUVの販売割合が大きいのは、スバル(年間販売台数の99%)、プジョー(83%)、起亜(67%)、三菱(62%)などだ。また、台数ベースで最も多いのは起亜の2万6,464台だった。

図2:自動車販売台数に占めるSUVの割合
2021年のSUV販売台数の全体に対する割合は46%に達した。

注:棒グラフ上部太字は総台数。
出所:イスラエル自動車輸入業者協会

表2:自動車販売台数に占めるSUVの割合(単位:台)
項目 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
SUV 41,667 68,921 76,049 95,517 100,631 97,119 132,027
SUV以外 213,181 217,807 205,514 171,973 153,307 117,425 157,264

出所:イスラエル自動車輸入業者協会

また、2021年にはイスラエルに初めて米国テスラの電気自動車(EV)が投入された。同社は6,299台を販売し、シェア2.2%を獲得した(前掲表1参照)。現地紙の報道によると、2021年のEV全体の販売台数は1万台近くで、この6割をテスラが占めるという。

自動車の累積的な増加による交通渋滞が深刻化、都市インフラの開発が課題

新車の販売が大幅に復調したことは、新型コロナ禍による景気減退が急速に回復していることを示している。

一方で、都市部を中心に慢性的な交通渋滞が発生、新型コロナ禍以降さらに悪化しているという見方がある。渋滞悪化の原因としてまず考えられるのは、自動車登録台数が累積的に増加傾向にあることだ。高い購買力を背景に、狭い国土に次々と新車が輸入されてくるため、既に過密状態になっている可能性がある(図3参照)。

図3:イスラエルにおける自動車登録台数(累計)
イスラエルの累積自動車登録台数は増加を続けており、2018年に297万台あまりだったものが2021年には330万台あまりとなっている。

注:2021年は暫定値。
出所:イスラエル中央統計局

2021年12月8日付「タイムズ・オブ・イスラエル」紙は、ドライブナビゲーションアプリ「ウェイズ」のデータ分析結果を紹介し、新型コロナ禍以前と比較して、自動車の稼働が全国平均で23%増加したとしている。これによると、最も増加率が高かったのは南部のベエルシェバで45%、次いでエルサレムの38%、テルアビブ近郊のラマトガン32%、北部のハイファ29%などとなっている。

同紙はまた、テルアビブにつながる主要な高速道路の「アヤロンハイウエー」の分析を併せて紹介し、通勤時間帯に通行する自動車1台当たりの乗車人数が1.2名程度で推移しており、ほとんどの車両が1台1人で走っているとしている。「アヤロンハイウエー」は、郊外の駐車場に自家用車を止めて、1台の自動車に複数人が乗り合って都心に向かう車が優先的に通行できる「カープールレーン」を設定しているが、利用率は高くないという。

クルマ離れが進まない背景には、新型コロナ禍をきっかけに感染を予防する目的からも、自家用車での通勤を選択する人が増えていることが挙げられる。前述の現地紙によると、新型コロナ禍前にはテルアビブ都市圏で1日当たり150万回のバス乗降があり、8万人がテルアビブの鉄道の主要駅を利用していたが、いまだにコロナ禍以前の水準には戻っていないという。既に過密状態にある道路に、これまで公共交通機関を利用していた人々が自家用車で通勤するようになると、渋滞はさらに悪化することとなる。

別の理由として挙げられているのは、そもそも、近郊列車や地下鉄などの公共交通機関の整備が遅れている点だ。テルアビブ都市圏では、郊外のベッドタウンと都心を結ぶ大規模輸送システム(ライトレール)の建設が2000年代後半から計画されてきたが、いまだに商用運行は始まっていない(2022年4月19日付ビジネス短信参照)。

イスラエルは国土の約4割が砂漠で占められていることもあり、全人口に占める都市人口の割合は92%で、年1.7%を超える人口増加率(ともに世界銀行:2020年)とも相まって、住宅の供給が喫緊の課題となっている。住宅は、既に過密状態で、かつ不動産価格が高騰している都心部から、郊外化する傾向にある。しかし、公共交通機関が未発達なことから、郊外から都心部への通勤に自家用車が使用される傾向が続いているため、交通渋滞の深刻化に拍車をかけている。

ハイテク先進国として名高いイスラエルは、その急速な経済成長によって都市が拡張し、そこに暮らす人口も同時に増加してきた。旺盛な購買意欲によって新車を手にしたイスラエルの人びとが快適なドライブを楽しむためにも、状況を改善し、さらなる発展を支えるための都市インフラの開発がまさに必要とされている。

執筆者紹介
ジェトロ・テルアビブ事務所
吉田 暢(よしだ のぶる)
2004年、ジェトロ入構。アジア経済研究所、ERIA支援室、英サセックス大学開発研究所客員研究員、デジタル貿易・新産業部を経て、2020年8月から現職。

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