ドイツ自動車メーカーは新型コロナ禍から回復するも、半導体不足に直面
脱炭素と電動化の動きは加速、雇用維持対策も進む

2021年11月16日

ドイツ自動車大手メーカーであるフォルクスワーゲン(VW)、ダイムラー、BMWの2021年上半期の販売台数は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による2020年の落ち込みから回復しつつある。一方、半導体供給不足による生産減、納車の遅れによる販売台数減も問題化している。国内自動車メーカー3社の予測では、半導体供給不足は2021年下半期にも続き、自動車産業に引き続き影響を及ぼす。各社の低排出ガス車、すなわちバッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)は販売台数が急増したものの、内燃機関からの撤退時期については差異がある。注目すべき動きとして、低排出ガス車の普及に伴い、車載用蓄電池セルが必要になるため、自動車大手メーカーは蓄電池の調達や生産拡大にも取り組んでいる。

2021年上半期、3社の乗用車販売台数は増加

VW、ダイムラー、BMWのドイツ自動車大手3社の2021年上半期の乗用車販売台数は、前年同期比で増加した。国・地域別にみると、特に中国での販売が好調だった。

VWの中国における販売台数は、前年同期比16.2%増の184万6,208台となったものの、2019年上半期と比較すると3.5%減だった(表1参照)。2021年上半期の全世界の販売台数も27.2%増の485万1,786台で、2020年を上回ったものの、2019年同期比では7.4%減少し、新型コロナ禍以前の水準には回復していない。ブランド別にみると、VWグループを牽引するVW乗用車は新型コロナ禍以前の水準に戻っていない一方、アウディなど高級車は2019年より販売台数が増え、好調だった(表2参照)。

表1:VW グループの2021年上半期乗用車販売台数(国・地域別)(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 販売台数(注1) 前年同期比 2019年同期比
欧州・その他地域 2,132,025 33.1 △13.9
階層レベル2の項目西欧 1,582,571 30.5 △18.3
階層レベル3の項目ドイツ 539,234 19.5 △22.2
階層レベル3の項目フランス 137,999 50.8 △11.3
階層レベル3の項目英国 243,115 54.3 △19.5
階層レベル3の項目イタリア 153,122 50.2 △11.0
階層レベル3の項目スペイン 130,230 42.9 △24.1
階層レベル2の項目中・東欧 365,452 32.9 △3.4
階層レベル2の項目その他地域 184,002 60.6 14.4
北米 492,210 45.1 7.2
階層レベル2の項目米国 372,982 50.5 17.1
南米 236,277 39.7 △7.6
アジア大洋州 1,991,274 16.8 △2.9
階層レベル2の項目中国 1,846,208 16.2 △3.5
階層レベル2の項目日本 34,512 9.6 △11.9
階層レベル2の項目インド 16,006 -(注2)
合計 4,851,786 27.2 △7.4

注1:中国の合弁会社分を含む。VWブランド商用車を含む。
注2:-はデータがないこと。
出所:VW「半期財務報告書」(2021年1~6月、2020年1月~6月)に基づきジェトロ作成

表2:VW グループの2021年上半期乗用車販売台数(ブランド別)(単位:台、%)(△はマイナス値)
ブランド名 販売台数 前年同期比 2019年同期比
VW乗用車 2,703,243 22.9 △9.8
アウディ 981,681 38.8 8.3
シュコダ 515,277 20.8 △17.0
セアト 280,736 45.1 △10.7
ポルシェ 153,656 31.4 15.1
ベントレー 7,199 46.4 50.4
ランボルギーニ 4,852 36.8 6.6
ブガッティ 40 21.2 △4.8
VWブランド商用車 205,102 25.4 △21.0
合計 4,851,786 27.2 △7.4

出所:表1と同じ。

ダイムラーの2021年上半期の中国における販売台数は、前年同期比27.6%増の44万4,239台で過去最高となった(表3参照)。2019年上半期の販売台数も上回り、同社は順調に中国での販売台数を伸ばしている。2021年上半期の全世界の販売台数は25.1%増の118万2,724台で、2020年を上回ったものの、新型コロナ禍以前の2019年の販売台数にはわずかに届かなかった。

表3:ダイムラー・グループの2021年上半期乗用車販売台数(国・地域別) (単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 販売台数(注) 前年同期比 2019年同期比
欧州 403,763 24.9 △ 20.9
階層レベル2の項目ドイツ 119,677 8.8 △ 29.6
北米 182,305 24.4 4.1
階層レベル2の項目米国 160,646 26.3 8.6
アジア 560,015 26.8 19.9
階層レベル2の項目中国 444,239 27.6 26.1
その他 36,641 9.0 △ 14.1
合計 1,182,724 25.1 △ 1.0

注:メルセデスベンツおよびスマートの合計。
出所:ダイムラー「2021年第2四半期中間報告」「2020年第2四半期中間報告書」からジェトロ作成

BMWの中国での販売台数は、前年同期比42.0%増の46万7,956台だった(表4参照)。また、同社は2021年上半期の全世界の販売台数が39.1%増の133万9,047台と、過去最高を記録し、新型コロナ禍以前の2019年上半期より7.1%増加した。ブランド別にみると、高級車が好調だった(表5参照)

表4:BMWグループの2021年上半期の乗用車販売台数(国・地域別)(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 販売台数 前年同期比 2019年同期比
欧州 504,834 35.4 △ 8.3
階層レベル2の項目ドイツ 136,058 16.9 △ 15.7
階層レベル2の項目英国 87,641 37.1 △ 27.3
米州 225,144 47.6 2.5
階層レベル2の項目米国 184,436 52.0 7.2
アジア(注) 580,351 39.2 27.9
階層レベル2の項目中国 467,956 42.0 33.5
その他 28,718 41.1 7.2
合計 1,339,047 39.1 7.1

注:「アジア」「中国」には華晨汽車集団(Brilliance)との合弁会社分を含む。
出所:BWM「2021年半期報告(6月30日)」「2020年半期報告(6月30日)」からジェトロ作成

表5:BMWグループの2021年上半期乗用車販売台数(ブランド別)(単位:台、%)(△はマイナス値)
ブランド名 販売台数 前年同期比 2019年同期比
BMW(注) 1,178,210 39.9 9.6
MINI 157,848 32.8 △ 8.5
ロールスロイス 2,989 91.6 19.5
合計 1,339,047 39.1 7.1

注:「BMW」には華晨汽車集団(Brilliance)との合弁会社分を含む。
出所:表4と同じ。

2021年下半期、半導体の供給不足が継続の見通し

3社は2021年通年、特に下半期の生産と販売についてどのように見通しているのか。

3社は、新型コロナウイルスのワクチン接種が進み感染拡大が阻止されるという前提で、販売台数は回復基調を続けると見込む。2021年通年の販売台数は前年を上回る、またはほぼ横ばいとみている。他方、半導体不足が2021年下半期も継続し、引き続き生産と販売に影響を及ぼす可能性があるとしている。

BMWのニコラス・ペーター取締役(財務担当)は8月3日、半導体供給不足について、「われわれは2021年下半期も生産制限とそれに伴う販売台数への影響を見込んでいる」と述べている。ドイツ経済紙「ハンデルスブラット」(6月22日)によると、半導体の不足でBMWでは3万台の生産に影響が及んだが、2021年下半期に生産の遅れを取り戻す見込みでいた。ミラン・ネデルコビッチ取締役(生産担当)は「新型コロナ禍による落ち込み後、2021年通年の販売は250万台まで回復できる」としていた。また、年間生産能力を2030年までに300万台まで拡大する予定を明らかにした。2025年までに、車両1台当たりの生産コストを2019年比で25%減少させる目標も示した。

ダイムラーは7月21日、2021年通年の販売台数に関する予測を下方修正した。これまでは2021年の販売台数は前年を大きく上回ると予測していたものの、半導体不足による影響で2020年の水準にとどまるという。

VWも7月29日に、2021年通年の販売台数予測を同じく下方修正した。ただし、2020年の販売台数と比較すると、2021年は大幅に上回るとしている。

ドイツ自動車産業連合会(VDA)は7月5日、2021年通年の国内乗用車生産台数に関する予測を、これまでの前年比13%増の400万台から、3%増の360万台に下方修正した(2021年7月13日付ビジネス短信参照)。なお、2021年上半期の国内生産台数は、前年同期比16.1%増の173万5,445台だった。これは、2019年同期比では30.4%減である。

各社とも脱炭素と低排出ガス車への取り組みをますます強調

2021年上半期の売り上げからは、各社とも二酸化炭素(CO2)の削減を目指し、低排出ガス車(BEVとPHEV)の普及に向けた取り組みを加速させていることも見て取れる。加えて、車両生産過程でのCO2排出削減の取り組みも進められている。

2021年上半期におけるBMWの低排出ガス車の世界販売台数は15万3,267台で、前年同期比2.5倍に急増した。そのうち、PHEVは11万7,178台、BEVは3万6,089台となった。2021年上半期にドイツで販売されたBMWの21.8%が低排出ガス車となっている。同社は、2025年までにBEVの販売を年間に50%以上に引き上げ、2020年比で10倍とすることを目指している。また、2030年をめどに、世界販売台数の50%以上をBEVとすることを目標として挙げた。今後10年間で、約1,000万台のBEVを販売すると予測。また同社は、CO2排出を大幅に削減するために、2025年からサーキュラー・エコノミー(循環型経済)および二次材料の使用を原則とする「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)」のBEVモデルを投入予定だ。具体的には、サプライチェーン・生産を含む自動車のライフサイクルにわたり、車両1台当たりのCO2排出量を少なくとも40%減少する目標を掲げた。また、二次材料の使用を現在の約30%から50%に引き上げることを目指す。

メルセデス・ベンツの2021年上半期の低排出ガス車の世界販売台数も、前年同期比4倍強の12万1,500台となった。そのうち、3万9,000台がBEVだった。2021年上半期の販売台数のうち、低排出ガス車は10.3%を占めた。同社は7月22日、2022年までに市場投入する全セグメントでBEVを提供すると発表した。2025年から、乗用車の設計思想となるアーキテクチャ(プラットフォーム)をBEV向けのみとする(2021年8月3日付ビジネス短信参照)。なお、同社は2022~2030年に、BEVの研究開発に総額400億ユーロ以上を投資する。また、2021年のうちに3モデルのBEVを市場投入の予定だ。

VWグループの2021年上半期の低排出ガス車の世界販売台数は34万2,239台で、前年同期比2.8倍に増加した。うち、BEVは2.7倍の17万939台、PHEVは3.0倍の17万1,300台となった。2021年上半期に、VWグループは7モデルのBEVを市場投入した。2025年までに20モデル、2028年までに約70モデルのBEVの市場投入を予定する(2020年9月9日付地域・分析レポート参照)。グループ営業責任者のクリスティアン・ダールハイム氏は低排出ガス車の2021年の販売台数について、「初めて約100万台を販売する計画」としている。なお、CO2排出量をさらに削減するため、VW傘下のポルシェは部品供給メーカーに対し、同社への納品部品は100%再生可能エネルギーを使用して生産することを義務化した。その結果、再生可能エネルギーのみでの生産に対応できない部品供給メーカーは将来的にポルシェに納品することができなくなる。なお蓄電池セルメーカーに対しては、ポルシェは既に2020年に生産時の再生可能エネルギーの使用を義務付けている(2021年7月13日付ビジネス短信参照)。

内燃機関からの撤退時期については各社で差異、雇用へも影響

低排出ガス車の普及ということを裏返すと、内燃機関搭載車(ICE)の減少ということになる。内燃機関の生産縮小と電動化の進展は、自動車産業における構造転換の動きを加速させており、この産業における雇用にも非常に大きな影響を与えている。ドイツの自動車大手は内燃機関から脱却しつつ、雇用維持や固定費削減にも取り組んでいる。

VWのクラウス・ゼルマー取締役(販売担当)は「ミュンヘナー・メルクーア」紙(7月29日)のインタビューで、VWは2033年から2035年までの間に、欧州におけるICEの販売を終了するとした。他方、中国、米国などでのICEの販売終了には、さらに時間を要するという。また、VWは、固定費を2023年までに5%削減することを目指す。「ハンデルスブラット」(3月14日)は、目標達成のため、ドイツで最大5,000人の雇用が失われる可能性がある、と報じた。同社は、早期退職や採用活動の中止などによる従業員削減を計画している。上記記事によると、VWが2017年から導入した構造改革に向けたコスト削減プログラムにより、ドイツ国内で約2万7,000人の雇用が影響を受けるという。他方、電動化やデジタル化の分野で1万1,000人の雇用が創出される見込みだ。

ダイムラーも構造改革を進める。メルセデス・ベンツは、同社の基幹工場であるバーデン・ビュルテンベルク州シュツットガルト・ウンタートゥルクハイム工場を電動化対応にしたものにするため、改修費用として数億ユーロを投資する。これまで同工場では、主にエンジンやトランスミッションが生産されていた。内燃機関搭載車用駆動の生産縮小が従業員数の削減につながる可能性もあるとしている(2021年3月23日付ビジネス短信参照)。また、同社は2025年から、乗用車の設計思想となるアーキテクチャ(プラットフォーム)をBEV向けのみとするため、従業員のBEVに関する教育訓練を行っている。2020年には、国内約2万人の従業員が教育訓練を受講した(2021年8月3日付ビジネス短信参照)。「ハンデルスブラット」(9月6日)によると、ダイムラーは2021年9月にミュンヘンで開催された国際モーターショー「IAAモビリティ2021」で、将来的にPHEVの開発を終了し、BEVに集中すると発表した。

BMWは、内燃機関から完全に撤退する予定を発表していない。「ハンデルスブラット」紙(6月21日)によると、オリバー・ツィプセ取締役会会長はその理由として、顧客の需要への対応を挙げた。また、「自動車メーカーは内燃機関が供給できない場合、市場規模の半分がなくなり、企業が縮小に向かう」と説明した。

蓄電池セル工場の建設による供給確保にも注力

BEVの販売台数増加に対応するためには、蓄電池の調達や生産拡大が必要になる。VWグループは2030年までに、欧州6カ所に蓄電池セル工場を設立する予定で、総生産能力は年間240ギガワット時(GWh)となる。6つの蓄電池セル工場には、スウェーデン・ノースボルトのスウェーデン北部にあるシェレフテオ工場とドイツ北部ニーダーザクセン州に位置するザルツギッター工場が含まれる。ノースボルトは2023年から、シェレフテオ工場でVW向け高級車用セルの生産を開始する計画。また、同工場におけるVW向け生産能力を、段階的に年間40GWhまで拡大する見込み。ザルツギッター工場での量販車向け標準セルの生産能力も、年間40GWhに達する予定(2021年6月16日付ビジネス短信参照)。なお、VW傘下のポルシェは、高性能蓄電池セルの研究開発と生産を推し進めるため、2021年6月21日にドイツのスタートアップ企業であるカスタムセルズ(Customcells)との合弁会社「セルフォース・グループ(Cellforce Group)」を設立したと発表した。ドイツ化学大手BASFも、正極材の開発パートナーとして協力する。合弁会社の従業員数は2025年までに80人になる見込み(2021年7月1日付ビジネス短信参照)。

ダイムラーのメルセデス・ベンツも、パートナー企業と協力して、全世界8カ所に蓄電池セル工場を新設する。目標として、年間200GWh以上の総生産能力を達成することを挙げた(2021年8月3日付ビジネス短信参照)。「フランクフルター・アルゲマイネ」紙(7月22日)によると、8つの蓄電池セル工場のうち、4つは欧州内、1つは米国、3つはアジアに建設される。また、同社は、フランスの国境に近いバーデン・ビュルテンベルク州クッペンハイムに蓄電池リサイクル工場を建設し、2023年に稼働の見込みだ。

執筆者紹介
ジェトロ・ミュンヘン事務所
クラウディア・フェンデル
2020年よりジェトロ・ミュンヘン事務所で調査および地域間交流を担当。

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