エコカー販売倍増も充電設備数増加が課題
2021年のルーマニアの自動車産業(後編)

2022年6月20日

2021年のルーマニアの新車エコカー登録台数は前年から倍増したものの、電気自動車の充電設備数はEU加盟国の中で遅れている。エコカー普及と充電設備の整備に向けて、政府は補助金制度を導入している。

新車エコカーの登録台数倍増

自動車製造業者・輸入業者協会(APIA)のデータによると、2021年の新車エコカー[バッテリー電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HV)]の登録台数は、2020年の8,902台(2019年比33.3%増)から2021年は1万8,617台(2020年比2.1倍)へと倍増した。このうちBEVが6,338台(2020年比2.2倍)で、この約半数3,068台を2021年に上市(市場投入)したダチア・スプリング(2022年2月7日付ビジネス短信参照)が占めた。PHEVは2,892台(前年比2.8倍)。HVは9,387台(同87%増)で、このうちトヨタが7,016台とシェア74.7%を占めた(表1~4参照)。

表1:新車エコカーの登録台数推移(単位:台、%)
動力 2019年 2020年 2021年
台数 台数 伸び率 台数 伸び率
BEV 1,506 2,846 89.0 6,338 122.7
PHEV 402 1,037 158.0 2,892 178.9
HV 4,770 5,019 5.2 9,387 87.0
合計 6,678 8,902 33.3 18,617 109.1

出所:自動車製造業者・輸入業者協会(APIA)のデータを基にジェトロ作成

表2:新車BEVのメーカー・ブランド別登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー・ブランド 2020年 2021年
台数 台数 伸び率
ダチア 0 3,068
VW 644 985 53.0
現代 241 448 85.9
ルノー 857 347 △ 59.5
テスラ 62 223 259.7
シュコダ 354 175 △ 50.6
プジョー 97 157 61.9
BMW 106 148 39.6
メルセデス・ベンツ 68 134 97.1
ミニ 24 86 258.3
合計(その他含む) 2,846 6,338 122.7

注:「−」は計算不可。
出所:APIAのデータを基にジェトロ作成

表3:新車PHEVのメーカー・ブランド別登録台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー・ブランド 2020年 2021年
台数 台数 伸び率
メルセデス・ベンツ 207 552 166.7
現代 53 357 573.6
BMW 129 354 174.4
ボルボ 148 291 96.6
フォード 91 278 205.5
ルノー 19 269 1315.8
VW 18 164 811.1
シュコダ 71 131 84.5
三菱 114 80 △ 29.8
アウディ 8 75 837.5
合計(その他含む) 1,037 2,892 178.9

出所:APIAのデータを基にジェトロ作成

表4:新車HVのメーカー・ブランド別登録台数 (単位:台、%)
メーカー・ブランド 2020年 2021年
台数 台数 伸び率
トヨタ 4,252 7,016 65.0
現代 173 1,012 485.0
ルノー 4 411 10175.0
ホンダ 239 307 28.5
フォード 106 267 151.9
レクサス 184 201 9.2
スズキ 0 106
起亜 44 47 6.8
スバル 17 20 17.6
合計 5,019 9,387 87.0

注:「−」は計算不可。
出所:APIAのデータを基にジェトロ作成


レクサス(トヨタ)EVモデルの屋外広告(ブカレストでジェトロが2月14日に撮影)

EVのカーシェア・サービスも運行台数が倍増

BEVは、個人所有以外でも普及が進んでいる。例えば、乗り捨て自由のEVシェアリングを展開するスパーク[SPARK(ルーマニア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 、本社リトアニア]は、2019年7月にブカレストで操業開始して以来、2021年7月時点で約260台のBEVを運行、2022年5月時点で500台以上にまで増加している。同社は、ブカレストを含むEU域内の4都市で運行しており、操業以来の累計走行距離は4,060万キロ、このうちブカレストは600万キロに達した(「ナインオクロック」紙2022年4月29日~5月2日号)。

環境対応の新車買替えを促す補助金制度「ラブラ・プログラム」、2022年はさらに充実

前編「フォードが生産拡大、新車販売は首都圏集中」で解説したとおり、ルーマニアでは依然として、車齢の高い中古車の販売割合が高い。環境規制に対応した、新車による中古車代替を進めるため、政府は2016年6月から施行している新車購入時の補助金制度「ラブラ・プログラム(PROGRAMUL RABLA)」の内容を、2022年はさらに充実させた。この補助金制度は「ラブラ・クラシック」と「ラブラ・プラス」の2本立てになっており、併用可能だ。

ラブラ・クラシックでは、新車購入時、ルーマニア国内で最初に登録されてから6年以上経過している中古車を1台廃車にする場合、6,000レイ(約16万8,000円、1レウ=約28円、レイは通貨単位レウの複数形)が補助される。2021年のラブラ・プログラムでは車齢8年以上の中古車が補助金の対象だったが、これが6年に短縮された。さらに2022年版では、中古車2台を一度に廃車するインセンティブを加えた。この場合9,000レイが補助される。その他、(1)二酸化炭素(CO2)排出量がWLTP(国際調和排出ガス・燃費試験法)基準で120 g CO2 / km以下の新車の場合1,500レイ、(2)LPガス(LPG)または圧縮天然ガス(CNG)エンジンを搭載した新車の場合1,500レイ、(3)ハイブリッドシステムを搭載した新車の場合3,000レイ、(4)車齢15年以上かつ欧州排ガス規制ユーロ3以下の中古車を廃車にする場合1,500レイが、それぞれ追加で補助される。

ラブラ・プラスでは、(1)中古車1台の廃棄に加えて、BEVまたは水素燃料電池車(FCEV)の新車を購入する場合5万1,000レイ、(2)中古車1台の廃棄に加えて、WLTP基準で80 g CO2 / km以下のPHEVの新車を購入する場合2万6,000レイ、(3)前2項(1)(2)のいずれかで、中古車2台を一度に廃車する場合は追加で3,000レイ、(4)車齢15年以上かつ欧州排ガス規制ユーロ3以下の中古車を廃車にする場合1,500レイが、それぞれ補助される。

BEVの普及の足かせとなる充電設備の不足が課題

BEVやPHEVの普及には、首都圏以外にも充電設備を充実させる必要がある。自動車業界誌「0-100.ro」の2021年2月16日付記事によると、2021年時点で国内には充電施設が約300カ所あり、1カ所当たり平均3基設置されているため、合計で約900基の充電設備があるという。充電料金は、スマートビジネス&テクノロジーズ(ブザウ県)が展開する充電設備「EvConnect」の場合、1キロワット時(kWh)当たり交流電源充電(AC)で1.89レイ、直流電源充電(DC)で2.32レイとなっている。レノバティオ・イーチャージ(Renovatio e-charge、ブカレスト)の充電設備の場合では4~22kWのACが1.45レイ、22kW以上のDCが1.95レイとなっている。

充電設備は、ブカレストなど大都市の大手スーパーマーケットの駐車場などから普及し始め、次第にガソリンスタンドにも広がり始めている。しかし、地理的密度をEU加盟国の中で比較すると、ルーマニアはいまだ最下位に近い。欧州自動車工業会(ACEA)の2021年9月の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます によると、道路延長100キロ当たりの充電設備数が最も多いのはオランダで47.5基、次いでルクセンブルクの34.5基、ドイツの19.4基、ポルトガルの14.9基と続く。一方、最も少ないのはリトアニアとギリシャで0.2基、次にポーランドの0.4基、ラトビアとルーマニアの0.5基となっている。0.5基とは、すなわち平均で200キロ走行しなければ次の充電設備にたどり着けないという意味で、これではBEVの購入意欲はわかない、とACEAのエリック=マーク・フイテマ事務局長は指摘している。

充電設備設置に5億レイの補助金

充電設備の設置数を増やすため、政府の環境基金局は総額5億レイの補助金制度(ルーマニア語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます を設け、2021年12月13日に申請受付を開始した。補助限度額は、低容量充電設備の場合が2,200ユーロ、大容量ACの場合が2,800ユーロ、大容量DCの場合が3万2,500ユーロで、かつ所要経費の80%までとなっている。人口5万人以上の自治体、またはその自治体や主要道路、高速道路周辺に本社を置く企業であることが申請要件の1つ。申請期限は当初、2022年6月13日(予算総額を消化した時点で期限前に締め切る)としていたが、8月12日に延期された(予算総額消化の場合、期限前に締め切る旨は同様)。

2021年のルーマニアの自動車産業

  1. フォードが生産拡大、新車販売は首都圏集中
  2. エコカー販売倍増も充電設備数増加が課題
執筆者紹介
ジェトロ・ブカレスト事務所
西澤 成世(にしざわ しげよ)
2003年、ジェトロ入構。海外投資課、輸出促進課、ジェトロ・広州事務所、麗水博覧会チーム、環境・エネルギー課、イノベーション促進課、ジェトロ福井、ジェトロ・ラゴス事務所などを経て、2021年3月から現職。

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