2022年上半期の米中貿易、輸出入ともに増加続くも、伸び率縮小
輸入で半導体関連品目が大幅減

2022年9月5日

2022年上半期の中国から米国への輸出額は前年同期比15.7%増の2,928億10万ドル、中国の米国からの輸入額は3.7%増の912億2,379万ドルだった。ジェトロが、貿易統計のデータベース「グローバル・トレード・アトラス」を基にまとめた結果だ。

輸出入額ともに増加したものの、前年同期と比較した伸び率は縮小した。対米輸出では、巣ごもり需要に一服感がみられた。一方、リチウムイオン畜電池やクリスマス用品などが大きく伸びた。対米輸入は上位の半導体関連品目が軒並み減少。集積回路は米国からの輸入が減少する中、韓国や台湾からの輸入が2桁増となった。

輸出:巣ごもり需要に一服感

2022年上半期の中国から米国への輸出は、前年同期比15.7%増の2,928億10万ドルだった。2020年下半期以降、4期連続で2桁の伸びになった。もっとも、伸び率は縮小傾向にある(図1参照)。2014年から一貫して、米国は中国にとって最大の輸出先だ。上半期の中国の輸出額に占める米国のシェアは、2021年通年の17.1%からほぼ横ばいの17.0%だった。

図1:中国の対米輸出額と伸び率(前年同期)の推移
対米輸出金額は、2017年上半期1,934億1,741万ドル、下半期2,383億6540万ドル、2018年上半期、2018年上半期2,169億7,831万ドル、下半期2,605億9,824万ドル、2019年上半期1,993億5,946万ドル、下半期2,184億1,179万ドル、2020年上半期1,772億9,348万ドル、下半期2,747億710万ドル、2021年上半期2,530億3,922万ドル、下半期3,235億6,512万ドル、2022年上半期2,928億10万ドル。対米輸出金額前年同期比伸び率は、2017年上半期11.1%、下半期11.1%、2018年上半期12.2%、下半期9.3%、2019年上半期8.1%減、下半期16.2%減、2020年上半期11.1%減、下半期25.8%増、2021年上半期42.7%増、下半期17.8%増、2022年上半期16.7%増。

注:中国税関総署発表の数値と異なることがある。
出所:グローバル・トレード・アトラスからジェトロ作成

表1:中国の2022年上半期の対米輸出(品目別、注1)(△はマイナス値、-は値なし)
金額順位 HSコード 品目 輸出額(注2)
(1,000ドル)
2022年上半期シェア 前年同期比伸び率 米国の輸入額全体に占める中国のシェア(注3) 追加関税措置(米国)該当品目数
(HTSコード8桁ベース)(注4)
うち適用除外対象品目
(HTSコード10桁ベース)
2017年上半期 2022年上半期 シェアの増減
1 847130 ノート型パソコン
(重量10キログラム以下)
22,068,851 7.5 0.2 93.9 92.7 △ 1.2 4B(未発動):1品目
2 851713 スマートフォン 19,980,323 6.8 -(注5) 74.4 -(注6)
3 950300 玩具(車輪付玩具、人形、その他玩具、娯楽用模型など) 6,198,051 2.1 37.4 84.0 79.0 △ 5.0 4B(未発動):1品目
4 850760 リチウムイオン蓄電池 4,071,466 1.4 117.3 40.2 64.9 24.7 4A:1品目
5 851762 データ(音声、画像その他)の受信、変換、送信、再生機械 4,070,716 1.4 △ 6.2 45.4 19.3 △ 26.1 リスト3、4A:1品目 1品目
6 980400 一定額未満の小口貨物 3,860,045 1.3 0.1 -(注7)
7 392690 その他のプラスチック製品
(マスクを含む)
3,119,058 1.1 6.9 38.5 43.2 4.7 リスト3:9品目
リスト4A:9品目
4B(未発動):6品目
4品目
8 852852 モニター
(パソコンに接続して使用するもの)
3,016,212 1.0 56.8 87.0 86.1 △ 1.0 4B(未発動):1品目
9 847330 パソコン部品・付属品 2,962,634 1.0 19.6 67.7 19.3 △ 48.4 リスト1:1品目
リスト3:3品目
2品目
10 950450 ビデオゲーム用のコンソールまたは機器 2,654,586 0.9 15.1 95.8 86.8 △ 9.0 4B(未発動):1品目
11 854370 その他の電気機器 2,620,540 0.9 △ 12.7 34.3 14.0 △ 20.3 リスト1:6品目
リスト2:2品目
リスト3:3品目
リスト4A:1品
4B(未発動):2品目
3品目
12 950510 クリスマス用品 2,232,789 0.8 460.5 86.1 87.9 1.8 4A:6品目
13 640419 その他の履物(本底がゴム製、プラスチック製、革製またはコンポジションレザー製で、甲が紡織用繊維製のものに限る) 2,231,397 0.8 44.1 74.9 55.9 △ 19.1 4A:7品目
4B(未発動):15品目
14 640299 その他の履物
(本底及び甲がゴム製またはプラスチック製のもの)
2,168,896 0.7 51.4 66.8 61.3 △ 5.5 4A:10品目
4B(未発動):10品目
15 850440 スタティックコンバーター 2,094,511 0.7 6.5 47.8 24.6 △23.2 リスト1:1品目
リスト3:4品目
3品目

注1:太文字は、HSコード6ケタベースで米国の追加関税措置が発動している品目
注2:中国側統計
注3:米国側統計。なお、「2017年上半期」「2022年上半期」は、当期実績上の中国の構成比(単位:%)。「シェアの増減」は、「2022年上半期」から「2017年上半期」を差し引いた結果(単位:ポイント)。
注4:米国の対中追加関税措置として、対象品目を示すリスト1~4Aと4B(未発動)が発表されている。当該品目がどのリストに何品目含まれているかを示した。
注5:2022年からのHSコード改正によりスマートフォンに限定したコードが新設されたため、比較できない。
注6:2021年までのHSコードでスマートフォンを含む851712はリスト4B(未発動)に含まれる。
注7:HS98分類がは各国で独自運用が可能な分類のため、グローバル・トレード・アトラスによる米国側の輸入統計での分類が中国側の輸出と異なり比較ができない。
出所:グローバル・トレード・アトラスからジェトロ作成

輸出品目の上位15品目(HSコード6桁ベース)をみると、8品目が追加関税措置の対象だ(表1参照)。適用除外措置については、医療関連製品の一部81品目が2022年11月30日まで延長されている(2022年5月30日付ビジネス短信参照)。そのほか、2022年3月からは、2020年12月末で期限切れとなった品目のうち一部(352品目)の適用除外措置が復活した(2022年3月24日付ビジネス短信参照)。同除外措置の効果は2021年10月12日にさかのぼり、2022年12月31日まで継続するとしている。

上位15品目のうち、データ受信・変換・送信・再生機械(以下、「データ受信機械」、前年同期比6.2%減)や、「その他の電気機器」(12.7%減)、「スマートフォン」を除いて、全ての品目で増加した。ただし、増加品目の中でも、新型コロナウイルス禍で輸出を牽引してきた品目は、伸び悩んだ。例えば、「ノート型パソコン」は0.2%増、「一定額未満の小口貨物」(注1)は0.1%増と微増にとどまった。巣ごもり需要には、一服感がみられる。

一方、追加関税が発動されている8品目の中でも、4位のリチウムイオン蓄電池は2.2倍、12位のクリスマス用品は5.6倍と大きく伸びた。リチウムイオン蓄電池は米国での電気自動車(EV)販売増加を背景に、2021年に続いて2倍を超える伸びとなった。その背景には、EV普及を目指すバイデン米政権の政策がある。同政権は、2021年11月に成立したインフラ雇用投資法で、EV用充電器のネットワーク拡充に向けて75億ドルの予算を計上済みだ。そのため、関連する民間投資も相次いでいる。

クリスマス用品については、例年だと7月~10月に輸出額が増加する。しかし2022年は、6月から急増した。2021年は新型コロナに伴う港湾の混雑やコンテナ不足により、多数の品目がクリスマス商戦に間に合わないという事態が発生した。2022年上半期には、米国で港湾混雑が続くことから、アジア発のコンテナが米西海岸から東海岸へ振り返られる動きなどもみられる。このような事態を背景に、輸入企業が発注時期を早めた可能性が考えられる。

米国の輸入に占める中国製品のシェアを追加関税発動前の2017年上半期と比べると、多くの品目で減少している。2017年上半期と比べて10ポイント以上シェアが減ったのは、データの受信機械(26.1ポイント減)、パソコン部品・付属品(48.4ポイント減)、その他の電気機器(20.3ポイント減)、その他の履物(19.1ポイント減)、スタティックコンバーター(23.2ポイント減)の5品目。これらの品目では、ベトナムや台湾、メキシコからの輸入が伸びている。米国が、中国からこれらの地域へ輸入調達元を変更している様子が見て取れる。

輸入:プラスの伸び維持するも、半導体関連品目が軒並み減

中国の対米輸入は、前年同期比3.7%増の912億2,379万ドルだった。半期ベースの伸び率は、2020年下半期以降2桁で推移していた。これに対し、今期の伸びは1桁に減速した(図2参照)。なお、中国の輸入額に占める米国のシェアは2021年(6.7%)とほぼ変わらない(6.8%)。順位も2021年と同様、4位だった。

図2:中国の対米輸入額と伸び率(前年同期比)の推移
対米輸入金額は、2017年上半期720億9,583万ドル、下半期896億9,524万ドル、2018年上半期824億9,677万ドル、下半期710億7,899万ドル、2019年上半期589億9,014万ドル、下半期633億1,305万ドル、2020年上半期564億1,770万ドル、下半期786億1,492万ドル、2021年上半期879億4,048万ドル、下半期915億2,515万ドル、2022年上半期912億2,379万ドル。 対米輸入金額前年同期比伸び率は、2017年上半期16.0%増、下半期27.7%増、2018年上半期14.4%増、20.8%減、2019年上半期28.5%減、下半期10.9%減、2020年上半期4.4%減、下半期24.2%増、2021年上半期55.9%増、下半期16.4%増、2022年上半期3.7%増。

注:中国税関総署発表の数値と異なることがある。
出所:グローバル・トレード・アトラスからジェトロ作成

表2:中国の2022年上半期の対米輸入(品目別、注1)(△はマイナス値)
金額順位 HSコード 品目 輸入額(千ドル) 2022年上半期シェア 2017年上半期比伸び率 前年同期比伸び率 追加関税措置および適用除外(注1)
(HSコード8桁ベース)
2017上半期 2022上半期
1 120190 大豆
(播種用のものを除く)
8,231,129 10,896,421 11.9 32.4 3.4 第1弾、第4弾-1
適用除外(2020.2~追加関税率引き下げ、市場化買い付け措置(注2))
2 870323 乗用自動車、その他の自動車
(シリンダー容積1,500cm3超、3,000cm3以下)
5,257,640 5,135,603 5.6 △ 2.3 14.6 第1弾、第2弾、第4弾-2(暫定的追加関税徴収停止)
3 854231 集積回路
(プロセッサーおよびコントローラー)
3,803,453 4,597,815 5.0 20.9 △ 34.0 該当なし
4 271112 液化プロパンガス 900,181 3,662,229 4.0 306.8 66.4 第2弾、第4弾-2(暫定的追加関税徴収停止)
5 270900 石油および歴青油
(原油に限る)
1,209,305 3,201,214 3.5 164.7 △ 13.9 第4弾-1、
適用除外(2020.2~追加関税率引き下げ、市場化買い付け措置)
6 100590 トウモロコシ(播種用以外のもの) 24,632 2,798,479 3.1 11261.2 23.6 第1弾、第4弾-2(暫定的追加関税徴収停止)
7 100790 グレイン・ソルガム(播種用以外のもの) 559,740 1,809,289 2.0 223.2 32.3 第1弾、第4弾-2(暫定的追加関税徴収停止)、適用除外(2020.2~市場化買い付け措置)
8 520100 実綿および繰綿(カードしまたはコームしたものを除く) 690,507 1,744,152 1.9 152.6 54.2 第1弾、第4弾-2(2020.2~市場化買い付け措置)
9 848620 半導体デバイス又は集積回路製造用の機器 918,542 1,728,531 1.9 88.2 △ 13.2 該当なし
10 740400 銅のくず 593,020 1,408,682 1.5 137.5 83.8 第2弾、第4弾-2(暫定的追加関税徴収停止)、適用除外(2020.2~市場化買い付け措置)
11 270112 歴青炭 219,355 1,255,334 1.4 472.3 82.8 第2弾、第4弾-1(2019.9~追加関税率引き下げ)、適用除外(2020.2~市場化買い付け措置)
12 848690 半導体ボール、半導体ウエハー、半導体デバイス、集積回路またはフラットパネルディスプレイの製造機器の部分品、付属品 272,241 1,193,029 1.3 338.2 △ 17.7 該当なし
13 841112 ターボジェット
(推力が25キロニュートン超)
811,937 1,146,674 1.3 41.2 14.1 該当なし
14 271111 液化天然ガス 184,012 1,103,168 1.2 499.5 △ 40.1 第3弾-1、適用除外(2020.2~市場化買い付け措置)
15 330499 美容用、メーキャップ用の調製品(唇、目、マニキュア、パウダー用を除く) 226,323 1,002,533 1.1 343.0 5.0 第3弾、第4弾-1(2019.9~追加関税率引き下げ)、適用除外(2020.2~市場化買い付け措置)

注1:中国の対米追加関税措置として、対象品目を示す第1弾、第2弾、第3弾-1~3、第4弾-1、2のリストが発表されている。当該品目がどのリストに含まれているかを示した。なお、リスト第4弾-2の対象品目は、暫定的に追加関税の徴収が停止されている。
注2:通常の適用除外措置では、措置の有効期間内は申請せずに適用除外措置を享受できる。しかし、市場化買い付け措置の場合は買い付け計画などを申請し審査を受け、認可日から1年間は認可された輸入金額の範囲内の品目について、追加関税を付加されないことになっている。
出所:グローバル・トレード・アトラスからジェトロ作成

輸入品目の上位15品目(HSコード6桁ベース)のうち、11品目(大豆、乗用自動車、液化プロパンガス、石油および歴青油、トウモロコシ、グレイン・ソルガム、実綿および繰綿、銅のくず、歴青炭、液化天然ガス、美容用調製品)が追加関税の対象とされていた。しかし、いずれも既に、適用除外(市場化買い付け措置)や暫定的追加関税徴収停止になっている(表2参照)。また、上位15品目については該当がないものの、一部の適用除外措置には2022年11月30日または2023年2月15日まで延長されたものがある(2022年4月19日付2022年7月4日付ビジネス短信参照)。市場化買い付け措置は、引き続き696品目が対象だ。2022年上半期も多くの品目で適用除外が申請され、認められた。

上位15品目の前年同期比の増減をみると、10品目が増加した。2021年に引き続き穀物や一部のエネルギー品目の伸びが大きかった。一方、半導体関連商品(集積回路、半導体デバイス製造機器、半導体デバイス製造機器の部分品)が軒並み2桁減になった。

半導体関連商品は、米国からの輸入で主力品目だ。中国はこれまで、一貫して追加関税の対象外としてきた。米国側の制裁措置(注2)にもかかわらず、米中対立が激しさを増した2018年以降も輸入が伸びていたのが「集積回路」だった。しかし、半期ベースでは2021年下半期に初めてマイナスに転じ、今期は34%減と大きく減少した。一方、世界全体からの輸入は7.9%増とプラスの伸びだった。輸入相手先の内訳をみると、1位の台湾(17.9%増)、3位の韓国(31.3%増)の伸びが大きかった。そのほか、4位の中国(再輸入された中国原産品、注3)も17.5%と2桁の伸びとなった。一方、2位のマレーシア(9.8%減)や5位のベトナム(19.2%減)は減少した。

品目別輸入金額9位の半導体デバイス製造機器は13.2%減、12位の半導体デバイス製造機器の部分品は17.7%減になった。これらの品目は中国の対世界輸入の伸びもそれぞれ10.0%減、5.0%減と落ち込んだ。中国では2022年に入り、新型コロナウイルスのオミクロン株感染が複数地域に拡大した。上海市では3月末から5月にかけて封鎖管理を実施し、国内の生産活動や物流が停滞した。これら商品の輸入も、その影響を受けたと思われる。

穀物は、豚飼料用の需要が引き続き旺盛だった。大豆(3.4%増)、トウモロコシ(23.6%増)、グレイン・ソルガム(ソルガムキビないしコウリャン、32.3%増)がいずれも増加した。ただし、大豆については、輸入の伸びが1桁台にとどまった。2013年以降、年間輸入元1位になっているブラジルの影響が考えられる(ブラジルでは収穫が例年より早く終了。その結果を受け、前年同期に比べ同国のシェアが高まっていた)。トウモロコシについては、2015年以降、輸入元1位がウクライナだった。しかし、2021年は前年の生育期に発生した干ばつによる影響でウクライナ産が不作。2020年に2位だった米国がウクライナを逆転した。2022年には、ロシアの軍事侵攻もあってウクライナからの輸出が減少した。その影響で、米国からの輸入が増え(23.6%増)、米国産のシェアは6割を超えた。7位のグレイン・ソルガムのうち、輸入ものは飼料用の用途が主とされる(注4)。飼料需要の回復に伴い2020年以降は米国からの輸入が増加し、上半期の伸び率は32.3%増、米国産のシェアは8割を超えている。

エネルギー関連(「液化プロパンガス(LPG)」「石油」「歴青炭」「液化天然ガス(LNG)」)では、増加品目と減少品目が入り混じった。共通するのは、いずれも数量以上に金額の伸びが大きかったことだ。価格上昇の影響が広く及んでいることになる。金額ベースでとくに伸びたのが、「LPG」だった(66.4%増)。中国は、2030年にカーボンピークアウト、2060年のカーボンニュートラル実現を目標に掲げ、炭素排出削減に取り組んでいる。このことから、炭素排出量の少ないLPG需要が高まったと考えられる。しかし、同じく炭素排出量の少ない「LNG」の対米輸入は40.1%減だった。世界全体からの輸入は49.0%増となり、輸入相手先別でみると、2位カタール(2.8倍)や4位ロシア(2.8倍)といった米国以外の上位国の伸びが大きかった。5位の石油についても、対米輸入こそ13.9%減だったものの、上位10カ国からの輸入は軒並み2桁増になった(1位のサウジアラビアや2位ロシアを含む)。

11位の歴青炭は、金額ベースで82.8%増だった。2021年9月中旬以降、石炭不足を主因として中国の複数の省で電力の使用制限措置が取られた。中国政府が石炭の秩序ある輸入増加を図ったことなどから、2021年9月以降は世界からの輸入が急増。2022年2月、3月には、輸入金額は例年並みの水準にまで一旦、落ち着いた。しかし、気温が上昇する6月以降は四川省、江蘇省、安徽省といった長江流域や広東省などを中心に電力負荷が高まった。中国政府は、カーボンピークアウト、カーボンニュートラル達成を目指しつつも、電力の安定供給を確保するため、石炭のクリーンで高効率な利用を進める方針を打ち出している。そうしてみると、下半期にかけても石炭の輸入金額は増える可能性がある。

緊張高まる米中関係、追加関税見直しの行方は不透明

米国が1974年通商法301条に基づいて課している対中追加関税は、2022年7月6日で発動から4年目を迎えた。それ以降、恩恵を受ける米国国内産業界から継続要望がなければ終了することになっている。そのため、米国通商代表部(USTR)は2022年5月3日、見直し手続きの開始を発表している。

そうした中で、中国の習近平国家主席は7月28日、米国のバイデン大統領と電話会談。米中関係について「(米国が)戦略的競争の観点で中米関係を定義し、中国を最も主要な競争相手で最も厳しい長期的な挑戦であると見なすことは、中米関係への誤った判断だ。また、中国の発展に関する誤った解釈でもある」と強調した。

さらに、8月2~3日にペロシ下院議長が台湾を訪問したことにより、米中関係の緊張が高まった。これを受けて、中国外交部は5日、米国に対して中米両軍の管区幹部間の対話の中止など8つの対抗措置を発表した。ただし、この対抗措置には追加関税の見直しを含む貿易交渉の停止は含まれていない。

米紙報道では、中国が11月に米中首脳の対面会談を検討しているとの報道もある(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版8月12日)。ただし、8月12日に行われた中国外交部の記者会見では、汪文斌報道官がペロシ議長の訪台について米国を非難するコメントを繰り返すにとどまった。現時点で、追加関税見直しの先行きは不透明となっている。


注1:
「一定額未満の小口貨物」は、越境ECを含め、オンラインショッピングなどで利用される。
注2:
米国は、中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や半導体製造大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)などをエンティティリスト(EL)に追加。SMICに対して、「回路線幅が10ナノ(10億分の1)メートル以下の半導体を製造するのに必要な米国製品」を輸出・再輸出・国内移送することは、原則不許可とされている。
注3:
輸入統計は、原産地主義で計上される。そのため、中国の輸入統計では、香港など中国本土外の仕向け地に輸出された後、中国に再輸入された中国原産品は対「中国」輸入として計上される。
注4:
中国産のグレイン・ソルガムは、白酒の生産用が主な用途とされる。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課
江田 真由美(えだ まゆみ)
2005年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジア課、企画部企画課海外地域戦略班、イノベーション・知的財産部知的財産課を経て、2020年4月から現職。