2021年の新車登録台数は前年比11.2%減、1995年以降最小(ベルギー)
電気自動車のシェアが拡大、ディーゼル自動車と同程度に

2022年6月28日

ベルギー自動車工業会(FEBIAC)の発表によると、2021年通年の新車登録台数は、新型コロナ禍の影響を受けて大きく落ち込んだ2020年の実績を下回り、前年比11.2%減の38万3,123台となった。40万台を割り込み、1995年以降で最も少ない台数となった(プレスリリース参照(フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )(図参照)。

FEBIACは、2021年の受注は好調であったものの、世界的な半導体不足により生産能力が制限された結果、売り上げが減少した、と分析している。新型コロナウイルス感染拡大によって後退した需要に回復の兆しが見られるものの、自動車産業は、受注に応じて新車を迅速に生産・納品するという新たな課題に直面しているという。

2021年の傾向として、FABIACは、(1)電気自動車(注1)の普及拡大により、初めてシェアがディーゼル自動車と同水準に達したこと、(2)新車の二酸化炭素(CO2)平均排出量が低減したこと、の2点を指摘している。

図:新車登録台数の推移(単位:台)
2000~2021年のベルギーの新車登録台数。2000~2019年にかけて、最低値は2003年の458,796台、最高値は2011年の572,211台の間で推移。2020年は過去21年間で最低の431,491台。2021年は前年の実績を下回り、383,123台。

出所:ベルギー自動車工業会

購入者の属性としては、企業による購入が最も多く、前年の56.3%から59.7%に拡大した。一方、個人による購入は前年の43.6%から40.2%に減少した。

新車登録台数を燃料タイプ別にみると、ガソリン車が52.0%を占め、依然として最大のシェアを占めるものの、プラグインハイブリッド車(PHEV)のシェアは前年の7.3%から12.5%、ハイブリッド式電気自動車(HEV)は3.5%から5.0%に、バッテリー式電気自動車(BEV)は3.5%から5.9%にそれぞれ拡大し、電気自動車の躍進が顕著となった。電気自動車は、登録台数ベースでは前年比63.8%増と伸び、メーカーも市場に投入する電気自動車の車種を増やしており、需給と供給の両面から市場に定着した、とFEBIACは分析している。環境性能の改善から、前年にシェア後退が落ち着いたかに見えたディーゼル自動車(2021年4月7日付地域・分析レポート参照)は、9.2ポイント減となり、再びシェアが低下した(表参照)。

表:新車登録台数の燃料タイプ別シェアの推移(単位:%、ポイント)(△はマイナス値)
燃料別 2020年 2021年 前年との差
ガソリン 51.8% 52.0% 0.2
ディーゼル 32.9% 23.7% △ 9.2
プラグインハイブリッド(PHEV) 7.30% 12.50% 5.2
ハイブリッド式電気自動車(HEV) 3.50% 5.0% 1.5
バッテリー式電気自動車(BEV) 3.5% 5.9% 2.4
その他 0.9% 0.8% △ 0.1

注:発表に基づき作成。合計が100%に満たない場合がある。
出所:ベルギー自動車工業会

燃料タイプ別に購入者の属性をみると、2021年に新規登録されたBEVの約10台に9台(87.7%)が企業と個人事業主によるもので、個人による購入は12.2%にとどまった。PHEVに関しても同様の傾向があり、90.3%が企業と個人事業主による購入だった。他方で、HEVについては、企業・個人事業主と、個人による購入が、それぞれ47.3%、52.3%となり、ほぼ均衡していた。

メーカー・ブランド別では、BMWが前年比7.1%増の3万8,962台となり、他のブランドの販売台数が伸び悩む中、市場全体の10.2%を占め首位となった。前年に首位だったフォルクスワーゲン(VW)は13.8%減の3万4,349台、シェア9.0%で2位になり、プジョーの2万8,479台(前年比15.1%減、シェア7.4%)が続いた(2022年1月14日付ビジネス短信参照)。

2040年までに環境に配慮した車への乗り換えがさらに加速の見込み

連邦政府の計画局とモビリティ・運輸省が2022年4月に発表したベルギーの2040年までの交通需要の見通しに関する報告書(フランス語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2.21MB)によれば、2040年までに国内の自動車の脱ディーゼル化と電動化がさらに進む、と分析する。ディーゼル乗用車のシェアは、2013年の63%をピークに低下が続いている。今後、代替燃料やエンジンの電動化が一層進み、2040年には全体の43%が電気自動車になり、ガソリン車は33%、ディーゼル車は7%までシェアが低下すると予測。この要因として、連邦政府が発表した社用車に対する税制改正や、ブリュッセル首都圏地域で実施されている低排出ゾーン(LEZ)政策(後述)の導入を挙げている。

連邦政府は、環境配慮型自動車への乗り換え促進のために、2021年12月に税制の改正を発表している。主な内容は以下のとおり。(1)2026年以降購入する社用車について、ゼロエミッション車のみ税額控除制度の対象となり、控除率は毎年逓減する。HEVを含む内燃機関搭載車については、2023 年 7 月購入分から控除率が引き下げられ、2028 年には控除なしとなる。(2)電気自動車用の充電設備を自宅に設置した場合、支出額の最大45%、1,500ユーロを上限として控除する(対象期間は2021年9月1日~2024年8月31日)。(3)電気自動車用の充電設備を設置した企業への税制優遇措置。

ブリュッセル首都圏地域では、2022年1月1日から乗用車やバン、バス、トラックなどEUの排出ガス規制で「ユーロ4」(注2)に該当するディーゼル車が、LEZに乗り入れることを禁止した。ブリュッセル首都圏の大部分がLEZに該当しており(LEZ地図外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )、走行禁止の対象となる車両でLEZに乗り入れたドライバーには、350ユーロの罰金が科せられる(2022年7月1日までは移行期間として罰金は免除)。また、2025年には「ユーロ5」のディーゼル車、「ユーロ2」のガソリン車およびHEVの乗り入れも禁止となる見込み。ブリュッセル首都圏政府は、LEZの基準を満たす車両への買い替えを促すために、住民への補助金を支給している。


注1:
本稿では、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド式電気自動車(HEV)およびバッテリー式電気自動車(BEV)を総称して電気自動車と呼ぶ。
注2:
乗用車の現行規制は2014年に施行した「ユーロ6」で、走行1キロメートル当たりのガソリン車の窒素酸化物(上限60ミリグラム)、ディーゼル車の窒素酸化物(上限80ミリグラム)と粒子状物質(上限5ミリグラム)の排出基準を定めている。詳細は調査レポート「EU 主要国における環境配慮型自動車に関する政策(規制・支援)および技術・市場動向PDFファイル(705KB) 」参照。
執筆者紹介
ジェトロ・ブリュッセル事務所
大中 登紀子(おおなか ときこ)
2015年よりジェトロ・ブリュッセル事務所に勤務。