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スタートアップが取り組んだインド企業との協業
ソーラーパネル清掃ロボット開発の未来機械に聞く

2021年7月27日

香川県高松市に本拠を置く未来機械は、ソーラーパネルの清掃ロボットを開発する香川大学発のスタートアップだ。ジェトロの支援を活用して、2018年から中東市場に進出。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで累積400メガワット(MW)の大規模太陽光発電所に60台以上のロボットを納入する成果を上げた。

次の開拓先として、インドを視野に入れていた。しかし、厳しい価格要求などがあり、難しい市場という印象を持ったという。そのような中、インドの同業のソーラーパネル清掃ロボット製造スタートアップ、ジェットソンズロボティクス社外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから、ジェトロを介して同社に協業が打診された。日本政府がデジタルトランスフォーメーション(DX)展開支援を図る中、未来機械は同社との協業でジェトロのDX補助事業(注)にも申請し採択された。

ビジネス環境が異なる日印スタートアップ間の協業の実態について、未来機械の三宅徹代表取締役に聞いた(2021年5月20日)。

経験値向上への期待から協業へ

質問:
インド市場への進出を一度検討したと聞く。その際に、進出を見送った理由は。
答え:
2018年に検討し、ソーラー発電事業を行っている大手顧客を中心に声をかけた。しかし、価格要求が厳しく断念した。この時点では同業者との協業は考えていなかった。
質問:
2020年春に、ジェットソンズロボティクス社から貴社を指名して強い協業要望を受けたとのこと。具体的にはどのような話だったのか。
答え:
同社からは、先進的なロボット技術を学びたいという強い意志と、金もうけ以上にロボットが好きという情熱を感じた。同社は(スタートアップでもあることから)社長〔最高経営責任者(CEO)〕以外の人員は流動的。また、製品レベルのロボットは開発中の段階だった。しかし、ロボット開発の基礎力は十分あると感じた。
質問:
オンラインでの初対面だったにもかかわらず、なぜ協業を決めたのか。
答え:
インドでのものづくりの大変さは、ある程度想定できた。そのため、同社との協業に挑戦することでインドの実態について情報収集し、経験値を高められると期待した。ただし、ジェトロからの紹介がなければ知り得なかった会社で、DX事業補助金がなければ具体的に協業してみようというハードルが高かったのは確かだ。

機能と品質面の問題を協業で解決

質問:
ロボット開発の基礎力はあるとの評だった。ジェットソンズロボティクス社の開発したロボットを見て、どの程度のレベルと映ったか。
答え:
決して高いレベルとは言えなかった。製品としてそのまま販売するには、機能と品質の両面で難があると感じた。しかし、これは設計段階でわれわれが関与することで改善でき、また生産工場に委託することで解決できると感じた。そのため、今回の協業を決めた。
質問:
ジェットソンズロボティクス社は未来機械から学びたいという意欲が強かったとのこと。2020年10月のDX事業採択後、同社との協業の中でどのようなやりとりがあったか。
答え:
最初に聞かれたのが、「ソーラーパネルを自動で走行させるためのセンサーをどのように扱うか」という問いだったことを覚えている。同社はドイツ製のセンサーを使用しており、インドでの部品入手性については学べる点があった。
質問:
インド企業との協業に際しては、知財をどう守るかという点を気にする日本企業も少なくない。未来機械はどのように対応したか。
答え:
主な技術はインドでも特許出願済みだ。特許出願書類は英語で可能なため、日本企業にとってのハードルは高くない。また、ジェットソンズロボティクス社とは当然、守秘義務契約(NDA)を締結した上で協業している。
質問:
新型コロナウイルスの影響により、日印間の往来は非常に困難になった。実際、相互に訪問することができなかったと聞く。そのような中、打ち合わせなどのコミュニケーションはどのように行ったか。
答え:
ビデオ会議を中心に行った。また、実際の試作機については、動画を録画して送ってもらうのではなく、ビデオ電話のアプリを活用。リアルタイムで動いているところを見せてもらって議論した。ライブ中継は取り繕えないので、ありのままの技術課題が見えて非常に有効だった。
質問:
インド企業との協業で驚いた点、感心した点などは。
答え:
インド企業との付き合い方はある程度心得ているつもりだった。新型コロナの影響もあるものの、やはり日本企業とは時間感覚が違う。スケジュールどおりには進むことがなかった。しかし、最終的な期限内にはしっかり動作するかたちで製品を仕上げてきたことには驚いた。

三宅社長とソーラーパネル清掃ロボット(森山和道氏撮影)

インド以外の市場開拓の契機に

インドは非常にコストセンシティブな市場だ。同地のスタートアップは必要な機能と性能を見極め、いかに価格とバランスを取るかという観点の発想が強い。これはインドに限らず、アフリカや南アジア、東南アジアなど開発途上にある国々で共通のマインドだ。実際、インドのスタートアップはある程度成長すると、これらの国々に展開していくことが珍しくない。

他方、屋外環境で使うソーラーパネル清掃ロボットの場合、耐候性や故障の少なさなどの品質が全体運営コストの削減に大きく影響する。未来機械は中東市場でこれらについて大きな経験と実績を積んできた。そうしてみると、ジェットソンズロボティクス社との協業は、両者の強みを持ち寄ったものだったといえよう。

未来機械が協業したジェットソンズロボティクス社は2019年、ジェトロ・ベンガルール事務所の推薦により、日本のテック見本市「CEATEC」に招待された。同社のジャティン・シャルマCEOによると、CEATECでは多くの日本企業との商談があった。しかし、未来機械とのこのようなかたちの協業は同社にとって初めての経験で、この協業成果を基に、現在、新たな試作ロボットの開発を進めているという。

インドからは毎年、多くのスタートアップがジェトロの招待を受けてCEATECに参加している。これまでに約20社の実績があり、各企業などから評価を受けている(表参照)。しかし、短期間の出展ということもあり、なかなかその場で商談をまとめることは難しいのが実情だ。さらに新型コロナの影響もあって世界的にビデオ会議でのビジネスが普通のものとなってきた。こうした中、 日本企業にもこれまでとは違った積極的なアプローチが求められる。

表:過去にCEATECに出展・推薦したインドスタートアップなどの事例
企業名 分野 現在の状況
Redwing Labs ドローン開発スタートアップ ドイツ・ダイムラーのアクセラレーションプログラムに採択
SenseGiz 人工知能(AI)開発スタートアップ インド政府の新型コロナウイルス対応ソリューションコンペで優勝
5CNetworks 医療ソリューション提供 GEヘルスケアがベンガルールで実施したアクセラレーションプログラム第1期に採択
Veda Labs 防犯カメラのAI分析ソリューション提供 米国VCの資金を得てカリフォルニア州サンノゼに進出

出所:ジェトロによるヒアリング

インド市場だけでなく、南アジアや中東やアフリカといった開発途上国市場までを見据えると、インド企業との協業は大きなポテンシャルを有している。ジェトロは、今後の日印企業間連携の促進を引き続き支援していきたい。


注:
アジアDX等新規事業創造推進支援事業費補助金(日印経済産業協力事業)
執筆者紹介
ジェトロ・ベンガルール事務所(執筆時)
遠藤 豊(えんどう ゆたか)
2003年、経済産業省入省。産業技術環境局、通商政策局、商務情報政策局などを経た後、日印政府間合意に基づき設置された日印スタートアップハブの担当として2018年6月から2021年7月までジェトロ・ベンガルール事務所に勤務。

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