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新型コロナ禍で自動車販売低迷も2021年は回復基調、技術開発が進む(イスラエル)

2021年6月16日

2020年の販売台数は25万台割れ、2021年は回復基調

イスラエル国内での2020年の自動車販売台数は、新型コロナ禍もあり、2015年以降初めて25万台割れ。21万4,544台となった。2016年の28万6,728台をピークに、2017年以降は緩やかに減少を続けていた。なお2020年は、前年比18.4%減の落ち込みだ(表参照)。

他方で、2021年3月のイスラエル自動車輸入業者協会の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2021年1~3月期の新車販売台数は前年同期比17.9%増。3月単月では前年同月比43.6%増だった。2021年に入り、イスラエルでは新型コロナワクチン接種が先行したことから感染状況が改善し、経済活動が再開された。自動車の需要は、こうしたことから回復傾向にあるとみられる。

表:自動車販売台数上位20社(2020年時点)および日系メーカーの販売台数推移(2015-2020年) (単位:台、%)(△はマイナス値)
順位
(2020年)
メーカー/
ブランド
2015年
販売台数
2016年
販売台数
2017年
販売台数
2018年
販売台数
2019年
販売台数
2020年
販売台数 シェア 前年比
1 現代 31,250 39,086 36,781 38,423 40,286 33,565 15.6% △20.0%
2 トヨタ 29,280 30,040 31,103 27,192 35,898 28,756 13.4% △24.8%
3 起亜 33,703 38,069 35,663 35,524 31,978 25,483 11.9% △25.5%
4 シュコダ 16,083 19,511 21,742 19,928 17,921 17,908 8.3% △0.1%
5 三菱自動車 16,121 17,988 10,863 12,952 14,342 12,895 6.0% △11.2%
6 セアット 7,692 8,362 8,471 9,046 9,128 10,256 4.8% 11.0%
7 マツダ 17,057 14,303 13,033 13,253 10,804 9,499 4.4% △13.7%
8 スズキ 12,277 13,413 16,619 13,304 12,440 9,234 4.3% △34.7%
9 ルノー 9,337 10,786 13,006 11,397 9,058 7,428 3.5% △21.9%
10 日産 11,960 11,664 14,342 15,626 11,055 7,425 3.5% △48.9%
11 シボレー・GM 6,969 8,802 7,216 6,976 6,159 6,527 3.0% 5.6%
12 シトロエン 5,715 7,620 8,020 6,963 6,847 5,901 2.8% △16.0%
13 プジョー 5,867 6,404 6,464 6,581 6,906 5,778 2.7% △19.5%
14 フォルクスワーゲン 7,939 9,064 7,043 5,859 4,297 4,464 2.1% 3.7%
15 スバル 7,625 7,738 6,647 5,734 4,515 3,763 1.8% △20.0%
16 アウディ 3,344 4,183 4,598 4,015 3,827 3,180 1.5% △20.3%
17 メルセデスベンツ 2,569 3,419 3,787 3,599 3,115 2,957 1.4% △5.3%
18 ホンダ 5,403 6,998 7,685 6,216 5,206 2,542 1.2% △104.8%
19 ダキア 2,422 3,454 4,354 4,277 3,162 2,052 1.0% △54.1%
20 BMW 2,433 3,021 3,451 3,312 2,958 2,047 1.0% △44.5%
22 レクサス 1,449 1,400 1,227 1,515 1,618 1,482 0.7% △9.2%
27 いすゞ 1,584 1,957 1,597 1,384 1,518 887 0.4% △71.1%
33 インフィニティ 385 348 414 558 217 182 0.1% △19.2%
その他 16,384 19,098 17,437 13,856 10,683 10,333 4.8% △3.4%
総計 254,848 286,728 281,563 267,490 253,938 214,544 100.0% △18.4%

注:太字:日系メーカー・ブランド。
出所:イスラエル自動車輸入業者協会

イスラエルは総人口900万人余りと、自動車の国内市場規模は大きくない。そのような背景もあり、イスラエルに自国の自動車(完成車)メーカーは存在しない。生産が行われていないため、国内自動車販売のすべてを輸入に頼っている。

販売台数上位メーカーの顔ぶれに大きな変化はない。第2位のトヨタ自動車(以下、トヨタ)、第3位の韓国・起亜自動車(以下、起亜)が3万台を割り込む中、首位の韓国・現代自動車(以下、現代)だけが3万台超を維持した。

メーカー・ブランド別の市場シェアは、韓国勢の現代が15.6%、起亜が11.9%、日本勢はトヨタが13.4%、三菱自動車(以下、三菱)が6.0%、マツダが4.4%、スズキが4.3%、日産自動車(以下、日産)が3.5%となっている(図1参照)。

図1:販売台数上位10社(2020年時点)市場シェア推移(2015-2020年)
2020年は1位の現代が15.6%、2位のトヨタが13.4%、3位の起亜が11.9%と続く。

出所:イスラエル自動車輸入業者協会

タイプ別では、2015年に全体の16%だったSUVが、2020年に45%。とSUVの販売割合が増加を続けている(図2参照)。メーカー・ブランド別でSUVの割合が大きいのは、スバル(年間販売台数の96%)、プジョー(78%)、日産(73%)、三菱(70%)、起亜(64%)だ。また、台数ベースで最も多いのは起亜の1万6,184台だった。

図2:自動車販売台数に占めるSUVの割合
2015年の16%から、2016年24%、2017年27%、2018年36%、2019年40%と増え、2020年には45%となった。

注:棒グラフ上部太字は総台数。
出所:イスラエル自動車輸入業者協会

EV、水素エンジン、自動運転などで、技術開発が進む

イスラエル国内には自動車メーカーは存在しない。しかし、電気自動車(EV)や水素エンジン、自動運転に関連する技術やソリューションの開発を行うスタートアップが、世界市場を狙って活動している。

EV関連では、2011年に創業したリー・オートモーティブが、EV専用のモジュール化されたシャーシを開発。EV製造を担う事業者に提供している。同社が提供するシャーシは土台が完全にフラットで、上部に任意のボディを載せることができる。シャーシのキットには、モーター、ステアリング、サスペンション、ドライブトレイン、センサー、ブレーキおよび車輪につながるエレクトロニクス回線が含まれている。これまでに日本の武蔵精密工業や日野自動車との間で業務提携しているため、日本市場においても今後の展開が期待されている。2021年2月には特定買収目的会社(SPAC)によって米国ナスダックへの上場を果たしており、主に商用車への供給をメイン戦略にするとしている。

道路から直接EVに給電できる技術を開発しているのが、2013年に創業したエレクトレオンだ。同社のワイヤレス電気道路システム(ERS)技術は、道路に専用の機器を敷設し、走行する商用車や公共交通機関などのEVに給電するというものだ。この技術が実用化されると、EVに蓄電池の搭載が不要となるため、車体の低価格化が可能となる。また、走行中に蓄電することができるため、充電設備への投資も低減できる可能性がある。同社は2017年テルアビブ証券取引所に上場後、総額で1億2,600万ドルの資金を調達した。このほか、実証実験を行うため、2021年2月にドイツ政府が提供する190万ユーロの資金を獲得した。今後はドイツのフォルクスワーゲン(VW)などとのコンソーシアムにより、EVへの自動給電実験を行う予定だ。また2021年3月には、イスラエルのイノベーション庁と交通省が資金供与し、テルアビブ市などと協働する実証実験をイスラエル国内で実施し、走行するバスへの自動給電にも成功した。

小型、軽量で低コストの発電用フリーピストン・リニアエンジンを開発するのは、武蔵精密工業やTPRから出資を受けるアクアリウス・エンジンだ。2014年に創業した同社が開発したリニアエンジンは、重さ10キログラムと軽量。そのうえ、部品の数が20点以下というシンプルな構造ながらも高い効率性を実現している。同社は2021年5月18日付で、この技術に基づき、燃料電池を必要とせず水素だけで稼働する新型水素エンジンの開発にも成功。第三者機関による試験もクリアしたと発表した。

また自動運転分野でも、イスラエル発のソリューション導入への動きが活発化している。例えば、自動運転実現の中核となるライダー(LiDAR)技術(注)だ。イノビズ・テクノロジーズはこの技術で注目を集め、日本市場へも進出。その進出にあたって、日本の電子部品関連企業マクニカとの提携を発表した。

他にも、V2X(Vehicle to Everything)通信技術に基づく車車間通信V2V(Vehicle to Vehicle)、歩車間通信V2P(Vehicle to Pedestrian)の衝突防止システムの例がある。これら技術を開発するアイネットモバイルが日系大手自動車メーカーとの実証実験の実施を発表した、と報じられている。同社は、携帯電話用の無線回線を使った交通事故防止システムを開発する。ソフトウェア開発キット(SDK)を用いることで、あらゆるメーカーのハードウェアに組み込むことが可能という。また、携帯電話回線を自動運転に活用するV2X通信(C-V2X:Cellular Vehicle to Everything)技術にも注目が集まっている。自動運転分野においても、イスラエル企業の強みが発揮される期待がある。


注:
ライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging)とは、光を用いて周辺を探索することを可能にする技術。車両のルーフに回転型の装置を設置するか、車両のボディに装備する。
執筆者紹介
ジェトロ・テルアビブ事務所
吉田 暢(よしだ のぶる)
2004年、ジェトロ入構。アジア経済研究所、ERIA支援室、英サセックス大学開発研究所客員研究員、デジタル貿易・新産業部を経て、2020年8月から現職。

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