中国・イスラエルの複合企業、MRT入札めぐりイスラエル政府を提訴

(イスラエル、中国、米国)

テルアビブ発

2022年04月19日

イスラエル現地紙「エルサレム・ポスト」は4月17日、テルアビブ地域の大量輸送システム(MRT)開発に係る入札で、中国鉄建を含む中国企業とイスラエル企業からなるコングロマリット(複合企業)がイスラエル政府をテルアビブ地方裁判所に提訴したと報じた。

記事によると、主な訴因として、同複合企業がグリーンラインとパープルラインの入札に最低価格で応札したにもかかわらず、米国による中国企業のインフラ事業への参入を抑止する圧力がイスラエル政府になされたことで、採択されなかったためと主張しているという。

同報道によると、テルアビブ地域のMRT開発を担う国営企業NTAメトロポリタン・マス・トランジット・システム(NTA)は2022年1月に、グリーンラインはアルストム(フランス)、ダン、エレクトラ(ともにイスラエル)からなるコングロマリット、パープルラインはCAF(スペイン)、シャピール(イスラエル)からなるコングロマリットの提案をそれぞれ採択すると発表している。

2月7日付「Al Monitor」紙によると、グリーンラインとパープルラインの入札に採択された事業者は、資金調達や計画策定、5年程度と想定される建設工事、それ以降25年間にわたる鉄道システムのメンテナンス業務を受託する。

イスラエル政府によると、テルアビブ地域のMRT開発として、合計で6つの路線外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(レッドライン、グリーンライン、パープルライン、メトロラインM1、メトロラインM2、メトロラインM3)の建設・運行が計画されている。

このうちレッドラインは既に着工されており、一部のトンネルや地下部分の駅の建設計画と工事を、中国中鉄傘下の中鉄隧道集団や中国土木工程集団がイスラエル企業あるいは外資企業と共同で受注している。

イスラエルのインフラ事業をめぐっては、前述のレッドラインに限らず、複数の鉄道トンネルの建設やハイファ港の建設・運用などで、中国企業が受注する案件が散見されてきた。米国政府からイスラエル政府への圧力の可能性については、現地でもこれまでたびたび報道されてきたことから、今後の裁判の行方が注目される。

また、仮に裁判でイスラエル政府が中国企業の参入を妨げたことが認められた場合、イスラエル政府側は安全保障上の理由を主張することが考えられる。その場合は、WTOが政府調達協定(GPA)で定める無差別待遇の原則と、国家安全保障に伴う例外措置のいずれが優先されるのかが問われる紛争に発展する可能性もあるため、引き続き注視が必要だ。

(吉田暢)

(イスラエル、中国、米国)

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