台湾の2021年の自動車生産、7年ぶりに増加

2022年5月2日

台湾の自動車業界団体の台湾区車輛工業同業公会によると、2021年の台湾域内での自動車生産台数は前年比8.0%増の26万5,320台、このうち台湾域内で販売された台数は3.5%増の23万4,780台となった。生産台数は2020年まで6年連続で減少していたが、2021年は歯止めがかかった(図1参照)。輸出台数は3万14台だった。

メーカー別に2021年の生産台数をみると、1位でトヨタと日野自動車が出資する国瑞汽車の寄与が大きい。同社の生産台数は前年比25.4%増の12万4,815台だった。4位の福特六和汽車も11.6%増の2万7,417台と、増加に寄与した。一方、2位の中華汽車は1.7%減の4万3,848台、3位の裕隆汽車も19.7%減の3万460台だった(表1参照)。

表1:台湾のメーカー別自動車生産台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー名 2019年 2020年 2021年
生産台数 生産台数 生産台数 シェア 伸び率 寄与度
国瑞汽車 104,761 99,567 124,815 47.0 25.4 10.3
中華汽車 49,448 44,620 43,848 16.5 △ 1.7 △ 0.3
裕隆汽車 37,727 37,929 30,460 11.5 △ 19.7 △ 3.0
福特六和汽車 17,212 24,568 27,417 10.3 11.6 1.2
台湾本田汽車 30,435 27,423 25,350 9.6 △ 7.6 △ 0.8
三陽工業 10,575 10,541 12,072 4.5 14.5 0.6
台塑汽車 1,146 967 1,358 0.5 40.4 0.2
合計 251,304 245,615 265,320 100.0 8.0 8.0

出所:台湾区車輌工業同業公会資料を基に作成

図1:台湾の自動車生産・販売台数の推移
生産台数は、2008年182,974 台、2009年226,356 台、2010年303,456 台、2011年343,296 台、2012年339,038 台、2013年338,720 台、2014年379,223 台、2015年351,085 台、2016年309,531 台、2017年291,563 台、2018年253,241 台、2019年251,304 台、2020年245,615 台、2021年265,320 台。販売台数(台湾域内)は、2008年178,809 台、2009年229,450 台、2010年252,530 台、2011年285,790 台、2012年270,078 台、2013年258,753 台、2014年282,130 台、2015年262,593 台、2016年262,346 台、2017年255,770 台、2018年234,589 台、2019年219,075 台、2020年226,870 台、2021年234,780 台。輸出台数は2008年7,196 台、2009年9,655 台、2010年36,914 台、2011年54,785 台、2012年70,906 台、2013年82,427 台、2014年95,518 台、2015年83,307 台、2016年51,463 台、2017年39,519 台、2018年23,982 台、2019年32,482 台、2020年19,133 台、2021年30,014 台。生産台数伸び率(前年比)は、2008年△ 35.4%、2009年23.7%、2010年34.1%、2011年13.1%、2012年△ 1.2%、2013年△ 0.1%、2014年12.0%、2015年△ 7.4%、2016年△ 11.8%、2017年△ 5.8%、2018年△ 13.1%、2019年△ 0.8%、2020年△ 2.3%、2021年8.0%。販売台数伸び率(台湾域内、前年比)は、2008年△ 35.3%、2009年28.3%、2010年10.1%、2011年13.2%、2012年△ 5.5%、2013年△ 4.2%、2014年9.0%、2015年△ 6.9%、2016年△ 0.1%、2017年△ 2.5%、2018年△ 8.3%、2019年△ 6.6%、2020年3.6%、2021年3.5%。

注:販売台数は輸入車を含まず、輸出向けを含む。
出所:台湾区車輌工業同業公会

メーカー別に2021年の台湾域内の販売台数をみると、シェア1位の国瑞汽車が前年比25.0%増の9万7,516台、4位の福特六和汽車が5.6%増の2万6,652台と増加した。一方、2位の中華汽車は10.3%減の4万1,898台、裕隆汽車は19.3%減の3万79台だった(表2参照)。

生産・販売状況を単月ベースでみると、5月までは生産・販売ともに前年同期比10%以上の増加が続いた(図2参照)。とりわけ、1月の販売は前年同月比43.8%増の3万1,598台だった。国瑞汽車が生産し、2020年10月に発売された「カローラクロス」の販売が好調だった。加えて、2021年1月7日に行政院が中古車の買い替え促進を目的とした減税の実施を2026年1月7日まで5年間延長すると発表〔行政院ウェブサイト参照(中国語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕したことも、消費意欲を刺激したと考えられる(2021年5月27日付地域・分析レポート参照)。6月になると、新型コロナウイルスの域内感染が拡大したため、販売量が前年同月比23.8%減の1万5,275台に落ち込んだ。感染拡大に伴って消費者の購入意欲が低下したとみられる。

表2:台湾のメーカー別自動車域内販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー名 2019年 2020年 2021年
販売台数 販売台数 販売台数 シェア 伸び率 寄与度
国瑞汽車 72,700 78,012 97,516 41.5 25.0 8.6
中華汽車 47,227 46,731 41,898 17.8 △ 10.3 △ 2.1
裕隆汽車 39,863 37,282 30,079 12.8 △ 19.3 △ 3.2
福特六和汽車 17,358 25,243 26,652 11.4 5.6 0.6
台湾本田汽車 30,346 27,576 25,274 10.8 △ 8.3 △ 1.0
三陽工業 10,502 10,889 11,921 5.1 9.5 0.5
台塑汽車 1,079 1,137 1,440 0.6 26.6 0.1
合計 219,075 226,870 234,780 100.0 3.5 3.5

出所:台湾区車輌工業同業公会資料を基に作成

図2:2021年の台湾の生産・販売額および伸び率の推移(月次)
生産台数は、1月 27,070 台、2月 17,182 台、3月 26,465 台、4月 22,736 台、5月 23,327 台、6月 20,742 台、7月 19,767 台、8月 14,439 台、9月 22,328 台、10月 23,459 台、11月 23,356 台、12月 24,449 台。域内販売台数は、1月 31,598 台、2月 15,621 台、3月 23,201 台、4月 20,651 台、5月 18,523 台、6月 15,275 台、7月 18,443 台、8月 13,371 台、9月 19,991 台、10月 19,986 台、11月 20,260 台、12月 17,860 台。生産伸び率は、1月43.0%、2月11.4%、3月28.7%、4月15.1%、5月40.8%、6月4.8%、7月△ 15.2%、8月5.9%、9月14.8%、10月8.6%、11月△ 12.6%、12月△ 18.1%。 域内販売伸び率は、1月43.8%、2月19.1%、3月38.6%、4月26.7%、5月10.7%、6月△ 23.8%、7月△ 20.1%、8月△ 1.5%、9月12.8%、10月△ 2.4%、11月△ 20.0%、12月△ 17.9%。

注:春節(旧正月)の時期が毎年異なるため、1月と2月については、前年同月との厳密な比較はできない。
出所:台湾区車輌工業同業公会資料を基に作成

輸入車のシェアは44.7%へ微減

自動車市場関連の業界サイト「U-CAR」が2022年1月3日に発表した「2021年12月台湾自動車市場販売報告(中国語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、表2に含まれない2021年の輸入車の販売台数は前年比6.7%減の20万1,270台だった。台湾域内の新車販売台数全体に占める輸入車の割合は44.7%で、前年の47.2%から微減となった(注1)。背景には、第4四半期(10~12月)に海上輸送の混乱や車載半導体の不足などによって輸入台数が大幅に減少したことがある。ブランド別のシェアをみると、1位のトヨタ(20.6%)は、前年比18.9%減の4万1,438台、2位のメルセデス・ベンツ(13.9%)は6.4%減の2万7,879台、3位のレクサス(10.2%)は10.2%減の2万584台、4位のBMW(9.2%)は1.0%増の1万8,490台、5位のマツダ(7.2%)は11.8%減の1万4,533台だった。2020年から順位の変動はなかった。

EV販売ではテスラが首位

また、U-CARが1月24日に発表した「2021年度台湾自動車市場販売報告:電気自動車トップ10(中国語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、2021年に域内での電気自動車(EV)販売台数は前年比24.7%増の7,064台で、過去最高を記録した(注2)。域内で販売される域内生産車と輸入車に占めるEVの比率は1.5%だった。最も販売台数が多かったのは米国のテスラで、全車種の販売台数は前年比3.2%減の5,632台だった。「U-CAR」によると、微減の背景には「モデルS」と「モデルX」に納車遅れが生じたことが指摘されている。一方、「モデル3」の販売は好調で、前年比22.3%増の5,607台に上り、2021年のEV販売市場の79.3%を占めた。なお、2位以降はポルシェの「タイカン」が800台、アウディの「e-tron スポーツバッグ」が157台と続いた。

2050年のCO2排出ネットゼロに向け、輸送部門の電化促進

台湾のEV市場の規模は小さいが、今後、気候変動対応としてEVの導入が促進される見込みだ。台湾の国家発展委員会は「2050年ネットゼロ排出ロードマップ」を発表した(2022年4月4日付ビジネス短信参照)。

ロードマップによると、台湾の2019年の温室効果ガス排出量は2億8,706万CO2(二酸化炭素)換算トン、このうち輸送部門の排出は3,699万トンで、12.9%を占めた(注3)。ロードマップでは、輸送部門の排出のうち96.8%は道路輸送が占めることから、低炭素または炭素排出ゼロ車両の推進がネットゼロ排出において重要になると指摘している。また、2030年に公共バスの全面電動化、2040年に新車販売に占めるEVと電気オートバイのシェアを100%にすることも掲げている。乗用車については、新車販売に占めるEV割合を2030年に30%、2035年に60%、2040年に100%にする計画だ。

そのほか、充電施設などのインフラ整備や、車両の排ガス基準の厳格化による低炭素排出車の導入を促進する。地域の産業発展を目的とした公用車の電動化促進や、電動タクシー購入への助成、台湾域内で生産されたEVを一般市民が購入する際の補助金などの提供を検討している。

2022年も販売台数は緩やかに増加の見込み

台湾の自動車生産・販売最大手である和泰汽車の発表(中国語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2022年の販売台数(域内産と輸入車を含む)は2021年から微増の46万台と予想している。新型コロナの影響や車載半導体不足などの不確実性は依然残ってはいるものの、台湾の経済が安定的に成長していることや、株式市場、住宅市場、域内旅行需要の高まりなどによって、自動車市場の活性化が引き続き見込まれることが背景にある。

台湾当局は、2022年の実質GDP成長率は前年比4.42%と予測している(2022年3月11日付ビジネス短信参照)。このうち民間消費の伸び率は、新型コロナのオミクロン型変異株の影響が限定的な一方、基本賃金の引き上げや企業収益の増加などにより、5.10%増と見込まれる。2021年は域内の新型コロナ拡大の影響を受け、年半ばから自動車販売台数が落ち込んだが、感染状況の改善に伴い、2022年は消費意欲や域内の自動車販売も回復に向かうことが期待される。


注1:
U-CARが発表する台湾域内の新車販売台数(44万9,859台)に基づく割合。他方、U-CARが発表する域内での輸入車販売台数(20万1,270台)と台湾区車輌工業同業公会が発表する「域内で生産の自動車のうち、域内で販売された台数(23万4,780台)の合計数(43万6,050台)は、前述のU-CAR発表の域内新車販売台数とは一致しない。
注2:
EVの販売台数には、エクステンデッド・レンジ電気自動車(EREV)は含まない。EREVは、航続距離を延ばすために小型の発電用エンジンを搭載したEVを指す。ハイブリッド車と異なり、EREVは電気が不足したときに限り、エンジンで発電を行う。
注3:
CO2に加え、亜酸化窒素やメタンなど他の温室効果ガスを含めた総排出量。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課
柏瀬 あすか(かしわせ あすか)
2018年4月、ジェトロ入構。海外調査部国際経済課、市場開拓・展示事業部海外市場開拓課を経て現職。