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在中韓国企業、中国経済の回復に強い期待

2021年4月8日

米中対立の激化に加え、新型コロナウイルス感染拡大で世界的にビジネス環境が悪化した2020年、韓国の対外直接投資額は前年比14.6%減の549億1,000万ドルで、6年ぶりの減少となった(2021年3月22日付ビジネス短信参照)。直近2年間増加傾向にあった対中投資も、前年比29.7%減の7億6,000万ドルと大幅に落ち込んだ。

中国に進出している韓国企業は、中国のビジネス環境をどのように捉えているのか。本レポートでは、2020年9月から11月にかけて韓国産業研究院(KIET)と大韓商工会議所北京事務所、中国韓国商会が共同で実施、480社が回答した「2020年中国進出韓国企業の経営環境実態調査」から、在中韓国企業が中国でのビジネスをどのようにみているか読み解いていきたい。

中国での業績は約半数が売り上げ、営業利益ともに減少

まず、前年と比べた2020年の業績に関する質問に対し、売り上げが「減少」と回答した企業は54.6%(「大きく減少」34.4%、「減少」20.2%)となった。営業利益についても、52.5%が「減少」(「大きく減少」33.5%、「減少」19.0%)と回答し、売り上げと利益ともに過半数が前年を下回った。売り上げ減少の要因としては、「中国での需要不振」が41.9%と最も高く、「中国での競争激化」(18.1%)、「新型コロナウイルスによる障害」(13.5%)、「輸出需要の不振」(11.6%)などが続いた。

中国での今後の事業展望は「現状維持」

次に、中国での今後の事業展望について見てみたい。今後の展望を「今後2~3年」と「5年後以降」の2つに分けて聞いたところ、いずれも「現状維持」との回答(今後2~3年では55.6%、5年後以降では43.5%)が最も多くなった(図1参照)。

図1:中国における今後の事業展望
在中韓国業の事業展望について、今後2~3年では、拡大が23.1%、現状維持が55.6%、縮小が18.3%、移転が0.6%、撤退が2.3%。 5年後以降では、拡大が26.7%、現状維持が43.5%、縮小が21.0%、移転が3.5%、撤退が5.2%。

注:n=480。
出所:韓国産業研究院、大韓商工会議所北京事務所、中国韓国商会「2020年中国進出韓国企業の経営環境実態調査」

「今後2~3年」と「5年後以降」の事業展望を比較すると、5年後以降で「拡大」との回答が3.6ポイント増加している。一方で「縮小」との回答も2.7ポイント増加、「移転」と「撤退」もともに2.9ポイント増加しており、少数ではあるものの、長期的には中国からの移転・撤退を検討する韓国企業も増加していることが分かる。

「中国からの移転・撤退を検討している理由は何か」との質問には、「中国内の生産コスト上昇」が34.8%、「中国での競争激化」が32.3%と、この2項目で全体の7割近くを占めている(図2参照)。

図2:中国からの移転・撤退を検討している理由
有効回答158の内、中国内の生産コスト上昇が34.8%、中国での競争激化が32.3%、米中摩擦による不確実性が11.4%、事業承継の困難が10.8%、東南アジアなど他地域の比較優位が7.0%、サプライチェーンの多様化が3.8%。

注:複数回答、n=158。
出所:韓国産業研究院、大韓商工会議所北京事務所、中国韓国商会「2020年中国進出韓国企業の経営環境実態調査」

中国のビジネス環境は「悪化」

次に、中国のビジネス環境の状況についての質問では、「急激に悪化」が8.8%、「悪化」が49.8%となり、在中韓国企業の過半数が中国のビジネス環境が悪化したと回答した(図3参照)。

図3:中国のビジネス環境の状況
有効回答480のうち、急激に悪化が8.8%、悪化が49.8%、変化なしが28.8%、改善が11.5%、急激に改善が1.3%。

注:n=480。
出所:韓国産業研究院、大韓商工会議所北京事務所、中国韓国商会「2020年中国進出韓国企業の経営環境実態調査」

「中国のビジネス環境が悪化している重要な要因は何か」との質問には、「中国政府の政策(環境、労働など)」が28.1%、「生産コストの上昇」が26.7%、「需要市場の変化」が20.5%となり、3項目で全体の4分の3を占めた(図4参照)。前述したように、「生産コストの上昇」は移転・撤退の検討理由でも最も回答が多い項目で、在中韓国企業にとって大きな懸念となっていることがうかがえる。

図4:中国のビジネス環境悪化の要因
有効回答405のうち、中国政府の政策(環境、労働等)が28.1%、生産コストの上昇が26.7%、需要市場の変化が20.5%、中国企業との不公平な競争が9.9%、外資系企業への規制が8.6%、政治的な制裁が6.2%。

注:複数回答、n=405。
出所:韓国産業研究院、大韓商工会議所北京事務所、中国韓国商会「2020年中国進出韓国企業の経営環境実態調査」

中国でのビジネスに影響を与える外部環境要因は「新型コロナ」、将来的には「米中摩擦」

在中韓国企業が最も影響を受けると考える外部環境の要因の質問には、「新型コロナウイルスの感染拡大」が51.5%、「米中摩擦」が27.0%と、2項目で全体の8割近くを占めた(図5参照)。

図5:最も影響を受けると考える外部環境の要因
有効回答460のうち、新型コロナの感染拡大が51.5%、米中摩擦が27.0%、朝鮮半島問題が16.3%、為替の変動が5.2%。

注:n=460。
出所:韓国産業研究院、大韓商工会議所北京事務所、中国韓国商会「2020年中国進出韓国企業の経営環境実態調査」

今後の自社の中国ビジネスに影響を与えると想定される外部環境要因としては、「米中摩擦」が39.6%、「生活様式の非対面化」が39.2%と僅差で並び、2項目の合計で全体の約8割という結果となった(図6参照)。

図6:今後の自社の中国ビジネスに対し、影響を与えると想定される外部環境の要因
有効回答480のうち、米中摩擦が39.6%、生活様式の非対面化が39.2%、朝鮮半島問題が9.0%、為替の変動が6.3%、中国資本市場の開放が3.3%、安全保障貿易管理が2.7%。

注:n=480。
出所:韓国産業研究院、大韓商工会議所北京事務所、中国韓国商会「2020年中国進出韓国企業の経営環境実態調査」

厳しい状況の中、中国経済の回復に期待

在中韓国企業のアンケート調査の結果からは、結論として、2020年の在中韓国企業は業績も悪化、中国のビジネス環境も悪化と、非常に厳しい状況下ではあるものの、現状を維持しつつ「様子見」の状況にあるといえる。そうした中でも、中国から移転・撤退を考える企業が少ない点は、同じく中国でビジネスを行っている欧米企業とも共通する(2021年3月10日付地域・分析レポート参照)。

中国では世界に先駆けて経済活動が正常化し、プラス成長に回復しており(2021年1月29日付ビジネス短信参照)、その回復ぶりが在中韓国企業の中国国内の販売実績などにも表れている。

韓国産業研究院と大韓商工会議所北京事務所、中国韓国商会が四半期ごとに実施している「中国進出韓国企業の景気実態調査」の2021年1月版(調査期間は2020年11~12月)を見ると、中国の市況に関する現況BSI(注)は、第1四半期(1~3月)の22ポイントから第4四半期(10~12月)には93ポイントまで回復している。また、韓国企業の現地での販売状況に関する現況BSIも、第1四半期の22ポイントから第4四半期は109ポイントとなり、中国経済の回復を背景に、在中韓国企業の業績見通しに明るい兆しが見え始めている。


注:
BSI:Business Survey Index(景況判断指数)、本調査では指数を0から200の間の値で算出しており、指数が100を超えた場合、肯定的に回答した企業数が多いこと、100未満であればその反対を意味している。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部 中国北アジア課
友田 大介(ともだ だいすけ)
2001年4月ジェトロ入構。貿易開発部産業振興課、青森貿易情報センター、海外調査部調査企画課、ビジネス情報サービス部人材開発支援課、ジェトロ・ソウル事務所などを経て2018年9月より現職。

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