遼寧省、2020年の対内直接投資は前年比13%増加(中国)

2021年5月19日

中国・遼寧省統計局の発表によると、2020年の遼寧省の対内直接投資額(実行ベース)は前年比12.8%増の25億2,000万ドルと、中国全体の増加率(4.5%増)を8.3ポイント上回った。

大連市、瀋陽市の対内直接投資は微増

このうち、大連市と瀋陽市への投資額はそれぞれ前年比2.2%増、2.0%増と微増だった(表1参照)。産業別では、第三次産業が同25.0%増の15億5,000万ドルと2桁増となり、全体の6割強を占めた(表2参照)。

表1: 2020年の遼寧省の対内直接投資(単位:件、100万ドル、%)(-は値なし)
省・市 契約ベース 実行ベース
件数 金額 金額 前年比
遼寧省 2,520 12.8
階層レベル2の項目大連市 247 660 2.2
階層レベル2の項目瀋陽市 192 3,410 710 2.0

出所:省・市の統計公報および市政府発表等を基に作成

表2:2020年の遼寧省の産業別対内直接投資(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
産業 実行ベース
金額 前年比
第一次産業 4 △67.3
第二次産業 960 △1.8
第三次産業 1,550 25.0

注:原資料における第二次産業、第三次産業の直接投資額の有効数字が1,000万ドルの位であるため、合計値は表1と一致しない。
出所:遼寧省国民経済と社会発展統計公報を基に作成

自動車関連分野への投資目立つ

大連市、瀋陽市への進出案件をみると、いずれも自動車関連分野が目立つ。

大連市の進出案件では、2020年10月に日本電産の電気自動車(EV)向けモーター工場の一部が完成し、2021年内に稼働開始する見込みだ。1,000人規模の研究開発センターも設立した。同年12月にはアイシン高丘が台湾の六和機械と自動車部品の合弁企業(投資総額6,660万ドル)を瓦房店市(大連市所轄)に設立すると発表した。本田技研工業(中国)投資は同年7月、東軟睿馳自動車技術(上海)との合弁でハイネックス モビリティ サービス(中国語:「海納新思智行服務」)を設立した。同社は、ホンダの車載コネクテッドシステム「Honda CONNECT(ホンダ コネクト)」を主体に、次世代コネクテッドサービス事業の戦略立案・開発、ビッグデータや人工知能(AI)を活用した関連技術の開発とサービスを提供する。 機械・電子部品関連では、アズビルが2022年の竣工を目指し、生産子会社のアズビル機器(大連)に新しい工場棟の建設を決定した。中国市場向けの重要拠点として工業用コントロールバルブ、バルブポジショナ、リミットスイッチなどの高い製造技術を必要とするメカニカル製品を多品種少量生産する。2020年5月には米国のボルティモア・エアコイル(BAC)と大連冰山集団の合弁によるBAC中国の新工場とアジアR&D(研究開発)センターの定礎式が旅順(龍頭エリア)で行われた。投資総額は2億5,000万元(約42億5,000万円、1元=約17円)で、2021年末に操業を開始する見込みだ。新工場が完成すると、生産能力は現在の3倍に拡大する。

IT関連では、2020年4月、マイクロソフト(中国)と大連ハイテク管委会、大連昇索科技の3者間の契約による「マイクロソフト-大連工業IoT国際アクセラレーター」のオンライン成約式が大連ハイテクパークで行われた。マイクロソフトは大連ハイテクパークのAIやビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの産業基盤を活用し、技術、専門家と市場資源などを投入し、工業製品のインターネットとの融合を推進する。2020年10月にはドイツの大手ソフトウエア企業SAPグループがSAP中国研究院大連分院を増設した。

瀋陽市への進出案件では、2020年4月1日、BMWが華晨BMW自動車の瀋陽鉄西新工場の建設を開始した。計画建築面積は3平方キロメートルで、2022年の稼働を予定する。主にEVやプラグインハイブリッド車などの新エネルギー車を生産する。2020年6月18日、華晨ルノー金杯自動車研究開発センターがオープンした。350人の開発陣がエンジンや新エネルギー、パワートレイン関連の分野での技術開発を行い、華晨ルノー金杯の完成車の性能向上を目指す。

日本企業の案件では、2020年9月に東芝中国が大手デベロッパーの万科と瀋陽高新技術産業開発区管理委員会と「瀋陽万科中日産業パーク」の建設関連の契約を締結した。両社は今後、先進医療設備や水素発電、自動車用チタン酸リチウム電池など新エネルギー分野の協力を推進する。

盤錦市への投資も化学品製造分野で存在感

大連市と瀋陽市に次いで投資額が大きかったのが盤錦市で、5億1,252万ドルだった。個別案件では、2020年5月に建設を開始した英国のビクトレックス(VICTREX)の年産1,500トンのPEEKポリマー製造拠点〔投資総額3,200万ポンド(約49億2,800万円、1ポンド=約154円)、ビクトレックス出資率75%)、同年9月に開業したオランダのライオンデルバセル(LyondellBasel)の年産80万トンのポリエチレン、同60万トンのポリプロピレンなどを製造する「宝来ライオンデルバセル石化」(第1期の投資額26億ドル、ライオンデルバセル出資率50%)など、化学工業関連のプロジェクトが目立った。

遼寧省、外資利用安定化へ全力促進

遼寧省政府は2020年8月24日、「遼寧省人民政府の外資利用取り組みのさらなる完備に関する実施意見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」を公布し、(1)交通輸送、商業物流などの分野における外資投資制限の撤廃・緩和、(2)ハイテク産業と現代サービス産業への外資誘致促進、(3)中日(大連)発展合作モデル区の建設などの施策を通じ、積極的に外資誘致に取り組む姿勢を示している。

執筆者紹介
ジェトロ・大連事務所
李 穎(り えい)
2007年、ジェトロ・大連事務所入所。総務・企画部、市場開拓部、経済情報部を経て、現在は、進出企業支援センターおよび経済情報部にて、調査や進出企業支援等を担当。