2020年の自動車の生産・販売総台数はともに減少続く(台湾)
2020年自動車の生産・販売動向

2021年5月27日

業界団体の台湾区車両工業同業公会によると、2020年の台湾の自動車生産台数は前年比2.3%減の24万5,615台、販売台数(輸入車は含まず、輸出向けを含む)は2.2%減の24万6,003台となった。これで、6年連続で生産台数、販売台数ともに減少した(図参照)。

図:台湾の自動車生産・販売台数の推移
台湾の自動車生産・販売台数は、2008年182,974台(生産)、186,005台(販売)、2009年226,356台(生産)、239,105台(販売)、2010年303,456台(生産)、289,444台(販売)、2011年343,296台(生産)、340,575台(販売)、2012年339,038台(生産)、340,984台(販売)、2013年338,720台(生産)、341,180台(販売)、2014年379,223台(生産)、377,648台(販売)、2015年351,085台(生産)、345,900台(販売)、2016年309,531台(生産)、313,809台(販売)、2017年291,563台(生産)、295,289台(販売)、2018年253,241台(生産)、258,571台(販売)2019年251,304台(生産)、251,557台(販売)、2020年245,615台(生産)、246,003台(販売)。 台湾の自動車生産・販売台数伸び率は、2008年△35.4%(生産)、△34.5%(販売)、2009年23.7%(生産)、28.5%(販売)、2010年34.1%(生産)、21.1%(販売)、2011年13.1%(生産)、17.7%(販売)、2012年△1.2%(生産)、0.1%(販売)、2013年△0.1%(生産)、0.1%(販売)、2014年12.0%(生産)、10.7%(販売)、2015年△7.4%(生産)、△8.4%(販売)、2016年△11.8%(生産)、△9.3%(販売)、2017年△5.8%(生産)、△5.9%(販売)、2018年△13.1%(生産)、△12.4%(販売)、2019年△0.8%(生産)、△2.7%(販売)、2020年△2.3%(生産)、△2.2%(販売)。

注:販売台数は輸入車を含まず、輸出向けを含む。
出所:台湾区車輌工業同業公会

福特六和汽車のみ生産・販売ともに増加

2020年の生産台数をメーカー別にみると、1位のトヨタと日野自動車が出資する国瑞汽車(構成比:40.5%)は前年比5.0%減の9万9,567台、2位の中華汽車(18.2%)は9.8%減の4万4,620台とそれぞれマイナスに、3位の裕隆汽車製造(15.4%、注1)はこれまでの減少から一転、0.5%増とプラスに転じた(表1参照)。4位の台湾本田汽車(11.2%)は減少幅が縮小したものの、引き続き9.9%減とマイナスで推移している。表1のうち、5位の福特六和汽車(10.0%)のみが42.7%増と2年連続で増加した。人気車の「クーガ」と「フォーカス」が後押ししたものと考えられる。

表1:台湾のメーカー別自動車生産台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー名 2018年 2019年 2020年
生産台数 生産台数 生産台数 構成比 前年比
国瑞汽車 101,626 104,761 99,567 40.5 △ 5.0
中華汽車 47,176 49,448 44,620 18.2 △ 9.8
裕隆汽車製造 42,430 37,727 37,929 15.4 0.5
台湾本田汽車 35,830 30,435 27,423 11.2 △ 9.9
福特六和汽車 12,968 17,212 24,568 10.0 42.7
三陽工業 12,336 10,575 10,541 4.3 △ 0.3
その他 875 1,146 967 0.4 △ 15.6
合計 253,241 251,304 245,615 100.0 △ 2.3

出所:台湾区車輌工業同業公会資料を基に作成

2020年の販売台数24万6,003台のうち、台湾域内における販売台数は92.2%を占めた。上位5メーカーをみると、1位の国瑞汽車(構成比:34.4%、前年比7.3%増)と5位の福特六和汽車(11.1%、45.4%増)は域内販売が好調で増加している。一方、中華汽車(20.6%)、裕隆汽車製造(16.4%)、台湾本田汽車(12.2%)は前年に引き続き減少した(表2参照)。

表2:台湾域内のメーカー別自動車販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー名 2018年 2019年 2020年
販売台数 販売台数 販売台数 構成比 前年比
国瑞汽車 79,687 72,700 78,012 34.4 7.3
中華汽車 48,369 47,227 46,731 20.6 △ 1.1
裕隆汽車製造 43,954 39,863 37,282 16.4 △ 6.5
台湾本田汽車 35,895 30,346 27,576 12.2 △ 9.1
福特六和汽車 13,398 17,358 25,243 11.1 45.4
三陽工業 12,267 10,502 10,889 4.8 3.7
その他 1,019 1,079 1,137 0.5 5.4
合計 234,589 219,075 226,870 100.0 3.6

出所:台湾区車輌工業同業公会資料を基に作成

輸入車のシェアは台湾域内の総販売台数の47.2%

自動車市場関連の業界サイト「U-CAR」によると、表2に含まれない輸入車の販売は前年比2.7%増の21万5,687台、総新車販売台数(輸入車を含む)の47.2%に達した(注2)。

構成比1位(22.8%)のトヨタは前年比2.0%減の4万9,260台、2位(13.7%)のメルセデス・ベンツは1.4%増の2万9,654台、3位(10.5%)のレクサスは1.7%増の2万2,678台と、前年から順位に変動はなかった。そのほか、4位(8.5%)のBMWは8.3%増の1万8,303台で前年に引き続き増加した。5位(7.5%)のマツダは5.8%増の1万6,255台とプラスに転じた。

近年、台湾ではSUV(スポーツ用多目的車)人気が続いている。例えば、トヨタは2020年10月にトヨタ初の台湾域内生産SUVである「カローラクロス」を発売したが、10~12月(3カ月)の販売台数をみると、「カローラクロス」(3カ月合計で1万2,080台)は3カ月連続で1位となり、それまで台湾で最もよく売れていたトヨタの輸入SUV「RAV4」(同5,887台)を大きく上回った。

「U-CAR」によると、「2020年は新型コロナウイルスの影響を受けたが、幸いにも域内感染を押さえ込み、通常の生産・販売体制を取り戻した。加えて、老朽化輸送車両の淘汰(とうた)といった補助政策などを受けて、新車への買い替えが推進され、下半期は販売台数が回復した」と分析している。

「貨物税条例」の減税措置延長が決定

行政院は2021年1月7日、「貨物税条例」修正草案(第2条、第4条、第12条の5)を閣議決定した[「本院新聞(行政院ウェブサイト)」2021年1月7日]。同日で期限を迎えた、自動車・二輪車買い替えの際に受けられる貨物税の減税措置を5年間延長するほか(同条例第12条の5、延長期間は2021年1月8日から2026年1月7日)、買い替え前の自動車の車齢を6年以上から10年以上に引き上げた。経済部工業局によると、今回の貨物税の減税措置延長により、自動車25万台、二輪車10万6,000台の買い替え需要が見込まれるとみている(「工商時報」2021年1月8日)。

深刻化する車載半導体不足への対応

新型コロナウイルスによる急激な需給の変化や環境対策、電気自動車(EV)事業の強化などの影響を受けて、世界的な車載半導体不足の深刻化が指摘されている。

経済部は1月27日、半導体の受託製造大手4社[台湾積体電路製造(TSMC)、聯華電子(UMC)、力晶積成電子製造、世界先進積体電路]と、車載半導体不足への対策について意見交換した[「本部新聞(経済部ウェブサイト)」2021年1月27日]。王美花経済部長は「台湾半導体産業と世界は緊密に関係しており、当局としても車載用半導体需要増の影響を重要視し、最優先事項としている。今回、各企業には業界全体で生産効率の改善や生産能力の向上など供給確保に向けた取り組みについての承諾を得た」と述べた。

経済部は、車載半導体不足の要因の1つとして、次のように説明した。自動車メーカーが将来的な自動車の需要減少を予測したことから、半導体メーカーは生産を縮小した。一方、2020年第2四半期、第3四半期にノートPC等の家電製品や第5世代移動通信システム(5G)、モノのインターネット(IoT)などの需要が増加したにもかかわらず、需要予測が調整されることなく、従来の自動車よりも多くの半導体チップを必要とする電気自動車の需要が高まったことで、市場に不均衡が生じたものとみている。

台湾企業のEV分野におけるビジネスチャンス

台湾では、EV産業の発展が台湾企業に新しい商機をもたらすとの見方が多い。電子機器受託製造サービス(EMS)世界最大手・鴻海精密工業(フォックスコン)の創業者である郭台銘氏は、EV産業の発展について楽観的な見方を示す一方で、「EV産業のカギはバッテリー。台湾にはすでに基盤はあるが、さらに強化していく必要がある」との見方も示した(「経済日報」2021年1月22日)。

工業技術研究院産業科技国際策略発展所の蘇孟宗所⻑は、「台湾にとって自動車車両のビジネスチャンスは、機械部品、完成車、車載用電子部品の3つの分野となるが、うち、車載用電子部品だけが成長を続けている」とした上で、「台湾の優位性は、従来の自動車メーカーによる閉鎖的なサプライチェーンを打破できることである。米アップル、米グーグル、米アマゾンなど、いままさにEVの開発に力を入れているグローバル企業は台湾企業の顧客であり、サプライチェーンへの参入に優位性がある」と述べた[「理財周刊(第1064期)」2021年1月14日]。

台湾当局も、EV分野の商機獲得を支援していく姿勢を示している。王経済部長は「EV時代において、電子・電気分野は台湾の強みである。経済部は昨年から、多くの産業と座談会を行うなどしており、台湾企業がEVのサプライチェーンへの参入に大きな進展が得られるよう支援していく」と強調した(「中央通訊社」2021年4月14日)。


注1:
生産台数には、日産との合弁の裕隆日産汽車なども含む。
注2:
U-CARウェブサイト「2020年12月台湾自動車市場販売報告」(2021年1月4日)より。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課 アドバイザー
嶋 亜弥子(しま あやこ)
2017年4月より現職。