法改正で段階的規制強化が進む
ドイツの容器包装廃棄物法(後編)

2022年9月6日

ドイツの容器包装廃棄物を取り巻く状況について、2回に分けて解説するシリーズ。前編では、2019年1月から施行されている容器包装廃棄物法の概要を説明した。後編では、直近の改正内容について説明する。なお当該改正は、2021年7月から段階的に施行されている。

ドイツ国内の代理人任命が可能に

容器包装廃棄物法(ドイツ語でVerpackungsgesetz)は、2019年1月から施行されている法律だ。これに対して、2021年に、重要な改正が加えられている(2021年1月27日付ビジネス短信参照)。改正案は議会審議を経て、2021年7月から段階的に施行されてきた。

まず2021年7月から、ドイツ国外の製造者やオンライン販売事業者はドイツの法規定に精通する同国内の代理人の任命が可能になった(中央包装登録局による代理人制度の説明ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。外国からドイツに輸入される商品やオンライン販売が増加する中、ドイツの包装材に関する法規定を知らずに違反行為に至る事例が相次いだ。こうした事情が導入の背景にある。代理人には、ドイツ国内に所在する(または支店を持つ)サービスプロバイダーを任命することが可能。ただし、代理人を任命する場合も、中央包装登録局(以下、中央局)の包装登録データベース(LUCID)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますへの登録は自社で行う必要がある。またLUCIDには、代理人の情報を登録することも求められる。その登録前に、代理人とドイツ語での契約書を作成しておかなければならない。

LUCIDでの代理人情報登録後、任命期間中は、容器包装廃棄物法に基づく履行義務〔リサイクル業者との契約締結やデータ報告など(前編参照)〕は代理人が負うことになる。なお、外国企業が代理人を任命しない場合は、外国企業自身が全ての義務を履行しなければならない。

デポジット制度の対象が拡大、再登録が求められる場合も

その後も、制度は順次施行されてきた。以下で、その概要を確認する。

  • 使い捨て飲料用容器デポジット制の対象拡大
    2022年1月1日からは、使い捨て飲料用容器について、デポジット制度の対象が拡大された(中央局による対象拡大の説明ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。それまでは、ミネラルウオーターや清涼飲料水、ビール、アルコール入り飲料の使い捨てボトルに、25セントのデポジットが課されていた。
    同日からは、容量0.1~3.0リットルの使い捨てペットボトルと缶のすべてがデポジット制度の対象になった。従前は、果汁・野菜ジュース、ワイン、カクテルなどのアルコール混合飲料などは、対象外とされていた。この措置で、それらも含められたかたちだ。ただし、経過措置も設けられた。同日より前にドイツ市場に流通していた(またはドイツに輸入されていた)使い捨て飲料用容器は、2022年7月1日まではデポジットを課さずに販売が可能とされた。
    同時に、2022年1月からデポジット制度の対象になった使い捨て飲料用容器は、リサイクル業者への支払いが不要になった(デポジット制度の対象外の使い捨て飲料用容器は、容器包装廃棄物法に基づいて支払いが求められる)。また2022年1月以降、新たにデポジット制度の対象になる使い捨て飲料用容器は、年間流通量の見込みに関するLUCID上の報告も不要になった。
    また、商品がデポジット制度の対象になった場合、2022年1月1日からは当該商品のブランド名をLUCID上で削除する必要がある。ただし、当該商品にリサイクル業者への支払いが必要な包装材を使用している場合は、この限りでない〔例えば、個別商品をまとめるプラスチック包装(集合包装材)を使用している場合〕。このときは、従来どおりLUCIDでの登録を継続する必要がある。

    それ以上に注意を要するのは、2022年7月1日に施行された変更だ。重要な変更が多いため、中央局は7月1日施行分に関して解説ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを作成している。

  • デポジット制度対象飲料用容器に新規登録義務
    2022年7月1日からは、デポジット制度の対象となる使い捨て飲料用容器に関して、LUCID上で新たに登録義務が発生している。
    ちなみに、2022年1月にブランド名登録を削除した場合も同様だ。この場合は、改めて7月から「容器包装廃棄物法第31条に基づくデポジット制度対象の使い捨て飲料用容器」とのコメントを付し、LUCIDで再登録する必要がある。
    なお、牛乳と乳飲料については、容器材料に応じて扱いが変わる。缶入りのものは、2022年1月からのデポジット制度拡大の対象に含まれているので、既述の通り。一方でボトル入りについては、2024年1月まで移行期間が設けられる。すなわち、それまでは、回収費用をリサイクル業者へ支払わなければならない。
  • B2B用包装材にもLUCID登録義務
    2022年7月1日からは、LUCIDに登録する義務の対象になる包装材の範囲も拡大されている。同日より前までは、リサイクル業者への支払いが必要な包装材だけが対象だった。しかし以降は、リサイクル業者への支払いが不要な包装材を含め、全ての包装材に拡大された。言い換えると、最終消費者が廃棄するB2C用包装材(注1)に加え、B2B用包装材もLUCIDで登録する必要が生じたことになる。なお、中央局は、リサイクル業者に支払いが必要な包装材・不要な包装材をイラストで例示PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(991KB)している。
    ちなみにLUCIDに登録する際は、包装材の種類を「リサイクル業者への支払いが必要な包装材」「デポジット制度の対象となる使い捨て飲料」「その他の包装材」に分けて記載する必要がある。
  • オンラインプラットフォーム販売規制
    さらに2022年7月1日からは、オンラインプラットフォームを通じた販売に新たな制約が加えられた。すなわち、流通が許可されるのは、LUCIDに登録済みでリサイクル業者との契約も済んでいることを証明できる業者の商品だけになっている。オンラインプラットフォームを通じて日本からドイツの消費者に商品販売する場合には、この規制が適用されるので、注意が必要だ(注2)。

制度変更は今後も続く

2021年の法改正で導入されたが、未実施である制度変更について、以下に主要なものを列挙してみる。

  • テークアウト用飲食への再利用可能な容器の利用
    2023年1月1日からは、テークアウト用に食事や飲料を提供する際、顧客に対して再利用可能な容器で提供する選択肢を設けることが義務付けられる(注3)。あわせて、再利用可能な容器の提供に当たり、(1)使い捨て容器を選択するよりも不利な条件にしないこと、あるいは(2)使い捨て容器より高額にしないこと、も求められる。
    ちなみに、再生可能な容器にデポジットを課すことも推奨される。もっとも、デポジットを課すとしても、当該店舗以外で提供された再生可能な容器を引き取る必要はない。
    なお、従業員5人以下、かつ売り場面積が80平方メートル以下の小規模事業者は、この措置の対象外であるため、再利用可能な容器での提供は求められていない。
  • 使い捨てペットボトルに、再生プラスチックの使用義務
    2025年1月1日からは、使い捨てペットボトルについて、再生プラスチックの使用割合を25%以上にすることが義務付けられる。
    さらに、2030年1月1日からは、この義務の対象範囲が拡大され、内容的にも規制強化。すなわち、(1)ペットボトルだけでなく、全てのプラスチック製使い捨て飲料容器について、(2)再生プラスチック比率も30%以上に引き上げられる。
    「最初の流通者」(前編参照)は、この比率を個々のボトルで、または暦年で1年間に市場に流通させるボトル総量のいずれかで、達成する必要がある。

注1:
個人など最終消費者が廃棄する包装材のこと。レストラン、ホテル、行政官庁、病院などが廃棄する包装材も含まれる。
注2:
日本からLUCIDに登録する場合については、本レポートの前編を参照。
注3:
テークアウト用飲食の提供で再利用可能容器利用の選択肢提示を義務付けられる対象は、例えばレストラン、ビストロ、カフェ、ケータリング業者など。

ドイツの容器包装廃棄物法

  1. 商品のドイツ市場流通前に必要な手続き
  2. 法改正で段階的規制強化が進む
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所
ベアナデット・マイヤー
2017年よりジェトロ・デュッセルドルフ事務所で調査および農水事業を担当。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所 ディレクター
作山 直樹(さくやま なおき)
2011年、ジェトロ入構。国内事務所運営課、ジェトロ金沢、ジェトロ・ワルシャワ事務所、企画課、新産業開発課を経て現職。