商品のドイツ市場流通前に必要な手続き
ドイツの容器包装廃棄物法(前編)

2022年9月6日

環境先進国のイメージが強いドイツ。しかし、最近は消費者が出す容器や包装材のごみの量が増加傾向にある。そのような中、政府は容器や包装材のごみ削減に取り組んでいる。その1つが、容器包装廃棄物法の制定と改正だ。

本稿では、ドイツの容器包装廃棄物を取り巻く現状や、同法の概要、直近の改正による重要な変更点について、前・後編に分けてみていく。前編では、容器包装廃棄物の現状や、容器包装廃棄物法の基本的な内容、それに伴う企業の法定義務・手続きを説明する。後編では、直近の改正内容について解説する。

増加傾向にある容器包装廃棄物

ドイツ連邦環境庁は2021年11月、2019年の容器や包装材(以下、まとめて包装材)の廃棄量を発表。前年比0.2%増の1,891万トンだった。2010年と比較すると18.1%増に当たる。1人当たりに換算すると227.55キログラム。EU加盟国27カ国の平均177.38キロに比べ、依然として非常に高い水準にある。

最終消費者が出す包装材の廃棄量(2019年)をみると、前年比3.8%減の859万2,200トン。1人当たりでは103.4キロだった(表1、2参照)。一方、2010年時点では740万3,700トン、1人当たり90.6キロ。9年間で、それぞれ16.1%、14.1%増えたことになる。同庁はその理由として、(1)小型容器や小分けパッケージへのニーズが高まったこと、食品・飲料の持ち帰りが増加したこと、(2)利便性を高めるため、家庭や商業施設でより多く容器包装を使用するようになったこと、(3)通信販売が拡大したこと、などを挙げている。

表1:最終消費者が出す容器包装廃棄物量の推移(素材別)(単位:万トン)
包装材の素材 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年(注1)
225.22 234.30 239.78 280.75 306.37 316.14 312.40 325.33 330.05 308.16
ガラス 240.20 236.55 250.31 244.42 242.80 238.38 246.28 258.16 258.96 269.26
プラスチック 191.30 197.83 199.53 195.12 198.73 204.47 204.70 209.66 212.69 204.82
ブリキ 40.05 41.33 42.46 41.79 41.39 42.50 42.73 44.41 43.86 41.45
飲料用紙パック 19.80 19.19 18.53 17.71 17.89 17.44 18.07 17.61 17.05 17.05
アルミニウム 8.35 8.59 8.84 9.03 10.00 10.20 10.69 11.61 12.64 13.18
その他 15.45 15.52 15.95 16.87 17.32 16.65 17.13 17.38 17.91 5.30
合計(注2) 740.37 753.31 775.40 805.69 834.50 845.78 852.00 884.16 893.16 859.22

注1:2019年から計算方法が変更。計上される包装廃棄物には、中央局の包装材のリストに掲載されている包装と、デポジット制度の対象となっている使い捨て飲料用容器が全て含まれることになった。
注2:端数処理のため、合計が必ずしも一致しない。
出所:連邦環境庁発表資料からジェトロ作成

表2:最終消費者1人当たり容器包装廃棄物量の推移(素材別)(単位:キログラム)
包装材の素材 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
(注1)
27.5 28.7 29.8 34.8 37.8 38.7 37.9 39.4 39.8 37.1
ガラス 29.4 28.9 31.1 30.3 30.0 29.2 29.9 31.2 31.2 32.4
プラスチック 23.4 24.2 24.8 24.2 24.5 25.0 24.9 25.4 25.7 24.6
ブリキ 4.9 5.1 5.3 5.2 5.1 5.2 5.2 5.4 5.3 5.0
飲料用紙パック 2.4 2.3 2.3 2.2 2.2 2.1 2.2 2.1 2.1 2.1
アルミニウム 1.0 1.1 1.1 1.1 1.2 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6
その他 1.9 1.9 2.0 2.1 2.1 2.0 2.1 2.1 2.2 0.6
合計(注2) 90.6 92.1 96.4 99.9 103.0 103.5 103.5 107.0 107.7 103.4

注1:2019年から計算方法が変更。計上される包装廃棄物には、中央局の包装材のリストに掲載されている包装やデポジット制度の対象となっている使い捨て飲料用容器が全て含まれることになった。
注2:端数処理のため、合計が必ずしも一致しない。
出所:連邦環境庁発表資料からジェトロ作成

「最初の流通者」は、登録を経た上でリサイクル業者と要契約

このように、ドイツで包装材の廃棄量は増加傾向にある。その一方で、包装材を減らし、リサイクル率を向上させるため、法整備も進められてきた。1992年には、包装廃棄物政令(Verpackungsverordnung)を施行。その後、同政令の代替として、容器包装廃棄物法(Verpackungsgesetz)(ドイツ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」を2017年に制定。2019年1月から施行している(2018年12月20日付ビジネス短信参照)。同法は、EUやドイツでいわれる「拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility)」を明らかにするものであり、その具体的な目的は、容器包装廃棄物による環境への影響を回避または低減することにある。最も重要な仕組みとしては、商品の包装材のドイツ市場への「最初の流通業者」(注1)に、包装材の流通・回収などに関して多くの義務を課しているところにある。

対象包装材を流通させるのが、「最初の流通者」だ。より具体的には、商品の製造者や輸入者、通販業者などが該当するとされる。該当する業者は、中央包装登録局外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (Zentrale Stelle Verpackungsregister、以下、中央局)の包装登録データベース(LUCID)に登録する必要がある。加えて、B2C用包装材(注2)の回収を請け負うリサイクル業者外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます と契約し、包装材回収などの費用を支払なければならない。LUCIDへの登録や、リサイクル業者との契約と回収費用の支払いの一連の廃棄物収集については、自治体などが担う一般的な廃棄物の収集と併存することになる(そのため、「デュアルシステム」と呼ばれる)。デュアルシステムによる包装材の素材別のリサイクル率も、容器包装廃棄物法で定められている。それぞれの2020年の素材別の実績では、全てこの法定リサイクル率を達成済みだ。なお、2022年1月から、この率が引き上げられた(表3参照)。

表3:包装材の法定リサイクル率と実績(素材別)(単位:%)
包装材の素材 容器包装廃棄物法が定める
リサイクル率
実績
2021年12月まで 2022年1月以降 2020年
紙(段ボール含む) 85.0 90.0 90.6
ガラス 80.0 90.0 82.4
アルミニウム 80.0 90.0 107.0(注1)
鉄系金属 80.0 90.0 93.0
プラスチック全体 90.0 90.0 104.0(注2)
階層レベル2の項目メカニカル・リサイクル(注3) 58.5 63.0 60.6
飲料用紙パック 75.0 80.0 76.0
その他の複合素材の容器包装材(注4) 55.0 70.0 62.6
合計 90.6 92.1 n.a.

注1:アルミニウムの定義の変更により、実績が100%超になったと考えられる。
注2:リサイクル業者と契約していないプラスチック包装が回収されるため、100%超になる。
注3:廃プラスチックを粉砕、洗浄し、高温で溶融・減圧・ろ過するなどして、再び同じ製品または別のプラスチック製品の樹脂材料としてリサイクルする方法。
注4:異なる複数の素材(プラスチック、紙、アルミニウムなど)を組み合わせて使用し、かつ、容易に分離できない容器包装材。
出所:連邦環境庁発表資料と中央包装登録局からジェトロ作成

企業はまずドイツ国内向け商品や包装材を確認

ここからは具体的に、「最初の流通業者」になる企業が行う事項の流れを説明していく。

企業としてはまず、商品の包装材が容器包装廃棄物法の対象かを確認する必要がある。対象になる包装材は、一般家庭の消費者が廃棄する包装材だけではない。レストランやホテル、病院、教育機関、事務所、行政官庁などで廃棄されるB2C用包装材にも適用される。対象となる包装材は、(1)商品購入時に提供される「サービス用包装材」(カフェでの持ち帰り用コーヒーカップや、パン屋での持ち帰り用袋など)、(2)「販売用包装材」(ラベルなどの梱包(こんぽう)補助材を含む)、(3)「輸送包装材」(段ボールやエアクッションなど)、(4)販売する際に個々の商品を束ねる「集合包装材」に分類されている。中央局は、LUCIDに登録が必要な包装材や不要な包装材をイラストで概説している〔中央局イラスト資料(英語PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(991KB)ドイツ語PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.03MB))〕。LUCIDに登録すべき製品に該当するかどうかの詳細情報は、中央局が公表するチェックリストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(702KB)包装材のリスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます で確認可能だ。

また登録の要否は、商品の量にもよる。例えば、商品が一定量を超えない場合、B2C用容器包装材とみなされるため、登録が必要となる。一方、一定の重量を超えた場合は、B2B用包装材とみなされ、登録不要になる。

場合によって、日本企業にも法的責任が直接及ぶ

次は、包装材がLUCIDに登録が必要な種類に当たると確認された場合の手続きだ。

第1には、包装材を流通(オンライン販売を含む)させる前に、オンラインでLUCIDに登録する必要がある。登録する際、ドイツまたはEUで法人登記をしている場合、納税番号や法人登記した際に付与された識別番号を入力する。事務所を構える拠点が日本だけでも(ドイツまたはEUで法人登記していなくても)、登録が必要だ。ちなみにこの場合、(1)納税番号と法人の識別番号の入力画面で、それぞれ「その他」を選択し、(2)納税番号の欄には日本の法人番号、識別番号には日本の登記簿に記載されている会社法人等番号や、登記簿を発行した法務局の場所を入力する。また、包装材の種類、ブランド名(注3)も登録する必要がある。その結果、LUCID上で、登録した社名や住所、ブランド名、付加価値税登録番号(VAT ID)または税番号が公表(ドイツ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます される。

その後、リサイクル業者と契約し、リサイクル業者に包装材の種類や素材、今後1年間の包装材の流通量の見込み、中央局から与えられた登録番号を伝えなくてはならない。リサイクル業者には包装材の回収費用を支払う。さらに、LUCIDにはリサイクル業者の社名と契約期間も登録する必要がある。

登録が必要な包装材は、LUCIDの登録とリサイクル業者との契約がない限り、国内流通が禁じられる。なお、未登録包装材の流通が禁じられるのは、「最初の流通業者」だけではない。その後に続く流通業者も同様だ。違反の場合は、最大20万ユーロの過料が科される可能性がある。

さらに、包装材の流通量が一定量(注4)を超える企業には、さらに特別の義務が生じる。具体的には、毎年5月15日までに、前年の包装材の流通量をLUCIDに登録した上で中央局に対して報告する「完全申告(英語:declaration of completeness、ドイツ語:Vollständigkeitserklärung)」と呼ばれる手続きを行うことだ。完全申告には、登録鑑定士(中央局に事前に登録した者)、または監査人、税理士、会計士のいずれかによる検査・認定が必要。なお中央局は、登録鑑定士(ドイツ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます監査人、税理士、会計士(ドイツ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます のリストを公表している。

このほか、リサイクル業者との契約締結や延長、契約で定めた包装材の量を、LUCIDに報告しなければならない。なお、データ報告を怠る場合、最大10万ユーロの過料が科される可能性がある。

では、ドイツ国外からドイツへ輸入する場合、包装材に関する規制はどの企業に適用されることになるのか。先に述べた通り、まず押さえておくべきなのは、「最初の流通者」が責任を追うということだ。そのため、ここでは輸入の際の「最初の流通者」の解釈・考え方を説明する。

商品をドイツへ輸入する際、「最初の流通者」として包装材の登録義務や責任を負うのは、ドイツへの輸入通関時点で貨物について法的責任を負う業者になる。このレポートでは「輸入者」と呼ぶことにする。その意味での「輸入者」は前述の通り、LUCIDに登録した上で、リサイクル業者と契約を締結してデータを報告しなければならない。国外に拠点を置いてドイツ国内に商品を輸出したい企業と、ドイツ国内に拠点を置き同国内へ当該商品を輸入し販売したい企業の、どちらが「輸入者」としての責任を負うかは、一概に言えない。契約締結時に、両者間で法的拘束力のある決定をしておくことが重要だ。ちなみに、ドイツ国外にあるオンラインショップが直接、同国内の消費者に商品を販売し配送する場合は、このオンラインショップが「最初の流通者」となる。中央局は「最初の流通者」の解釈が分かりづらい場合に対して、イラストで概説している〔中央局イラスト資料(英語PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(141KB)ドイツ語PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(146KB))〕。

なお、EU加盟国からドイツに移送される商品も、LUCIDでの包装材の登録やリサイクル業者との契約が必要だ。一方、ドイツを経由してドイツ国外に出荷された商品の場合には、LUCIDでの登録やリサイクル業者との契約は不要になる。包装材がドイツの消費者の廃棄物とならないためだ。


注1:
本レポートでは分かりやすさを優先し「最初の流通者」という言葉を用いる。しかし、法律の条文では「生産者」(英語:producer、ドイツ語:Hersteller)という用語が使われている。そのため、資料や解説文によっては「最初の流通者」を「生産者」としているものもある。
注2:
個人など最終消費者によって廃棄される包装材のこと。レストラン、ホテル、行政官庁、病院などが廃棄する包装材も含まれる。
注3:
サブブランドが存在する場合でも、メインのブランドの名称のみの登録で十分。ブランド名のない商品は、社名で登録する。
注4:
ガラスは8万キログラム以上、紙・段ボール5万キロ以上、鉄類・アルミニウム・プラスチック・飲料の紙パック・複合材料はそれぞれ3万キロ以上。

ドイツの容器包装廃棄物法

  1. 商品のドイツ市場流通前に必要な手続き
  2. 法改正で段階的規制強化が進む
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所
ベアナデット・マイヤー
2017年よりジェトロ・デュッセルドルフ事務所で調査および農水事業を担当。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所 ディレクター
作山 直樹(さくやま なおき)
2011年、ジェトロ入構。国内事務所運営課、ジェトロ金沢、ジェトロ・ワルシャワ事務所、企画課、新産業開発課を経て現職。